Alternative Frontier    作:狼中年

4 / 17
02 ファーストアタック《初撃》

 エクス

 「なんなんだ!? この虫みたいな奴等は?」

 

 ティア

 「見てるだけで気分が悪くなって来るわね。」

 

 見れば、見馴れぬ人型兵器はあの正体不明の虫?のような奴等と戦闘をしているようだ。

 なんであんな得体の知れない物が地球上に存在するのか理解が追い付かない。

 やはり、この地球は自分達の知る地球では無いのかもしれない。

 頭が混乱しそうだ。 

 エクスは自分の考えを有り得ないと思いつつも否定出来ずにいた。

 

 異世界に来てしまったのではないかという馬鹿馬鹿しい考えを。

 

 カロン

 「隊長。 このままだとあの不明機、撃墜されちまうぞ? どうするんだ?」

 

 どう見ても多勢に無勢。

 見知らぬ人型兵器が撃墜されるのは時間の問題だろう。

 しかし、見知らぬ者をなんの考えも無しに援護するべきか悩む。

 あの人型兵器はおそらく有人機、人間のパイロットが操縦しているものだろうし、あの虫のような得体の知れない物体がこちらに友好的な存在とは到底思えない。

 人道的に考えれば人型兵器達を援護すべきである。 

 

 ティア

 「アンノウン後方より光学兵器よる攻撃を確認!」

 

 ティアが警告を発する。

 まさか、いきなり攻撃してくるとは。

 しかし、これでやることは決まった。

 攻撃を受けたからにはこのまま黙って済ますつもりなど毛頭無い。

 無警告で攻撃を仕掛けて来ると言うならばそれ相応の対応がある。

 

 エクス

 「全機、散開! 回避行動をとれ!!」

 

 飛来してくるレーザーを被弾する事なく、全弾回避する。

 レーザーの弾速は確かに速いが、バルキリーの機動性をもってすれば余裕で回避出来るレベルの攻撃だ。

 

 エクス

 「セイバー1から各機へ。 俺はこのままアンノウン後方の光学兵器、おそらくレーザーだな。 そいつらを叩く。 セイバー2、3はアンノウンの前衛を叩け。 セイバー4はあの人型兵器を援護しつつ、打ち漏らしを片付けろ。」

 

 ティア・カロン・グラム

 「「「了解。」」」

 

 エクス

 「どんな攻撃があるかわからん。 近接戦闘は極力避けろよ。」

 

 一通り指示を出すとレーザーを回避しつつ後方を目指し飛んでいく。

 残ったティア達は指示に従い行動を開始した。

 

 ティア

 「さぁて、ちゃっちゃとヤっちゃいますか!」

 

 カロン

 「あぁ、こんな気持ち悪い奴等はさっさと片付けるに限るな!」

 

 グラム

 「そうですね。 やっちゃいましょう。」

 

 ティアとカロンは機体をファイター形態からガウォーク形態に変形させ、スラスターを吹かし、地上を滑るように高速移動を始めると同時にアンノウンに対しマルチロックオンを仕掛ける。

 

 ティア

 「さぁ、これでもくらいなさい!」

 

 2機は同時に大量のマイクロミサイルを発射させる。

 ミサイルは独特な軌道でアンノウンに向かっていき、アンノウンにミサイルが接触すると爆発を次々と起こし、アンノウンは破裂し肉片をばら蒔きながら沈黙していく。

 かなりの数のアンノウンを捲き込んだはずだが、アンノウンは後から後からから湧いてくる。

 

 カロン

 「おっと、まだ食い足りんか。 なら、お次はこいつだ!!」

 

 重量子ビームガンポットを構え、銃口をアンノウンに向けると、アンノウンをロックオンしトリガーを引く。

 銃口から凄まじい連射速度でビームが打ち出され、発射されたビームはアンノウンの装甲をたやすく貫き、内部の肉を焼いたあと貫通しさらに後方から迫るアンノウンにビームが突き刺さり短時間で大量のアンノウンが駆逐されていく。

 

 ティア

 「このままいけば、楽勝ね!」

 

 カロン

 「あぁ。 だが数が多い。 油断はするなよ、お嬢さん!」

 

 ティア

 「そのお嬢さんっていうの、止めてって言ってるのに。 もう、カロン少尉ったら。」

 

 戦闘中とは思えない会話を交わしながらアンノウンを殲滅していく二人だった。 

 

 その頃、グラムは機体をバトロイド形態に変形させると見知らぬ人型兵器の前に出て護衛行動をとりながら、前衛二人の攻撃をすり抜けくる小型のアンノウンを迎撃していく。

 

 グラム

 「数が多い! あの二人が打ち漏らすなんて滅多にないのに。」

 

 かなりの数のアンノウンが前衛二人の攻撃をすり抜けて、グラムや人型兵器の方には向かって来る。

 後方にいる見馴れぬ人型兵器がなぜか攻撃も回避もせず固まっている為、アンノウンを通す訳にはいかない。

 さらには、前方に友軍機が居る為、ミサイルなどの爆発物は使用出来ない。

 故に重量子ビームガンポットと頭部レーザー機銃を上手く使い、アンノウンを撃破していく。

 

 グラム

 「ここを通す訳にはいかない!」

 

 グラムは自分を鼓舞し、攻撃を続けるのであった。

 

 同時刻、エクスはアンノウンから放たれるレーザーを回避しながら戦闘エリア上空を翔けていた。 

 レーザーの回避に集中していると瞬間的に悪寒が走った。

 悪寒が走るのと同時に次の行動に移る。

 ファイター形態のまま両脚部だけを展開、前方に向けてスラスターを吹かし、機体に急制動・逆加速をかけ一気にスピードを殺す。

 激しいG(加重)の中、機体前方には下方から伸びて来たであろう触手が見える。

 あのまま進んでいたならば、触手に貫かれるか、もしくは絡め捕られ、この大軍の中に引きずり込まれていただろう。

 

 エクス

 「気持ち悪ぃ攻撃しやがる。 だが、その程度じゃ俺は落とせないぜ!!」

 

 脚部を元に戻し前進を再開するが、また下からの触手が邪魔をしていて思うように進めない。

 

 エクス

 「さすがに前と下から同時は厄介だな… なら、これならどうだ!」

 

 触手が届かない位置まで機体を急上昇させる。

 上昇中もレーザーが此方を撃墜しようと後方から飛んでくるが、後ろに眼がついているかのように危なげ無く回避し、上昇を続ける。 

 

 エクス

 「じゃあ、行くぜ!!」

 

 今度は逆に急降下を始める。

 降下中もレーザーの雨が止むことはないが、機体を大きく動かさず最小限の動きで回避を続け地上に向かい直進する。

 レーザーを発射しているアンノウンが視認出来る距離まで来ると次々とアンノウンに目線を移す。

 目線を移したアンノウンにはロックオンマーカーが次々とロックされていく。

 ヘルメットの内側、額の辺りにFCS(ファイア・コントロール・システム、火器管制装置)と連動したレーザーセンサーが内蔵されており、そのレーザーセンサーを使い視界に捉えたものをロックオン出来るのだ。

 レーザーを発射する全ての個体をロックオンし終えると同時にトリガーを引く。

 

 エクス

 「全弾、くれてやる!!」

 

 大量のミサイルが次々と発射される。

 数発のミサイルはアンノウンに向かう過程でレーザーに迎撃され爆発するが大多数のミサイルがアンノウンに直撃し爆発、アンノウンを吹き飛ばす。

 爆発が収まると視界がクリアになり、数匹のアンノウンがまだ生きているのが見てとれる。

 生き残ったアンノウンはレーザーのエネルギーチャージに入ったのか攻撃をしてくる気配は無い。

 エクスは機体を高速で降下させ続け地表近くでガウォーク形態に変形、それと同時に重量子ビームガンポットで残りのアンノウンを撃ち抜いて殲滅していった。

 

 エクス

 「ふぅ、これでレーザー野郎は片付いたな。」

 

 一仕事終わったと満足げに声に出し、機体をファイター形態に変形させ大空へと舞い上がる。

 残りのアンノウンは地表を蠢くだけで攻撃をしてこない。

 どうやらコイツらはレーザー野郎以外、一定以上の高度にいる敵には攻撃手段がないらしい。

 

 エクス

 「セイバー1から各機へ。 レーザー野郎は片付けたぜ! どうやらコイツらレーザー野郎以外の奴等は対空攻撃が出来ないみたいだ! ブレイド4は護衛任務を継続。 ブレイド2、3は上空から攻撃。 ただし、たまに伸びて来る触手には注意しろ!」

 

 エクスからの通信にティアが安堵の表情を浮かべる。

 あれだけのレーザーの雨に突撃したのだから、心配するなと言う方が無理がある。

 

 ティア

 「レーザー野郎って… そのネーミングセンスなんとかなんないの? 取り敢えず了解。」

 

 カロン

 「セイバー3、了解だ。 隊長、おつかれさん。」

 

 グラム

 「流石、隊長ですね! セイバー4も了解です。 護衛を継続します。」

 

 ティアに到っては只のイヤミに近いが、返事が返ってくる。

 ティアとカロンは直ぐ様ファイター形態に変形させ上昇、上空からビームをばら蒔き始めると、攻撃手段のないアンノウン達は成す術もなく蜂の巣にされていく。

 たまに触手が飛んでくるが、スピードが遅いうえに来るとわかっていれば、たいした脅威にはならない。

 

 エクス

 「俺も直ぐに合流する。」

 

 時を置かずしてアンノウンは殲滅された。

 

◆◆◆◆◆

 

 「どこの馬鹿だ! 対BETA戦で戦闘機なんか……」

 

 飛ばすな!と叫ぼうとした直後、有り得ないものを目にし声がつまる。

 目の前の光景に驚愕し考えが纏まらない。

 

 「なっ!? 光線級のレーザーを避けたのか!?」

 

 「あはは… 恐怖でおかしくなったんかな? 戦闘機ごときがレーザー避けてるよ… あり得ねぇ…」

 

 どうやら部下も目の前の光景が信じられないらしい。

 それはそうだろう。

 今、空を飛んでいる4機の戦闘機はレーザーを回避したのだ。

 

 "光線属種のレーザーは避けられない"

 

 それが常識だ。

 しかし、今、目の前で、その常識は覆された。

 4機の戦闘機は一発も被弾する事なく回避を続け、いまだ健在だ。 

 すると、さらに驚愕の光景が飛び込んでくる。

 4機の内1機がレーザーの雨の中、前進を始めたのだ。

 もう夢だと思いたい。

 

 残る3機にも動きに変化が生じる。

 そしてまたもや信じられないものを目にしてしまう。

 

 「戦闘機が戦術機に!?」

 

 「変形する戦術機なんてそんな……」

 

 そう、変形したのだ。

 3機の内2機が戦闘機に手足が付いた鳥のような形態になり、残りの1機はまさに戦術機に変形した。

 戦術機に変形した機体はこちらを護衛するかのようにBETAの前に立ち塞がり、残る2機は地表を高速移動しながら攻撃を加えていく。

 BETAを大量のミサイルで薙ぎ払った後、またもとんでもないものを見せ付けてくれたのだ。

 確か日本の諺だったか、"二度あることは三度ある"と。

 

 「ビーム兵器!?」

 

 「実用化はされてないって聞いたぞ!?」

 

 実用化の目処が立っていないビーム兵器を使用したのだ。

 次々と覆される常識にパニック寸前になる。

 そういえば光線級に向かって行ったもう1機は?と思いだし、網膜に投射される映像を最大倍率でみてみると既に光線級は全滅していた。

 この短時間で光線級吶喊(レーザーヤークト)を、しかもたった1機で成すとは戦術機もバケモノなら衛士もバケモノのようだ。

 もう、いい。

 お腹いっぱいだ。

 考えるのもバカらしい。

 生き残った事を感謝しようじゃないか。

 と、思考することを放棄した。

 

◆◆◆◆◆

 

 エクス

 「さて、どうしたものか……」

 

 アンノウンを殲滅し、今後の行動指針をを決めるべく集合した矢先、例の人型兵器から通信コールが入る。

 この通信を受けるべきか受けざるべきか。

 相手がバルキリーに乗っているのなら迷う事は無かったのだが、相手は見たことも聞いたことも無い人型兵器だ。

 迂闊にこちらだけの情報が渡るのは避けたい所である。

 

 ティア

 「ここは一旦、離脱しましょ? はっきり言って、あんなバケモノ見ちゃうと、ここがホントに地球かどうか自体怪くなって来たわ。」

 

 カロン

 「俺もお嬢さんに賛成だ。 今は必要以上の接触は避けるべきだ。」

 

 グラム

 「そうですね。 もし、このまま交戦状態になったらほとんど残弾も有りませんし、ほぼ丸腰で戦う事になります。 それはなるべく避けたい所ですね。」

 

 どうやら、全員の意見は一致しているようだ。

 それならば話は早い。

 

 エクス

 「よし、一旦マクェクスに帰投しよう。 あとを追われても面倒だ。 アクティブ・ステルスを起動後、全速で大気圏を離脱。 大気圏離脱後、フォールドパックを再装備し、フォールドにてマクェクスに帰投する。」

 

 ティア・カロン・グラム

 「「「了解」」」

 

 "アクティブ・ステルス"は非常に高性能だ。

 通常のステルスは機体形状をレーダー波の反射しにくい形状に設計した上で機体装甲に特殊な素材を使用し、レーダー波を吸収させて相手のレーダーを欺瞞する。

 アクティブ・ステルスは相手のレーダー波を解析し、此方から相手レーダーに欺瞞情報を送り返して混乱させるシステムだ。

 性質上、通常のレーダーシステムで、アクティブ・ステルス機を捕捉するのは不可能に近い。

 故に此方の追跡、飛行経路の割り出しはできないだろう。

 

◆◆◆◆◆

 

 

 「やはり、通信には出んか…」

 

 先程のBETAとの戦闘終了後、件の正体不明機に通信をいれるが、案の定応答がない。

 普通ならば武装解除をさせた後、ろ獲・拘束・連行という流れなのだが、機体の性能差を考えると返り討ちにされる可能性が非常に高い上、助けられた手前、手荒な真似などしたくはない。

 

 「隊長! 不明機に動きが!」

 

 部下がそう反応した時にはすでに戦闘機に変形し飛び立っていた。

 

 「レーダー反応ロスト! ステルス機!?」

 

 「なんてスピードだ! もう影も形もない…」

 

 これでは追跡も不可能だ。

 命の恩人を追う事にならなくて良かったと、内心ホッとする。

 しかし、ステルスとなると開発している国は限られてくる。

 最有力はアメリカだが、あの国がこんな稚拙な偽装工作をするとは思えない。

 

 「我々も撤退するぞ。今日の事は俺から上に報告する。」

 

 「ハッ! 了解であります。」

 

 しばらくは事情聴取と情報部通いになりそうだ。

 

◆◆◆◆◆

 

 クラウ

 「セイバー小隊全機、帰艦しました。」

 

 ヴォーパル

 「レーヴァテイン大尉とフランベルジュ中尉を直ちにブリーフィングルームへ! 報告を聞きたい。」

 

 エクス達が持ち帰った情報で、少しでも状況が解ればと、ヴォーパルは考えるが、彼等の持ち帰った情報で更なる混乱に陥るとは梅雨ほども思わなかった。

 

◆◆◆◆◆

 

 アメリカ某所

 

 「正体不明の戦術機が現れたそうだな。」

 

 「はい。 報告書はこちらに。」

 

 男から報告書を受け取り、目を通す。

 報告書を読み進めていく内に男の顔はみるみる険しい表情になっていく。

 

 「バカにしているのか!!! こんな戦術機が存在するハズがなかろう!!! 我が国の諜報員はいつからこんな無能になったのだ!」

 

 「事実のようです。 正体不明機と接触した衛士全員が同じ証言をしているようです。 それと、静止画だけではありますが、数枚の画像も残っているとか。」

 

 どうやら全ての事実のようだ。

 しかし、いまだ信じられないのもまた事実。 

 レーザーの回避し、変形する戦術機、さらにはビーム兵器、信じろと言う方が無茶だ。

 だが、もし真実ならば、この機体を手に入れ量産、運用出来れば我が国の覇権、ひいては自分の権限は確固たる物となるのは間違いない。

 男は細く笑みを浮かべ、輝かしい未来を想像したのであったがこれらの情報を得ているはアメリカだけではなかった。




 第2話でした。 

 人生初の文字での戦闘描写。 うまく表現出来ているか書き終えた後も不安です。 うまく書けてればいいなぁ…

 感想や意見、評価等があったらば、宜しくお願いします。

 では、また、次回で!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。