東方魂恋録   作:狼々

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どうも、狼々です!
さて、特別話を見て頂けたでしょうか?
個人的にはとても見てほしいですが……皆さんは、チョコレート、貰えましたか?

……え、私? いやだなぁ、貰えるわけないじゃないですか(切実)。

三十話書いてやっとですが、地の文が少ないことに気づきました。
今回から少し意識して多めにしてます。
元に戻して欲しいなどの要望がない限りは増やしたままでいこうと思います。

では、本編どうぞ!


第29話 じゃあな、紅魔館。ただいま、白玉楼。

俺は妖夢を見送って、自分の部屋に戻る。

まだ妖夢からもらったトリュフチョコが十分にあるので、今から食べようか。

うん……甘い味がする。

 

(よかったねぇ、妖夢ちゃんからもらえて?)

(あぁ、まさか渡しに来てくれるとは思わなんだ)

 

もう三ヶ月待たないと会うこともできなかったはずなのにな。

本当に想像もつかなかった。それだけに、嬉しさも倍増なのだが。

 

(ねぇ、天?)

(うん、何だ?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(天はさ、妖夢ちゃんのこと、()()()()?)

(はぁ!? が、がはっ、がはっ……い、いきなり、どうしたんだ!?)

 

驚きのあまり、食べていたトリュフチョコを喉に引っ掛ける。

チョコレートとかの刺激物を引っ掛けた時の喉の痛みは異常。

普通よりも尋常じゃなく痛いよね。

 

(いや、そのさ? 妖夢ちゃんを抱いてた時、ドキドキしてたでしょ?)

(……いや、そうだけどさ? 普通の反応だと思うよ?)

(もうその二人の姿が恋人のそれだった。実にラブラブだったな~って)

 

そう……見えるのだろうか。

もし本気で、妖夢を好きかどうかと聞かれて、俺はどう答えを出すのだろうか?

 

(あのさ……本当に、どうなの? 真面目に、ふざけないで答えて)

 

栞の声は、いつになく真剣さを帯びていた。

 

(……わから、ない。俺が妖夢をどう思っているかは)

(少なくとも、妖夢ちゃんからは前に、寝ぼけてだけど、好きって言われたんでしょ?)

(……ああ)

 

あの時を思い出す。

 

扇情的な彼女の表情は、何を意味していたのだろうか。

妖美な声は、何を意味していたのだろうか。

妖夢の言葉は、何を意味していたのだろうか。

 

本来は考える必要もないかもしれない。いや、そんな必要はないと断言できるだろう。

――が、俺自身戸惑いが隠せないのだ。

 

今まで、疑ったことは何度かあった。

そして、それに対して自分はどうなのかも考えようとした。

……が、無意識に答えを出すことを避けていた。戸惑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()

 

(そろそろ、答えを出した方がいいんじゃない?)

(その通り、かもな。考えてみるよ。ありがと)

(いいんだよ、少年! 全く、目の前でイチャイチャするのを見てるこっちの身にもなってよね?)

 

イチャイチャ、ねぇ……

そんな会話をしていて、トリュフチョコを食べ終わる。

 

「ご馳走様でした」

(ご馳走様でした!)

(おい栞。今違う意味で言っただろ)

(ナンノコトカナ?)

 

バレバレである。

まあ、白玉楼に帰るまで三ヶ月あるんだ。

しっかりと、自分と向き合ってみるかな。

……恋愛なんてしたことがないが。乙女心はさっぱりだが。やれるだけ、やってみたい。

 

 

 

 

 

夕食も終わって夜。

よくあんなに食べといて夕食を食べられたものだ。

今は、神憑を持っていつものように中庭にいる。

 

(ねぇ、もう一人の天は最近どう?)

(それが……あれ以来全く動きがない。ここまでくると逆に不安になるよ)

 

ビックリするくらい動いてない、本当に。

オレの暴走が二ヶ月前。今に至る二ヶ月間、前に出ることはおろか、ユメに出てくることもなくなった。

邪魔されないに越したことはないが。

 

(もう一人の天のことなんだけどね、幻獣と戦っていく上で、あいつの力は、正直欲しい。悔しいけどね)

(そう、だよな。……ごめん、俺が弱いばっかりに――)

(違う、そうじゃない。十分に天は強いと思うよ。……私との『あれ』、もう完成しそうじゃない)

(……あと二ヶ月で完成するとは思うが……頑張るよ)

 

栞との練習。ずっと霊力量の限界を高めることで成し得る技。

これはきっと、これからの戦いで大きく役に立つだろう。

霊力量も増やした。その中で、霊力・妖力・神力などの感知もできるようになった。

……確実に、成長できている。もっと自分に自信を持て、俺。

 

(うん。それでね、あいつが必要な理由。それは、体術の使用と、霊力の増加のためなの)

(体術はわかる。考え方が根本的に違っている俺とは別に体術が使えるからだろ? でも、霊力は何でだ?)

 

俺の体を使っているなら、使用している霊力も俺の霊力のはず。

実際、オレが後ろに下がった時、激しい霊力消費で倒れた。

 

 

……本当に、そうなのか?

 

(黒の霊力。本来、霊力は()()()()()()()()()()の。つまり、()()()()()()()()()()ってことになるの)

(でも、あの時俺は暴走して倒れた。霊力を使ったってんなら倒れたことの説明がつかない)

(あの倒れは、疲労なの。いつもあんなに乱暴に霊力を使わないから、体が慣れてなかっただけ)

 

……となると、俺の霊力はオレを合わせると単純に考えて二倍。

どう考えても、この先の戦いに有利になることは間違いない。幻獣たちだけじゃなく、黒幕の三人とも戦わないといけないんだ。

霊力がなくなって動けない、なんて言っていられないのだ。

 

(……じゃあ、オレを出せってか?)

 

正直、危険だと思う。

邪魔だと言って、仲間を攻撃する可能性が否めない。十分にありえるのだから。

そこまでのリスクを負ってまでオレを出すより、地道に俺が鍛錬を続けた方がずっといい。

 

(いや、そうじゃない。あいつを……()()()()()()()()

(取り込む、というのは具体的に?)

(黒の霊力を持つあいつを自分と一体化させる。それで、天が黒の霊力と白の霊力の両方を使えるようにするの)

 

……オレを、一体化?

イマイチ感覚が掴めない。

 

(つまり、あいつを、他でもない天が受け入れないといけないの。あいつは、天の孤独の権化みたいなものなんでしょ?)

(……そうだ。けど、オレを取り込んだとする。孤独・絶望のオレと、信頼の俺。()()()()()()?)

(…………)

 

栞は、答えない。

わからないからだろうか。いや、もし俺が負けたら。

そう考えているからだろうか。

 

取り込む、なんて一方的なものじゃない。二つが一体化すると考えれば……どちらかの人格が消え失せるわけだ。

これで、オレが勝ったら。栞の能力も使えて、白と黒の霊力を使って。無差別的に攻撃を始めるだろう。

多少は幻獣たち敵に回るだろう。が、恐らく一人で戦うことになる。

間違いなく勝てない。いくら強力とはいえ、限界があるんだ。

それで、仲間に助けられようとしたら……絶対に攻撃を始めてしまう。

皆の善意が、皆を殺すことになりかねない。

 

(大丈夫。天なら勝てる。信じてるから。それに、今から取り込むなんてことはしないよ。もっと時間をかけて、ね?)

(了解。俺は絶対に勝つ。幻獣から、黒幕から、幻想郷を守るために)

(そうだね、一緒に頑張ろう。それじゃ、『あれ』の練習しよっか!)

(ああ!)

 

俺は、強くなる。強くならないと、いけないんだ。

 

 

 

修行を終えて、自分の部屋に。

ベッドに横になって、オレのことについて考えていた。

 

少なくとも、力は俺よりも強い。けど、致命的な問題持ち。

 

……俺が、取り込めなかったら。

 

このことばかり考えてしまう。

自分の人格が消えると、どうなるのだろうか。

 

(大丈夫、大丈夫、だから……)

(……栞? どうした?)

(天が、苦しそうにしてたから。大丈夫だよ、私がいるから……)

 

栞は、なんやかんやで俺を支えてくれる。

いつでも、俺の中で。

 

(ありがとう。もう大丈夫だ)

(……嘘、つかないで。顔が強張ってる。あんまり無理しないで。少なくとも、私の前では)

 

本当に栞には助けられてばかりだ。

俺のことを一番わかってくれてるんじゃないか。

 

(……ごめん、怖いんだよ。オレが俺を蝕んでいくのが。いつか、俺のまま気が狂ってしまうかもしれない)

(大丈夫、私がいる。天が消えたら、()()()()()から)

 

……今、栞はなんと言ったのだろうか?

栞が……消える?

 

(お、おい……なんで、栞が――)

(私は、天と一緒にいたい。魂だから、私も消えようと思えばできると思う)

(いや、でも……ぁあ……)

(……天?)

 

栞が、消える。

今までずっとそばにいてくれた、栞が。

 

(い、いやだ……栞が、消えるなんて……)

(……ふふ、心配しないで。消えるのは、天が取り込めなかったらの話。取り込めたら、一緒だから)

 

……絶対に、失敗できない。

取り込みがいつになるかわからない。

けれど、それなりの覚悟をしておかなければならない。

失敗したら、栞も消えるのだと。

 

(私は嬉しいよ、そう言ってくれて。でも、らしくない。天には、自分の足で立って欲しい。縋るような生き方は、しないで欲しい)

(……わかった。頼らせてはもらう。けど、縋るようなことはもうしない。約束しよう)

(よし、おっけ! 今日はもう寝よう?)

(わかった。……ありがとう、おやすみ)

(いいんだよ。……おやすみなさい)

 

栞の暖かさを感じながら、意識は闇へと落とされる。

 

 

 

 

 

 

意識が落とされた先は、夢だった。ユメではない、夢だった。

そこには、今までの妖夢の顔が、浮かんでは消えていた。

 

怒った顔、悲しんだ顔、楽しい顔、泣いた顔など。

 

彼女の表情だけでなく、その時の状況全体がフラッシュバックする。

彼女の表情は、どれもとても魅力的だった。特に、彼女の笑顔がそうだった。

彼女の笑顔で、何でも頑張ろうと思えた。今だって驚きが混ざったように、俺の成長を喜んでくれる彼女の顔が楽しみで仕方がない。

 

彼女の流す涙を見ると、胸の奥の奥が、きゅっと締め付けられる。

今まで何回か彼女の涙を見たが、全てそうだった。苦しかった。

でも。それでも、彼女の扇情的な表情と妖美な声に、どうしても魅力を感じてしまう。

苦しいはずなのに、わかっているのに。そうやって感じてしまう。

 

心のどこかで、俺の声が聞こえたような気がした。

 

 

 

 

 

――答えなら、もうとっくに出てるんじゃねぇのか?

 

 

 

 

 

朝になった。俺はベッドから出て、食堂へ向かう。

あの夢は何だったのだろうか。しきりに妖夢が出ていた。

 

(おはよう、天。もう大丈夫だよね?)

(あ、ああ……大丈夫だよ。ありがと)

(……? どうしたの? なんか変だね)

 

今の会話で変ってわかるのか!? 中々だぞ……

 

(いや、その、な? 夢で妖夢がめっちゃ出てきた)

(ふぅ~ん……やっぱり好きなんだね。意外と早かったね)

 

栞は嬉々とした声でからかうでもなく、ごく真面目に答える。

 

(でも……まだわからない。今まで恋をしたことがないんだよ)

(そうかい。ま、時間が経てば自然とわかるよ。今は目の前に集中するの)

 

そう、だな。わからないものはわからない。

いつか理解できるようになると信じて待つ。その時を。

 

 

 

朝食を終えて。俺は例の如く庭へ。

そして、『あれ』と霊力刃の応用技の練習。

 

「はぁっ!」

(おぉ~、もう霊力刃の方は大丈夫そうだね。結構難しいやつだから、妖夢も幽々子も驚くと思うよ)

 

さて、霊力刃の方は完成、っと……

俺の努力の能力があってもかなり時間がかかったな……

 

(あとは『あれ』だけだね。あと三ヶ月、がんばろー!)

(おー!)

(うわっ、天ってそんなに子供っぽかったの?)

(ノッてやったんだろ!)

 

修行はその後も続く。

 

 

それから、三ヶ月の月日が経つのはあっという間だった。

 

 

 

 

 

 

 

今日は、最終日の朝。なんの最終日か? それは、この紅魔館で過ごす期間の、だ。

思えば、長かったようであっという間だった。

修行もうまくいき、一年前の俺とは見違えるほどだろう。

 

(……なんか、寂しくなるな)

(そうだね。でも、白玉楼に戻るわけだからね?)

 

白玉楼に戻って、どうしようか。

妖夢と修行して、買い物して、料理して。

幽々子と笑いあって。

三人で、笑いあって。

 

(ホントに、お世話になったよな……)

(うんうん。皆がいなかったら、霊力刃の応用も、『あれ』も完成できなかったしね~)

 

結局、『あれ』は完成した。

恐らく、もう実践で使えるレベルにはなっているだろう。

 

昼になる前には、もうここを発つ。

朝食を食べてすぐに。

 

食堂へ向かいながら、そんなことを考えて。

感謝の気持ちを胸にしながら、食堂の扉を開ける。

 

「もう、貴方との食事もこれで終わりね。何だか寂しいわ」

「俺もだよ、レミリア。一年続いてたんだからなぁ……」

「皆も寂しがってるわ。……準備はもうできてるの?」

「ああ。もう朝食をとったらすぐに出発する」

 

皆がテーブルで寂しそうな顔をする。

そんな顔をされると、嬉しいような悲しいような……

 

「ま、いつか遊びに来るよ」

「ええ。ぜひ来て頂戴。いつでも歓迎するわ」

 

そう言ってもらえると嬉しい。

次にここに来た時には、もっと強くなって皆を驚かせよう。

まさに、今の白玉楼と紅魔館が逆転するように。

 

 

思っていたよりずっと早くに朝食を食べ終わる。

 

「じゃあ、俺は行くよ、レミリア。今までずっと、お世話になりました!」

「ええ、これからもよろしくね。……次会った時のチェスで泣きを見るといいわ!」

 

まだ悔しいか……

俺が飛び立とうとする時、レミリアに引き止められる。

 

「ああ、待って、天……皆!」

 

レミリアの呼びかけで全員が集まって、見送ってくれる。

 

「天お兄ちゃん、また遊ぼうね~!」

「天、また図書館に寄りなさいよ!」

「次は執事でここに来てもいいのよ、天!」

「私は門の前に居ますから、寄ってくださいね!」

「「「「「栞も、じゃあね!」」」」」

 

俺と栞にそれぞれ一言ずつ別れの言葉を告げられる。

あ、やば……俺こういうの弱いんだよ。泣きそうになる。

 

「ああ! 必ず会おう、近いうちに!」

「じゃあね! 皆!」

 

俺と栞も、皆に声をかけて飛び去る。

 

本当に、来てよかった。

 

 

 

 

しばらく飛んで、俺は見慣れた、しかし最近はずっと見ていなかった建物に着く。

俺はその建物を懐かしみながら、玄関に入る。

ただいま~っと。

台所から、料理をしている音が聞こえる。恐らく妖夢だろう。

 

 

……このまま会っても面白くないな。あの日のお返しをしなきゃなぁ……

 

 

ちょうどバレンタインの日、妖夢も同じようなことを考えていたに違いない。

 

忍び足で、妖夢の背後に近づく。

とりあえず……包丁を持ってないことと、火を使っていないことだけ確認して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後ろから彼女を抱き寄せて、両手で彼女の両目を覆う。

そして、こう言う。

 

 

                 「だ~れだ?」

 

 

ビクン、と彼女の体が驚きで震えて、戸惑いの言葉を口にする。

 

「……ぇ? あ、あ、あぁ……その声は、そら、くん……」

「せいか~い!」

 

彼女の体を回して、こちらに向き合わせる。

 

「あぁ……天君、おかえり、なさい……!」

 

 

「ああ! ただいま、妖夢!」

 

俺は、飛びついてきた妖夢を笑顔で受け止めた。




ありがとうございました!
今日はなんだか調子が悪いです。
最後の方とかぐちゃぐちゃになってます。
いつもより低い文才がより露呈しちゃってます。ご了承を。

タイトル通り、帰ってきました!

今回で第3章は終わり、次回からは第4章になります!
次章では、本格的にストーリーを進める予定です。
予定なので、変わるかもしれませんが。
ではでは!

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