今回は、パチェさんとフランちゃんが登場です。
最後にはちょっとした遊びがあります。
では、本編どうぞ!
レミリアと咲夜と共に、紅魔館を歩く。
今からレミリアは、『パチェ』なる人と、『フラン』なる人の元へ行くようだ。
咲夜も『妹様』と言ってたし、どっちかは妹の様だ。
そうして、ある部屋の前についた。
レミリアが声をかけながら扉を開く。
開いた扉からは、大量の本が収められた本とその本棚。
見たところ、図書館……だろうか。
視界いっぱいに広がっているほど冊数は多い。
俺も今まで一度にここまで沢山の本は見たことがない。
「パチェ~例の天、来たわよ~」
「そうなの。じゃあこっちに連れてきて」
「オッケー。天、今からパチェ――パチュリーに会わせるわ。自己紹介よろしくね」
「了解。じゃ、行ってくるよ」
先程声がした方向へ進んでいく。
机に本を置いて、椅子に座って読書をしている少女が見える。
紫の髪の両サイドをリボンで結んでいて、レミリア、幽々子と同じようにナイトキャップをしている。
ゆったりとした薄い紫色の、ネグリジェの様な服は寝巻に見えなくもない。
「貴方が天ね。私はパチュリー・ノーレッジよ。まぁよろしく」
彼女が本に目を落としたまま言う。
……ってか本を読むスピードが速すぎる。十秒に一回はページをめくってる。
「ああ。よろしく頼むよ。ところで、今何の本を――」
ドゴォオン!
と大きな音が俺の言葉を遮った。
音のした方――ドアの方を反射的に見る。
ドアは破壊され、少々の煙が立っている。そこには、黒の服を着た箒に乗った少女がいた。
「お、魔理沙じゃん! 久しいな」
「おう、天。久し――って、レミリアに咲夜もいるのか!? ヤバっ、逃げろ!」
そう言って凄いスピードで低空飛行で紅魔館を飛んでいく。
「ちょ、待ちなさ――けほっ、けほっ……!」
「お、おい、大丈夫か?」
急に咳き込みだしたパチュリーの背中を擦る。
大丈夫だろうか。
「あ、ありがと……私、喘息持ちなのよ……けほっ……!」
「あんま無理すんなよ? ……で、魔理沙は何しに来たんだ?」
「うちの本を盗っていくのよ。いつもそう」
「窃盗だろ。どうなんだよ?」
「彼女曰く、『死ぬまで借りていくだけ』、らしいわよ」
「完全に窃盗です。本当にありがとうございました」
「私も窃盗は良くないと思うよ~」
「……ん? 何か声がしなかった?」
栞の同意の声にパチュリーが不思議な顔をする。
まだ紹介してなかったな。
……あ、レミリアにもまだだな。後で言っとくか。
「ああ、まだ栞が挨拶してなかったな。俺の中に住んでる幼女の魂だ。ほら、挨拶して」
「は~い。私、栞っていうの。今の天の説明で大体合ってるよ。よろしく!」
「ええ、よろしく。……天、さっきの貴方の発言は見過ごせないわよ。とても危ないわ。頭が」
「いや、そう取られてもおかしくないけど! ……本当だよ。咲夜からも言われたよ」
皆して俺を犯罪者扱いして……
幼女が自分の中にいるなんて言って不審者じゃないに――
――いや、完全に不審者だな。外だったら精神科を勧められていたかもしれない。
「そう。わかったわ」
意外とさっぱりとした返事をして読書に戻った。
ふと、パチュリーの机の横の本が視界に入り、気になって手に取った。
「魔法関連か……魔理沙と同じように、パチュリーも魔法使いなのか?」
「ええ。魔女、と言うべきかもしれないけれど、あまり変わらないわ」
「――にしても、本が好きなんだな。俺も結構本は好きだよ」
「……本当に?」
「ああ。本のページをめくる緊張感は、他では表し難いものがある。それに、書かれたことは嘘がないからな。間違いはあるにしろ、人みたいに嘘は吐かない。そう考えると、人間よりもずっと正直だよな」
「……貴方、本当に興味があるの? 読書を好む人は結構少数派よ?」
そうなのだろうか?
俺は学校で暇な時に読書をするくらいには好きだ。
そういえば、幻想郷に来る前に学校で読んだことを最後に、もう一ヶ月近く読書をしてないな……
そう思うと、読書をしたくなってくる。
本を好きな人にはわかるはず。急に本が読みたくなる病ってあるよな。
「そうか? 少なくとも俺は好きだよ? 暇な時は読書してたからなぁ……」
「そうなの。……空いた時間にでもここに来なさい。本ならいくらでもあるわ」
「そうさせてもらおうかな。じゃ、そん時はおすすめの本とか教えてくれ」
「ええ、いいわよ」
「それじゃ、俺は他に挨拶に回ってくるよ。いつか近いうちに必ずここに寄るよ」
「わかったわ」
そう言ってパチュリーの元を離れ、咲夜、レミリアのところへ戻る。
「終わったよ。さ、行こうか」
「少し長かったわね。何を話してたの?」
レミリアが問う。
「いや、本についてだよ。今度暇な時にでもここに来いってさ」
「「……え?」」
二人が目を丸くして驚いていた。
「……え? 俺が『え?』って言いたいんだけど」
「いや……パチュリーが初対面の人間と会話した時間が最高記録だったのよ。それを咲夜と珍しい、って話していたの。けど……」
「まさか、図書館に自分から誘うなんて……天、何したの?」
「えっと……俺も本が好きだよ、とかかな?」
「まぁいいわ。次はフランのところに行くわ」
「了解――って、ん?」
今更ながら、レミリアの背中に気付く。
吸血鬼であることは宴会で聞いていた。だが……
「なぁレミリア、その
「ああ、これ? いいえ、あの時はたたんでたのよ」
レミリアが背中の羽をパタパタと動かしながら答える。
「へぇ、そうなのか」
「そうなのよ。ちなみに、今から会いに行くフランも羽があるわ」
同じく羽があるのか。ってことは……
「じゃあそのフラン、って子はレミリアの妹なのか?」
「ええ。私より五歳下の、ね」
五歳か……となると、同じように俺よりも断然年上か。
もうここまでくると、年上とかの次元の話じゃなくなってくるよな。
よし、今話しとくか。
「それでなんだけどな? もう咲夜には話したんだが……」
「何? どうしたの?」
「俺の中に幼女の魂が住んでるんだよ。ほら、栞。挨拶、挨拶」
「わかったよ~。初めまして、私は栞。よろしくね~」
「へぇ……よろしくね、栞。私はレミリアって呼んで頂戴」
「わかったよ、レミリア~」
「……ねぇ天、貴方面白いものを隠してたのね」
「いや、隠してたわけじゃねぇよ。ただ忘れてただけ」
「まぁいいわ。天の問題発言も言質が取れたわ。これでいつでも霊夢に突き出せるわね」
「レミリアもかよ! それに、霊夢は栞を既に知ってるからな?」
俺の犯罪者疑惑はまだまだ払拭されないのか。
いや、払拭できてるんだろうが、次々に疑いをかけられてるだけか。
……だけ、ってのもおかしいな。
レミリアについていって、今まで通ってきた道とは違うような所を通る。
階段を降り始めていたのだ。確か、さっき降りる前が一階だから、ここは地下か?
階段を下り終え、扉の前に着く。
「……ついたわ。自己紹介の前に、私からフランに言いたいことがあるの。それまで待っておいて」
「わかったよ」
レミリアが扉を開ける。
目の前に広がるは、灯りが少し周りより多めの部屋。
そこに、背中に羽を携えた、幼女がベッドの上に座っていた。
「フラン、紹介するわ。この人は新藤 天。それで……絶対に。絶対に、『
「はい、お姉様。できますわ」
「ええ。よろしくね」
それだけ言ってレミリアが地下室から出る。
……あれ、『壊す』って何だ? さっきの話からは俺が『壊される』側なんだが。
「……ええっと、フランちゃん、でいいかな?」
「うん。私は、フランドール・スカーレット。よろしくね、新藤お兄ちゃん」
「あ~……悪いけど、下の名前で呼んでもらってもいいかな?」
「うん……いいけど、どうして?」
「
「は~い。わかったよ、天お兄ちゃん♪」
うお……中々心をくすぐられる感覚だ……
何か――高校生の俺を。見た目が完全に小学校いかない幼女が、お兄ちゃんって呼んでると、とてつもない犯罪臭が……
もう本格的に俺は犯罪者なのだろうか……
「ねえねえ、どうしてここに来たの?」
「えっと……フランちゃんの姉ちゃんのレミリアと、咲夜に呼ばれて来たんだ。これから一年間住むことになるからね」
「そうなの? これから一緒に遊んでくれる?」
「ああ。俺からもお願いしようか。一緒に遊ぼうな」
そう言って、フランちゃんは屈託のない、純度百パーセントの笑顔で言う。
「ほんと!? わ~い! ありがと、天お兄ちゃん!」
フランちゃんが俺の腕を内側に抱きついてくる。
……あれ? 何か力強くない? だんだん強くなってきたような――
「いたたた! 痛い、痛いよフランちゃん!」
「あ……ごめんなさい。……だいじょぶ?」
フランちゃんが腕を擦りながら言う。
なんという癒やし。痛みより癒やしが強いな……
ロリコンじゃないとはいえ、この姿に庇護欲をそそられない者はいないだろう。
「だいじょぶ。次は、少し力を抜いてくれると助かるかな?」
「うん、わかった……こう?」
再び同じようにしてフランちゃんが抱きつく。
今度は痛みもなく、楽にできた。
「ああ。ありがとうね、フランちゃん」
「えへへ~何か、落ち着くな~」
「そうか? そこまで俺のことを気に入ってくれたなら嬉しいよ」
「私も~。天、安心できる~」
なんと嬉しいことを言ってくれるのだろうか。
今日――もっと言うと、つい数分前に初対面したばかりだというのに。
「じゃあ、早速遊ぼう!」
「ああ、いいよ。何して遊ぼうか?」
「えっとねぇ……ポーカーしよ?」
ポーカー。アメリカで主に行われているトランプゲームの一種。カジノのゲームとしてもプレイされる。
プレイヤーに五枚のカードが配られ、特定の役――組み合わせを揃えて、その役の強さを競うゲーム。
当然、出る確率の低い役ほど強くなる。
一番強い役の『ロイヤルストレートフラッシュ』は、出る確率が約65万分の1とも言われている。
「いいけど、二人でか?」
「ううん。二人だけど、二人じゃないよ」
「それってどういう――」
「禁忌『フォーオブアカインド』」
フランちゃんがそう唱えた瞬間、フランが――
「え!? すごいな、フランちゃん!」
「えっへん! どう? これでディーラーが一人とプレイヤーが四人。二人だけど、二人じゃないよ?」
「……よし、やるか!」
「わ~い」
そうやって、俺とフランちゃん三人のプレイヤーでポーカーが始まった――
ルールはワイルドカードのジョーカー2枚を抜いた52枚の使用。
各プレイヤーに配られたカードは本人のみが見られる、クローズドポーカー。
ちなみに、フランちゃんにも分身のフランちゃんの手札はわからないらしい。
というか、そうじゃないと面白くないからやらない、とのこと。
今回は遊びなので、チップの概念はなし。
純粋に勝った回数での勝負。
俺の配られた配役は……このままだと、ワンペア。
だが、ポーカーには、一度のみカードの再配布が許可されている。
交換なしもよし、枚数を定めて交換もよし、全枚交換もよし。
俺は、ペアになった二枚以外のカードを捨てて、交換。
ふむ……変わらずワンペア。これは無理かな……?
フランちゃん達も交換が終わり、後はカードの公表のみとなった。
それぞれがカードを表にして、テーブルに並べながら言う。
「俺はワンペアだったよ」
「私はストレート」
「私はツーペア」
で、後は本体のフランちゃんだけの公表のみ。
ちなみに、俺の役は今の時点では誰にも勝てていない。
運が結構な割合を占めるこのゲーム。悲しきかな。
「私はフォーカードだったよ~。と、いうことで、まずは私の勝ちだね」
圧倒的に負けた俺。全員に勝てていない。
ここで、俺はあることに気がついた。
……ん? フォーカード……?
「ああ、なるほど。『フォーオブアカインド』ってそういうことか」
「どうしたの?」
「いや、ポーカーの役だろ? 日本はフォーカードって言うけど、外国は
「せいか~い。意外に気付いたんだね」
「まぁな。――じゃあ、続きやるか!」
「「おー!」」
俺とフランちゃんの遊びは、咲夜とレミリアの迎えが来るまで行われた。
ありがとうございました!
フランちゃん可愛い。フランちゃんに『お兄ちゃん』って呼ばれてみたいのは私だけじゃないはず。
パチェさんも結構好きですよ? 私リアルで読書好きですし。
読書好きな割に小説書くのは下手という……
悲しきかな。
ではでは!