◯月F日
おかしい。五河家に来たのに、士道以外誰も居ないなんて。もしかしてあれ? 好きな男と二人っきりにして、その反応を楽しむやつ?………家中捜し回ったのに士道以外誰もいない。え?夕食の買い出しに行った? それを早く言いなさいよ!
どうしよう………。な、何か話さないと。………全然思い付かない。はぁ、本当にどうしよう。げ、ゲーム?………別にいいけど。ジャンルは格ゲーか。私、こう見えて結構格ゲーとか得意なのよ?………悪かったわね、以外で。士道のバカ。
ふんっ、謝っても手加減なんかしてあげないんだから。
っ!?ちょっ、士道!そんなに、くっつかないでよ!
つい、大声出しちゃったけど ………どうしよう、心臓が、うるさいぐらいバクバクいってる。自分でも顔が赤くなってるのが分かる。意識しちゃってる顔を見られたくなくて、思わず反射的に顔を逸らしちゃった。
凄く気不味い。どうしよう………。えっ?ホラー映画?全然怖くなんかないわよ!以外で悪かったわね!どうせ私は背が小さくて体も貧相な根暗ロリよ!
つい啖呵切っちゃったけど、ホラーとか正直苦手なんだけど。ま、まぁ、偶然とか装って士道と手とか繋げる絶好の良い機会よね。大体こんなの、ただの作り話じゃない!こんなのに怖がる事なんてないのよ!
ぎゃゃゃゃゃぁぁぁぁぁ!ぅきゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!士道、どんどん人がゾンビまみれになっていく!?ちょっとそれ死亡フラグ!だ、ダメ‥‥……む、無理!怖すぎて夜寝れなくなる!って………士道、いつの間に手握ってたの?
私が怖がりそうな所から?…………ありがと。っ!えぇそうよ!啖呵切ったのは良いけど、予想以上に怖くて終始怯えてたわよ!悪かったわね!その………気使わせて、ごめん。うん。次からは素直に言えるように努力する。
あ、みんな帰って来た。ちょっと美九!ホラー映画プレイって何よ!言わなくて良いわよバカ!
◯月G日
ゾンビの顔が脳裏に焼き付いて眠れないから日記を書こうと思う。とりあえず、炬燵のスイッチを入れてホットミルクを用意する。士道も眠れない時はこうしているらしい。炬燵に入りミルクを一口。顔を上げると電源の入っていないテレビの液晶画面にコップを持った不機嫌な自分の顔が写る。
いろんな表情をしてみても、死にかけの人間が無理やり笑顔を浮かべたりガンを飛ばしているようにしか見えなかった。一人で何やってるんだろ、バカみたい。今日は、炬燵で寝ようかな。もし風邪引いたら、士道が看病してくれるかな………。炬燵に入りながら士道の顔を思い浮かべるだけで、不思議と眠くなって意識が薄れていく。
寝る前に、お休み士道。
◯月H日
へっくちゅん!けほっ、けほっ!38度6分。どうしよう、本当に風邪引いちゃった。ただの冗談だったのに………。
とりあえず着替えないと……。あれ?ボタンがうまく外せない。きゃぁっ!?ちょっと士道!いきなり部屋に入って来ないでよ!びっくりするじゃない!
あー、琴里に聞いたのね。でも大丈夫よ。このぐらい、大した事ないから。それに私の看病なんかしてたら、どんな病気にかかるか分からないし、こんな根暗でブスで貧相ロリの看病なんて拷問以外のなにものでもないでしょ?大丈夫、大丈夫だって……あれ、視界が揺れて…………士道?なんで士道の顔が、こんなにも近くにあるの?もしかして私…………今抱き締められてる?
真剣な顔で士道が、私の言葉を否定してくる。
『そんな事ねぇよ。ネガテイブな所も七罪らしくて良いじゃないか。人間の個性なんて人それぞれなんだからさ。それに、これは俺がやりたくてしてるんだ。もし、七罪の風邪が移っても七罪が看病してくれるだろ?』
ほんと、士道のバカ。そんなの当たり前じゃない。もし、私の風邪が移ちゃったら、責任持って看病してやるわよ!
そこで、私の意識は途絶えた。
◯月I日
目を覚ますと、士道が私の手を握っていた。目が覚めたら好きな人が手を握ってくれていたとか、アニメや漫画だけだと思っていたんだけど。実際に体験してみると嬉しさと恥ずかしさ、そして安心感が込み上げてくる。士道の寝顔、可愛い。もしかして、ずっと私の看病してくれてたのかな?…………そう思うと顔が綻んでいるのが分かる。好きな人に看病してもらえるなら、こんな生活も悪くないわね。……………今日は、このままでいようかな。
…………士道、瞬閃轟爆破ってなに?
◯月J日
37度2分。そろそろ熱も下がって来たし、もう大丈夫ね。
士道、今までずっと看病してくれてありがと。もし、看病して欲しくなったら言いなさいよ?少しくらいは役に立てると思うから。風邪を引いた士道を看病する自分の姿を想像してしまい、不謹慎だけどそういうのもアリだと思ってしまった。ま、風邪なんて引きたくて引くものじゃないわよね。私ってば何考えてるんだろ………。
ちょっと、なんで士道まで風邪引いてんのよぉぉぉぉぉ〜〜〜!!
お待たせしてすみませんでした〜!!m(_ _)m