Alternative Frontier    作:狼中年

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05 アサルト《強襲》

 悠陽

 「それはそうと、此れからどの様に行動を開始するおつもりですか?」

 

 ヴォーパル

 「我々とBETAの戦力比を測るた為、手近なハイヴに強襲を仕掛けようかと考えています。」

 

 悠陽・夕呼・紅蓮・巌谷

 「「「「はぁ!?」」」」

 

 ものの見事に四人の言葉がハモる。

 ヴォーパルの言っている事は自殺行為に等しいのだから、当たり前である。

 しかし、ヴォーパルも引かない。

 これは必要な事なのだと。

 

 ヴォーパル

 「戦力比を測るのは勿論、対BETA戦における戦術の構築、経験の蓄積等、これらには直に得た生のデータが必要不可欠。 故のハイヴ強襲です。」

 

 夕呼

 「……わかった。 やってみるといいわ。 但し、死んだって責任なんか持たないからね。」

 

 ヴォーパル

 「もとより承知の上。 これに関しては帝国には迷惑を掛けないつもりだ。」

 

 いまだ悠陽、紅蓮、巌谷は絶句したままだ。

 止めたいのはやまやまなのだが、独立部隊としての権限を認めてしまった為、おいそれと口を挟む訳にはいかないのだった。

 

◆◆◆◆◆

 

 ハイヴ強襲の準備を進める中、日本帝国から二人の女性と技術チームが派遣されてきた。

 

 唯依

 「帝国陸軍技術廠から技術交流の為、出向となりました、篁唯依中尉です。 技術チームの部下共々宜しくお願いします。」

 

 まりも

 「帝国陸軍教導隊からアドバイザーとして派遣されました、神宮司まりも軍曹です。」

 

 二人はマクェクスのブリッジにいる。

 ヴォーパル達に着任の挨拶に来たのだ。

 唯依は新型機と電磁投射砲の開発任務の為、"XFJ計画"に参加を予定されていた所、急遽マクェクスに出向となった。

 マクェクスからオーバーテクノロジーを吸収すれば、XFJ計画よりも高性能な新型戦術機が開発出来ると踏んでの予定変更である。

 一方、まりもは階級こそ軍曹ではあるが、訓練兵の教官をしているだけあって、対BETAの知識や戦術の幅はかなり広い。

 また、夕呼との繋がりもあるので、それを加味してのアドバイザーへの抜擢である。

 

 ヴォーパル

 「二人の着任を認める。 私がマクェクス艦長のヴォーパル・アロンダイト大佐だ。 良く来てくれた。 歓迎しよう。」

 

 エクス

 「セイバー小隊隊長のエクス・レーヴァテイン大尉だ。

 まぁ、俺達は正規軍じゃなく傭兵みたいなモンだからあんまり階級は気にしないでくれ。」

 

 ティア

 「同じく、セイバー小隊のティア・フランベルジュ中尉よ。 やった! 女の子が増えた! 仲良くしてね。」

 

 唯依・まりも

 「ハッ! 宜しくお願いいたします。」

 

 敬礼をしながら二人は返事をするのだが、どうにもティアは不満そうである。

 

 ティア

 「ん~… 固いなぁ… エクスも言ったけど正規軍じゃないだから、そんなに鯱張らなくていいのに。 ほら、リラックス、リラックス!」

 

 まりも

 「しかし、指揮系統が違うとはいえ上官ですし…」

 

 ティア

 「気にしない、気にしない。 エクスが言ったけど私達は傭兵みたいなもんなんだから。 だから階級は気にしないでって。」

 

 まりも

 「わかりまし… わかったわ。 ティア」

 

 まりもからの返答に満面の笑みでティアが頷く。

 

 ヴォーパル

 「話は纏まったようだな。 早速だが、篁中尉。 貴官にはこれを渡しておく。」

 

 ヴォーパルから唯依に端末が手渡される。

 端末の表示には"VF-11MAXLサンダーボルト"設計資料とある。

 

 唯依

 「こ、これは… もしや?」

 

 ヴォーパル

 「うむ。 篁中尉が考えている通り、我々の世界で運用されている可変戦闘機の仕様書だ。 現在、我々が使用しているVF-25やVF-19は確かに高性能な機体なのだが、困った事にかなりのじゃじゃ馬でね… そこでトータルバランスに優れ、また操縦性が素直なVF-11を選ばせてもらった。」

 

 確かにVF-11は突出した性能は無いがトータルバランスに優れ、扱い安い機体である。

 一部のエースだけが扱える機体では意味が無い。

 帝国軍全員がエースでは無いのだ。

 誰が操縦しても一定のパフォーマンスを発揮出来なければ本末転倒である。

 旧式機ではあるが、現行の戦術機とのキルレシオは10対1を下るまい。

 

 ヴォーパル

 「それと、詳しい事は、整備班と技術士官から聞いてくれたまえ。 話は通してある。」

 

 唯依

 「有り難うございます。 早速、目を通させていただきます。」

 

 マクロス・クォーター級の量産なども考えてはいたが、この世界の技術力では不可能に近いだろう。

 さらに、クォーター級や反応兵器・MDE弾頭などの過剰なモノは更なる火種になりかねない。

 可変戦闘機の技術供与も火種になり得る事も否定はできないが。

 

 ヴォーパル

 「では、神宮司軍曹。 着任早々だが準備が出来次第レクチャーをお願いしてよろしいか?」

 

 まりも

 「ハッ。 すでに準備はしてきています。 つきましては、ブリーフィングルームをお借りしてもよろしいでしょうか?」

 

 ヴォーパル

 「了解した。 主要メンバーをブリーフィングルームに集合させよう。」

 

◆◆◆◆◆

 

 ブリーフィングルームには艦長であるヴォーパルを始め、チーフオペレーターのクラウ、バルキリー隊を纏めるエクスとティア、各小隊の隊長が集合している。

 まりもからBETAについてレクチャー受ける為だ。

 

 まりも

 「皆さん、初めまして。 帝国陸軍教導隊から派遣されました、神宮司まりも軍曹です。 今日からBETAについて私が知っている全てを伝えたいと思います。」

 

 普段、まりもは訓練生相手なので命令口調なのだが、流石にこの場には尉官以上の上官しか居ない為、丁寧語になっている。

 

 まりも

 「では、BETAとは…」

 

人類同様の炭素系生命体で地球上(地表・地中・深海)だけでなく真空中でも活動が可能であり、生物学の常識を逸脱している。

 体内には暗赤色の体液が流れているが、BETAの肉体を構成している物質や、生物的な役割などは一切不明であり、生態系についてはほとんど解明されていない。

 BETAに対するコミュニケーション手段は一切不明だが、文明や共通の言語を持たない複数種の生物が高度な社会性をもって機能を分担し、連携して人類に対する攻撃を繰り返している。

 地球に存在する全てのBETAが判明している訳ではなく、新たに発見されるケースや、各戦線から未確認のBETAの断片が発見されることがある。

 BETAの戦術は基本的に圧倒的な物量によるごり押しであるが、次第に有人兵器を識別し、脅威度の高いものから排除するようになっていったが基本戦術は変わっていないし、戦術を使用したという報告もない。

 地球に来た目的なども不明だが、"ハイヴ"と呼ばれるBETAの巣から外宇宙へシャトルのようなものを発射しているのが確認されている。

 

 まりも

 「…と、こんな所ですね。」

 

 エクス

 「奴等に対して有効な戦術は?」

 

 まりも

 「現状ではこれと言って無いですね。 強いて言えば、後方に配置されている光線級を排除し制空権を確保した後、艦砲射撃等による飽和攻撃でしょうか。 しかし、光線級はBETAの最奥に配置されていて光線級吶喊は…」

 

 エクス

 「あぁ、それは気にしなくていいぜ。 一回やってるし、まぁ、奥の手もある!」

 

 まりも

 「はぁっ!?」

 

 エクスからの言葉を聞き、まりもは絶句した。

 光線級吶喊を成功させた? そんな事をしたら生きては帰れない片道切符の特攻である。

 しかし、現にエクスはまりも前に存在しているし、言っている事が嘘という事もないだろう。

 さらには、奥の手もあるという。

 

 ティア

 「奥の手? まさか、大気圏内であれを使う気?」

 

 ヴォーパル

 「地表近くでなければ、問題あるまい。」

 

 ティア

 「えぇ!? 艦長まで容認しちゃうんですか!? もぉ~…」

 

 エクスが言う奥の手にティアは否定的なのだが、艦長であるヴォーパルが(条件付きでだが)賛成の意を表する。

 トップがGOサインを出すのであれば従うしかない。

 

 まりも

 「あ、あの、大尉、奥の手とは?」

 

 エクス

 「ん? あぁ、それは後のお楽しみって事で!!」

 

 それを最後に今回のブリーフィングはお開きとなった。

 

◆◆◆◆◆

 

 それから数日後、ハイヴ強襲の準備が整い、マクェクスは佐渡ハイヴの遥か上空、成層圏近くにいた。

 

 ヴォーパル

 「此より本艦は予定通り佐渡のハイヴに対し強襲をかける。 全艦、第一種戦闘配置! 機関最大! 最大戦速! 突入せよ!!」

 

 光線級のレーザーが届かない遥か上空からの強襲、それが今回の作戦だ。

 ヴォーパルからの号令と共にマクェクスは加速、佐渡ハイヴを目指して直進する。

 ある程度の高度まで降りてくると、迎撃の為のレーザーが飛んでくるが、全てピンポイントバリアで弾き返す。

 

 ヴォーパル

 「ハイヴ周辺のBETAを一掃する。 全砲門開け! 全艦一斉射撃! デストロイド隊も各個に応戦!」

 

 マクロス・キャノンをバスターモードにし、大量の重量子ビームをBETAに降り注がせ、艦体に備えられた大型2連装ビーム砲、4門からも極太のビームが放たれる。

 それに加え、各所からミサイルも打ち出され、艦体各所に配置されているデストロイド"シャイアンⅡ"からも攻撃が加えられる。

 ハイヴ周辺に蠢いていたBETAはマクェクスからの攻撃であっという間に数を減らしていくが、ハイヴ内から次から次へと湧いてくる。

 その様相は巣から湧き出てくる蟻のようである。

 

 ヴォーパル

 「聞きしに勝る数だな… いったい、どれだけの個体が居るのか… まぁ、いい。高度3000m迄このまま直進、攻撃は継続。」

 

 まりも

 「ア、アロンダイト艦長!! このまま降下するだなんて無謀です! 撃沈されてしまいます!!!」

 

 まりもの懸念は当たり前である。

 400mにも及ぶ巨体では光線級の格好の的である。

 ピンポイントバリアで防御しているとはいえ、このままレーザーを撃たれ続ければ、いずれはピンポイントバリアを破られ艦体に被弾、撃沈は免れないと思っているのだろう。

 そんなまりもに対し、ヴォーパルは余裕のある表情を

崩す事は無かった。

 

 ヴォーパル

 「神宮司軍曹、心配は無用だ。」

 

 まりもの心配は杞憂だと、ヴォーパルは断ずる。

 

 ヴォーパル

 「ソラス中尉、ピンポイントバリアの状況は?」

 

 「はい。 反応炉エンジンの出力、安定しています。 ピンポイントバリアの連続使用に問題はありません。」

 

 ピンポイントバリアはその見た目に反して、防御性能が非常に高い。

 光線級のレーザー程度であれば、何十、何百と受けてもマクェクスの動力が停止しない限り破られる事はないだろう。

 加えて、マクェクス自体、この世界の艦艇と比較して、比べ物にならないくらいの装甲強度がある上にエネルギー転換装甲も採用している。

 

 まりも

 「し、しかし!」

 

 ヴォーパル

 「今は黙って観ていたまえ。 我々S .M .Sの戦い方というものをお見せしよう!」

 

 その言葉と共にヴォーパルの目付きが一層鋭くなる。

 

 ヴォーパル

 「では、諸君! なぜ、400m級で有りながらこの艦がマクロスの名を冠しているのか、いや、マクロスで有りながらなぜ、このサイズなのか…」

 

 新マクロス級(バトル級)は通常、1600m級(バトル・フロンティア)である。

 しかし、マクェクス、いやマクロス・クォーター級はその名の通り1/4の400m級である。 

 あちら側の地球ではマクロスという名は特別な意味を持つ。

 

 ヴォーパル

 「…BETAどもに教えてやれ! 全艦、トランスフォーメーション!!」  

 

 マクェクスが通常の要塞型から変形を始める。 

 バルキリーの様に、マクロス・クォーター級も変形が可能なのだ。

 

 まりも

 「え? えぇ!? な、なに? 何が起こってるの?」

 

 状況が呑み込めず軽いパニック状態に陥るまりもに対し、クラウが簡単な説明を始める。

 

 クラウ

 「まりもさん、落ち着いて。 この艦は今から要塞型から強攻型に変形してるんです。」

 

 まりも

 「きょ、強攻型?」

 

 クラウ

 「そう。 所謂、人型巨大ロボットに変形するんです。」

 

 まりも

 「戦艦がロボットォー!? そ、そんな…」

 

 クラウ

 「まりもさん、マクェクスは戦艦じゃないです。 空母ですよ。」

 

 まりも

 「違う! そこじゃ無いわ!!」

 

 そんな不毛な会話の最中にマクェクスは要塞型から強攻型への変形を終え、攻撃体制に入っている。

 

 ヴォーパル

 「艦体左舷・左腕先端部にピンポイントバリアを集中! このまま、ハイヴに突撃!」

 

 マクェクス強攻型の左腕部にピンポイントバリアが集中展開され、左腕とシールドと成っている飛行甲板を覆っていく。

 ピンポイントバリアが一部に集中している為、被弾していく箇所が増えてはいくが、エネルギー転換装甲の恩恵か、被害は殆ど無い。

 

 ヴォーパル

 「マクロス・アタック!!」

 

 マクェクス強攻型の左腕がハイヴ表面を突き破り、内部に侵入。

 突き刺さった左腕各部のハッチから多数のデストロイド・シャイアンⅡが全弾発射を敢行。

 さらに破壊規模を拡大していき、巨大な侵入口が出来上がった。

 

 ヴォーパル

 「バルキリー隊、出撃! 内部に突入し、BETAを排除。 マクェクス、及びデストロイド隊は侵入口を死守。 バルキリー隊の退路を確保せよ。」

 

 先程、マクェクスによって開けられた侵入口に次々にバルキリーが飛び込んでいく。

 

 エクス

 「セイバー1からバルキリー隊全機! 突っ込むぞ! 1機たりとも墜ちるなよ!!」

 




 第5話をお送りしました。

 マクロス・キャノンに続きマクロス・アタック迄使ってしまった…
 攻撃面のネタが尽きそう…

 それとクォーター級の某艦長のセリフをパク…、リスペクトさせてもらいました。
 
 感謝や意見、評価等がありましたら、宜しくお願いします。

 では、また次回で。

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