東方魂恋録   作:狼々

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どうも、狼々です!
今回こそ刀を出します。
まだ修行に入りませんが、今回から白玉楼ということで、
第2章はこの話からとなっています。
天君を何とか頭の回転が早いキャラにしたいのですが……いまいち上手くいきません。
では、どうぞ!


第2章 修行in白玉楼
第11話 その程度なら


お待ちしておりました、新藤さん。

その言葉で俺は目の前の銀髪の少女に迎えられていた。

黒いリボンを着けたボブカットの髪型、胸元には黒の蝶ネクタイがある。

白シャツに青緑のベストを着ていて、肌は白め。

――そして、何かが隣でピョコピョコ動いている。物凄く気になる。

長刀と短刀を一本ずつ携えている。重くないのだろうか?

日本刀はかなり重いらしいが……彼女の刀長すぎない? 使えんのかな? まず抜くのにも一苦労しそうだが。

……刀持ちってことは、俺の師範になるのかな? 

 

「こんにちは、ご存知の様ですが一応。新藤 天といいます。呼ぶ時は名前で呼んでもらえると。あと、様付けはなしでお願いします」

「わかりました。私は魂魄(こんぱく) 妖夢(ようむ)と申します。呼び方はお好きなようにどうぞ。天君、と呼んでも?」

「はい、どうぞ。」

「いえいえ。天君も敬語はいいですよ。……貴方のことは幽々子様からお聞きしています。これからは、私が貴方に刀を教えていきます。とはいえ、私も修行中の身なので、教えられることだけ教えて一緒に修行していく、という形になりますが」

「わかった。俺は敬語も外してもらって構わないぞ?」

「えと、敬語が基本的な話し方なんです」

「了解だ。いつか敬語を取ってくれることを期待しているよ」

「ええ、きっといつか。今から幽々子様の所へご案内します。――霊夢も一緒に来てほしいとのことなので。」

「ええ、わかったわ」

 

俺は妖夢に着いていく。

少ししてお屋敷の庭に着く。にしても、広いな……それに、桜が綺麗だ。

外では桜はもう散ってしまっていたが――気候とかやっぱ違うのか?

そんな中、一つだけ桜の咲いていない木を見つけた。

……まあ、そんなこともあるだろ。俺は特に気にすることもなく妖夢に着いていく。

お屋敷自体もかなり広いコの字型の本堂。ここからも桜が見える。

そして、妖夢がある障子の前で止まる。

 

「こちらで幽々子様がお待ちです。どうぞお入りください」

 

俺は障子を開ける。妖夢の言っていた、幽々子様と思わしき人物が正座していた。

ウェーブをかけたセミロングでここの桜を思わせるピンク色の髪に、レミリアと形の似ているナイトキャップを被っていて、

浴衣や着物に似た雰囲気の服に身を包ませている。帽子には三角巾があり、額のところに渦巻きの赤いマークがある。

胸もかなり大きい。霊夢とか殆どないよね。壁。やべ、本人に言ったら俺が殺されてしまうことになる。

そんなことを考えているが、目の前の彼女をとても美麗に思う。美人すぎる。

厳かな雰囲気が漂っていて、大人な感じやカリスマ性を思わせる。

俺が見惚れていると、彼女が口を開く。

 

「やっほ~あなたが天ね! 会いたかったわよぉ~♪」

 

ニコニコと桜にも劣ることのない笑顔を浮かべる。

……厳かでカリスマ溢れる感じが一気に飄々とした態度に変わる。

どこか翔に似たような口調だ。親近感を覚えてしまう。

妖夢、霊夢は俺を間に挟む形で正座、俺は彼女らの一歩前で正座して、目前の少女と顔を合わせる。

 

「はい。俺も会えて嬉しいです。ご存知の様ですが、新藤 天です。これからここでお世話になります。雑用でも何でもしますので、どうかよろしくお願い致します」

「ん? 今何でもって……まあいいわ。私は西行寺(さいぎょうじ) 幽々子(ゆゆこ)よ。こちらこそよろしくね。それより、そんなに態度を硬くしないでいいわよ♪ 敬語も要らないからね?」

「……わかった、幽々子。じゃあ幽々子、会ってすぐにはしないような質問もしていいか?」

「ええ、もちろんよ~」

 

俺はついさっき『それ』に気がついた。

浴衣や着物独自で持つ『それ』の意味に。

 

「なあ、幽々子は、その、言いにくいんだが――亡くなっているのか?」

 

辺りの空気が強張った感じがする。

霊夢や妖夢も会っていきなりの質問の内容に驚いている様子だ。

 

俺は、幽々子の目が少ほんの少し、一瞬細められたことを見逃さない。

会ってすぐのような雰囲気が目前の彼女に戻る。

 

「……どうして、そう思ったの?」

「――その服、()()()()()?」

 

着物は普通左前じゃなく、右前だ。右利きが多く、懐へものを入れたり、その逆の取り出しがしやすいよう。

ただただ左が下か右が下かの違いだ。間違える人もいる。――()()()()()()

 

ここが外の世界なら俺は、ああ間違えたんだな、くらいにしか思わない。

だが、ここは幻想郷。洋風の文化が殆ど入っていない。入ってるとすれば、レミリアのとこぐらいだろう。

着物や浴衣を着る習慣がないから間違える。それは、洋服を着るのが主流になったから。

 

幻想郷では洋服など殆ど存在しない。存在しても、さっき言ったレミリアのとこ。もしくは、朝に紫が運んでくれた俺の洋服だけだろう。

 

そうなると、この着方はわざとだろう。左前――それは、死者に着物を着せるときに用いる着方だ。

 

そうなると、『そういうこと』なのだろう。

 

「……ああ、ごめんなさいね。間違って――」

「こんなに大きい和の屋敷を持っていて、着物や浴衣の着方一つを間違えるのか?」

「……今日はたまたま間違えたのよ。いつもは間違わないのにねぇ……?」

「いや、それもないな。妖夢が気付くだろ。俺と霊夢が来たのが昼少し前だ。その間妖夢が一回も幽々子に会わない可能性は低いだろう。それに、いつも間違わないってんなら、今だけってのもおかしいだろ」

 

――静寂。それは、ほんの数秒なのかもしれないし、数分と静寂にとってとてつもなく長い時間だったのかもしれない。

最初に口を開いたのは、幽々子だった。

 

「あっはははは! すごいわね、天! 紫から聞いていた以上だわ! あっはははは!」

 

幽々子は緊張感の欠片もない、屈託のない笑顔を浮かべていた。

腹を抱えて、目尻に少し涙を浮かべる程に。

後ろの妖夢と霊夢も少しほっとした様子で微笑を浮かべていた。

 

「にしても、鋭い洞察力ねぇ~普通は死んだ人間が目の前で自分と会話しているなんて思わないわよ?」

「幻想郷は何度も俺の常識を覆してきた。ここは冥界だ。死人の可能性もきっぱりと否定できない自分がいた」

「いや~面白かったわ……その通り、私は死んだ人間で、今は亡霊よ。ちなみに、幽霊とは違うわよ?」

 

そうなのか。同じような感じもするが……

 

「違いは?」

「死んだ時“生への執着”があったら亡霊、なかったら幽霊。幽霊は基本地獄か天界に送られて輪廻転生よ」

「じゃあ、幽々子は生に執着があったのか?」

「いいえ。色々とあって、亡霊のまま過ごしてるわ。地獄には閻魔様にあたる相手から、能力の関係もあって冥界の永住を認められてるの」

 

やっぱ閻魔様はいたのか。

宴会のときに種族云々について聞いたが、閻魔様とかもいそうだと思っていたのだ。

 

「幽々子も能力持ちか。何の能力だ?」

「それはね、『死を操る程度の能力』よ。中々でしょ?」

 

……うん、毎回毎回思うんだけどさ。

――チートの能力がちょくちょくあるよね。俺がいなくても幻獣程度は大丈夫な気がする。幻獣見たこと無いけど。

 

「まぁ、この能力で幽霊や霊体の存在も自由に扱えて、冥界でそれらの管理を任されてるのよ」

「へぇ……ってことは、俺の命も思いのまま、なのか……?」

「ええ。けど、そんなことしないわよ。そんな顔しないで」

 

俺はどんな顔をしていたのだろうか。

 

 

 

「じゃあ、そろそろ本題に入りましょうか」

 

 

 

幽々子は扇子を広げて口元を隠す。

先程までの笑みは完全に消え、瞳は真っ直ぐに俺を見つめている。

 

「最初に言ったけど、天、貴方については紫から聞いているわ。武器や能力のことも」

「そこまで聞いてるのか」

「ええ。武器はもうこちらで用意しているわ。それも、とびきりの一級品を、ね。……妖夢、悪いんだけど、『あれ』持ってきて頂戴」

「かしこまりました。では、失礼します」

 

妖夢は障子を開けて部屋を出る。

 

「そういえば、幽々子。能力について新しくわかったことがあるんだ。紫にもまだ言っていない」

「何がわかったの?」

「俺の『努力』の能力は、目標にかける思いが強ければ強いほど結果も良い方に向くらしい」

 

そこで、今まで無言だった霊夢が口を開く。

 

「それについては私からも説明するわ。昨日の夜、霊力の増やし方を私が教えたの。それで、朝まで天が練習してたらしいの。私が起きたときには、格段に霊力が増えていたわ」

「大体どのくらいに増えたの?」

「……それは、実際に感じた方が早いわ。天、全力で霊力を出してみて。あまり出しすぎると気を失って倒れるから、全力といっても程々にね」

「了解。……よいしょっと」

 

俺は正座から立ち上がり、目を閉じる。

霊力をイメージ、そして一気に――外へ!

 

「――ぇ?」

 

俺は目を開く。幽々子は信じられないといった表情をしている。

そこで、部屋に妖夢が戻って来る。

 

「お待たせし――! ……天君はどうして、そんなに霊力を持っているんですか……? 普通の人間、ですよね……?」

 

妖夢も驚くほどか。まあ、霊夢のあの驚き方だったしな。完全に俺を退治しようとしてたし。それに比べたら抑えてる方か。

 

「……ねぇ、霊夢。これ、本当に一晩で増やしたの?」

「ええ。夜に確認したわよ。その時の量は完全に常人のそれだった。特別最初から霊力が多かったわけでもないわ……もう霊力抑えていいわよ、天」

 

俺は霊力を収める。……結構疲れるな。体力的にも精神的にも。

 

「しかも、霊力を自由に扱えるの……?」

「何でも、紫の指導らしいわ。」

「紫が!? あの紫よ? 睡眠時間は!?」

「ええ。私も少し驚いたわ。寝る時間を大幅に割いてまでこの子に強くなってもらいたいんでしょ」

 

紫が俺にそこまでしてくれていたのか。今度会ったらお礼からだな。

そこで、俺は妖夢の持ってきた物に気付く。

それは、俺が武器で使う予定の、刀だった。

 

「幽々子様、刀をお持ちしてきました」

「ありがとう、妖夢。……天、この大太刀を貴方にあげるわ。これを今後使いなさい」

 

差し出された刀を受け取る。

鞘は黒一色だが、柄は横に寝かせて見た時、縦方向に赤、青、黄色の三色で分けられていた。

 

そして何より、一番目に着くのは――その恐るべき長さだった。

俺の身長は180cm前後、刀を立てたら、恐らく俺の腰より少し上まであるだろう。身長の8割より少し長いくらいか。

妖夢の刀も、彼女の身長の約8割ほどあった。彼女の身長は見たところ150cmほど、その8割なので、

刀の長さは120cm前後。それでも十分長い。

 

だが、俺の身長となると8割以上は……刀の長さが145cm以上になる。

まず、素人の俺では抜けないだろう。で、鞘を投げ捨てるなりなんなりして抜けたとしよう。絶対に扱えない。

その重さに耐えられずに落としてしまうだろう。振るなんて以ての外だ。

 

「……幽々子、俺、これ使える気がしないんだが。長すぎだろ」

「ええ、そうね。でも妖夢もおんなじ感じよ?」

「いや、妖夢は……」

「なに? あなた、女の子に負けちゃうの? 私は、できると思うんだけどねぇ……?」

「……ああ! わかったよ! ……それを使わせてもらうよ」

「ああ、ちょっと待って。一応この刀の説明をするわ。……もしかしたら、使いたくなくなるかもしれないしね……」

「……何か、その大太刀は訳ありなのか?」

 

「ええ。この刀の名前は――『妖刀 神憑(かみがかり)』よ」

 

「かみ、がかり……妖刀ってのは?」

「――その刀は、能力を持っているの。いえ、正確には、その刀に宿された魂が神の力を無理矢理取り入れて、自分の物にしていたの」

「それで?」

「その能力は、刀の使用者が自由に使うことができたの。でも――この刀の使用者は一週間ちょうどに()()()()()()()()()()()()()()()()

 

幽々子以外の三人が目を見開く。

どう考えても必然的だろう。全員が能力暴走で、きっかり一週間で亡くなるとは思えない。

多分、その宿されている魂という奴がわざと暴発を起こしたのだろう。それ以外に考えられない。

 

「それで、その刀は使()()()()()()刀として忌み嫌われて、使用されなくなったの。だから、妖刀」

 

なるほどな……不吉なことこの上ないな。そもそもこの長い刀を使おうとする人も少なかろう。

 

「でね、その使用者の一人だった人がこう言っていたらしいの。『一週間で、私にあなたの器を示して。って刀の魂に言われたんだ』ってね」

 

ふむ……ただ単純に力が足りなかったから、剣士として弱かったから、という理由ではないだろう。

そう……何か、別の要因があるはずだ。そうでないと全員は殺されないだろう。

考えるのは後でも良い。その刀についてもう少し深く聞いてみるか……

 

「なぁ、幽々子。使用者が死ぬ云々は一旦置いといて、その宿された魂は何の神の、何の能力を取り入れたんだ?」

「全部で3つよ。カグツチの火、ミヅハノメの水、タケミカヅチの雷よ」

 

……は? みっつも? これ最強なんじゃ……

火で灼きつくすもよし、水で呼吸活動止めるもよし。雷で感電させるもよし。

上手くいけば最強、いかなかったら一週間で死、か……

なんという極端なハイリスク・ハイリターンだろうか。

 

「正直私が言うのもなんだけど、この刀の使用は安易に考えないでね。勿論、他の刀も――」

 

 

「いや、俺この刀使うわ」

 

 

「「「ええええっ!?」」」

 

俺以外の三人の絶叫が聞こえる。

実際、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ちょっと天! あなた、もう少し自分の命大切にしなさいよ!」

「そうですよ、天君! 貴方が死んだら刀を教えるどころじゃ――」

「いや、大丈夫だろ。死んでも幽々子が何とかしてくれるだろ。だったら問題はねぇよ」

「いや、何とかしてみるけど……それでいいの? 確かに私は貴方に『この先はこの刀を使うように』って言ったわ。けど、強制じゃないのよ?」

「だってこれ強いんだろ? 俺がもしこいつにやられるなら『結局その程度』ってことだろ。そんなんで幻獣倒せねぇよ。これから戦っていく上で命の危機は嫌というほどあるだろ。その一回目がこれで、予行練習みたいなものだと思えばいいさ。死ぬのは怖いよ? けど、これで逃げ出してちゃ、俺は何のためにここに来てんだよ。俺がもしそんな精神のヤツなら、そもそも幻想入りしてねぇだろうよ」

 

三人が三人呆れた表情をする。そんなに俺のこと呆れちゃうの?

俺悲しくなるよ?

 

「まあ、私が渡す刀だし、それなりの責任は負うつもりよ。……じゃあ、この刀を使うってことでいいのね?」

「ああ、さっきからそう言ってるだろ」

「……わかったわ。一先ず、刀は後にして――お昼ご飯にしない? 私、もうお腹がペコペコなのよ……」

 

さっきまでの緊張感が一気に霧散していく。

今度は幽々子以外の三人で呆れた表情を見せる。

 

「じゃあ、私はご飯を作ってきますね」

「あ、俺も手伝うよ」

「え、天は料理できるの?」

 

一応できる。人並み以上には。結構練習したしな。俺は高校から一人暮らしをしている。だから必須になってくるんだよ、料理スキルは。

今思えば今までで一番苦労した努力は、案外料理かもしれない。なのに必須なんだよなぁ……

 

「ああ、できるぞ、霊夢。和のメニューも結構あるぞ」

「じゃあ、天君は私を手伝って下さい。これからも手伝ってもらうことがあるでしょうから」

「言われなくとも毎日手伝うつもりだよ。じゃ、幽々子、霊夢、ちょっと待っててくれ」

「「ええ、わかったわ」」

 

俺は来る時と同様、妖夢に案内をしてもらいながら台所へ向かう。




ありがとうございました。
妖夢の口調は霊夢など親しい人に対しては敬語じゃないらしいのですが、
口調が安定していないキャラらしいですね。この作品では敬語で統一させることにしようと思います。
刀の能力が強すぎますが、無双させる気は全くないのでご安心を。
ではでは!

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