東方魂恋録   作:狼々

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どうも、狼々です!
いや~ついにこのタイトル来ましたね!
目標としては、読んでくださる皆さんが、純粋な恋愛で心が悶えるようになるくらいの
文を書くことです。早くそうなりたい……!
妖夢は純愛です。ヤンデレではありませんよ、ええ。
では、どうぞ!


第16話 私の『好き』に気付く時

買い物から帰った私は、自分の部屋で自分が彼のことをどう思っているのかを考えていた。

私は彼のことをとても大切に思っている。

その証拠に、あの時は彼に抱きついて泣き喚いたほどだ。

 

――『とても大切』。それは、どういう意味で?

 

ココロの中の本心が私に語りかける。

 

 ……弟子として。

 

――本当に?

 

 ……多分、そう。

 

――多分、ってことは、思うところもあるんじゃないの?

 

やっぱりそうなのだろうか。いずれにしても、まだ時が過ぎるのを待つべきだ。

あの店員さんも言っていた。いつかわかる、って。

 

私、どうしちゃったのかな……ねぇ、教えてよ、天君――

 

―*―*―*―*―*―*―

 

食事を作るまで少しばかり時間があった俺は、幽々子に相談をしようと、彼女の部屋へ向かった。

彼女の部屋の障子を開ける。見えた幽々子の顔は、少し意外、という顔をしていた。

 

「あら、天。珍しいわね、私の部屋に来るなんて。どうしたの?」

「相談したいことが……あるんだ」

「これはまた珍しいわね。いいわよ、話してみなさい」

「……なぁ、幽々子。俺って、妖夢に何か悪いことをしてたか?」

「……急にどうしたの?」

 

幽々子が不思議だと言わんばかりの表情で尋ねる。

 

「……いや、俺は妖夢に嫌われてんのかなぁ……ってさ、思ったん――」

「それは無いわ。絶対に、確実に」

 

幽々子は俺の言葉を途中で遮り、視線でも強く訴えかけてくる。

 

「貴方、忘れたわけじゃないわよね? 妖夢はあなたの死ぬかもしれないとわかって泣いたのよ? 天はすぐ飛び出したから知らないでしょうけど、貴方が飛び出した瞬間からもう既に一度泣いてるのよ。貴方のために短時間で二回も泣いたのに? 嫌われた? はっ! 笑わせないで頂戴!」

 

幽々子の語調がだんだんと強くなってくる。

 

「断言するわ。妖夢は絶対に貴方を嫌ってない!」

「……だが……」

「だが、何だというの? そもそも何でそう思ったのよ」

「いや……妖夢に避けられてる気がするんだ。普通に話だってするし、露骨に嫌われてもいない……と思う。けど、何か……逃げられてる、っていうか、そんな感じだ」

「私にはむしろもっとかまって欲しいくらいにしか見えないわ。妖夢はいつだって天を見てるじゃない」

 

やっぱり気のせいじゃなかったのか。

 

「やっぱそうなのか。俺も薄々は感じてた。けど、目が合ったらすぐ逸らされんだよ。それだけじゃない。いつだって自分にも他人にも厳しい徹底ぶりを見せる妖夢が、呆けていたんだ。あの妖夢が。体調が悪いならまだわかるが、そんな様子もなかった」

「ふーん……ま、いいわ。妖夢に直接聞いてみるわ」

「ありがとう。そうしてもらえると助かるよ」

「いいのよ。……それより、さっきは強く言い過ぎちゃったわ。ごめんね」

 

幽々子が申し訳無さそうに言う。相談を受けてもらえただけで嬉しいのに。

 

「いや、いいんだよ。それだけ確かなことってことがわかった。……それだけ分かれば、十分ってもんだ」

「……なにか、あったの?」

 

何かあったか。NOと答えれば嘘になる。それは、外の世界での話。

今、俺は幻想郷にいる。ここには、皆いい人ばかりいる。俺を避けようともしないような。

その環境と存在は俺にとって、とても大きい。そんな所に外の世界の残酷さを話に持ち出すようなことはあまりしたくない。

 

「……いや、別に何も?」

「――ねぇ、嘘を吐く時、人は手を隠そうとするって知ってる?」

 

……嘘がバレた? いや、そんなはずはない。

俺は思わず、無意識の内に。自分の手を確認していた。

 

「どうしたの、手なんか見て? ……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()わよ?」

 

……一本取られたな、こりゃ。

 

「……カマかけとは、随分と悪趣味じゃないか?」

「あら、心外ね。家族同然の私に嘘吐いてまで、自分のことを隠そうとするのも、随分とそうなんじゃない? ……話してくれる?」

「……わかった」

 

 

 

俺は幽々子に外の世界での俺の扱いについてを話した。

話し始めたら、(せき)を切ったように、どんどんと心の中でしまい続けた思いが溢れ出す。

 

 

「俺は、もう嫌われるのは嫌なんだよ……辛くなって、苦しくなって、泣きたくなってくる。俺は何も悪いことはしていない。なのに、皆は俺を避けようと、拒絶しようとする。それがたまらなく悔しくて、悲しかったんだ……。どれだけだって努力してきた。手が届かない、諦めようって思っても必死で頑張ってきた。……なのに、俺は――」

 

 

 

 

そこまで話していて、俺の目から涙が零れ落ち始める。

ポツ、ポツと畳に少しづつ跡を付けながら。それは当然、止まるはずもなく。

 

「――天、ちょっとこっちにおいで」

「え……?」

「いいから、こっちに来るの。ほら、早く」

 

俺は幽々子に急かされながら、言われた通り幽々子の近くへ。

 

 

 

 

 

不意に、幽々子は俺を抱きしめた。

俺は戸惑いを隠せなかった。

 

「え、えと――」

「天、辛かった、わよね……痛かった、わよね……気づいて、あげられなくて、ごめ、んね……」

 

幽々子の声は震えていて、涙声になっていた。

俺のために、幽々子も泣いてくれているのだろうか……

そう思うと、さらに俺の涙を流す量が増えた。悲しいわけじゃない。

――ただただ、嬉しかった。

 

「私と妖夢は、ずっと、天の味方、だからね……! もう、我慢しない、でね……! 私達が、いる、からね……!」 

「あ、あり、がとう……ありが、とう……俺は、嬉しいよ……!」

 

 

幽々子は、俺の涙が止まるまでずっと一緒に泣いてくれた。

自分を肯定してくれる人がいる。そう思うだけで、また涙が出そうなくらい幸福感があった。

 

 

「ご、ごめんな、幽々子。泣きついちゃって……男なのにな……」

「いえ、いいのよ。それくらい信用されてるって証だから。それに、さっきも言った通り私達は天の味方よ。性別がどうこうとかじゃないのよ。私達を、もっと頼ってくれてもいいのよ」

「……ああ、そうさせてもらうよ。本当に、ありがとう……!」

「ええ。……また辛くなったらおいでね」

「わかった」

 

俺は幽々子の部屋を出て、自分の部屋に戻った。

その時の俺は、足取りも、心も、以前よりも断然軽いものとなっていた。

 

―*―*―*―*―*―*―

 

私は、少し早めに夕飯の仕込みをしようと、台所へと向かっていた。

ある部屋を通ろうとした時、話し声が聞こえた。

ここは……幽々子様の部屋?

障子が少しだけ開いている。私はそこから中を覗いた。

幽々子様と……天君が何かを話している。私は耳をすませる。

 

「……俺は辛かった。妖夢に嫌われたんじゃないかって。避けられてる感じがして。外の世界と同じように、幻想郷でも避けられてるのかと思うと、寂しくて仕方がなかった。せっかく交流を持てたのに、また嫌われるのかと思うと、嫌だったんだ……」

 

私が……天君を、嫌う? ありえない。私は絶対に彼を嫌いになんてなれないし、なりたくない。

避けていたつもりもない。……でも、そう感じた天君は悲しんでしまっている。

私が、天君を傷つけちゃったのかな……? そう思うと、胸が締め付けられる思いに(さいな)まれる。

 

話を聞いていてわかった。努力を重ねても、周りからは避けられていたということ。

それでも、一切努力はやめなかったこと。……私は聞いている内に涙が溢れてきた。

やがて、話をしていた天君も泣き始める。……相当、辛かったんだ。なのに、私は何もしてあげられなかった。

それどころか……

 

そこまで思考を巡らせて、幽々子様が自分の所へ天君を呼んだ。

 

そして、幽々子様が天君を抱きしめた。

 

 

……ぇ……?

私はまともな思考が働かなかった。さっきと同じように、けれど、本質が全く違う胸の苦しみが訪れる。

同じように、本質が根本から違う涙も出てくる。なのに、何で胸が苦しくなって、涙が出るのかが理解できなかった。

……見たくない。どれだけそう思っても、視線はそのまま。まるで視線が釘付けになったかのように。

聞こえはいいだろう。しかし、本来の意味のその言葉とは全く逆の意味を持っている気がした。

 

私はようやく正気に戻り、足を動かし始める。

――否。戻ってなどいなかった。料理をしようと台所へ行こうとしていたのに、私の足は自分の部屋へと向かっていた。

部屋につき、障子を閉める。途端に足の力が抜けて、ぺたん、と座り込む。

と同時に、さっきよりも上の胸の苦しみと涙に襲われる。

 

――そこから先のことはあまり覚えていない。ずっと天井を見て寝ていたことが微かに記憶に残っているくらい。

私が本当の意味で正気に戻ったのは、夕食を作り終えた、という報告が天君から入った時だった。

 

―*―*―*―*―*―*―

 

私は、夕食を作ろうと妖夢を呼びに行こうとした天を止めてこう言った。

 

「ねぇ、今日は妖夢をそっとさせておかない? 様子がいつもと違ってたんでしょ? 悪いんだけど、今日は一人で夕食を作ってもらえない?」

「ああ、いいけど……妖夢は大丈夫か……?」

「後で私が様子を見に行くわ。夕食、お願いね?」

「了解。じゃ、行ってくるよ」

 

天は妖夢の部屋ではなく、台所の方向へ向かう。

……何故天にあんなことを言ったのか。――それは、私が途中で妖夢に気づいたから。

障子の隙間から覗いていた。幸いと言うべきか、天は障子に背を向けていて気づいていない。

私も妖夢の様子の変化にはとっくに気がついていた。でも、何が原因かは分かっていなかった。

けれど、さっき天から聞いた話から察するに、妖夢は――天に恋をしている。

仮にそうじゃなかったとしても、少なくとも妖夢の変化に天が関わっている。時期から考えてもおかしくない。

もし恋をしているのだとしたら。私の行動を見た妖夢は天に近づけない方がいい。

恐らく妖夢は初恋だろう。自分の気持ちに戸惑うばかりの初恋。

その最中に、この状況で天を近づけたら、妖夢は何を言い、行動するかわからない。

天がせっかく立ち直って、私達を頼ろうとしてくれている。それを壊すわけにはいかない。

 

……妖夢を呼び出すのは、明日にしよう。それがいい。

そう考えを固めて、私は天の夕食が来るのを待ち続けた。

 

―*―*―*―*―*―*―

 

案の定、夕食はあまり喉を通らなかった。

思い出されるのは、幽々子様の天君の抱擁の姿ばかり。

食べる量の少なくなった私は、二人より先に食事を終えて部屋に戻っていた。

今日は早めに寝てしまおうと布団の準備を早々に済ませて中に入る。

けれど、一向に眠れない。

 

 

十時くらいだろうか。大体布団に入って一時間ほどした時に、廊下から足音が聞こえる。

やがて、足音はペタペタという裸足のものからトントンという靴の音に変わり、玄関の開いた音がした。

誰かが、外に出た? 幽々子様はもう寝ているはず。……天君が? 何のために?

私は気になる。どうせ寝られないのだから、様子を見に行ってみよう。

私は靴に履き替えて外に出る。天君は、屋敷から少し離れたところにいた。

何をしているんだろうと思った。そして、私は驚いていた。

 

彼が、刀を振って練習していた。

 

咄嗟に私は屋敷の影に隠れる。彼に気づかれてはいけない気がした。

そして、彼の独り言にさらに驚くことになる。

 

「あ~あ。かれこれ一ヶ月近く夜に練習してるけど、中々思うように行かねぇな……最初より上手くなったけど、実践をやったことがねぇから何ともな……」

 

一ヶ月近く……? 彼が白玉楼に来て住むことになったのもそのくらい前。

じゃあ、もしかして彼は、来てずっと夜に一人で練習を……?

言い終わって、彼は練習に戻る。私は、その姿から目を離すことができなくなっていた。

ずっと悩みながらも努力を続けていたというのか。

......カッコいい、そう思った。実際、私には努力する彼の姿は輝いて見えた。

 

私はあることに気がつく。それは――自分の心臓の鼓動がとても早くなっていること。

 

ドクン、ドクンと音は大きく、速さはどんどんと加速していく。

 

息遣いも荒くなっているのがわかった。もう、『はぁ……はぁ……』と息切れを起こしたかのように。

 

胸も苦しくなってくる。思わず胸に手を当ててしまうほどに。

 

でも……不快感は全く無い。

 

思考が蕩けてくる。彼のことだけしか考えられなくなる。

 

顔が赤くなってくる。どれだけ時間が経っても、それらは全て収まらなかった。

 

 

 

いつまでそうしていただろう。彼が練習を終え、玄関に戻ってくる。

屋敷の影に隠れていた私は見つかることはなかった。

彼が玄関に入り、靴を脱いで部屋に戻っていく。

私の様子は、彼が見えなくなった今でも変わることがない。

ふと、彼が練習していた場所を見ると、彼の上着が忘れてあった。

ふふっ、と笑いをこぼして上着を回収する。

 

「えっと……届けに行った方がいい……よね?」

 

私は玄関に入り、靴を脱いで天君の部屋に向かう。

天君の部屋についた。一応、夜だし小さい声で……

 

「そ、天君~、上着忘れてますよ~……」

 

返事がない。何度か呼びかけたが、一向に返事の気配がない。もう寝てしまったのだろうか。

入った方が……いいのかな? そう考えると、急に緊張し始める。

で、でもでも、上着届けなきゃだし、入らないとだよね……?

そうやって自分の中で理由(口実)を作って彼の部屋に入る。既に明かりは消されていて、案の定、彼は布団の中で眠っていた。

私は畳んだ上着を置いて、部屋を出ようとした。……が、視線が彼を向いて離れない。

 

……布団の中に入っちゃおうか。……寝てるし、少しだけならいいよね……?

私の思考はこのあたりからおかしくなってしまっていた。

 

「し、失礼しま~す……」

 

彼と同じ布団の中に入る。

瞬間、自分を布団と彼の温かみが包む。

 

ふぁぁ……あったかい……

 

私は気がつくと、彼の背中に腕を回していた。無意識に。……本能が離れたくないと告げるように。

私自身も彼の腕の中に無理矢理入り込み、お互いが抱き合うような形になった。

心臓がさっきよりもドキドキしている。腕も震え始め、思考も再び蕩けてくる。

顔もより紅潮していることが、鏡なしでもわかる。

 

 

何より、彼と一緒に、近くにいることに、これ以上無い幸福感があった。

自分を満たしてくれるその幸福感は次第に、安心感と共に私の眠気も誘っていた。

私の意識が途切れる前、私はようやく気付く。

 

 

自分の本当の思いに。……私が、彼をどう思っているのかに。

 

 

 

 

 

 

私は――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     ――私は、天君のことが、好きだ。――

 

 

そう気付いた瞬間、私は彼の腕の中で意識を手放した。




ありがとうございました!
如何でしたか? まだまだ経験不足+文才の欠如によりあまり上手く書けてないかもしれません。
ここにきて悔やまれる……!
そして、この話を書いているとき、東方魂恋録のUA数が1000を突破しました!
ありがとうございます! まさか1000いくとは……!
嬉しい限りです!
今後とも、私とこの作品をよろしくお願い致します!
ではでは!

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