なんにでも変身できるヒーロー志望ですが何か 作:輝く羊モドキ
「急に笑い出すんじゃねえ。気持ちわるいな。」
俺は遊戯 融剛。プロヒーローの子供でヒーロー志望だ。目の前に居るコイツとは小学生の頃からの仲だ。
化太郎は俺の事を親友と呼んでくれる。ありがたい事だ。俺も化太郎の事は親友だと思っている。あまり口には出さないけどな。でもそれだけじゃないんだ。
昔話をちょっとだけしようか。俺と、小さなヒーローの話を。
◇
俺が豆粒くらいの時、有体に行って俺はクソ人間だった。両親はプロヒーロー、個性は超強力、そして軽くとはいえプロに鍛えられた。少なくとも同世代の間では最強だったからな、そりゃもう増長しまくった。
小学校に入ったばかりの時でも俺の性格は変わらない。むしろさらに増大していた。その時くらいから自分と他人を一時的に融合することが出来るようになり、瞬間的な強さも激増した。
気に入らないヤツは脅し、従わない奴には暴力を振るう。そうして手下、取り巻きを増やしていった。本当にヒーローを目指しているような子供じゃあなかったよなぁ。
そんな小学校生活をしていたある日。転校生がクラスに来た。化太郎だ。
コイツは第一印象からして衝撃だった。どういう挨拶をぶちかましたと思う?
『わーたーしーがー!!』
『教室の窓から入ってきた!!』HAHAHAHA
あの時の担任の先生の顔は忘れられねえな。もうね、オールマイトかよと。普通に扉から入って来いよと。突っ込むことも出来なかったね。画風が違い過ぎる。
今だからわかるけどアレはアイツなりのつかみのギャグらしかった。効果は抜群だったけどな。
そうしてすぐに変身を解いて普通に自己紹介して普通に空いてる席に座った。先生が動き出したのは授業開始の鐘が鳴ってからだった。
同時に俺は思った。アイツを俺の側近にし、何時でも融合出来るようにすれば中学生すら簡単に怖気づかせることが出来るってな。そうだろ?いきなり目の前の奴が筋肉ダルマに変貌すれば誰だって驚く。そのスキを突けばどんな相手も余裕だからな。
その日から籠絡作戦が始まった。授業終了の鐘が鳴り、休み時間に入ったとたんすぐにアイツの周りに人だかりが出来た。まあ、当然だな。転入生というのもあるし、何よりあの個性だ。もう一度オールマイトを間近で見たいって思うよな。
だが残念だったな。ソイツは俺が目を付けているんだ。お前等、退け。その一言で人だかりはモーゼが海を割るかのごとく離れて行った。ガキ大将に目を付けられた転校生を哀れに思うが誰も助けようともしない。当然だよな。俺の邪魔をすれば痛い目を見るのだから。俺は悠々と転校生に近づき、話しかける。
結果、徒労に終わる。なんていうか話すだけでも疲れる。個性の制御が出来ていないのか、転入生はコロコロ姿を変えてしまう。ましてや俺をじっと見ながら俺の姿になるのは止めろ。鏡に話しかけてる痛いヤツみたいじゃなねえか。
ましてやこいつのテンションのブチ切れ具合について行けねえ。未だかつて出会ったことのないタイプに終始翻弄されまくっていた。だが諦めない。俺の目指す最強のヒーローへのロードのためにコイツには人柱になってもらうのだから。
そうして1年過ぎた。コイツは未だに友達が出来ないと嘆いている。知るか。そもそも俺が特別に目を掛けている存在なんだ。周りからどう思われているのか。そして俺は俺でコイツのブチ切れているテンションのアップダウンについていけるようになってしまった。これは成長ではない。
だが、コイツと話し続けているおかげで新たな個性の運用法を思いついた。これだけは成長と言えるな。
そんなこんなで未だにコイツに執着していたある日、俺は
「ねえ、君もしかしてフレンドシップの息子さんかい?」
「?ああ、確かにフレンドシップは俺の母ちゃんだけど。」
誰だ、このスーツの男は。母ちゃんの知り合いか?生憎だが母ちゃんは今遠出してるから家に来られても困る。
「おお、そうかそうか。やっぱり君が『ゲームマスターズ』の子か。うんうん、目元とか、口元とか、確かに似ているなぁ。」
「・・・あの、何の用ですか?」
言ったとたん軽く袖を引っ張られる。犯人は化太郎だ。
「(こいつ、なんかヤバイ匂いがする。)」
「(はあ?なんだそれ。)」
こんな如何にも優男然として、高級そうなスーツを着こなしている奴がか?疑問に思った瞬間強く引っ張られた。尻もちをついた。
「ってぇな、何するんだ!」声を上げる。顔を上げる。声を失った。
化太郎の左腕が不自然に曲がっていた。
「・・・は?」「っっつ!」
「はは、ひははは!おいおいおい、今のをよく避けられたなぁ!だが他のガキを盾にするなんざヒーローの子供のすることじゃあねえなあ!!」
なんだ、何が起きたんだ。
「ひひはは!何が起きたかって顔してるなぁ?」「!!」
「っぐぅ、見えない・・・武器・・・。多分・・・鉄パイプか・・・?」
「!!ひひはぁ!よぉぉく分かったじゃねえかぁ!ええおい!そーですそのとーり、俺の個性は透明化!触ったものを誰にも見えなくすることが出来るのさぁ!!」
「っなあ!」
ふざけた個性だ。見えない武器なんてどうやって防げばいいのか。
・・・なーんて思っちゃいない。要は見えないだけで其処に存在はしているのだ。ならば話は早い。
1、相手の武器の無効化
2、相手の拘束
1は簡単だ。アスファルトとでも融合してしまえば鉄パイプなどどうってことは無い。
2も余裕だ。こんなチンピラ程度なら壁と融合させてしまえば簡単に拘束できる。
それにこんな街中で騒いでるのだ。どうせヒーローがすぐに駆けつけてくれるだろう。折角だ、駆け付けてきたヒーローに俺の活躍を見せておくのも悪くない。有能な若者はどの界隈でも欲しがるものだ。
「ひひははは!さあフレンドシップのガキぃ!お前にはヤツをおびき出す人質になってもらおうかなぁ!」
「っは!ヒーローが敵に屈するかよ!」
「ひははは!じゃあ無理やりにでもオネンネしてもらおうかなぁ!この鉄パイプでぇ!ひひはは「嘘だっ!」はは、あ?」
「っ化太郎!」
「お前は、二つ、嘘をっ痛ぅ、ついている。」
「一つ、お前の武器、鉄パイプだけじゃねえだろ。」
「・・・あ?」
なんで、「二つ。」
「お前の個性、ハァッハァッ、透明化じゃ、ないな?」
なんで、
「・・・」
「は、はは、ええおい。おいおいクソガキさんよお、お前。」
「どぉ~してわかったんだぁ?」
「ハァッハァ、まず一点目、私の個性はちょっと変わっていてね、『今は』物の波動を読むことが出来るんだけど。」
波動、何言って。お前の個性は見た目が変わるだけじゃ、
「お前の周り、そして私たちの後ろ側に、無数の、道具の波動が感じられるよ。」
「・・・へぇ、」
「そして二つ目、ハァ、個性にも、個性の波動が見えるんだけど、ハァ。」
「道具と、お前の個性の波動が繋がっていない。」
「ふ」
「ふは、ふははは、ふひははははは!あ”あ”ぁ?なんだそのふざけた見破り方はよぉ!物の波動が読める?個性の波動が繋がってないだぁ~?」
・・・あ?つまり、え、どういうことだ。
「ハァ、ハァ、ハァー。つまり、最低でも三人の
「ひはは、ばれた。ばれたか。ばれちまったら仕方ねえなあ?お前等!出てこい!!」
そしたら何処からともなく人が湧き出してきた。
「おぃおぃ。たかがガキ二人にばれたんかワイら。」
「でも。計画、支障、無し。」
計画、なんだ。此奴らは何を言っている。
「っかー!あん
「ま、この子、予想外。」
「ひはは、だがまだまだ修正可能な範囲よぉ、要はこのガキを拉致っちまえばいいんだからよ。」
このガキ…俺の事か!
「はぁー、はぁー、ふん、あんた達の個性、当ててあげましょうか?」
「あぁ?」
「まずそこの爺、アンタがこの道具を浮かして操っている個性ね。」「!?」
「そんでそこの女、アンタは道具、そして自分たちを見えなくしてるんでしょ。」「!、?」
「最後のスーツ男、アンタは、ここら辺一帯に幻覚でも見せてるのかしら?」「・・・」
「・・・なんで、そんな事をすんだよ。」
「決まっているでしょ?ここにヒーローが来てもらっちゃ困るから。」「!!」
なんだと!ってことはヒーローが来ないのに3人の
「・・・ひは。ひは。は。参考にまで聞くけど、どうやって俺の個性がわかったんだ?此処にいるお前には解かりようもないと思ったんだが。」
「決まってるでしょ。」
そういって少し溜めた。
「巫女の勘よ(今は)。」
「ひは、はは。勘、だってよ。」「理解、不能。」「なんなんやこんガキ・・・。」
ほんとに、本当になんなんだよ、お前は。
というかよく見たら左腕が元に戻っている?!
「?ああ、これね。変身すれば治るわ。しばらく痛いままだけど。」
怪我しても、すぐに治る・・・だって?嘘だろ・・・そんなの、そんなの、化けm
「お前等。作戦は中止。この化け物を殺す。此処でだ。」「賛、成。」「先にお前からや。」
「・・・融剛、アンタは逃げなさい。」「?!・・・あっ、」逃げろ?俺が?
「 早 く ! 」「ひっ、あ、」
逃げた。俺は。無様に這いながらも。転びながらも。
後ろから聞こえてくる何かの折れるような音から耳を塞ぎながら。
◆
ゴギッ今度は右足が折れたか。まいったなぁ、私の変質はイメージだけで簡単お手軽に変身できるんだけど、これじゃあ完全に折れたっていうイメージがこびり付いちゃうよ。まぁ、足が折れても空飛ぶ巫女には関係ないか。いてて。
「なんやなんやなんなんやこいつ!」「不、気味。」「ひは、打撃も。斬撃も。刺突も。効果が今一つとは。」
そう。今の私は完全にボロボロ。鏡で自分の姿を見たら卒倒しそう。
右腕は見えない包丁だのサバイバルナイフだのを受けてバラバラにほどけそう。左腕はこれまた見えない鉄パイプ、バット、角材等でボキボキのドロドロ。お腹回りはアイスピックや錐、フォークが突き刺さったままだ。
何で生きてるんだ私。
「なんでお前こないなっても生きとんねん!」「不死、身?」「ひは、は、そんなになってまでまだ立ち向うのか。」
いやほんとにね、仮に普通の巫女さんのままだったらすでに死んでるから。今は巫女さんの皮を被ったスライムちゃんだから生きてられるんだけども。いやぁ、火事場のイメージ力って大事だねぇ。
しかしこのままでは千日手。死にはしないが倒せもしない。正直持久戦になってしまったら負ける。この体、燃費が悪いのだ。お腹すいたぁ。
だけど見えない角材やら包丁やらフォークやらでボコボコにされてるとイメージを作り上げるのが難しすぎる。現状維持でも精一杯なのだ。
「ひはは、こうなってしまったら奥の手だな!」「なんや!そういうのあったら先やらんかい!」「抗議、す。」「ひひは!うるせえ!最終手段って奴だ!これ使っちまったら俺の個性でも誤魔化しきれねえんだよ!」
そういってスーツ男が取り出したのは手のひらよりは大きな・・・基盤?
「最悪でもフレンドシップの事務所でも爆破してやろうと持って来たんだよぉ!」「お前マジか!」「出来る、男。」
爆破はらめぇ。
「ひははは!もう死に体のお前には逃げることも出来ねえだろ!爆散して死ねやぁ!!」「死、で。」「汚く散れや!」
そういって男は離れていく。代わりのように近づいてくる爆弾。やべえ、爆弾に強いなにかイメージを!
爆弾に対して何が強いんですかね(哲学)。
ちがう、ふざけてる場合ではない。これ爆発したら流石に死ぬ。死ぬ?死ぬのか。まあ、『視えてた』結果ではあるんだけど。流石、暗躍が趣味のエリート。格が違う。
あーもーほんと。あの時なんで
いや、そりゃつい殴られて腕の骨が折れちゃった衝撃でS級エリートに変質しちゃったのはしょうがないけどもさ。
『視えた』のが転校してから今日まで毎日話しかけてくれた友人どころか親友と言っても過言ではないお方の死なわけで。
そりゃー仕方ないよなー。だって転校する前だってまともな友達いなかったもんなー。
もはや初めての親友だもんなー。そんな親友を見捨てて自分だけ生きることは出来るだろうか。
というかあれだね、勝手に体が動いちゃったってやつだね。うん。やべえよ、これもしかして私トップヒーローの器なんじゃね?うっはやべえ、学生時代から逸話残したとか言うレベルじゃねえ。だって私小学生だもん。
いや、方やまともに友人作れないロクデナシ。方やロクデナシ相手でも気さくに話しかけてくれるちょっと口の悪い神サマ。世界がどっちを取るかっていったら当然神サマだよねぇ。
そいえば融剛は逃げられたかな。あぁ、無事だといいんだけど。
ていうかあれだ。今更だけどこれ走馬燈てきな奴か。そうだよなー、爆発するまで長いんだよなー。
ほら爆弾はまだ地面に向かって落ちて行ってる最中だし。
とか思った瞬間ピーとか甲高い音聞こえるし。あ、はい。爆発するんですねわかります。
まぁ、悔いのない人生だったかなぁ。 て、え、ちょ。 融剛おま な ん で
そうして視界が光に包まれた。
◆
死ぬか思った死ぬかと思った!
やった事は単純。化太郎を爆弾から庇う位置に立って爆風を個性で自分に融合。言ってしまえばそれだけなのだが、融合するタイミングを間違うと俺も死ぬところだった。ぶっつけ本番で出来るもんだな。二度とやりたくないけど。
「え、ちょ。融剛?え?なにここ天国。」
「バカ、現世だよ。」
「ええ・・・死んだかと思った。」
「なんだよ、死にたかったのか?」
俺をかばったんだ、勝手に死んでは困る。
「いやぁ、生きてるなら生きてるで。」
「そうかよ。」
そうだ、こいつには貸しがある。あの時透明な鉄パイプから俺をかばったって言う貸しが。さらにはさっき『逃げちまった』貸しが。
ヒーローってのは逃げてはいけないのだ。ヴィランから逃げるということはそれだけ市民が傷つく可能性が増えるのだから。もしあのまま、こいつを、友達を見捨てて逃げてしまったら俺は真っ当に生きれなかっただろう。ヒーローにはなれないのだろう。
一度逃げたっていう過去は消せねえ。だから、もう逃げないと誓う。それを体現する。
まずは目の前のヴィラン共から逃げない。此処で、倒す。そのためには友達の協力がひつようだ。・・・なのだが・・・。
「・・・おい。」「んぅ?私かな?」「お前以外いねえだろ。」「そうか。」そうか。じゃねえよ。いやそれよりだな、
「・・・お前のその身体・・・なんだよ。」「・・・あ。そっか爆発のショックでイメージが全部吹っ飛んじゃったか。」
そこにはまるでデッサン用の人形に気持ち肉を付けた程度の人型がいた。
「いやはや、これは生まれつきでね。気にしないでくれたまへ。」「誰目線だバカ。」
普通に考えたら、こんなモノは気持ち悪い。当然だ。人の形をしている最低限の構成物しかしていない存在が動いて喋っているのだ。
でも、不快感は無い。此奴は化太郎なんだから。
ふと思いついたことを試してみる事にした。
「あとちょっと時間をくれ。いい感じの人に変化する。」「いや、無用だ。それより手ぇ貸せ。」「ん?」
この状態でコイツと融合したらどうなるんだろうな?
「ひは、ひは!木っ端微塵だ!ざまあみろ!」「絶対、死。だ。」「代わりにワイのおもちゃ共も吹き飛んだんがね。」「ひひははは!あんな化け物をぶち殺すことが出来たんだ!やっすいものだろぉ!」
「!!見。」「ひはは、は?」「あ、ま、まさか!?」
『うひょー!融剛お前なんだこの個性バリかっけぇ!』
「うるせえお前耳元で叫ぶんじゃねえよ。こんなもんまだ序の口だぞ。」
『だってお前合体だぞ合体!こんなもんテンション上がらないわけないだろーが!』
「合体じゃねえ。融合だ。おら、これで少し慣らしたらギアあげんぞ!」
『おう、そうだな。これじゃあまだ乗っただけ融合とか言われるもんな。ゲートガーディアンも突っ込むわ。』
「褒めるながれで急にディスんのやめてくれない?」
((( なんだあれ?! )))
「おぃおぃどーなっとるんや!なんやあれ・・・なんや!!」
「混乱。把握、不可。」
「っち!よくわからねえが化け物とターゲットが一緒に居るなら好都合!まとめて始末だ!」
「了、透明。」
「っ!おい!ヴィラン共が見えなくなった!何とかしろ!」
『おっおっ?これはつまり主人公のお助けフェアリー的なポジション?おっけー!まっかしといてー!』
変身!流狩男!
『どう?どう?見える?見えてる?バッチシおっけー?』
「バッチシオッケー!!」
「っ!なんでヤツらこっちにまっすぐ来んねん!見えへんようにしたんやろなぁ!」
「ムカッ当然。不服。」「ひは!喧嘩は後だ!迎え撃てぇ!」
『刃物はNO!中距離攻撃だ!』「中距離・・・?こうか?!」ヒュボッ!
「ギャッ!」「ひは、なんだ!?」「正体、不明。」
「おい!あんまり効いてないぞ!」『しょーがないよー!相手は大人、こっちは子供!体格差があるだろ!』
「それを何とかするんだよ!」『理不尽!でも頑張っちゃう!』
「近接、推奨。」「ひは、言われんでもわかってるわぁ!」
変身!機工兵!
「オラァ!」『そんなナマクラナイフじゃ刺さらんよ!』バキィィン!
「ひはぁ!?ナイフが折れたぁ?!」
『追撃のぉ、ジェットパァンチ!』「ひばごぉ!」
「さあ、ラストワンだ!」
「っ!待、降参。」
ビタァッ
「っちょ!おい!急に止まるんじゃねえよ!」『まあまあ。ヒーローとして、敵意の無い相手を殴るのもどうなのよ。』
「ああ?そんなの嘘に決まってるだろ!」『だめだよ、ヒーローたるもの、悪人には更生の機会を与えるべきだ。』
「っち!」
(助か、た?)
『とはいえ、持っている武装は全て外して貰おうかな。』
「当、然。」
ポイ、カランカラン
「外、た。」
「化太郎、これで満足か?」
『いやいや。私は全部、と言ったんだよ?』
「・・・全、て。」『嘘はいけないわね。』ビッ、ビリビリッ!
「?!」「はぁ!?お前なにして」ジャランガランカラン。
「・・・」「・・・」『・・・』
『服の下にこれほどの暗器を仕込んでいて全て、ねえ?』「ガクガク」「・・・ギルティ。」
『裸ラッピングの刑!』「それただのお前の趣味じゃねえか!」「ブルブル」
「捕獲ヒーローただいま見参!ヴィランはお縄に・・・て、なぁにこれぇ。」
◇
あの後子供がヴィランに立ち向かうなんて無謀すぎると説教を食らい、遅れてやって来た警察にも説教を食らい、保護された俺等を迎えに来た両親からも説教を食らった。化太郎は最初の説教の時に
「あ、電池切れだわ。」
といって寝るし散々だったぜ。
ん。まあ、そういうようなことがあってからかな。俺は今までやっていたガキ大将的な悪行を止めた。暴力を振るったり虐めたりした奴らにも謝罪した。謝罪ついでに何発か貰ったがな。まあ自業自得だ。
化太郎も化太郎で全然友達が出来てない。まあ、結局ヴィラン襲撃事件に関しては大人の都合とやらで情報操作されたし、ガキ大将がいきなり心変わりしたんだ。アイツが何かしたーって陰で凄い噂流されちゃぁ友達も出来るもんも出来んわな。
あ~、要するにだ。俺にとって化太郎ってのは。あ~、一言で表すのには難しい関係ってことだ。
「お~っし。こっちの準備はいつでもおっけーね!」
「こっちはとっくに準備終わってんだよ待たせやがって。」
つまり、そういう事。あれ以来、こうやって真のヒーローを目指して互いに高め合ってるのさ。
さあ、今日の戦闘訓練を始めようじゃないか。今日こそ俺が勝ち越してやるからな。
一応言っておくが、別に化太郎に恋愛感情は抱いてねえからな。だって、性格とかがアレだし。
なんか書いてたら気合いが入りまくってしまった。