東方魂恋録   作:狼々

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どうも、狼々です!
前回、布団のくだりをしましたが、数が圧倒的に足りないことに気付きました。
レミリアからの支給、ということにさせてください。
お願いします。

さあ、今回から戦闘が本格的に始まります!
戦闘シーンは書いたことがなく、出来が悪すぎると思いますので、
よければ『どこをどうした方がいい』、『ここはこのままの表現でいい』などの
アドバイスをください!

では、本編どうぞ!


第35話 解放

「本当に、幸せです」

「……」

「……天君?」

 

呼びかけても返事がない。静かな寝息が少しだけ聞こえる。

寝てしまったのだろう……もっと話したかったが、明日のことを考えると、そうも言ってられない。

彼と一緒に、頑張ろう。

 

そう思って、私と彼の首元にかかっているお揃いのネックレスを見る。

信頼の、証。他でもない、私と彼の。

形になっていることで、なんとも言えない嬉しさがこみ上げてくる。

 

そして、私の行き過ぎた思いが、自分を赤面させることに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……いつか、指輪もお揃いに――

 

そう考えて、私は今までで一番赤くなる。

しかし、自然と左手薬指に視線を向けていた。

 

「な、何を考えて――ゆ、指輪、なんて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう結婚を考えてるの? 中々隅に置けないねぇ~」

「ぇ……ひゃぁっ!? し、栞ちゃん!?」

「し~……天と皆が起きちゃう」

 

そ、それもそうだ。天だけじゃなく、他の皆も起きてしまう。

けど、栞ちゃんは天君の意識がなくても話せたとは。

今まで知らなかった。……ってことはまさか――!

 

 

 

 

彼の部屋に忍び込んだときを見てる!?

そ、それに――け、結婚のことまで……!

 

「やっぱり、天のこと、好き?」

「……は、はい。でも、言わないでくださいね。私から、きちんと言いたいです」

「ふふっ……言われなくとも。さ、明日は早いから、もう寝ようか?」

 

そ、そうだった。……明日死んだら、この先がどんなに幸せな未来でも、意味が無いんだ。

師匠の私が、天君を守らないと……!

 

そう決心して、私は眠りに落ちた。

 

―*―*―*―*―*―*―

 

「どうだ、時雨(しぐれ)。明日には間に合いそうか?」

「俺の能力はすぐだよ。十分間に合う。昼前には終わるよ」

「こっちの結界と封印も終わりそうだよ」

 

よし、順調に進んでいる。

――幻想郷の主力メンバーが集まっていること以外は。

 

予想外だ。奇襲の牽制をしようとしたが、対策をされている。能力か。

まあ、どちらにせよ、奇襲が効かないこともわかった。

それに、思わぬ収穫もあった。

 

――天の弱点。きっと銀髪の刀を持った少女だろう。

そして、その少女もあいつが弱点。片方始末してしまえば問題はないか。

となると、注意人物の天は残して、少女を攻撃するのが吉か。

しかし……

 

「時雨。お前の能力は、知能までは本当に無理か?」

「無理だね。むしろ逆。荒れ狂うばかりだよ。集中攻撃とか、戦術を立てるなら、俺たち三人が出ないと」

 

やはりダメか。もしかしたら、と思ったのだが。能力の関係上無理なものは無理だ。

今更そんなことで悔やんでなどいられない。

 

「よし、準備ができ次第、――を出す。いいか、叢雲、時雨」

「「了解!」」

 

さて、今回だけで上手くいくとは思っていないが、どれだけ戦力を削られるだろうか。

楽しみだ。

 

―*―*―*―*―*―*―

 

朝。決戦の朝。

それなのに、太陽の光はいつもと変わらずに降り注ぐ。幻獣など、来る気配もない。

いっその事、間違いであった方がいい。

けれど、現実はそうもいかない。……準備をせねば。

 

俺は目を開き、布団から出ようとする。

 

が、目の前に妖夢がいる。すっかり忘れてしまっていた。

そうか……俺は、妖夢を……

 

そう考えて、急にドキドキしてきた。

自分の好きな女の子が、目の前に。目と鼻の先に。

い、今なら、抱いても――

 

 

 

 

瞬間、戸の開く音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きて~、もうあs――お邪魔しました~」

「待ってくれ霊夢絶対に勘違いをしているその優しそうな目をやめろぉおお!」

「朝から盛ってんじゃないわよ。見せつけてくれちゃって」

 

当然、俺と妖夢は同じ布団に。朝をその状態で迎えているのだ。

何も知らない人間から見たら、誤解しか招かない。

ってか、盛ってるって……

 

「ち、違うんだよ……」

「はいはい、お楽しみでしたね~、ちゃっかりペアネックレスしてるしね」

「う、うぐ……」

 

い、意外と鋭い、だと……!?

何でこんな細かいとこまで見てんだ……?

普通気付かないだろ。

それより、お楽しみでもなかったからね?

 

 

 

 

妖夢を起こして、二人で朝食を食べに、一つの部屋に皆で集まる。

その部屋の前に着いて、戸を開ける。瞬間。

 

「おっ、オシドリ夫婦が来たぞ!」

「誰がオシドリ夫婦だよ! まだ結婚してねぇよ!」

 

魔理沙から面白そうにわざと大きな声で、皆に聞こえるように言う。

皆は、驚き、好奇、微笑等など、様々な表情で気持ちを表していた。

 

「じゃ、『まだ』ってことは、予定はあるってことの裏付けだよな?」

「……あっ、い、いや、そうじゃなくて……」

 

しまった、このままじゃあまずい。誤解を招きかねない。

自分の言葉の穴に気付くのが一足遅く、自分で自分の首を絞める結果に。

 

助け舟を求めようと、妖夢の方を見る。が……

 

「あ……ふ、うふ……け、けっこ……」

 

あ、だめだ。完全に赤くなっちゃってるし。

で、でも、こんなになるってことは、やっぱり俺を――

 

「はいはい、もうやめやめ。早く食べて、幻獣に備えよう!」

 

霊夢の一声で何とかこの場は収まった。

全く、今日は幻獣襲来なのに、いつまでも呑気だ。そこが良いところでもあるのだが。

 

 

朝食を終えて、少しでも修行をしようと、神憑を取って、境内で刀を振っていた。

 

(天、『あれ』、できそう?)

(多分な。ただ、万が一を考えて、最初からは使わない)

 

ずっと練習してきた、『あれ』。もう余裕でできる域には達している。

が、奥の手はあまり披露したくない。ぎりぎりまで。

皆がやられそうになったら別だが。

 

「そうそう、幻獣は霊力での攻撃が効果的よ」

「そうか、サンキュー幽々子……って、幽々子!?」

「は~い♪」

 

幽々子が、スキマから突然現れた。紫の協力か。

ふむ……霊力が効くのか。霊力刃とかは使えそうだな。後は、刀に纏わせる霊力強化か。

 

「で、天に聞きたいことがあって来たのよ」

「何だよ?」

「……気付いた? 自分の気持ちには?」

 

……なるほど。そのことについてか。

俺だって馬鹿じゃない。質問の意味くらいはわかる。特に、気付いたばかりの今なら。

 

「ああ。俺はやっぱり、妖夢のことが好きだ」

「そう、よかったわ♪ じゃあ、尚更勝たないとね。頑張ってね、応援してるわ」

 

幽々子は一方的にそう告げて、さっさとスキマの中に戻り、スキマごと消えた。

妖夢だけじゃない、幽々子も、皆も、応援してくれている。

……負けられない。絶対に。

 

瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻想郷のどこかに、莫大な霊力の様な何かの力を感じた。

霊力の感じだけれど、霊力じゃない。それだけはわかった。

霊力と決定的に違っていたのは、感じた瞬間の鋭さ。霊力は、あんなに鋭くも、ドス黒い感じもない。

オレの黒の霊力よりも、恐ろしいもの。

 

「皆! 幻獣が来た! 私についてきて!」

 

霊夢がいち早く博麗神社を飛び去る。

皆もそれに続いて飛翔。俺も後に続く。

殆ど俺の全速力で飛ぶ霊夢に、皆が緊迫の表情を持ってついて行く。

 

……負けちゃだめなんだ。俺は何の為に呼ばれたのか思い出せ。

 

「大丈夫です。このネックレスがある限り、私たちは勝てます」

 

険しい表情になっていた俺を、妖夢が優しい声でほぐしてくれる。

彼女の存在が、ありがたい。

 

 

飛んでいる最中、昨日の夕食中に話し合った戦略を思い出していた。

 

まず、魔理沙のスペルカードを放つ。――魔理沙のスペルカードは、威力重視のものらしい―-

それで様子を見て、俺と妖夢が近接で相手の注意を引きつけつつ、周りもスペルカードを放つ。

これが大まかな作戦の内容だった。

 

だが、霊夢本人でも、上手くいく方が珍しいくらい、だそうだ。

臨機応変な対応が求められている。

 

 

そうやって内容を思い出していると、平野に幻獣の姿が見えてくる。

一目見ただけで幻獣とわかるくらい、目立つ存在だった。

 

虎の体に人間の顔を持って、長い牙が下から上に向かって生えている。

さらに、尾はとても長い。3~4m程もある。

 

霊夢から、幻獣についての説明がされる。

 

 

 

 

「……檮杌(とうこつ)。『四凶』の一柱よ。かなりの戦闘狂らしくて、正直強いわ。皆、油断しないで。……魔理沙、降りたらすぐに準備して」

「了解」

 

今までで一番の真剣な眼差しを檮杌に向ける。

それは、確実な敵意となって、檮杌に届く。

 

 

 

 

魔理沙が、降りた。

 

「恋符 『マスタースパーク』!」

 

瞬間、極太のレーザーが地面を走る。

 

 

当たった。直後。

 

 

 

バァァァァァアアァアン!

 

 

ダイナマイトにも似た音が空気を揺るがす。

幻獣の居た場所には砂埃が立ち、風圧で俺は飛ばされそうになる。

つよっ……! だが、これほど頼もしいものもない。

誰もが檮杌の負傷を期待していた。確信していた。

皆が地面に降りる。

 

 

 

 

 

 

 

 

刹那、砂埃の中から光の速さで何かが飛び出した。

そして、それは止まり。

 

 

 

 

「……ァァァアアアアアアア!!!」

 

雄叫び。それは他でもない、檮杌の。

同じく、大地を揺るがす。が、それには狂気的なものも込められて。

 

 

 

 

 

叫んだとほぼ同時に。

 

 

 

 

 

 

檮杌の全身から、()()()()()()()()()

オレの霊力とは違う。根本から。

 

 

オレの『黒』は、絶望・孤独。だが。

 

 

 

 

檮杌の持つ『黒』は、破壊・死。

ドス黒い(もや)が未だに吹き出し続ける。

 

 

 

 

「まずい! 皆、戦闘準備!」

 

意外にも、栞の声が最初に響く。

皆が驚いた様子から開放され、戦闘準備に。

 

 

 

 

 

「妖刀 神憑!」

 

 

刀の名を告げ、抜刀。

 

そこで、檮杌はここにいる皆が敵であることを認知する。

 

 

 

 

 

檮杌に睨まれた。その瞳は、血塗られた瞳よりも、狂気で満たされていた。

 

 

 

 

 

瞳が、こう語っていたようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       「オマエヲ、コロス!」

 

 

 

 

 

 

 

俺が一瞬畏怖し、足がすくんだ瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

()()()姿()()()()()

 

 

 

 

あ、あれ、やばい、見失なった! 今見失ったら――

 

 

 

 

 

「――がはぁぁっ!」

 

 

 

 

突然、俺の体躯が吹き飛ばされる。

 

 

 

 

 

何が起こったのかわからない。

 

 

 

俺の体は、10m程にも渡って飛び、バウンドし続ける。

 

 

 

 

 

 

皆の驚きが、表情が見える。

 

 

特に妖夢の表情は、既に絶望に染められている。

 

 

 

 

立ち上がろうとして。

 

 

 

「ぐふっ……!」

 

 

吐血。がはっ、がはっ、とおびただしい量の血が口から溢れ、血溜まりを作る。

 

 

 

 

 

 

 

な、なんだよ、これ……おれの、ち、なのか?……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう認識して、突然寒気に襲われた。

 

 

 

 

恐怖。死。死。死。

 

 

 

 

殺される、皆、殺される。いま、あいつに、ころさ、れる。

 

 

 

 

あ、やば、も、う、か……ない

 

 

 

もう……き……んな……され……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しっかりして! あんたは! 今まで何の為に努力を重ねたのさ!」

 

 

俺の意識を、栞が戻した。

 

 

「あんた、やられにきたの!? 死にに来たの!? ここにいる皆も守れないで、幻想郷全部守るなんて、できるわけないだろ!?

だったら! 今、ここで立ち上がらなくてどうすんの!?」

 

 

 

 

 

 

 

そう、だ。

 

 

俺は、この世界を。

 

 

 

 

この、幻想郷を、守るんだ。

 

 

 

 

こんなところで。

 

 

 

攻撃を一撃当てられたくらいで。

 

 

 

 

 

しょぼくれてんじゃ、ねぇよ……!

 

 

「……さんきゅ、栞」

 

「いいんだよ。……思いっきり、戦ってこい!」

 

 

 

 

 

「おう!」

 

 

 

 

 

 

返事と共に、俺の体は起き上がり、加速する。

 

 

 

 

 

 

 

地面を蹴って、前へ……!

 

 

 

 

 

 

嘲笑っている檮杌の姿が見える。

 

 

 

「おら! 何余裕見せてんだ……よぉ!」

 

 

刀を振り下ろす。檮杌に、当たった。

 

最大威力、最高スピードの刀が。

 

 

勿論、霊力を込めることを忘れずに。

 

 

 

 

「……イギャァァアア!」

 

 

 

瞬間、刀の当たったところから、またしても黒い靄が吹き出す。

 

 

 

 

血の様なそれは、天高くへと昇って、消えていった。

 

 

「皆、天に続いて攻撃! 危なくなったらしっかり避けて!」

 

 

 

「「「了解!」」」

 

 

 

 

「神霊『夢想封印』!」

 

「幻符『殺人ドール』」

 

「恋心『ダブルスパーク』!」

 

 

 

 

霊夢は色とりどりの、大きな弾幕を。

 

 

咲夜は大量の、ナイフを。

 

 

魔理沙は二本の、マスタースパークを。

 

 

それぞれを撃って、檮杌に応戦する。

 

 

 

 

……が、殆どを圧倒的なスピードで躱される。

 

特に霊夢の弾は重点的に避けられる。封印の名目だからだろう。

 

 

 

 

 

 

だけどさ……?

 

「俺のこと、忘れてないか!」

 

 

突然の加速で間を詰め、連続で斬りを入れる。

 

 

「ギャァァアアア!」

 

 

やはり、霊力は弱点特効みたいだ。

 

 

それに、近接の為、霊力のダメージが直接伝わる。

 

 

 

 

 

 

「さすがです、天君! 私も、負けていられませんね……!」

 

 

そう言って、妖夢のスペルカードが発動。

 

 

 

 

「人符『現世斬』」

 

 

 

宣言後、妖夢の姿が消える。

 

 

 

直後。

 

 

 

「ァァァァァアアアアアアア!!」

 

 

 

妖夢の楼観剣が閃く。一閃。

 

 

 

 

 

 

剣先も、姿も、見えなかった……

 

 

 

 

 

これが、本物……!

 

 

「さっすが妖夢! 一緒に行くぞ!」

「はい!」

 

 

 

今度は、二人で斬りにかかる。

 

 

 

 

俺が囮になって攻撃を引きつけて躱し、攻撃の瞬間の隙を、妖夢が突く。

 

 

 

 

二人で事前の打ち合わせなんて、微塵もしていない。けれど。

 

 

 

 

 

俺らにとって、完璧な連携など、造作もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このネックレスに誓って、勝つと決めたから。

 

 

 

 

「ャァァアアァァアアア!」

 

 

一層強く、檮杌の咆哮が響く。

 

 

 

大地を揺らし、木々を揺らし、平野の草を揺らし。

 

 

 

たった一つ、揺るがないもの。それは――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ここにいる全員の、勝つという気持ちだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、現実は、そんなに上手くいかない。残酷なものだった。

 

 

 

皆が勝てると確信していた瞬間。

 

 

「ォォォオオオオオオオオオオ!」

 

黒の靄が吹き出す。今までの量とは比較にならない程だ。

 

 

 

 

 

 

全員は警戒した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

檮杌が再び消える。

 

そこまでは何度か見た。が。

 

 

 

 

「ぁぁぁああ!」

 

 

咲夜の悲鳴。

 

 

「きゃぁぁあ!」

 

 

霊夢の悲鳴。

 

 

「うわぁぁああ!」

 

魔理沙の悲鳴。

 

 

続々と、俺の仲間が悲鳴を上げて、倒れていった。

 

 

 

 

お、おい……どうして、だよ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうして、()()()()()()()()姿()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

さっきまで、攻撃が終わったらスピードが落ちて姿が見えていた。

 

 

 

 

けれど、それがなくなった。これの意味することは一つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達が一方的に殺戮(ころ)される側だ、ということ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全身から、血の気が引いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、まずい!――不死『火の鳥――鳳翼天翔』!」

 

「冥符『紅色の冥界』!」

 

 

妹紅、レミリアが広範囲に弾幕を張る。が、見えない相手に当たるはずもなく。

 

 

 

「「あぁぁぁあああっ!」」

 

 

二人の悲鳴が、響く。

 

 

 

 

 

 

俺はもう、半ば諦めていた。

 

 

 

 

 

                           もう無理だ。

 

 

 

      諦めよう。

                             

 

 

                   戦っても、傷つくだけ。

 

 

 

 

 

        それなら、いっそ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天君、危ない!」

 

 

 

 

 

妖夢の叫び声。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とん、と押されて、俺は体制を崩して、倒れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

揺れる視界の先で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖夢が、俺を突き飛ばしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時に見た妖夢の顔は、いつもの優しい笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、檮杌のものであろう攻撃が、妖夢を襲って彼女を吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

20mは確実に飛ばされている。俺の一撃目よりも、ひどいもの。

 

 

 

 

 

飛ばされた先では、妖夢が、彼女の血溜まりを作っていた。

 

 

 

 

 

 

 

俺の、せい。で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が、しっかり、し、てい、れば。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が 弱い   か ら    妖 夢は    傷 ついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が、弱いから!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

強くないと!   意味が無いんだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

強くないと! 守りたいものも守れない!!

 

 

 

 

 

 

 

だったら――!!

 

 

 

 

 

 

 

「しっかりしろ! 妖夢の分をやり返すんだよ! 『あれ』がまだある!」

 

 

 

乱れていた精神をもう一度栞に正される。

 

 

 

 

 

 

……そうだ、俺には、まだ『あれ』がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

立っているのは、俺一人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦えるのも、俺一人。

 

 

 

 

 

 

 

「やるしか、ない!」

 

 

 

「やっと気付いたかい! ホント、手間取らせるねぇ! こんなに仲間がやられて、悔しくないのか!? 自分の無力さを悔いることもできないくらい、落ちぶれていたのかい!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「違う! 俺は、絶対に! 檮杌を倒す!」

 

 

 

そうだ、このネックレスに誓ったんだ。

 

 

 

皆を守るって、皆に誓ったんだ!

 

 

 

「だったら、私に何か頼むことがあるんじゃない?」

 

 

 

 

 

 

 

「栞、俺に力を、貸してくれ!」

 

 

 

 

 

「勿論! 最初だし、二人で一斉に叫ぶよ!」

 

 

 

 

「おう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

そうやり取りをして、『あれ』を使う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「リベレーション!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時から、新藤 天の英雄譚(えいゆうたん)が、本格的に始まった。




ありがとうございました!

今回、戦闘シーンを空白多めにして盛り上げたつもりです。
緊迫感というか、緊張感出るかな……? と思っていたり。
実際にあるのかどうかはわかりませんが。

さあ、英雄譚の始まりです!

この物語は、加速する!

って感じにできたらいいな、と思ってます。
あ、恋愛も書きますよ? 戦闘シーンより恋愛シーンの方が向いている気がします。
マシな程度なので、どっちも向いていないでしょうが。

ではでは!

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