銀魂 赤獅子篇   作:to.to...

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本編
プロローグ


 黒塗りの空に、鈍く輝く三日月の夜。

 

 そんな江戸の街外れに、提灯を下げた男が一人。

 彼は同心であり、見廻りの警務を行っていた。

 

 

「……ちょいと、お巡りさん」

 

「む……」

 

 

 そこに男の声が一つ。

 声の主は、人気の無い路地裏に佇んでいた。

 夏と言えど夜は暗く、その姿の全容はうっすらとしか見えない。

 更に外套を羽織っているため、顔は闇に浸されていた。

 

 

「何用だ?」

 

 

 不審に思いながらも問いかける。

 

 

「えぇ。実はこの通り、灯りが消えちまいまして。火を分けていただけるとありがてぇんですが……」

 

「そうか」

 

 

 確かに手元には、明かりを失った提灯が下げられていた。

 その物言いに嘘偽りは無いようである。

 また、物腰の良さそうな口振りも、同心の警戒を解かせる要因となった。

 

 

「……いいだろう。貸せ、灯してやる」

 

 

 ぶっきらぼうに投げかけながらも、火を分けようと提灯の火袋をめくる。

 

 その一瞬だった。

 

 

「な……ッ!?」

 

 

 視線をそらした刹那に間合いを詰められ、伸ばした腕を掴まれる。

 と同時に、着物の袖を強引に巻くし上げられた。

 

 

「何をする、貴様!!」

 

「……やはり」

 

 

 何かを見つけたのか、小さく呟く。

 その声色は先程までのそれと、全く別種のモノであった。

 

 

「くッ……!」

 

 

 拘束を振りほどき、後方に跳躍して距離を取る。

 そして、腰に携えた十手へと手を伸ばした。

 

――――が。

 

 

「……うわァァッ!?」

 

 

 無かった。

 

 右腕が。

 

 正確には、肩から先が引きちぎられていた。

これでは物を掴めるはずもなく。

激痛に屈した同心は、その場に膝をついてしまった。

 

 

「ぐゥゥ……!!」

 

 

 苦痛に顔を歪めながらも、同心は相手の表情を伺う。

 落とした提灯から上がった炎が、顔の輪郭を仄かに照らした。

 布で隠れて目元までは見えない。

 だが肌の艶や骨付から、まだ年若い様に思えた。

 

 それよりも注意を引いたのは、両の手にあるモノだった。

 

 一方の手には、同心の右腕。

 

 そしてもう一方の手には、得物が。

 暗闇の中、その刀身は灯に当てられて、黄金色に揺らめいていた。

 

 

「……」

 

 

 もはや何も語りはしない。

 

 一方同心には、この凶漢に心当たりがあった。

 

 

「まさか……ッ!!報告にあった『警察狩り』とは、貴様のこ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジュッ……

 

 

 大通りから外れた、人影の無い小路。

 

 そこを微かに照らしていた小火が、音を鳴らして掻き消えた。

 

 水に当てられた様な音で。

 

 

 

 ……いや、実際そうだった。

 側で広がりつつある水溜まりが、火元に触れたが故に消えたのである。

 

 

 しかし、今日は雨が降っていただろうか。

 

 

 水溜まりというのはこんなにも――――

 

 

 

 

 

 

 

 

赤いモノだっただろうか?

 

 

 

 

 




お初にお目にかかります、tototoという者です。

 本作は原作銀魂の『将軍暗殺篇』の手前で分岐した物語、という設定となっております。

 原作が
『将軍暗殺篇』
『さらば真選組篇』
『烙陽決戦篇』
『銀ノ魂篇』
 と、四章を経て最終回に近づいて行くのに合わせ、

 本作も
『赤獅子篇』
『???篇』
『???篇』
『???篇』
 と、四つの長編を越えて、自分なりの完結に向かって行きたいと考えております。(間に短編が入る可能性アリ)

 また、ハーメルンでの投稿はこれが初となります。
 よって至らぬ点も多々あるかと思われますが、気軽にコメント・指摘などしていただけると幸いです。

 長期的な掲載を予定しておりますので、長らくお付き合い宜しくお願いします!

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