それは此処ではない何処か   作:おるす

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お待たせしました。試合前の準備回です。準備は大事。


八日目「部隊創設:試合が始まるその前に」

「あーくそ……どーしてこうなった……」

 部屋の隅に座り両手で顔を覆いながら自嘲する俺。胸中にあるのは後悔だけだ。勢いで啖呵を切ったものの、現役バリバリの花騎士さん相手に試合なぞ、俺はとうとう正気を失ったか……? いやいや、あの場はああするしか無かった、はず……あのまま物別れに終わったら、何日プー太郎生活をする羽目になるのか分かったものじゃないしな。あれで正しかった、うん。

 ……相互理解の提案をしてから場所は移り、ここは訓練場。試合をするにあたって全員でここへ移ってきたところだ。相変わらず木人や木剣が無造作に転がるこの場所は、ウメ先生と死合った記憶も新しい、大変思い出深い場所である。

 そう言えばウメ先生、元気にしてるかな……また唐揚げ食べたいな……

 思い出に浸りながら何とはなしに室内を眺めてみる。向こうでは花騎士三人達とエニシダが何やら話している。ここまでに移動しながら聞いた話だと、エニシダはブロッサムヒル所属の二人とは面識があるようだが、特に接点があったという訳ではなく合同任務中に二言三言話した程度の関係らしい。まあ、所属国家が一緒と言っても色々あるのだろう。同じ場所、会社、コミュニティに属していても、縁が無いとそうそう会話なんてしないしな。人の縁ってのはそんなものだ。

 更に奥を見ると、部屋の中央では急遽試合の準備をするにあたって、ナズナが訓練中だった花騎士達を一ヶ所にまとめて何か話し始めたようだ。何を説明しようとしているのだろうか? 少し気になったので、近寄って聴衆に混じり話を盗み聞いてみる。

「はい、えー。これからここでですねー。ちょっとした花騎士同士の試合が行われます。皆様の今後の糧になると思いますので、是非是非見学していって下さいね♪」

「おい、ちょっと待てぃ!?」

 思わず大声を上げてしまった。驚いた周りの人が俺の事を見て来るが、そんな事は今はどうでもいい。

「あら、イルさん。どうかしましたか?」

「俺は確かに試合をするとはいったが、オーディエンスのおまけまで付いて来るとは聞いてないぞっ!?」

「えー、いいじゃないですか。別に減るものじゃないですし?」

「俺の神経が減るんだよ! ずたぼろになるのを見られるのとか勘弁だからな!」

「いやいや、ここにいる皆さんの経験値になれると思って一肌脱ぎましょうよ? 物理的にも精神的にも?」

「いやいやいやいや、そんな人身御供みたいに言わないでくれる!? ……って、ちょっと隣のあんた、何で顔を赤くしてる!? そういう趣味なの!? 絶対見られたくないんだけど!?」

 お互い一歩も譲らず主張をぶつけ合う。これではどこまで行っても平行線だ。

 ……だが、そんな所に救いの女神が現れた。

「こら、ナズナちゃん。あんまり私の愛弟子を困らせないでくれるかな?」

「……!? そ、その声は……!」

 凜とした声が響き、一瞬この場が静寂に包まれる。俺はこの声の主を知っている。何しろついこないだ死合った相手だ。間違えるはずがない――

「ウメ先生!」

「やあ、イル君。一昨日振りだな。……それにしても随分とお洒落になったものだ。それだけで大分見違えたように見えるな?」

「あ、はい。色々と幸運に恵まれまして。先生もご健勝そうで何よりです」

「ふむ……なるほど?」

 そこで言葉を切ると俺の顔をまじまじと見てくるウメ先生。

「……変わったのは見かけだけという訳でもないようだな。殊勝な事だ。大方この状況も君が何か提案したんだろう?」

「よく分かりますね。ええ、ちょっと啖呵を切ってしまいまして……」

「ああ、そんな事だろうと思った。本当に、すぐ無茶をするんだから……」

 互いに言葉を交わす俺と先生。王国最強と親しげに話す俺に余程驚いたのか、周りの聴衆も再びざわめき出す。そんな周囲に苦笑しながらもウメ先生は続けて話していく。

「……やれやれ。こんな状況では試合どころではないんじゃないか? ナズナちゃん、この場は仕切らせてもらってもいいかな?」

「え、あ、はい。ウメさんがそう仰るのなら……」

 少しだけ不服そうな顔をしながらも渋々と従う姿勢のナズナ。

「そういう顔をしないでくれないかな。代わりと言っては何だが、イル君とナズナちゃん、双方が納得できる試合形式を私が考えてあげよう」

 

 

「さてと、だ」

 ウメ先生の采配の元、試合形式が決められようとしていく。試合に参加する俺と三人、それとエニシダとナズナはウメ先生の号令で部屋の中央へと集められている。ちなみに、さきまでいた聴衆は部屋の隅っこに纏めて待機中だ。

「私がやると約束したが、まさかまだ何も決めていなかったとはな……まあ、おかげで仕切り直す手間が省けて良かったと考えるべきか」

「いやぁ、急な話だったもので……取り敢えず場所だけは確保しようと頑張っていたところだったのです」

 頬をかきながらバツが悪そうに釈明するナズナ。どことなく肩の荷が下りたように見えるのはウメ先生が仕切ってくれると分かったおかげだろう。これまで見た感じ、事務方だから人を動かすのには慣れていないのかな。

「……まあいい。それで、イル君とこちらの三人が試合をするんだったか」

「ええ。俺が是非手合せをして実力を見たいと提案をしたんです」

「私達も同じ意見よ。この子がどの程度なのか見定めないと、部下になるとしてもおちおち安心して戦えないもの」

 四人して首肯する。花騎士の皆さんもやる気満々なようだ。士気が高くて大変よろしい。俺としてはあんまりよろしくないが。

「なるほど、ならばイル君は三連戦することになるが……大丈夫か?」

「は!? さ、三連戦って……!」

「大丈夫です」

 顔を青くするエニシダを横目に即答する。まあこれは想定の範囲内だしな。向こうの三人もちゃんと納得しているようだ。

「……そして実力を見るという事は加護の異能有りでの試合になるが、本当に大丈夫なのか?」

「くどいですよ、ウメ先生。もとより覚悟の上ですので。これから部下になるかもしれない人達相手に礼を尽くさないでどうするんですか」

 ……本当は全く大丈夫ではないし、これから戦闘することを思うと気が滅入って仕方がないが。

 まあ今更がたがた喚いたところで何か変わるわけでもなし、せめて気取られないよう胸を張ってウメ先生の言葉に応える。

「まあそう言うのなら大丈夫なのだろう。だが、これだけは言っておこうか。……あまり無茶はするんじゃないぞ?」

「んー……ちょっとそれは自信無いです。というか、今無茶しないでどうするんですか?」

「ふふっ、それもそうだな。なら言葉を変えよう。……死なない程度に頑張れよ? 折角私が気合いを入れて教えたのだから、存分に見せつけてやるといい。……それじゃ、三人とナズナちゃんは向こうで順番でも決めようか」

 ニコリと微笑むウメ先生。それを最後に、他の方々と一緒に俺から離れ、話し合いに入っていった。その場に残されたのは俺とエニシダだけ。

「い、いい、イルさん!」

 ……そして二人だけになったタイミングを見計らいエニシダが慌てた様子で話しかけてくる。

「どうしたエニシダ」

「何ですか三連戦って! 聞いてないですよ!?」

「いや、全員の実力を見るんだし、普通は三連戦になるだろ?」

「私はてっきりあちらの代表一人と戦う程度だと……」

「いや、それだと角が立つじゃん。戦ってないのに納得させられた、とか後でごねられる可能性もあるし。全員平等に戦わないと」

「で、でもそれじゃイルさんの体が持たないです!」

「……持たせるんだよ。そのためにお前がいるんだろうが」

「へ……?」

 言った事の意味が分からないのか、キョトンとした顔でこちらを見てくるエニシダ。

「お前の魔法と、他に使えるものも全部使う。即効性の疲労回復とか怪我の治療とか、こっちの世界にはそういうアイテムもきっとあるんだろう? だから、それを試合の合間合間に使わせてもらうんだ。万全の状態で戦うためにな」

 エニシダに頭を下げて更に続ける。

「もちろん、使った分の金とかその他諸々はこれが終わったら利子も付けて必ず返す。だから頼む。俺が戦っている間に準備してくれ。お前なら箒で空飛べるし、色々掻き集められるはずだ。多分あんまり時間は無いと思うけど、何とかしてくれるって信じてる」

 そこまで言い切ると再び顔を上げ、エニシダの反応を見てみる。

「あぅ、えっと、その……」

 俺の急な頼みにしどろもどろになりながら思案している様子。相変わらず顔は真っ青だし今の話で涙目にもなっちゃったし、非常に頼りない。

 だがしかし、今の俺にはこいつだけが生命線なのだ。

「ううぅぅ……! そんな目をするのはずるいですよ……もう、分かりました。分かりましたからっ」

「じゃあつまり……」

「ええ、イルさんのお願い、聞いちゃいます! 街中ひっくり返して使えるものたっぷり持ってきますから! 首を洗って待っていてくださいねっ!」

 そう言い放つと訓練場奥の吹き抜けから箒に跨って飛んでいってしまった。……よし、これで仕込みは万端だ。あいつの言うとおり首を洗って待つとしよう。

「って、首を洗って待っちゃダメだな……それじゃこの場を生き延びてもあいつに殺されるみたいじゃん……」

 実際はテンパったエニシダの事だ。誤用と知りつつもつい口から滑ったのだろう。ここぞという所で間抜けなのが非常にあいつらしい。今頃は変な事を口走ったと自己嫌悪にでも苛まれているだろうな。

 飛んでいったエニシダについて思いを馳せながら時間を潰す。十分ぐらい経った後だろうか。ウメ先生とナズナが戻ってきたようだ。

「お待たせした。……おや、エニシダちゃんは?」

「ちょっとお使いを頼んでおきました。三連戦はしんどいので」

「ああ、なるほど。流石に無計画って訳ではなかったんだな。少しホッとした」

 ……いや、大分無計画だったんだけどな。この案も思い付いたのさっきだし。

「イルさん。私からもお話が」

 ホッと胸を撫で下ろすウメ先生と代わり、今度はナズナが話しかけてくる。

「話し合ってる間に昨日買った武器を持ってくるよう手配しておいたのですが、この試合で使いますか?」

「お、あのハルバードですか。是非」

「分かりました。ではあちらです」

 ナズナが先導するように歩き出す。行き先は訓練場の入口のようだ。

「侍女に持ってくるように言っておいたのですが、入口まで持ってきたら根を上げてしまって……」

「ああ、まああれ大分重いですからね……」

 程なくして入口に到着。そこには布に包まれた斧槍と、疲れ果てて座り込んでいる侍女さんの姿が……ってこの人は。

「……お久しぶりです。いつぞやの侍女さん」

「はっ、はああっ、ふぅ……え? あの時のお子さん……?」

「おや、イルさんはお知り合い?」

「何日か前に訓練場への行き方を教えてもらいまして」

 あまり人様の顔が覚えられない俺ではあったが、ド親切なこの人は何となく覚えていた。何やら見ると額から汗をダラダラと流しているし、すごく頑張ってくれたようである。女性の方に無理をさせてしまったようで大変心苦しい……

「まあそれは今はいいでしょう。はいこれ侍女さん、チップをどうぞ。何か飲み物でも買って下さいな」

「わわっと……!」

 ピーンと銅貨を指で弾き、侍女さんへと渡してあげる。こういう文化があるのかどうかは知らないが、お疲れの様だしこれで缶ジュースでも……ってこの世界には無いか。

「ありがとう……って、その武器あなたのだったの!? それ滅茶苦茶重いから気を付けて――」

「あ、よっこいしょいっとな」

「なっ……!?」

 片手で斧槍を持ち上げ肩に担ぐ。うむうむ、相変わらず良い重さで非常に頼もしい。傍らでは侍女さんが驚いて口をあんぐりと開けているが、見なかったことにする。この体になってからこんな反応なんてもう慣れたものだし。

「いやぁ、随分と軽々と持っちゃってまあ……」

「んじゃ、ナズナさん戻りましょうか」

「あ、はい。呆れてる場合じゃなかったですね。……ほら、貴方もお疲れ様です。急なお仕事を頼んですみませんでした。もういつものお仕事に戻っていいですよ」

「は、はいぃ……」

 

 

 武器を持って帰って数分後。

「それでは試合を始めようと思う」

 ウメ先生の至極簡潔な言葉を皮切りに、試合が始められることになった。

 試合形式はこうだ。

 

 ・何でもありの戦闘。相手が降参するか、審判が戦闘不能と判断するまで戦う。

 ・相手の殺害は禁止。それと五体満足で終わるよう、最低限の手加減はする事。また万が一の保険として防御の腕輪を着用すること。

 ・三対一という形式のため、一戦ごとに十分な休息を挟む。俺が十分な戦闘が出来ると審判が判断した後に次戦を行う。

 ・聴衆の観戦は許可する。ただし歓声をあげたり、試合の進行を妨げたりする行為をした場合には即座に退場してもらう。

 

「全員異論はないな?」

 この場にいる全員に問いかけるウメ先生。異論を挟む者などいるわけがなく、この場はシンと静まり返ったままだ。

「よろしい。ならばイル君とサンゴバナちゃん、前へ」

「はい」「はーい」

 返事をしながら前へ出て対峙する俺とサンゴバナさん。最初の相手はこの人か。経験豊富な方と聞いてるし、気が抜けそうもない相手だ。見るともう臨戦態勢に入ってるのだろう、双剣を交差させて構え、興味深そうにこちらを見ている。あれがこの人の得物か。二刀流はちょっと厄介そうだな……

 と、そんな風に相手を観察していたのだが、

「イルさん……その武器……」

「ん? ああ、このハルバードが何か?」

「すっごく……」

「すっごく……なんでしょう?」

 

「ものすっごく綺麗ですね!!」

 

「…………は?」

 くっはー、もう辛抱堪らんといった表情でサンゴバナさんはそんなことを言い放ってくれたのだった。

「ああ! ああ! 本当になんて綺麗なのでしょう! その黒光りする黒曜石! これでもかと言うくらい丹念に磨き上げられていて、作者の類稀なる技量、飽くなき執念を感じますっ! それにそれに、その黒曜石を被っていないところもまた……溶接された継ぎ目が全然見えないじゃないですか!? ああ、何という……」

 一息でそこまで捲し立てると、ふらふらとした危なっかしい足取りでこちらへ近付いてくる。

「ちょ、ちょっと?」

 止める間も無く斧槍を手に取り、そのまましげしげと眺め始めてしまったではないか。

「ああ、近くで見るともっと綺麗……! うーん、最の高。略して最高ですよ……! うふふふっ……可愛い可愛い……」

 斧槍にぺたぺたと頬擦りをしながら、うっとりとした顔でそのまま呟き続けるサンゴバナさん。やだ何この人こわい。第一印象がまともだったせいで落差にくらくらするぞ……

「はあ、全く……こらっ、サンゴバナちゃん! イル君の武器を返してあげなさい」

「……はっ! 私としたことが……!」

 見かねたウメ先生の一喝でやっと我に返ったようだ。即座に斧槍を俺に返してくれる。

「ごめんなさい。あまりにも綺麗だったのでつい……」

「あ、いえ、別に大丈夫です。……刃物好きなんですか?」

「ええ! それはもう! 刃物が好きで花騎士になったようなものなので!」

 えへんと胸を張り自信満々に答えてくれた。……想像以上に尖った感性を持った御方のようである。でもまあ、好きなものなんて人それぞれだしな。逆にここまで開けっ広げにフェチズムを話してくれると親しみが湧くというものだ。裏表の無い良い人なのだろう。

 だがそんな分析を始めた俺の様子に思う所があるのか、

「……? どうかしましたか? ……あっ、も、もしかして今のでちょっと引いちゃいましたか……?」

 不安で顔を曇らせながら、おずおずといった風に尋ねてきたのだった。

「え? あ、いや、別に引いてはいないですよ。ただ変わった感性持ってるなって感心してただけです」

「ああ、そうでしたか。それならよかった……」

 心底安堵したのか、ホッと胸を撫で下ろすサンゴバナさん。何だかこの人も色々抱えてそうだなぁ。好きなものが変わってるってだけで誤解されたり、白い目で見られて来たりしたのかもしれない。

 ……人というのはどうしたって普通と違うものを排除したがるものだ。先の反応を見る限り、今までの人生も紆余曲折、色々と困ることもあっただろうことは想像に難くない。

 そこまで考えると、どうしても一言言っておかねばならなかった。

「……一つ言っておきますが」

「……? 何でしょう?」

「俺は人と違う趣味嗜好を持ってるってだけで軽蔑したりは絶対にしないので、そこだけは安心してください」

「え、あ、はい?」

「あとはまあ、そうですね……無事に同じ職場に就く事が出来たら、何でも頼って下さい。俺ってしがらみとか何にもないから気軽だと思いますし」

「…………」

「……って、ああ!?」

 あ、やべ。今後の事を決める試合の前になんて申し出をしているんだ俺は……! これじゃ俺が勝つのは当然だとでも言ってるようなものではないか。

「ああああ、今のは忘れてください! 試合前になんて事を……」

 慌てて先の発言を取り消す。そんな俺の一人芝居を呆気にとられたように見ていたサンゴバナさんだが――

「…………ふふっ」

 何と、怒るどころか笑っておられるではないか。思わず凝視してしまう。

「イルさんは、何と言うか、不器用ですけど優しい方ですね」

「……はい?」

 何だか思いがけぬ言葉を掛けられてしまったぞ……?

「まだ二言三言話しただけですけど、何となく分かります。……貴方は根っからの善人ですね。いやむしろお人好し過ぎます。いくら未来の部下予定とはいえ、初対面の私に何でそこまで言うんですか。善意の投げ売りですか。そのうち痛い目を見ますよ?」

「いやいやいやいや、そんな事無いですからね。俺はやりたい事やるだけのただの一般人なので。ああ、今はもう元一般人に成り果ててしまいましたが……ともかく、お人好しでも何でもないので。痛い目も見ないので。と言うか、サンゴバナさんも大分お人好しじゃないですか?」

「な、私も……?」

「俺の主義主張や提案なんか鼻で笑ってくれてもいいのに、そこまで真摯に返してくれるなんてドの付くお人好しですよ。俺の事を言えないんじゃないですか?」

「し、仕方がないじゃないですかっ。そんな風に気遣ってくれた人なんて本当に久しぶりなんですからっ。そもそも――」

「おほん。君達、いつまで喋っているんだ。さっさと試合に移るぞ」

「あ、すみません……」「は、はい……」

 再度ウメ先生の一喝が飛んで来たため、舌戦は中断されてしまった。再び離れ所定の位置へ戻り武器を構える。

 ……それにしても、だ。今のやり取りで俄然やる気が出てしまった。何があろうともこのピンクのお人好しは仲間にしたい。何となくエニシダと属性が被ってはいるが、ネガネガしないし上位互換と言っても過言は無いだろう。それに刃物好きも見ようによってはプラスの技能だ。今後戦闘していくにあたって絶対に武器の知識は役立っていくだろう。

 向こうも向こうで、最初に見た時よりも心なしか楽しそうにこちらを見つめている。今の会話でやる気に更に火が付いたようだ。まあ、折角戦うのだからそうでないとな。ぐんにょりしてる相手を叩きのめすのよりかはよっぽど後腐れがない。

 そんな俺達の様子を満足そうに眺めたウメ先生が手を振り上げ――――そして降ろす。

「……始めッ!」

 その言葉を皮切りに俺達二人は同時に思い思いの行動を開始――

「――いざ」

「――尋常に」

「「勝負ッ!」」

 

 こうして、戦いの火蓋は切って落とされたのだった。

 




ようやっと試合開始ですね。
……開始した所で難なのですが次はちょっと遅れるかも。

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