Alternative Frontier    作:狼中年

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07 リザルト《結果》

 「これはまた、派手にヤってくれたな。」

 

 整備班長からの言葉にエクスの顔が苦虫を潰したような表情になる。

 

 エクス

 「すまない… 壊しちまって…」

 

 そう、先の戦闘でエクスは機体を中破させてしまったのだ。

 致し方ない状況だったとはいえ、これでは、何時も機体の面倒をみてくれている整備班のクルーに申し訳が立たないと思ったのだ。

 

 「お前さんが無事ならそれでいい。 機体は修理すれば直るからな!」

 

 エクス

 「宜しく頼む。 班長。」

 

 「おぅ! 任されたぜ!」

 

 そこへカロンとグラムの二人がやって来た。

 

 カロン

 「無事で何よりだ。 隊長。」

 

 エクス

 「二人とも、正直、助かった。 ありがとう。」

 

 グラム

 「まったく… 隊長は無茶しすぎなんですよ! 隊長に何かあったら、ティアさんが悲しむんですからね。」

 

 エクス

 「あぁ、そうだな… 気を付ける。 ティアは?」

 

 カロン

 「今は医務室で眠っている。 外傷は無いそうだからそのうち目を覚ますだろうさ。」

 

 エクス

 「…そうか。 よかった…」

 

 ティアの無事を聞き、安堵の溜め息を吐くのだった。

 

◆◆◆◆◆

 

 エクス達は今、ハンガーの1区画に向かっている。

 行き先はバルキリーの収容区画ではなく、戦術機が収容されている区画である。

 先の地上での戦闘で、前衛を務め戦線を立て直す一因になってくれた、唯依とまりもに礼をする為だ。

 

 唯依

 「! レーヴァテイン大尉。 なにかありましたか?」

 

 エクス

 「だから階級は気にしなくていいっていっだろう。 俺の事はエクスって呼んでくれ。」

 

 唯依

 「すいません、つい… では、改めて。 エクスさん、なにか?」

 

 エクス

 「唯依、まりも。 クラウから聞いた。 さっきの戦闘で自ら志願して戦場に出て前線を支えてくれたそうだな。 ありがとう。 脱出口を守ってくれたお陰で、無事に帰還出来た。 本当に感謝する!」

 

 唯依

 「礼には及びません。 あなた方が居なくなられては私達も困りますので。」

 

 まりも

 「えぇ、私達が勝手にやった事です。 どうか気にしないでください。」

 

 エクス

 「それでもだ! ありがとう!!」

 

 エクスは目的であるお礼をしたのにも関わらず、まだ、何が言いたい事があるようだ。

 

 エクス

 「あ、あのさ、ふたりとも。 その格好、目のやり場に困るんだか……」

 

 そう、唯依とまりもは今、戦術機から降りたばかり。

 つまり、強化装備を着用したままなのだ。

 この強化装備という代物、誰がデザインしたかは知らないがかなり恥ずかしいデザインになっている。

 端的に言うと、体のラインがくっきりハッキリ丸分かりなのだ。

 

 カロン

 「目の保養になっていいじゃねぇか!」

 

 グラム

 「カロン少尉、そうハッキリ言うのはどうかと…」

 

 どうやら、カロンはお気に召している様だ。

 しかし、当の本人達にはたまったものじゃない。

 

 唯依

 「い、言わないでください! 言われると余計に恥ずかしくなってきます…」

 

 まりも

 「あ、あんまりジロジロ視ないでください。 私達だって我慢してるんですから!」

 

 カロン

 「別にいいじゃねぇか。 減るもんじゃなし、二人共美人さんで、スタイルもグッと来るもの持ってるしな。」

 

 唯依・まりも

 「「……… 」」

 

 エクス・グラム

 「「あっ…」」

 

 数秒後、カロンの顔が両側からの強烈なパンチで挟まれ潰れたのは言うまでもない……

 

◆◆◆◆◆

 

 ヴォーパル

 「全員、揃ったな。 よし、デブリーフィングを始める。」

 

 先の佐渡ハイヴ強襲作戦のデブリーフィングを行う為、ティアを除く主要クルーがブリーフィングルームに集まっていた。

 

 エクス

 「これだけはハッキリしたな。 俺達だけでハイヴを攻略するのは無理だな。」

 

 今回の作戦は、対BETA戦におけるデータ収集と経験の蓄積が目的だった。

 確かに目的はある程度、達成はしたが、手痛い痛手を被ったのは間違いない。

 大破した機体は無いとはいえ、エクスとティアは一歩間違えれば戦死していた可能性すらある。

 勿論、セイバー小隊だけでなく、他の小隊も其なりのダメージを受けている。

 

 カロン

 「一匹一匹は大した事ねぇんだがな…」

 

 グラム

 「えぇ、あの物量の圧力を少数精鋭で押し返すのは正直厳しいと思います。」

 

 そう、兎に角、BETAは数で押してくるのだ。

 それも十とか百ではない。

 千とか万だ。

 此だけの物量だと、ハイヴ内では100%の性能を発揮出来ないバルキリー隊だけでの攻略は不可能だ。

 

 クラウ

 「地上の方でも、物凄い数のBETAが地表を埋め尽くしていました。 正直、唯依さんとまりもさんが、一時、前線を支えてくれたからこそ、脱出口を死守出来たようなものです。」

 

 ヴォーパル

 「やはり、我々だけではどうにも為らんか… ともあれ、我々は日本帝国と協力関係にある。 今後は、基本的に共同で作戦を展開すべきだな。」

 

 クラウ

 「となれば、私達の世界の技術を用いた戦術機の開発は急務ですね。」

 

 ヴォーパル

 「うむ。 篁中尉、どうかね?」

 

 唯依

 「はい。 先日、アロンダイト艦長からお預かりした設計図は既におじさ……、いや、巌谷中佐に渡してあります。 既に解析も始まっており、先程、一次報告も届いています。」

 

 ヴォーパル

 「ほう。 報告ではなんと?」

 

 唯依

 「詳細は後程レポートを提出します。 大まかなところでは既に完成された設計図が有るので、技術の吸収・昇華が終わり次第、試作機の設計、製造・組立に入るとの事です。 其れほど、時間は掛からないと言っています。」

 

 ヴォーパル

 「そうか、では巌谷中佐の手腕に期待しよう。」

 

 新型機が完成されれば、帝国軍の戦力も底上げされるだろう。

 量産され、機種転換訓練が終われば、前線で日本帝国製の可変戦闘機が活躍する姿が観られるだろう。

 その時こそ、ハイヴ攻略のタイミングなのかもしれない。

 

 エクス

 「それと、BETAについてだが、なるべく接近格闘は避けた方が良さそうだな。」

 

 バルキリー全般に言える事だが、射撃兵装についてはかなり充実しているのだが、格闘兵装となるとVF-25だとアサルトナイフ、VF-19に至っては格闘兵装は装備すらされておらず、殆どマニピュレーターに纏わせたピンポイントバリアパンチ頼みである。

 これでは大軍で押し寄せてくるBETAを相手取るには貧弱すぎる。

 なにかしらの格闘兵装を追加装備したい所だが、そもそもバルキリーには、あまり格闘兵装が用意されておらず、規格外の物では機体バランスを崩してしまう畏れがある。

 

 グラム

 「そうですね。 やはり、接近される前に撃破が一番、効率が良さそうですね」

 

 ヴォーパル

 「神宮司軍曹はどう考える?」

 

 まりも

 「見せて頂いた機体スペックを鑑みるに、このバルキリーという機体は、近接格闘戦にはそれほど向いていないと思われます。 やはり、遠・中距離からの圧倒的な射撃性能を活かしての制圧射撃が最も効果的かと。 さらに、装備されているガンポットとレーザー機銃は近距離でも充分機能しますが、あまり接近され過ぎると、さすがに取り回しが悪そうですね。」

 

 エクス

 「無い物ねだりしても、しょうがねぇ。 なんとかするさ。」

 

 カロン

 「だな! 近付かせさえしなければ、どうという事はないからな。 片っ端から蜂の巣にしてやれば、良いだけだ!」

 

 確かに、バルキリーの性能であれば、限定された空間でない限り、一方的に攻撃を加えるのも不可能ではないだろう。

 ただし、近接格闘対策を疎かにするという訳では無い。

 それはそれで対策を逐次考えていく事になるだろう。

 

◆◆◆◆◆

 

 その夜、自室で今日の作戦や、今後の事を考えていくいると、ドアがノックされた。

 

 エクス

 「ん? 誰だ?」

 

 ティア

 「ん、私。 入っていい?」

 

 エクス

 「あぁ、ティアか。 入れよ。」

 

 ドアが開き、そこにはティアが立っていた。

 なぜか、パジャマ姿で枕を抱えてである。

 

 エクス

 「もう、大丈夫なのか?」

 

 ティア

 「うん。 身体の方はなんともなかったしね。 ただ、今日の事を思い出すと震えが止まらなくなるの…」

 

 それは無理もないだろう。 

 あんなバケモノに喰い殺されかけたのだ。

 平然としている方がどうかしている。

 そんなティアをエクスは優しく、そして強く抱きしめる。

 

 エクス

 「大丈夫だ。 ティアの事は俺が絶対死なせない! 絶対にだ!! あんなバケモノどもなんかにくれてやるものか!」

 

 ティア

 「エクス… ありがと。」

 

 翌朝、ティアのお肌がツルツルピカピカ、エクスはゲッソリした表情を晒していたそうな…

 なにがあったのかは、ご想像にお任せしようと思う。

 




 第7話です。

 結果発表です。 反省会です。

 今回は短い上に、話はさほど進んでいません。
 たいした内容でもないのですが、丁度、物語も一区切りになりますし、今後の展開のフラグになっている部分もある為、書かせていただきました。

 感想や意見、評価等がありましたら、宜しくお願いします。

 では、また次回で。

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