東方魂恋録   作:狼々

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どうも、狼々です!

しばらく……と言っても、あと一、二話、永遠亭のところを少し書きます。
前回書けなかったので。
ですが、その割に永琳と鈴仙の出番が……

今回は、あのキャラ再登場!
交流編を見ていないことも考えて、少し説明的になってます。

では、本編どうぞ!


第39話 入院二日目

俺が入院一日目を終えて、二日目の朝。

大体8時少し前くらいだろうか。

 

俺は目を覚ました。

だが、特にやることがない。暇。最大級の暇人だ。

もう一眠りしようと、瞼を開くこともなく寝ようとして、栞に引き止められる。

 

(ねえ、寝ないでよ天。この女の人、誰なの?)

 

……は? おんなの、ひと?

それも、栞の知らない人間。人間かどうかも怪しいが。

 

どうにも気になるので、仕方がなく瞼を開く。

 

 

 

「あ、起きましたか。おはよーございまーす!」

 

「……おい、文。何で人の寝顔勝手に撮ってんだよ」

 

目を開けると、射命丸 文がいた。俺の顔を覗き込んで。

文とは、宴会で知り合って、取材を受けた時以来だ。

 

取材の内容で、少し俺の社会的抹殺が計画されていたが、無事阻止できた。

人里へ買い物に行った時に何も言われなかったから、恐らく記事には載ってない。

新聞読まないからわからないが。

 

で、その内容が、『スカート覗く外来人、天。変態か!?』である。

あながち間違っていないから困るのだが。

文が飛んでいるところを下から『無意識に』覗いた。他意もない。

なのに、そのことを記事に載せられかけて、俺の第一印象が最悪になるところだったのだ。

まぁ、『色を暴露するぞ』、と脅しをかけたら引き下がってくれたのだ。

 

……やべ、何か俺がヤバイ奴みたいに聞こえるな。

で、でも、文がああやって脅しをかけるからだ。

仕方なく、仕方がなく、良心が痛む中で、泣く泣く言っただけ、うん。

俺に非はないはずだ。

 

「いや~、この寝顔、意外に可愛いですねぇ……載せますね♪」

「俺のプライバシーはどこに行ったよ!? 載せんな!」

「……仕方ないですね。わかりました――」

 

あ、あれ? 今回は意外とあっさりだな。

やっぱり文も、一年ちょっとの間で少しは変わって――

 

 

 

 

 

「個人的に楽しませてもらいますね!」

「変わったと思った俺の気持ち返せ! 少しでも見直した俺が馬鹿だったよ!」

 

訂正。ちっとも変わっていなかった。全く。完璧に。

 

「で、何しに来た? 俺が永遠亭にいることを知ってまで来たんだから、何かあるんだろ?」

「さすが天さん、話が早い。この度は、幻獣、檮杌撃破の(かなめ)となった天さんに取材しに参りました!」

 

……だと思ったよ。どうせ取材だろうとは思っていた。

俺のことを取材するとしたら、間違いなく檮杌撃破について。

そこまでは予想はついていたのだ。だが。

 

「いや、まずいだろ。幻獣知らない人里に新聞配っちゃ、知らせた人を限定させた意味がなくなる」

「そこまで頭が回るとは。ええ、確かにそうです。が、幻獣との戦闘が終わった後、もう隠しても不安を煽るだけ、との判断で、霊夢さん達が、人里の皆さんに公開したのです」

 

へぇ、かなり思い切ったな。

今まで隠していた分、自分達に返ってくるのは、明白だろうに。

 

いや、今の内に公開した方が、後を考えるといいのかもな。

後になって幻獣が直接人里を襲い始めたら、『何で教えなかった』、と責め立てられることだろう。

そうなると、人里の皆の避難も遅れ、被害が大きくなる可能性がある。

 

幻想郷を守るために被害が大きくなったら、元も子もない。

妥当っちゃ妥当か。

 

「了解。ま、プライバシー侵害にならない程度には答えるよ」

「ありがとうございます。では、早速……白黒の霊力の柱は、天さんのものですか?」

 

ほ、ホントにいきなりだな……

ストレートに聞いてくるところが、新聞記者らしいというか、文らしいというか。

 

「……ああ、そうだ。宴会でのときとは比べ物にならないくらい強くなってるだろ?」

「ええ、それはもう。別人ですね。空も飛べ、刀も使うようですし、一年しか経ってないのが嘘に思えてくる程です」

 

……今思えば、一年前の俺は、刀なんて持ったこと無い、霊力も使えない。

さらには、空も飛べない。こんな状況だったわけだ。

成長の幅に関しては誇ってもいいくらいだろう。

 

「次です。檮杌戦で、かなりの重症を負ったようですが、その時の状況と、怪我の具合を詳しく」

「ええっと……俺が檮杌に攻撃に行って、あいつの牙でお腹を貫かれた。出血多量で死んでもおかしくなかった。もっと言うと、臓器を負傷する可能性だって高かった。けど、臓器には傷はなかったし、血もすぐに止めてもらった」

「ほぇ~……それはまた大怪我にも程がありますね……」

 

それには全力で同意したい。うん。

今生きてるのが不思議なくらいなのだ。もうあの感覚を味わうのはごめんだ。

まあ、味わう機会もないくらい珍しいだろうが。

普通一回も経験しないからな。二回目とか堪ったものではない。

珍しいと言っても、いいことでは決してないのが、たちが悪いというか。

 

「では、途中で霊力の感じが強くなりましたが、あれは何ですか? やはり、天さんに関係が?」

「ご名答。『リベレーション』っていうんだ。栞の霊力を体の表面に纏って、身体能力を高めるんだ」

「え、ええっと……その、『栞』、とは?」

 

あぁ、そうか。

文は栞の存在を知らなかったのだった。

栞も文を知らなかったし、気付くべきだったか。

遅まきながら、俺は栞の紹介を文に。

 

「紹介するよ。俺の中に住んでる魂幼女、栞だ。……じゃあ、栞、文に挨拶して」

「は~い、初めまして。私は栞。よろしくね! 今の天の説明で大体合ってるよ」

 

そう栞が言った瞬間、文が怪訝な顔になった。

……ん? この顔は……

 

「あ、あの……天さんは、やっぱり変態なんですか……?」

 

「違ぇよ!」「その通りだよ!」

 

栞と俺の全く逆の答えが重なり、文はさらに怪訝な顔になる。

絶対栞の方を信じてますねぇこれは……

 

「おい栞! 今は誤解を招くだろ! 何でこんな時に限ってそんなに自信満々で言うんだよ!」

「やっぱりそうだったんですか!」

「違うんだよ文、違うんだ。何もかもが独り歩きしてるんだよ」

 

 

俺が文の誤解を解くのに30分はかかった。

途中で栞が、「発情!、発情! 欲情!、欲情!」なんて言わなかったら、あと20分は縮まっていたはずだ。

本当に、ひどいものだ。

 

 

「……わかりましたよ。そんなに必死になって否定しないでください。良心が痛みます……ぐすん」

「さらっと嘘つくなよ。じゃあなんであんなに(かたく)なに信じなかったんだよ」

「……てへ♪」

「もう許さない。スカートの中の暴露も時間の問題だな。せいぜい反省することだな」

「すみませんでしたー!」

 

よし、圧勝。大勝利。

意外に『てへ♪』の表情が、可愛くて沈みかけた。

文も美少女なんだよ……妖夢には敵わないだろうが。

俺の好きな女の子の脳内補正がかかってるし。

補正がかかっていなくても大丈夫だろうが。妖夢が一番だと信じてる。

 

「ふむ、わかればよろしい。……で、まだ他にはなにかあんの?」

「では……ちょっと怪我の具合を見せてください。記事とは関係なく、心配なのですよ」

 

少し悲しそうな顔が浮かんだ気がした。

心配してるのか? 俺のことを、文が?

 

――な、なんかギャップが可愛いく感じてしまう。

 

「わ、わかった。じゃあ、今見せるから待って――」

 

と、俺が上の服を脱いで、包帯を取ろうとした時。

 

「いえ、いいですよ。――

 

 

 

 

 

 

 

 

――()()()()()()()()()

「え? なん――ちょ、ちょい!」

「は~い、遅いですよぉ~……っと」

 

文が突然、目を見張るようなことを言って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()

 

傷は痛くない。あくまで傷はお腹だから。

だけど、この体制は――!

 

「わ~、天がまた発情してる~、繁殖期~」

「あやややや……私に興奮してるんですかぁ~……?」

 

栞の言葉の後に、文が悪戯な笑みに変わって。

……嫌な予感しかしない。

 

「……じゃあ、服、脱がしますね……?」

「まて文、まだ戻れるぞ――って、その声はヤバイから……!」

 

急に妖艶な声を出し、心が揺さぶられる。

 

 

そして、文は俺の服に手をかけて――

 

―*―*―*―*―*―*―

 

また二人となった朝食を終えて、幽々子様が。

 

「ねぇ妖夢。貴方、天のところに行きたいんでしょ? お昼と夜に戻ってくる以外は行っていいわよ?」

「あ……で、ですが――」

「いいのよ。行ってきなさい。きっと、天も喜ぶわ。彼が一番頑張ったんだもの。優先させないとね」

 

で、でも、いいのだろうか?

私は……行きたい。だけど……

 

「私のことで迷うくらいなら、行った方がいいわよ?」

 

幽々子様は、そう仰っているが……しかし……

――でも、行きたい。彼に、会いたい。

 

「わかり、ました……すみません、行って来ます」

「気を付けてね。彼を笑わせてあげてね。……彼も、かなりの重みと戦っているだろうから」

「……はい。では」

 

それだけ言って、私は永遠亭に向かって飛ぶ。

ああ言ったのにも関わらず、行くとなったら急いで永遠亭に向かう自分に、少し呆れていた。

どれだけ彼に夢中になってしまうのだろうか。

 

少し、怖くもなってくるし、幸せにもなってくる。

 

 

しばらく飛び続けて、永遠亭に着いた。

今は……8時30分くらいだろうか。やはり、普通より早くに着いている。

そのことに少し恥ずかしくなりながらも、彼のいる部屋への足は、早く早くと急かしてくる。

 

彼の部屋の前に着いて。

部屋の中から、少し話し声が聞こえた。誰かいるのだろうか?

 

「失礼しま――ぇ……」

 

 

私が見たのは、天君の下腹部に跨って、服を脱がそうとする文の姿だった。

一瞬の静寂。口を最初に開いたのは、天君だった。

 

「よ、妖夢! これは違うんだよ! 文が――」

「あ、妖夢さん、おはようございます。私が無理矢理脱がそうとしてるだけなので、大丈夫ですよ」

「いや俺が大丈夫じゃない。妖夢も大丈夫じゃない。……妖夢、何か言ってやってくれ――妖夢?」

 

私は、とてもとてもショックだった。

当然、天は私が好きであることが、確定もしていなければ、恋人同士でもない。

 

けれど、自分の好きな人を取られる。そうわかって、胸が抉られた。

悲しみに震えそう。だけれど、涙も流せないほど、言葉一つも出せないほど。

それほど、ショックだったのだ。

 

「あ……いえ、その……文、やめてもらえると、ありがたい、です……」

「あ、そうでしたね……すみません。私もやり過ぎました」

 

そう言って、文が天君の上から降りた。

少しホッとした自分に、嫌気が差した様な気もした。

自分の独占欲の強さに。彼を欲してやまない気持ちに。

 

「あ、ありがと……で、怪我を見せればいいんだろ?」

 

そう言って、彼は服を脱ぎ始めて、筋肉が見える。

彼が幻想郷に来た時も、体格はよかった。

が、刀の修行で程よく筋肉のついた体は、私にとって、とても魅力的なものだった。

 

ぼうっとして見ていると、急に恥ずかしくなって、急いで目を逸らした。

……けれど、少しどころではなく、気になってしょうがない。

 

……見たい。

 

ちらちらと、彼の逞しい体を見てしまう。視線が吸い寄せられる。

 

そして、お腹に広く巻かれた包帯が見えた。

天君はそれを、するすると取っていく。彼の様子からして、もう痛みもないようだ。

 

包帯を外し終わり、お腹の状態がはっきりと見えるようになった。

私と文は、すぐに彼に近づいて、目を見開いて、お腹を覗いた。

何故か。それは、昨日の傷が、殆ど塞がっているからだ。

文と私、二人して驚いてしまった。

 

「もう大丈夫みたいだな。……さすがにこれは驚いたな。もう退院してよさそうなもんだがな」

「そうですね……わかりました、私はもう帰ります。では、取材にお答え頂きありがとうございました!」

 

そうお礼を言って、文は部屋から出ていく。

その直前に、私に近寄って。私にだけ聞こえるように、小声で。

 

(本当に何もありませんからね。貴女と天さんの間を邪魔しようなんて、少しも考えてませんよ?)

(なっ……! なんで、それを……)

(私はブン屋ですよ? 人里に、ペアネックレスを買いに行ったことも、知ってますよ?)

 

そこまで知られて、言われると、少し恥ずかしい。

私が周りにわかるほど、『好き』の気持ちを前面に出しているみたいで。

 

それだけ言って、文はさっさと部屋を出て行く。

本当に、何もなければいいのだが。

 

―*―*―*―*―*―*―

 

文が何かを妖夢に耳打ちして、部屋から出る。

耳打ち、というのは、非常に会話の内容が気になるものだ。誰もがそうだろう。

だが、わざわざそうするということは、少なくとも俺に聞かれないようにするためである。

そのために耳打ちしたのに、『何話してたの?』なんて聞くようなことはしない。

 

「で、妖夢はどうしたんだ?」

「あ、えっと……その、特には何もないんです」

 

な、なにもないのに来たのか……?

永遠亭と白玉楼は、結構距離がある。

行きは勿論、帰りのことも考えると、何もなしにくるのは――

 

そこまで考えていて。

 

「その、強いて言うなら……天君に、会いたかったのです……」

 

妖夢が目を逸らし、もじもじとしながら答える。

 

「ガハァッ!」

「え!? そ、天君、どうしたんですか!?」

「い、いや、大丈夫だ、問題ない。装備だって、一番いいんだ……」

 

あまりに妖夢が可愛すぎて、吐血しかけた。

危うく命も刈り取られるところだった。

妖夢が、『命、刈り取っちゃいますよ♡』とか言ってたら、本当に刈り取られそう。

いや、怖いけどね? でも、可愛い。

 

それより、この格好よりも弱いものの方が珍しいくらいだろう。

俺の現在の服装。カッターシャツとごく普通のズボンのみ。

完全に私服。鎧なんて、影も形も存在しない。

まだ灰色の防具の方がマシだ。かといって、指パッチンで白の防具も出てこない。

 

「な、何を言ってるのかわかりませんが……少し、お話しましょう?」

 

彼女の柔らかい笑み。

やはり、この笑顔に勝てるものは何もないと思いつつ。

俺は、彼女との一時を過ごした。

 

……途中。

 

「そ、その……天君は、へ、変態さんなんですか……?」

「いや違うよ? あれはただ文が乗っただけなんだって」

「下腹部に、ですか……?」

「いやホントに違うんだよあれはだね――」

 

もう色々と聞かれた。

ホントに何もないのか、とか。

……俺が他の女の子とそういうことをするのが、気になるのだろうか?

 

 

 

それって、つまりは、やはり。

 

 

 

そういうことでいいのだろうか?

 




ありがとうございました!

次回は、そろそろ病院出たいです。
前書きのやつは何だったのだろう。長くて二話なのは変わりませんが。

あと五話以内に、あのキャラを出せるといいな、とは思っています。
正直、殆どの方が予想できないと思います。
できても、恐らくはずれですね。

どなたかわかる方がいらっしゃれば、メッセージか感想欄にどうぞ。

リアルでは、私はメガネをかけているのですが、不便ですね。
やっぱり、目は悪くするべきじゃないですね。
いいに越したことはないです。

ではでは!

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