東方魂恋録   作:狼々

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どうも、狼々です!
今回は、少しだけ戦闘のシーンを入れました!
あまりシーンが想像ができないくらい下手なんですが、ご了承ください。
では、本編どうぞ!


第26話 スペルカード/模擬戦 VSレミリア

今、俺は部屋のベッドの上に座ってぼーっとしている。

いや、考え事をしている。

 

――この喪失感は何だ?

 

ずっとこのことばかりを考えている。が、一向に答えを見出だせない。

何とも形容し難い思いだ。

 

この喪失感の正体は何なのか。

なぜ俺はこうなっているのか。

どうして今のタイミングなのか。

 

あらかたの見当はつくはずだ。なのに、それを形にできない。

俺は咲夜が夕食が出来たと呼びに来るまで、この喪失感に苛まれていた。

 

 

夕食も食べ終わり、することが本格的になくなった。

どうしようか……

と、考えているが、夜の練習しか思い浮かばなかった。

 

神憑を取って、庭に出る。庭は、月明かりに照らされている。

今は霊力刃の応用の新技を練習中。ま、新技って言っても旧技があるわけじゃないが。

 

(ねぇ、スペルカードの練習すれば?)

(いや絶対屋敷に被害出るだろ。俺にはそんな勇気はないぞ)

(じゃあ、被害でないようにすれば?)

(そんなのできないだろ。……水の能力って状態変化はできるのか?)

(どしたの? 急に)

(水を氷とか水蒸気にできんのかな、ってふと疑問に思ったんだよ)

(できるよ~。水を司るわけだしね。ただ、状態変化の時に霊力を余分に使うけどね)

 

結構便利なんじゃないか?

今は夏に入ろうとしているが、氷とか作ったら気持ちよさそう。

あ……

 

(水……いや、氷のスペカ思いついた。)

(ホント? どんなの?)

(――――ってやつだ。取り敢えず、部屋に戻る。んで、スペカの御札に書いて、ここに戻ってきて試してみよう)

(おっけー。レッツゴー!)

 

……あれ? 今まで意識してなかったが、栞って何で外来語を使えるんだ?

――ま、いっか……

 

 

 

部屋に戻り、水最初のスペルカードを書き記し、庭に戻ってきた。

意表を突くことには長けてるスペルカードだと思うが……

 

(んじゃ、やってみるぞ?)

(うん! 何気に天のスペルカード発動は初めて見るからね、結構楽しみだよ)

(俺もスペカ発動は初めてなんだよ。……じゃ、いくぜ?)

 

俺は神憑を抜刀し、声高らかにスペルカードの名前を宣言する。

そして、地面に神憑を突き刺して――!

 

 

 

 

 

「氷結符『寒煙迷離(かんえんめいり)の氷国』!」

 

 

 

 

 

瞬間。

 

ピキィィィイイイン!

 

と、甲高い音を立てて、辺り一面が氷漬けになる。

氷から出る冷気はまさに、寒煙だと言える。

……あ、これ強いわ。かっこいいし、サイコーじゃん!

 

(へ~……これは驚いた。けど……実践で霊力足りるの?)

(いや、このままだと無理だな。だから、霊力限界を上げるのと一緒に霊力量を増やす。いざとなれば、栞の霊力量を借りるよ)

(でも、ちょっとタイミングを選ぶよね。それ。神憑から凍らせてるでしょ?)

 

そう、俺は神憑で霊力を伝わらせて水を瞬間に凍らせている。

素早く凍らせなければ意表を突くことはできない。かといって、一気に霊力を流して凍らせれば爆発する。

なので、霊力を一旦神憑を経由させて凍らせている。

霊力の多くはそのまま神憑に流れるので、腕が爆発することもない、というわけだ。

 

だが、そうすると、空中にいる時は問答無用で使えないし、相手に隙がある時にしか使えない。

 

(霊力を渡すのはいいけど――あ、咲夜が来た)

 

「ちょっと、どうしたの!?」

 

咲夜が驚きを隠さない表情でこちらにやってくる。

 

「……これ、どうしたの?」

「あ、いや、その――」

「……はぁ、どうせ天がやったんでしょ? すぐに直して頂戴。それよりも、どうして氷?」

「スペルカードが思いついたから試してたんだよ。栞、これどうやって直す?」

「イメージで元に戻せない?」

「あ、なるほど」

 

俺はイメージで氷のない状態に庭を戻す。刀も納刀する。

危ない……元に戻せなかったら咲夜から怒られてたな。

発動後を考えないでスペルカード使ったのもどうかと思うが。

 

「それで、この遅くに何してたのよ?」

「あ……っと、ちょっと、ね?」

 

 

「皆で内緒に練習してたんでしょ?」

 

 

咲夜でも、俺でも、栞でもない声が庭に響く。

声の元にいたのは、レミリアだった。

 

「いや、まあそうなんだけどさ……」

「貴方、それが理由で白玉楼を出たんでしょう? 私にはわかるわよ?」

「うぐ……はい、そう……です。いい機会だから、一年出て修行して妖夢と幽々子を驚かせろ、って言われたからな」

「じゃ、言われたから一人でやっていいのね? これでまた貴方が倒れたら二人はどう思うかしら?」

「……で、でも――」

「でも――なに?」

 

レミリアの鋭い目線。真っ直ぐで、誠実さに溢れるだろう目線。

それからは、俺への心配がひしひしと現れていた。

 

「ねぇ咲夜、天の監視が必要だとは思わない?」

「ぁっ……その通りでございます、お嬢様。またこのような事態にならないとも限りませんので」

「じゃ、誰かが監視役になってやらないとね?」

「い、いや俺は別に――」

「――要るわよね?」

「はい要ります。それはもう」

「じゃあ、私が天の練習を見るわ。時々ね」

「でもさ、それだとレミリアは――」

「いいのよ。チェスでは散々負かされたんだもの。戦闘ぐらいは勝ちたいものよ」

 

まだ根に持ってたのか……だがまあ、相手がいるのはありがたい。

俺は今までに一回も戦闘を行ったことがない。

実践の練習も兼ねてくれるらしいので、素直に嬉しい。この機会は活かすのが得策だろう。

 

「ありがとう、レミリア。俺も相手がいてくれて嬉しいよ」

「私は時々しか参加しないわ。咲夜とかパチェにちゅう――美鈴とフラン。全員に手伝ってもらうわ」

「さすがに全員に迷惑をかけるわけにもいかないよ。時々レミリアが来てくれるだけでも十分過ぎる」

「じゃあ全員に聞いてみましょう。本人がいいと言うなら断る理由もないでしょう?」

「そりゃそうだけど、俺のためにそこまでしなくてもいいだろ」

「貴方、少し悲観的過ぎるわよ。自分はいい、そこまでしなくてもいい、じゃあいつまでも強くはなれない。身体でも、精神でも」

「……そうか。じゃあお言葉に甘えさせて頂くとするよ」

「じゃあ早速実践よ。刀を使っていいから、かかってきなさい。どうせなら、本気で当てるつもりで。当たらないでしょうから、問題はないわ。さっきのスペルカードも使ってどうぞ?」

 

レミリアが余裕綽々な表情と態度で言う。

ほう……言ってくれるじゃないか。

俺だって一ヶ月怠けて練習していた訳じゃない。むしろ頑張ってた方だと思う。

少しは目に物見せてやるよ……!

 

「わかったよ。当てないから寸止めな? そうじゃないと万が一当たったらレミリアが怪我する」

「大丈夫よ。私は吸血鬼だから傷はすぐ塞がるし、万が一にも当たらないから。御託を並べてないでさっさと来たらどう?」

「じゃ、遠慮なく。……栞、頑張るよ」

「おっけー! 頑張ってね!」

「ああ! ――妖刀、神憑!」

 

俺は神憑を引き抜く。

シャリリィィイン!

神憑は、月明かりを反射させて、夜空で輝いている。

 

「あら、中々いい刀じゃない。じゃあ私も……神槍『スピア・ザ・グングニル』」

 

瞬間、レミリアの手に細い『何か』がシュッ、と生成される。

 

「来ないならこっちから、いくわ……よ!」

 

そして、レミリアが若干のタメを入れた後、『何か』が高速で迫ってくる。

それはまるで、鋭利な『槍』のようだ。

その槍は、俺の胸部へ瞬時に距離を詰めて襲い掛かってくる。

 

驚きながらも、ほぼ反射的に神憑をぶつけて勢いを相殺する。

 

キャィィィイイイイイイン!

 

刀と槍の甲高い接触音が、俺の耳をつんざく。

妖力でできていたらしい槍は、相殺した後、すぐに霧散した。

いきなりの出来事にしては対応できた方じゃないか?

だが……

 

「おい、胸は心臓あるだろ、アブねぇよ! レミリアが死ななくても俺が死ぬ!」

「パチェに何とかしてもらうわ。それなら問題ないで……しょ!」

 

そう言いながら、レミリアは二本目の槍を飛ばす。

今度は頭部に。同じように神憑で弾く。

明らかに狙ってるだろ……もし弾けなかったらどうするつもりなのだろうか。

 

「あっぶねええ! 怖えよ、怖えよ……」

「もう怯えているの? 私はあのチェスの恨みはここで晴らすわ。貴方の敗因は、私をチェスで負かしたことよ!」

「恨んでるみたいになってるじゃないかよ! 八つ当たりか? 俺だってこのまま負けるわけにはいかないぞ!」

「あらそうなの? てっきり私は逃げ続けるだけかと思ったわ。私も次のスペルカードを使うわ」

 

レミリアの槍の応酬が止む。あれはレミリアのスペルカードなのか。

応酬、といっても二回だけなのだが、恐怖は十分にあった。

 

「貴方、弾幕を見るのは初めてかしら?」

「ああ、そうだよ」

「じゃあ一つだけ。飛ばないと話にならないわよ?」

「じゃ、そうさせてもらうよ……っと」

 

俺は浮遊を始める。弾幕という言葉だけ聞いたことがあるが、実際に見るのは初。

緊張と興奮が体を覆う。

 

「せめてもの情けに、簡単な方の弾幕にしてあげるわ。――これが弾幕よ!」

 

そう言って、レミリアはスペルカードを宣言。

 

「天罰『スターオブダビデ』」

 

スターオブダビデ。日本語訳だと『ダビデの星』。

それは、ユダヤ教やその民族を象徴するシンボルマーク……だったか?

いわゆる『六芒星』、というヤツだ。

となると、弾幕も六芒星にちなんでるのか?

 

 

 

 

そんなことを思って、俺はすぐに考えを改めた。

巨大な赤の球が無数に浮かび、そこから赤のレーザーが放たれている。

それと同時に、一回り小さな青い球が、赤の球一つにつき五つ放たれている。

星、なんて甘いものじゃない。

 

「あ、あれ、これは……無理だわ」

「ちょっと、しっかりして! 危ないでしょ! 神憑で切って相殺して! その刀に大量の霊力を流して、早く!」

 

栞の怒号に似た指示を受け、俺は神憑に霊力を送り、白の霊力を纏わせる。

月の光を反射して輝いていた神憑は、霊力で自ら白に光りだす。

そして、俺は飛んでくる青の球を神憑で弾き続ける。

これなら何とか耐えられそうだ。

 

「へぇ……中々刀も扱えてるじゃない。向こうで練習してたの?」

「ああ。妖夢から直々に教わってたからな」

「そう、妖夢から……」

「俺の師匠に追いつきたくてこの一年頑張るんだよ」

「じゃ、取り敢えず私に一発でも何か当てることね」

「そうさせてもらう……よ!」

 

俺は避けて、弾き続けたレミリアの弾幕を、間を縫うようにレミリアに急接近を始める。

咄嗟の出来事には弱いんだろ……!?

 

「なっ……あなた、何して――!」

「はあぁぁぁあ!」

 

レミリアの前まで来た俺は、右から左へと神憑を薙ぐ。

が、レミリアに当たるはずもなく。レミリアは神憑を振るった先へ避ける。

つまり、左へ避けた。勿論、俺の刀が届かないように下がって。

そして、神憑を振った俺には、大きな隙ができた。

当然、レミリアもそれを逃そうとするはずもなく。

 

もう一度レミリアは槍を投げ飛ばして、俺を貫こうとタメを作る。

もう後1、2秒後には槍が俺を貫くだろう。

絶対的な窮地。レミリアも、咲夜もそう思う。

 

だが、俺にはそうは思わない。むしろ、逆。()()()()()()()だと確信する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つまるところ、()()()()()()()()()()()()のだ。

そこを突けばいい。今の俺の体制は右から左へ刀を振った後。

レミリアは俺の刀の薙いだ先に。

このモーションとレミリアはの位置から速攻・急襲ができる攻撃手段はただ一つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだ終わっちゃいないぜ?」

「なぁっ!……ぐわぁっ……!?」

 

 

レミリアの腕に、斬れた後が入り、そこから鮮血が吹き出す。

白のレースの服が彼女の鮮血で真っ赤に染まる。

これこそ、『スカーレット(深紅)』と言うべきか。

……大丈夫か? いくら腕に当てたとはいえ、出血しているんだ。

 

「おい、レミリア! 大丈夫か!?」

「え、ええ……大丈夫。すぐに傷は治るから。……咲夜、あまり天を悪く見ないで頂戴ね? 私が当てていいと言ったのだから。それに、天は私の腕に当てた。急所は避けてくれたのよ」

「……わかりました、お嬢様」

「……すまない、レミリア。急所を避けたとはいえ、傷つけたことには変わりはない。どんな報復も受け入れよう」

「報復だなんて言わないで。貴方は私に勝負で勝ったのよ。報復も何もないわ」

「あれは『勝った』に入るのか? 一撃当てただけだぞ?」

「貴方、戦闘経験はどのくらい?」

「修行だけなら一ヶ月。戦闘になったら今のが初だ」

「え、初めて!? ――なら尚のこと貴方の勝ちよ。大勝利。初戦闘で弾幕を避けて前に進んで、攻撃を当てた。出来すぎなくらいよ」

「……ありがとう。俺もそう言ってもらえて嬉しいよ」

 

まさか褒めてもらえるとは思ってなかった。

自信がなかったこともあるが、嫌われるかと思ったからが一番大きい。

自分を傷つけた相手は、普通嫌に思われるから。

 

……俺は、しみじみと嫌われることに対して敏感で、怯えていることを感じた。

 

「……で、さっきの攻撃は何? 私は貴方の刀のリーチじゃ届かないところまで下がってた。攻撃は当たるはずがない。けど、あの傷の入り方は刀のものよ」

 

 

 

「ああ、それか。()()()だよ。霊力を刀に纏わせたやつをさらに圧縮して飛ばしたんだ」

 

 

この霊力刃なら、刀を振りかぶると同時に二回目の攻撃ができる。

たとえ神憑のリーチが届かなくても、飛ばす斬撃の霊力刃なら関係ない。

速度もまあまあ速い方だ。なので、神憑の斬撃を避けるくらいの間合いなら、回避はおろか、相殺も反応もできない。

 

「面白いわね……それも妖夢から教わったの?」

「ああ。今のところだが、彼女に教わった最後の技だ。けど、これを最後にする気は毛頭ない」

「そうね。貴方はまだまだ強くなれる。私達が天を全力で鍛える。支えるわ。だから、妖夢を驚かせましょう?」

「ああ。絶対にそうする。妖夢との実践が来たら呼ぶからさ、皆で見に来てくれよ」

「当たり前じゃない。言われなくても行くわ。幽々子も驚かせるんでしょ? ……これからが楽しみね」

「そうだな。……よろしく頼むよ」

「ええ。こちらこそ」

 

 

 

この日から、紅魔館の皆との特訓が始まった――

 




ありがとうございました!
レミリアが幽々子や妖夢と面識があるのかどうかがわかりませんでした。
この作品では、知り合いくらいの間柄、ということにさせてください。
ではでは!

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