シリアスは今までに何回か書いてきましたが……下手ですね~。
日常編との両立が中々……
今回は始まってすぐにシリアスです。
出来には目を瞑ってください。
では、本編どうぞ!
特訓が始まった日の真夜中。
といっても、レミリアとの模擬戦を終えて部屋に戻った直後だ。
俺は、『攻撃』することを軽く見すぎていたのかもしれない。
いや、『かも』じゃなく、そうだったのだ。
今まで、誰かに凶器となる刀を向けたことがなかった。
だから。だから、こんな思いを抱えているのか。
“
相手を傷つける。それは、とても無責任なことだ。故に、恐ろしい。
他人を痛めつけることに。命すらも奪ってしまえることに。
その
はたして俺は、それに耐えられるのか? 殺傷の覚悟があるのか?
そこまで考えが巡り、雷光のように頭にさっきの光景が甦る。
レミリアの腕から吹き出す鮮血。
服にまで染み渡るそれが、痛みの象徴。
そして、俺がやったのだ、というかなりの重圧。
俺は気付いたら、手が震えていた。
手だけじゃない。体も小刻みに震えている。
ドクン、ドクン、という心音が頭に響くほど大きく。
息も乱れ始め、呼吸もままならない。
怖い、恐い、こわい、コワイ。
殺す。
この言葉にはどれだけの覚悟があるのだろうか。責任があるのだろうか。
言うのは簡単だ。じゃあ、本気でやってみろと言われたら?
――できない、できるはずがない。
このことは、責任の無自覚の現れ。無責任の現れ。
そして、それらを本当に自覚した時、俺たち人間はどうなるのだろうか?
それはわからない。人それぞれだろう。
――俺のように、殺傷に怯えることだって。
(……天? ねぇ、大丈夫? どうしたの?)
(こわ、いんだ……俺が、人を傷付けられるという事実が……)
(そう、だね。命は重い。だからこそ、そう思えることがとても大切なんだと思うよ)
どういう、ことだろうか……?
栞の心配の言葉に付随したのは、『大切』という言葉。
俺には理解できない。わからない。
その思いが、理不尽な戸惑いと怒りに変換される。
(大切、って……何でだよ? いっその事殺しなんてあっさりやれた方がいいだろ!? こんなに悩まされて、苦しめられるんだからさぁ! どうしてなんだよ!?)
栞に叫びついた俺の心と声は震えていて。
同時に――ひどく惨めで、痛々しかった。
(あのね、よく聞いて欲しい。天には、殺しを平気でやってしまえる人間にはなってほしくないの)
(俺はそうとは思わない! いっそ自分のことも平気で殺せるくらいに――)
(何言ってるの、天! バカな事は言わないでよ!? 自分を殺す!? ふざけないで!)
栞の明確な怒りが声に表れる。
(私は殺しを平気でする人間を見たことがある! そいつはもう、人なんかじゃなかった! ただ、人の形をした化け物だった! 人の道を外れてた! 天には、そうなってほしくない!)
(別にいいだろ、どうだって!? 栞には関係ない! 俺が決めることだ、俺の命なんだよ! 俺がどうなろうといいだろ!?)
(どうでも良くないからこう言ってるの! まだわからないの!? 天が死んで、どれだけの人が苦しむと思ってるの!?)
(知らねぇよ!)
言葉ではそう言っているが。
俺は今まで出会った皆の悲しみの顔が目に浮かんだ。
特に――妖夢の泣き顔が。
ひどく痛々しく、絶望に満ち溢れた顔が。
(……天。少なくとも、私は天に死んでほしくない)
(そうかよ!? だったら何だって言うんだよ!?)
(人の道を外れてほしくない。それは、自分や他人を殺す苦しみよりも大きい苦しみを味わうことになるから)
(より大きい、苦しみ……?)
少しづつ落ち着きを取り戻す俺の声。
(うん、それは人それぞれで変わる。けど、苦しむことに変わりはないの)
(そう、なのか?)
(そう。それが恐いところ。だから、まだ殺傷が怖いと思える人間の内に、その苦しみを受け入れて、乗り越えないといけない)
(どうやってやるんだよ……俺には、そんなことはできない。今でさえこれだけ苦しいんだ)
(……ねぇ天、天は、何でここにいるの?)
……どういう、ことだろうか。
(どうして、この幻想郷に来たの? 帰ってもよかったんじゃない?)
(それは、外の世界も影響があるからで……)
(
(どういう、意味だよ……?)
(天のさっきの言葉には、『仕方なく』残ってる感じがするんだよ。……もう一度言うよ。本当に、そうなの?)
俺はどうしてここに居続けるんだ……?
自分でも、わからなかった。
ここは外よりも居心地が良い。だが、それだけで外の生活を捨てるのか?
答えは――否。
他に理由がある。何だ、何なんだ。
(天、難しく考える必要はないんだよ。思ったことをそのままでいいんだよ?)
思ったことを、そのまま……
ああ、なんだ……こんなに単純で、簡単で、大切で。かけがえのない理由だったのか。
(栞、わかったよ。俺がここに残ってる理由。それは――
――強くなって、この幻想郷を守るためなんだ)
(やっと気付いたかい、天。それに気付ければ、もう十分じゃないのかい?)
(……そうだな。守りたい。そのために、こんなことで悩んでいられない。俺はそれを超える。そして、守る強さを手に入れる)
(じゃあ、ここでは死ねないね)
(仰る通りで。……それで、改めて頼みたいことが――)
(誰に、何を頼むの? しっかりと示してね?)
(栞に頼みたいんだ。……これから、俺が迷った時には力を貸してくれ)
(愚問だねぇ。言われなくとも。あの時支え合うって約束したでしょ?)
(……そうだったな。よろしく頼むよ)
(私も支えてもらうんだからね? ……よろしく、天)
これからも頼ることにしようか。
栞が大切なことを見つけさせてくれた。
幻想郷のために、戦っていく。
俺はそう決意した。
しかし。どこからか声が聞こえる。聞こえてしまう。
――守る? できっこねぇのになあ?
俺が栞に元気づけられた後、すぐに眠りに入った。
だが。またしても、あのユメ。
――俺には守るなんて力、ねぇよ
そうだ。だから、今から鍛える。
――鍛えても無駄だ。オレを出せ。すぐに終わらせられるからな。
オレを前に出す予定は無い。大体オレは何なんだ?
――そう、だな。俺が『正』なら、オレは『負』。俺が『表』なら、オレが『裏』。それ以上でも、以下でもねぇよ。
オレが何であろうと、俺の考えを曲げることはない。もう話は終わりだ。
そう言って、俺はユメから抜け出す。
オレが何なのか、正体が何なのかはどうでもいいし、興味もない。
知ったところで、何もならない。
短めのユメから覚めた。
ここのところ、オレとのユメばかり見て、他の夢は見ていない。
どうということはないはずなのだが……不快感がひどい。
オレを見て、思い浮かべるだけで吐き気がしてくる。
(おはよ、天)
(ああ、おはよう。今日も頑張るか~)
(そだね~)
素っ気ない、やる気のない会話は、脳内で響き渡る。
こうも中身のない会話をしたのは、何故だろうか。
―*―*―*―*―*―*―
計画は順調に進行中。
俺のいる部屋の中に女が一人入る。
「失礼します!」
「……例の計画の進行はどうだ?」
「はい、
「しかし、何だ?」
「一人。外来人が幻想入りしたそうで。何でも、私達の幻獣侵攻の計画を阻もうとしているとか」
「構わん、たった一人増えたところで何になるという?」
「いえ、ですが……あの栞を中に入れている、とのことで」
「……そうか。わかった、そいつは要注意人物として計画を進めろ」
「はい、不知火様」
「それで……その外来人の名は?」
「はい、新藤 天というようです」
「新藤 天、か……わかった。何か変化があったら俺に報告しろ。特に、その新藤とかいう外来人の情報は絶対に逃すな」
「はっ! かしこまりました。では、失礼します!」
部屋を出た。
そして、俺が一人になって。呟く。
「新藤、天。貴様は、俺たち、『アイデアライズ』には勝てねぇよ……」
―*―*―*―*―*―*―
食堂へ行って朝食をとりおわった俺は、図書館へ向かっていた。
長い廊下を進み、図書館前の扉に着く。
てか一日で扉直したのか……多分咲夜だな。
ん……? 何か騒がしくないか?
俺は扉を開けて、中の様子を見る。
「お~いパチュリー、どうs――ぐはぁあっ!」
「あぁ!? 天、大丈夫かよ!?」
扉を開けた途端、箒に乗って飛んできた魔理沙に追突された。
箒は思い切り俺の腹部にめり込み、とてつもない痛みに襲われる。
「魔理沙! 待ちなさい!」
「あ、やっべ……ごめんな、天。ちょっと急いでるから、またな!」
そう言って、昨日と同じように低空飛行で飛び去ってゆく。
「うあぁ……ま、まり、がはっ……」
「ちょっと天、どうしたの?」
パチュリーが心配そうに駆け寄って来る。
「あ、ああ……魔理沙に、衝突した……」
「大丈夫なの?」
「もう、大丈夫。今日は図書館に本を読みに来たんだよ」
「そうなの。じゃあ入って頂戴」
パチュリーに促されて、俺とパチュリーは図書館へ入る。
本を読みに来た、といったが、何か霊力関係の本を読んで勉強したい。
それも、霊力強化じゃなく、弾幕の本を。
「パチュリー、霊力の……弾幕の打ち方が書いてある本はないか?」
「あるけど……貴方は霊力刃、とか言う霊力を圧縮させたものを放ったんでしょ? レミィ――レミリアから聞いたわ」
「そうか。それで、霊力刃がどうした?」
「それよ。それは弾幕の一種とも分類できるわ。その霊力刃を手から球体や針とかの形にして出せばいい」
「あれって弾幕なのか? そう何度も出せないぞ?」
「刀でやろうとするからよ。飛ばそうとする度に刀を構えなきゃいけない。その点、手から出せば比較的すぐに出せるし、一度に複数の弾や短い間隔で弾を出せるの」
そういうものなのか。
手から、ねぇ……
「どんな感覚でやればいい?」
「同じでいいわ。強いて言えば、弾幕の形になるように霊力を圧縮するの」
「了解、ありがとう。早速庭に練習に行くよ!」
俺は図書館を飛び出す。
「あ、ちょっと天……全く、騒がしいわね」
俺はそのままの速度で庭に向かう。
っと、その前に神憑も一応持ってくか……
一旦自分の部屋に戻り、神憑を取って庭へ。
今度からここがいつもの練習の場所になりそうだ。
(さて、弾幕をやってみたいのだが、どうすればいい?)
(パチュリーの話聞いてた? そのままよ、そのまま)
栞に若干呆れられる。
いや、刀から出すのと手から出すのは違うじゃん?
(……言われた通りやってみるよ)
(そうそう。何事も経験だよ)
まぁ、一理あるな。
頑張って勉強してるとして、覚える『インプット』のみを繰り返すよりも、
テストの『アウトプット』を少しでも代わりに入れた方が効率が上がるしな。
結構インプットのみを繰り返す人は多いよね。
やっぱりテストで自分の覚えてないとこを確認しないとね。
さて……まずは球体からやってみるかな。一番メジャーそうだし。
俺は球体を意識して、鋭くない霊力刃を飛ばす感覚で弾幕に挑戦。
右腕を前に伸ばして、手の平に霊力を集める。
すると、やはりと言うべきか、白色の球体が五個、手の平から出た。
おお……! 若干の感動がこみ上げ――
(……あ~あ。どうして天はこんなに霊力の扱いが下手なの?)
――こみ上げて来たが、儚く打ち砕かれる。
え、下手だったかな……?
(俺って言うほど下手?)
(うん。慣れればむしろ上手なんだけど、一番最初にやるのはセンスの欠片も感じないね)
(そこまで言うかよ!? 俺だって傷付くぞ!?)
(いや、相当だよ? 飛行だって、霊力刃だって、霊力強化だって。全部全部ぜ~んぶ、効率が悪すぎるか、そもそものやり方がおかしい)
(凹むぞおい!)
(大丈夫だって。私が教えるから。あのね、もう少し流れるように打つの)
(どういうことだ?)
(そのまんまの意味。連続で小さいのをパパパ~って出す感じ)
(ふむ、なるほどわからん)
擬音語で言われても……
こっちは全くできないんだから抽象的に言われてもなおのことわからない。
(要するに、弾幕一発にかかる霊力を最小限にするの。で、削減できた分の霊力で別の弾にして打ち出す。これを意識して同じくらいの霊力でやってごらん?)
俺は栞のアドバイスを意識して、先程と同じくらいの霊力で、多くの弾幕を作るようにする。
すると、さっきは五個だった弾幕が、倍の十個に増えていた。
俺、霊力の無駄が多すぎるだろ……半分要らなかったじゃん。
(こんな感じ?)
(う~ん、どうしてかなぁ……その霊力量だったら二十は下らないはずなんだけどな……慣れてないだけ?)
(俺にセンスがないんだろ)
(そうだね。うん、そうだ)
(おい俺の謙虚さをそのままとるな。自虐ネタとかじゃないからな)
(ごめんごめん。もう少し練習したら数も増えるはずだよ。それか、球体の弾幕が苦手なのかな? 他の試してみる?)
(そうするよ。じゃあ……針の形でいこうかな)
(おっけ~。さっきの霊力だと、二十打てれば良い方なんじゃないの?)
目標は二十。それに届くまで、とは言わない。
せめて近い数出せればいいのだが……!
針の形となって真っ直ぐに素早く飛んで行く弾幕の数は――二十五。
どうやら、早くもコツを掴んでしまったみたいだ。
(あ、あれぇ~……もうコツ掴んじゃった?)
(そうみたいだな。やはり才能はあったんだ)
(才能あるなら最初からできてるよ。努力の能力でしょ。強くなりたい、って思いが弾幕への慣れを早めたんでしょ)
(そんな辛辣なコメントよりも褒めて欲しいな~)
(はいはい、おめでとう、よくやったよくやったっと……)
あのさぁ……俺の扱いなんか雑じゃない?
―*―*―*―*―*―*―
結界は徐々に破壊しつつある。
幻獣を一部に限って放出するとすれば……
破壊した後は、――の持つ――の能力で幻獣を操るだけ。
そこまで来れば、もう計画は完遂したも同然。
そうして、この幻想郷を――
――“理想郷”に、創り変える。
ありがとうございました!
とうとう敵が書かれました。やっとです。
不知火とあと二人。それと、幻獣を操る能力持ちがいることがわかりました。
これからは戦闘シーンが多めになっていきます!
お楽しみにしていただければ……!
ではでは!