② 分裂の杖
俺が溜め息を吐いたのは、残念ながらセクハラ男のせいばかりじゃない
それ以上により深刻な問題で… 今、俺の目の前には六花が居るんだよな… ってそう、もう一人のオレガイル
その理由は実に簡単でバラモスブロスとの戦いの際にヤツの手下に分裂の杖でおもいっきしぶん殴られた結果、効果が発動しちゃってくれたもんだから俺が二人になっちまっていたんだが… マジにどうすりゃ良いんだよ?
………まぁ、取り敢えず俺は… うん、六花が行けば良いんだからわざわざボーダー基地に行かなくても良くね?
ってそう思っていたら
「 今日から菜の花ちゃんは俺の… 俺専属のオペレーターにならないか? 」
そう言われて思考が停止した
「 はぁ? ナンでそんな事をしなきゃいけないんですか…
私が貴方のオペレーターになりたいと思う様な好感度なんか有るわけないじゃないですか、ゴメンナサイ
やっぱり貴方のオペレーターにならなきゃいけない理由が全然わかりませんからお断り致します、ゴメンナサイ 」
そう早口でどこかのアザと系の誰かさん ( 誰かさんって誰だ? ) みたいに言ったら
「 俺のサイドエフェクトがそう言ったからじゃ理由にならんか? 」
そう言われて理解の外のその言葉を言われてナニも言い返せずに黙り込んでいると
「 お前が太刀川と同じ教室で授業を受けている場面が見えたし共に同じ大学に進学することになる… 」
更に追い討ちを掛ける様にそう言われて
「 マジですか… 」
思わずそう呟いてしまっていたんだが
「 わ、私が高校の授業に… つ、ついていけるわけ… な、ないじゃないですか? 」
辛うじてそう声を絞り出すと
「 大丈夫だ、どういう訳かは知らんがお前さん頭よくて学年一位になってるし太刀川の勉強の面倒見る羽目になっていたからなっ♪ 」
そんな事を笑って言われて
「 ますます訳がわかりませんけどっ! 」
そう強い口調で言うとやはり笑いながら
「 問題無い、俺だって意味迄わかっている訳じゃないからな? ただ… 」
それまで飄々と語っていた迅悠一の口調に迷いが出てきたからチャンスと思って反論しようと…
( えっ? ナニ… 聞こえないんだけど? )
「 奉仕部… 」
( はぁ?ナニそれ… ワケわからないんだけど? )
「 雪ノ下、由比ガ浜… 」
( ………し、知ら… ない、そんなところになんか…行ったこと、ない )
「 あ、頭が痛い… し、知らない、お前達なんか知らない… ど、どっかいっちゃえ… 消え失せろっ、俺の前からっ! 」
そう叫ぶと
ー ラリホー… ー
もう一人の俺の呪文で強制的に眠らされ、次に目を覚ましたのは陽太郎が目を覚ましてからの事だったが頭がずきずき痛みナニも考えられない…
あ… 陽太郎… 陽太郎が笑ってる… そっとその身体を抱き締めると温かくてホッとしたら再び眠りに落ちていた
③ 六花と菜の花と出水公平
「 迅、お前が呟いた雪ノ下って言うとやはりあの雪ノ下か? 」
その嵐山さんの問い掛けには答えずに
「 わかりません、わかりませんが… 一瞬、黒髪ロングの美少女とピンクがかった茶髪の女の子が見えたがその黒髪ロングの美少女は雪ノ下夫人に似ていたのは確かでしたが… 」
その二人の会話に全くついていけない仮入隊の二人と興味のない六花
その六花、迅悠一は静かにこう言った
「 間も無く行われる隊編成でイヤでも菜の花の取り合いになるだろうな…
その争いに参戦しないのは桐絵と六花の二人と既に隊を組む事が決まっている木崎と六花と仲の悪い三輪が素直に隊を組もうとは言えないこの二人位だろう 」
そう言われて
「 面倒臭い話だな… 」
鼻で笑ってそう言うと
「 いっその事争奪戦でもヤれば? 俺 =菜の花に選べないし、誰と組みたいとか言えるほど皆の事をしってるわけじゃねえんだからな? 」
そう俺が迅悠一と話していると
「 じゃあ俺もリタイアかな? 三輪との友情は裏切れねえからな 」
そう言って、ニヒルな笑い方をする出水の言葉を聞いて
「 アンタって、その見掛けによらず義理堅いヤツナンだな? 」
そう言って笑い掛けると
「 まぁな… って見掛けによらずってのは余計だっつうのっ! 」
暗にチャラいって言ったのに気付いた出水公平が怒ってそう言うから
「 仕方無いだろう… ホンの少しだけ勇気を出して思っている事をはっきり言っただけなんだからな? 」
笑いながらそう言ってやったらホントに嫌そうな顔をしていた
目を覚ました陽太郎が愚図りだし、その泣き声の感じからミルクらしいから準備を始めていたらいつの間にか菜の花も目を覚ましていたらしく… 陽太郎のおむつを換えていた
そんな菜の花に仕上がったミルクを手渡すと堂にいった手付きで陽太郎を抱き上げるとミルクを飲ませ始めたから任せることにして飯の支度を始めた
腹が減ったのは陽太郎だけじゃないんだからな
俺が料理と言うか鍋の支度を始めるのを見て
「 何か手伝おうか? 」
そう言ってきた出水に
「 特に手伝ってもらうことはないが… 四人は辛口平気か? 俺はどっちかってゆーとちょっと辛いくらいが好きなんだけどな? 」
「 任せる 」 そう答えたのは嵐山さんで
「 俺も辛い位が丁度良い 」 迅悠一もそう答え
「「 同じく 」」 出水公平と
そう四人の答えが返ってきたから
「 なら、クーラーボックス出してよ? 冷たいお茶が欲しくなるからな 」
そう笑って言ったら
「 冷えてるのか? 」
って失礼な事を言った迅悠一を氷漬けにしてやろうかと思ったら、頭の上からクラッシュアイス洗礼を浴びていて菜の花が 「 フッ 」 と笑うのを見て俺もニヤリと笑い
「 俺達氷雪系の呪文が得意なんだけどね? どうだ、迅悠一、涼しくなったか?
出水さんと辻さん、笑っちゃ迅“さん"失礼だろ? 」
と、言った俺が一番笑ってるけどな
まぁ、菜の花を怒らせた迅悠一の自業自得なだけに犯人がわかっている嵐山さんも苦笑いするだけだったし俺も同情する気は微塵もない
ミルクを飲まし終えたけど、未だに目をぱっちり開けている陽太郎をおんぶ紐で背負った菜の花も一緒に食べる事になり巻物から弁当を取り出すことにした
俺が海鮮ちらし寿司取ると男四人は漬け丼に菜の花はネギトロ丼
俺が弁当を配ってる間に嵐山さんが豚キムチ鍋をよそってくれたから皆揃って食べ始めることになり
俺は普通のラー油を振り掛けると菜の花はマッドドッグプルトニュームをたっぷりと振り掛けているのを見て苦笑いしていたら
「 あれってもしかしなくてもマッドドッグプルトニュームか? 」
そう言って、顔を青くする嵐山さんが俺に聞いてきたから
「 そうですね、嵐山さんもご存知でしたか 」
俺にそう言われて
「 まぁな、一応チェックはしているが… 」
そう言って顔をひきつらせる嵐山さんに
「 そのマッドドッグプルトニューム… と、やらはなんなんだ? 嵐山さん 」
そう迅悠一が問い掛けると
「 今、世界で一番辛いスパイスだ 」
と、答えたのは菜の花で
「 そんな事はどうでも良いでしょ? それより嵐山さんに聞くけど迅悠一が言ってた高校進学… 私も住民票とかないんだけどどうやって学校に行くって言うのですか?
後、私の立ち位置はどうするの? 六花 」
そう二人に聞いたら
「 美少女姉妹、六花の姉で良いんじゃないのか? 」
迅悠一そんな事をほざくから
「 迅悠一は黙ってろっ! 「 なさいっ! 」」
そう言って迅悠一は黙らせ… 美少女云々はともかく姉妹は妥当だとは思うけど迅悠一に言われたのがあまりお気に召さないらしい菜の花の声は怒気を孕んでいる
「 あの大規模侵攻で施設等のハード面はもちろん、あの混乱で不具合の起きたソフトの中身のデーターも飛んでしまって修復作業中らしいが完全復旧には程遠いらしい
理由は破壊もさる事ながら停電の影響もあるせいでサーバーにも被害が及んでいるためそういった方面にまで影響が及んでいると言われている
なので今の三門は特例法で未成年は特に後見人の署名捺印で国籍の再発行が認められているから城戸さんか林堂辺りが後見人になったら問題なく取得できるハズだ 」
そう言われて
「 そうですか… ならお忍田さんや沢村さんに相談してその辺りの手続きを頼み… 六花には暫くはここを任せても良い?
私は編入試験の勉強をしておきたいしオペレーターの訓練も受けておきたいから… 頼んでも良い? 」
そう言われて、特にイヤとゆー理由はなく
「 じゃあ暫くはあの部屋で寝起きしてその学校に近いところか通学に便利な所にアパートを借りたら良いんじゃないの? 」
そう言ったら
「 六花の通う学校もそれによって変わるから早目に決まるようにするね 」
そうシリアスに話ながら箸は止まらず二個目の海鮮ちらし寿司を食べ終えて三個目のウニイクラ丼に手を伸ばしている菜の花
まぁ俺ももうすぐ二個目のネギトロ丼を食べ終わるところだから人の事は言えた義理じゃあないけどな
「 所で話は変わるんだけど飯食った後どうする?
嫌じゃなかったら潜る? 嵐山さん… 新鮮な海の幸が取り放題だよ? 」
そう言ったら嵐山さんとナゼか迅悠一が………… あぁ、菜の花の水着姿か… って思ったら出水と辻の二人もそわそわしているからこの二人もかよ? そう思ってしまった俺は間違ってない
そんな訳で水着に着替えたんだけど… 客観的に見る自分? の水着姿ってゆーのもな…
それにしても忍田さん… やっぱり貴方の趣味と言うかセンス疑いますよ、この俺達の水着… パレオ着けたらもろセーラー服じゃんか?
そう思っていたらビキニを期待していたらしい迅悠一があからさまにがっかりしていたんだがお前の事情は知らんからな?
どのみち菜の花は狭いながらも唯一? の浅瀬で陽太郎と遊んでいるんだろうからな
そう思いながら嵐山さん指導の元に準備体操をして、ヨットから持ってきたシュノーケリングの道具を装備していざ海中に参らん
透明度の高い海の中は気持ち良くて暫くは気ままに泳ぎ回っていたけど獲物が集まってきた… ほら、あの重苦しい重低音のBGMと共に現れる大型肉食魚類? のアレがさ
もちろん、マヒャド喰らわして一網打尽だけどな
その後で、嵐山さんと一緒に貝やら海老やらを沢山獲ったし魚も突いた
『 晩飯は海鮮バーベキューだから充実したメニューにしたきゃ頑張れよ? 』
そう言わなくても頑張ってる嵐山さんは別にしてその他の三人にハッパを掛けてやったら以外?にも水中銃を巧みに操り色々と仕留めたからチョッと驚いた
その結果、かなりの成果を上げて豪華な夕げになったんだけどな
もちろん途中交代した菜の花も仕掛けておいた地引き網をゴーレムに引かせ大漁だったし潜っては結構良いのを獲ってきた
余談ではあるが獲りすぎた感はあるので一部の魚を持ってルーラで木崎さんの元に跳んだら晩飯のメニューに迷っていたらしくて即決で買い取ってくれた、城戸司令もボーダー隊員集めてバーベキューするって言ってね
肉食の巨大魚も知り合いに引き取ってもらって換金してお小遣いになった
④ 二度目のダンジョン攻略
翌朝の早くからダンジョン攻略を始める俺達は、オペレーターを菜の花に任せ迅悠一は馭者として馬車に待機で俺、嵐山さん、出水、辻の四人で戦う編成に変わったが菜の花とお留守番は満更でもないらしく対照的に菜の花はあからさまに不機嫌そうだった
だが、諦めろ… 今のお前は魔法使い寄りの賢者って感じでますます力の数値が落ちてるんだからな?
逆に俺は力の数値が少し上がって剣を振るのが楽しくて仕形がない
スコーピオンの二刀流➕投げナイフと爆弾岩のかけら、アステロイド、バウンド、メテオラ、バイパー、トラップの装備がますます生きてくるんだがダンジョンでは使わないからスコーピオンを一本とダンジョン用に氷のクロスボゥガンを持たせておく事にした
うん、重苦しい沈黙だ………………………
「 ……… 」 菜の花
「「「「 ……… 」」」」俺、嵐山さん、迅悠一、辻、出水
「 Zzz…… 」 陽太郎
その沈黙を破ってくれたのは陽太郎で急に愚図りだしたからオムツを換えミルクを飲ませていたらモンスターの接近、菜の花は
「 敵は二時の方向で待ち構える氷岩魔神30体と八時の方向から接近中の火喰い鳥20体ですからまずは火喰い鳥の迎撃をお願いします
ー スクルト ー
ー ピオリム ー 」
そう指示を与えるとともに、補助呪文を重ね掛けした上に
ー フバーハ ー
と、火喰い鳥の火の息対策の呪文を更に重ね掛けして火喰い鳥の襲撃に備えている
菜の花のマヒャドで先制攻撃を仕掛けそれを合図に嵐山さん、迅悠一、出水公平がボゥガンで迎え撃つと火の息を吐いて応戦してきたのに…
俺は陽太郎にミルクを飲ませているので、もう暫くは戦闘に出られないから菜の花には鼻で笑われたし… マジにムカつく
ミルクを飲み終えた陽太郎が、健やかな寝息をたてて眠りに落ちてくれたから寒くないようにあって通信のブランケットを掛けてやりトベルーラで参戦
八本のマジックナイフを投げつけ命中、その内の三体を魔法の筒に取り込み捕獲に成功
残りの敵も多少てこずったみたいだけど撃退し退け挟み撃ちと言った事態にはならずに氷岩魔神に向かう事ができる
もちろん、まずは俺のイオラの先制攻撃から始まり接近するまではボゥガンで応戦して接近戦
再びマジックナイフ八体を投げつけ突き刺さると爆弾岩同様にバラバラと崩れ落ちて後はなし崩し的に全滅へと導いた
ドロップアイテムは破邪の剣、炎の盾、イカヅチの杖に… 石化の杖? 力の指輪三個に山彦の腕輪… 帽子じゃなくて? 弟切草 10 魔法の聖水 5
アイテムを全て回収し終えて、再びダンジョンの奥を目指す俺達だったんだけどダンジョンの寒さはいよいよ酷しいモノになってきた… トリオン体じゃない生身の陽太郎にとってはね