東方魂恋録   作:狼々

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どうも、狼々です!
前回、フランちゃんの容姿について説明をし忘れていたので、今回書きました。
恐らく、要らないという方が多いでしょうが、一応。
大丈夫です。文字数稼ぎではありませんよ。
ちゃんと全体の長さをのばしてます、はい。
では、どうぞ!


第24話 待ってて欲しい

ポーカーをしている最中のこと。

俺はフランの容姿を不思議に思っていた。

 

黄色のサイドテールとそれに被さるレミリアと同じような、白のナイトキャップ。

巻きスカート、と呼ばれるスカートと半袖の服。どちらも赤を基調としていて、所々に白もある。

身長や外見年齢はレミリアと同じくらい。なのだが……

 

「フランちゃん、フランちゃんはレミリアの妹なんだろ?」

「そうだよ~」

「じゃあさ、その羽ってどうなんだ? 姉の方は蝙蝠だったろ?」

 

フランちゃんの羽。それは、どの生き物に似ている、とは形容し難いものだ。

木の枝に七色の結晶を付けたような翼。

その結晶は、ミョウバンの結晶の形と似た、正八面体に似ている形をしている。

 

「ん~、何でだろうね? 私は綺麗だからこっちの方が好きかな?」

「ま、綺麗は綺麗だな」

「あはは、ありがと」

「……で、この部屋についてと、レミリアとの約束について聞きたいことがあるんだが、大丈夫か?」

「うん。私ね、ちょっと気が触れちゃってるのよ。あと、あんまり外に出たくないから地下室に入ってるの」

 

この容姿の年齢でもう引きこもり発言。

まぁ実際、500年近く生きてるらしいが。

気が触れてる、か……

 

「……悪いこと聞いたな。ごめん」

「謝らなくてもいいの。最近は館内を少し歩くくらいになったしね。それで、お姉様との約束は……私の能力に関して」

 

やっぱフランちゃんも持ってるのか。

となると、『壊す』……破壊系か?

 

「私の能力は、『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』なの。名前の通り、何でも壊せる」

 

なんというデストロイ。幻獣もそれで全部木っ端微塵にできそうじゃね?

 

「あ、ちなみに、幻獣は不確定な存在で、厳密に『物』じゃないから壊せない。実体がなきゃいけないのよ」

 

そうでしたか。フランちゃんが知ってるってことは、対幻獣メンバーの一人か。

そりゃそうだよな。咲夜、レミリアと知ってるんだからな

 

「それで、さっきも言った通り、良くなったとはいえ、気が触れちゃってる。だから、私が天お兄ちゃんを『壊しちゃう』ことになるかもしれないから」

「お、俺って結構生命の危機に瀕していたんだな……」

「で、でも! 私は天お兄ちゃんを壊したくない!」

「はは、ありがとうな、嬉しいよ。で、その能力ってどんな感じに発動するんだ?」

「えっと……こんな感じだよ」

 

そう言ってフランちゃんが手をグーに握った。

瞬間、部屋の中に置いてあったテーブルランプが粉々になって砕けた。

 

「……え、すご。俺がこれくらったらどうなんだろ」

「いや、だから私は……壊したく、ない」

「あ、ああ、ごめんねフランちゃん。そんなに悲しそうな表情をしないで、ね?」

「うん、わかった……続き、しよっか」

「ああ、次は俺が勝つぞ!」

 

そうして、ポーカーを二十回分程やったが、俺が本体のフランに勝てたのは、たったの五回だった。

つまり、残り十五回は全部、全部負けているわけで。

……いくら運勝負だからって弱すぎだろ、俺……

 

―*―*―*―*―*―*―

 

時は少し遡る。

場所も変わって。

 

私は起きて、準備を終えて朝食を作りに台所へ行く。

……が。料理をしている彼の姿はなかった。

今まであったのに。それが日常の一風景だったのに。それが欠けた。欠けてしまっていた。

 

……まだ起きてないのかな? 今日は天君は、白玉楼を出発しないといけないのに。

何が理由かはわからない。けれど、天君がそれを受け入れていた。

理由なんて、この際どうでもいい。聞いても、わかっても、どうにもならないんだから。

天君がここを離れることを、すんなりと受け入れられないことに、変わりはないんだから。

 

私はそう思って天君の部屋に行く。

そして、障子を開けて呼びかけた。

 

「天く~ん、朝ですよ~。準備も――あ、あれ?」

 

天君が、いない。

どこにも、いない。

それに、いつもの場所に置いてあった神憑もない。

全身が固まる。

 

 

……もう、行ってしまったのか? 別れも言わない、で……?

 

 

私は走って館の中を探す。

……が、どこにも見当たらない。

そして、台所へ戻ってきてしまった。

戻ってきた時に、彼の料理をする姿が見られるのではないかと期待して、来てしまった。

 

――だけれど、台所にもいない。

 

悲しくなった。別れくらい、言ってくれてもいいのに。

そう思って、泣きそうになった。泣き出す直前に、紙が一枚置いてあるのを見つけた。

これは……天君の……手紙?

私は手紙の内容を読んだ。

 

 

 

妖夢へ

 

俺はもう色々と準備し終わったから、少し早いけど出発するよ。

 

あと、朝食はもう作って幽々子の部屋に置いてある。

 

幽々子は起こしてないと思うから、起こしといてくれ。

 

あと、修行は妖夢がいなくてもきっちりやっとくよ。

 

大丈夫。無理はしないつもりだからさ。倒れない程度に、な?

 

別れの言葉もなしに急にいなくなってごめん。悪いとは思っている。

 

幽々子にはそう言っておいてくれ。

 

けどさ、見送られると悲しくなるからさ。静かに出ていくことにしたよ。

 

ま、一年だし、そんなに長くないから。すぐに戻ってくるよ。

 

戻ってきたら、今まで通りに接してくれよな? 急に仰々しくなったら、それこそ泣いてしまう。

 

あ、それと、昨日は酷い言葉を言ってごめんな。直接謝れなくて申し訳ない。

 

絶対、妖夢が驚くほど強くなって。一年後に戻ってきて、姿を見せると約束するよ。

 

だから、さ? 待ってて欲しいんだ。他でもない妖夢に、一番な。

 

                  いつか妖夢に追いついて、隣に立っていたい天より

 

 

 

私は、その手紙の内容を見て、一人呟いた。

 

「私だって、抜かれるわけにはいきませんよ……?」

 

天君の残してくれた手紙に、一つ、また一つと。

紙にシミがついていった。

 

―*―*―*―*―*―*―

 

時と場所は戻り。

 

俺とフランちゃんがポーカーで遊んでいた時。

――結局俺は、本体のフランちゃんには殆ど勝てなかったが――

 

地下室の扉が開いた。

俺とフランちゃんが一斉に扉の方を向く。

 

「天、迎えに来てあげたわよ。……ふふ、フランとは仲良くなれたみたいね。よかったわ」

「ああ。……じゃ、俺は行くよ」

「あ……また、遊んでくれる……?」

 

フランちゃんが俺の服の裾を掴みながら言い寄ってくる。

ま、まずい……こうやって寂しそうに期待して言い寄られるとなぁ……

 

「また遊びに来るよ。約束だ」

「……うん、わかった。天お兄ちゃんの約束なら大丈夫だと思う。絶対に遊びに来てね……?」

「勿論。俺から遊んでもらいたいくらいだよ。……よし、行こうか、レミリア、咲夜」

 

俺は地下室を後にした。

近いうちに寄るとするか……

 

 

 

時刻は昼に。そろそろ昼食の時間だ。

移動中にレミリアから声がかかる。

 

「挨拶はこれで終わり。中国――美鈴の挨拶はもう済んでるようだからね。貴方を呼びに来たのは、昼食が出来上がったからよ」

 

ちゅ、中国って……まぁ確かに中国の服に似てるけどさ……

あまりにもそれは不憫(ふびん)だろ……せめて俺は名前で呼ぶことにしよう。

 

「やっぱり、咲夜が作ってるのか?」

「ええ、そうよ。咲夜の料理は驚くほど美味しいのよ!」

「ありがとうございます。お褒めに(あずか)り光栄です」

 

レミリアが絶賛するほどだ。

つい期待してしまう。

 

食堂について、大テーブルが見える。パチュリーと美鈴ももう来ていた。

フランちゃんはもう少し後で来るそうだ。

俺とレミリアは椅子に座って、咲夜が料理を運んで来るのを待っていた。

手伝おうとしたが、お客として招いているわけだから、そういうわけにもいかない、とのこと。

そうなると、俺はここで一年間『お客』をやることになるのだが……

さすがに一年任せるわけにもいかない。今度から手伝おうか。

 

「お待たせ致しました。お料理をお持ちしました」

 

そう言って咲夜は、手際よく料理を全員分並べていく。

料理を運んでくる間、フランちゃんも食堂にやってきた。

引きこもり志願とはいえ、ちゃんと食堂には来てくれるみたいだ。よかった。

どうやら、料理はコースのようだ。何というか、さすがというか……

メイド長すげー。

と、飲み物として、ワインが置かれる。

あ、これ大丈夫か……? 

宴会の時、萃香と勇儀と少しだけ日本酒を飲んだが、お猪口一口で限界だった。

乾杯の後、ナプキンを敷いて準備をする。

ワインに恐る恐る口を付ける。

 

……あれ? 意外に飲めるな……

アルコールの感じが弱い。咲夜が配慮してくれたのか?

ありがたい。……ん? ねぇレミリア、肩が震えてるよ。

表情には殆ど出してないけど、ぷるぷる震えてるからね? そんなにおかしかったかい?

 

マナーに気をつけながら食べる。しかし、あまり意識しない程度に。

オードブルを口に運び、すぐに思う。

……え、なにこれ。とてつもなく美味しい。

そこらで店を出せるレベル、とかじゃなく、次元が違う。

咲夜、恐るべし。料理以外も全部こなすんだろうな……

と、メイドである咲夜も席に座る。

一緒に食べるあたり、レミリアらしいというか、家族、って感じがする。

……いいよな、こういうの。

 

 

美味しい食事を食べ終えた。

皆で一斉に立ち上がる。食堂を出てまず、咲夜に聞く。

 

「なぁ、俺のワイン、あれってアルコールの濃度低めか?」

「いえ、違うわよ。皆と同じものよ。高くも低くもないくらい。お酒で悶える姿を見たかったのに、残念だったわ」

 

あ、あれ? 濃度変わらないのか……?

でもこの前……ん? あの日本酒、濃度いくつだ?

……あっ、察してしまった俺。あれが特別高かっただけだわ。

普通のだったらいけんだわ。何だよ……

 

「ま、恐る恐るワインを飲む姿は中々面白かったわよ?」

 

咲夜が意地悪な笑みを見せて言う。

咲夜は意外にSの素質があるのだろうか?

だがしかし、あいにく俺にはMの気質は無い。

 

「そうかよ」

「ええ、そうよ?」

「はいはい――あ、思い出した! レミリア、おい、レミリア!」

「何? どうしたの急に大声で」

「さっきの食事中、ワイン飲む俺見て笑ってただろ!」

「……そんなことはないわよ? 笑ってないわよ」

 

……ほう。あくまでしらを切るつもりか。

 

「ふ~ん……思いっきり肩が震えてたんだよなぁ……なぁ、怒らないから正直に――」

「面白かったわ! 食事中じゃなかったら大笑いものね! 今でも思い出して笑ってしまいそうなくらいよ!」

「おいこら言い過ぎだろ!」

「あら、怒らないって言ったじゃない」

「そこまで言われちゃ我慢ならねぇよ!」

「まぁまぁ。私には、ちゃんとマナーが守れてた方の驚きが大きかったわ」

 

マナーに関しては合っていたようだ。

結構無頓着になりきれずに、外で少し学んだのが正解だったようだ。

まぁ普通は西洋の食事マナーは学ばないんだけれども。

 

「意外と自然にできていたわよ?」

「そうか、俺は人の姿見て笑いこらえて肩震わすのはマナー違反だと思うんだよ」

「そうね。全くそんな失礼なことをするのは私にはできないわ」

「お前が言うな、レミリア!」

 

紅魔館の人はどうやらノリが良いらしい。

俺も仰々しくやってくより気楽でずっといい。……良すぎるのも考えものだが。

 

 

レミリア、咲夜との会話を終えて、自分の部屋の場所を説明をされる。

部屋の様子を見たが、どうやらもうタンスの中は全てクローゼットの中に移動済みらしい。

タンスを紫が先に運んでくれていることに驚いていたが、紫は俺の様子見てるんだったか。会ったらありがとう、だな。

何とも紫はべんr――もとい、気が利くんだ。

 

で、今は庭に出て、ぼーっとしている。

暇だ、暇すぎる。咲夜の手伝いも断られるし……

あ、思い出した。レミリアとチェスやるんだったか。

修行は夜にいいか。初日くらいゆっくりとしよう。

俺は今日咲夜に案内されたレミリアの部屋の位置を思い出して道を辿る。

部屋までは無事に着く。一応ノックをしておく。

コンコンコン、っとな。

 

「……どうぞ」

「入るぞ、レミリア」

「やっと来たわね。さ、チェスをやりましょう?」

「何だよ、用件もわかってるのか」

「だってそれが運命だもの。ちなみに、運命は私の勝利とセットよ、青年?」

「ほう……言うじゃないか」

「そちらこそ……楽しくなりそうね?」

 

負けられない戦いがそこにはある。

正直、チェスには自信があり、それをレミリアには公言している。負けるわけにもいかない。

……じゃあ、心理から揺さぶるか。勝つために。

ゲームは、始まる前からもうゲームが始まってんだぜ?

 

「そうだな。大丈夫だ、俺は手加減してやるから、遠慮なく本気で来いよ。レミリアは頭も幼女なのかな?」

 

少しの挑発を交えて言う。

さて、反応は……?

 

「あら、その言葉をそっくり返してあげるわ。たかが十数年生きたくらいで図に乗らないことね?」

 

さすがレミリア、安い挑発には乗らないらしい。

が、この挑発は無駄にはしない。絶対に。

 

 

チェス。それは、西洋のみならず、沢山の国々で親しまれているボードゲームの一つ。

将棋のようなルールを持つが、取った駒の使い方をはじめ、意外と違いがある。

8×8の盤面に黒と白の各6種類、計12種類の駒で、キングの駒を追い詰め、詰み(チェックメイト)することが勝利条件。

 

将棋に囲碁、チェスやオセロ等、運の絡まないゲームを総称して、『二人零和有限確定完全情報ゲーム』と言う。

文字通りの、実力勝負。先攻が有利なのだが、通常は2局セットで行われるので、その差もなし。

つまり、負けた時の言い訳がきかない。『運が悪かった』、と逃げることも出来ない。

その特性から、前の時代には知恵比べの手段として用いられることも多かったという。

 

さっきのフランちゃんとのポーカーは、逆にイカサマをしない限り、運の勝負になる。

このチェスは、イカサマも通用しない。駒の入れ替え、位置の不正等々、全て。

 

だが、それは()()()()だ。逆に言えば、()()()()()()()()()()()()()()()ということだ。

 

そう、俺はレミリアとの大きな差を既に生み出している。ボードゲームにおいて、大きく有利になる切り札。

 

そう、それは――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(さぁ、栞。一緒に考えよっか♪)

(最低だね!? 手加減するんでしょ!? それで勝てるんでしょ!?)

 

そう、栞がいる。二人? 残念、三人でした!

 

(私は参加しないよ! ちゃんと自分で戦うんだね。もし食い下がろうとするなら、レミリアに不正を訴えかける)

 

む……さすがに不正は良くないか。まぁ、今引き下げれば言わないってだけマシだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ま、()()()()()()()()()()か……




ありがとうございました!
先日、UA数が2000を突破しました!
ありがとうございます!
次回はチェスのVSレミリアから始めたいと思います。
ではでは!

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