死を見る大空   作:霧ケ峰リョク

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今回の話、実はあるセリフを考えるので遅れました。
取り敢えず日常編はギャグメインです。直死持っててもギャグはやれますからね。


家庭教師とお姫様

「―――――で、俺がそのあさり一家の次期後継者、と…………」

「ボンゴレファミリーだ。九代目から直々に依頼を受けてお前の家庭教師となったリボーンだ。よろしくな」

 

何が「よろしく」だ。さっき二回も蹴っただろうが。

ツナは心の中で怒りに震えるも、間違いなく勝てないと分かってしまった為、諦める。

どうしても勝てるイメージが湧かない。線をなぞることも出来ないし、何よりそもそもこの赤子に浮かんでる線をなぞったところで本当に死ぬのか疑わしい。

最も本当に殺すなんて選択肢を選ぶわけじゃ無いが。

 

「で、何で俺がそれの次期後継者に選ばれたんだよ。自分で言っちゃなんだけど俺、この眼くらいしか取柄無いんだけど」

 

そう言ってツナは自身の眼を見せる。

蒼と橙の虹彩を持つ、普通の人間なら絶対にありえない配色を持つその瞳は『直死の魔眼』と呼ばれている特殊な眼である。その瞳は死を情報として視覚化し、死そのものを線や点として見る事が出来る異能であり、その線をなぞる事で殺すことが出来るのだ。その線を切れば簡単に切り裂くことができ、二度と修復が出来なくなり。使いようによっては不治の病でさえ殺すことが出来る力だが、日常生活には危な過ぎて使えない異能なのだ。しかもかなり頭を使うし。

眉間に皺を寄せているとリボーンは顔を横に振る。

 

「いや、俺はお前のその力に詳しい訳じゃないからな。だがその瞳があるから選ばれたわけじゃねぇ。単純に他の後継者が全滅したからだ」

 

淡々とある事実を伝えたリボーンの言葉に、ツナは思わず凍り付いてしまう。

 

「最有力候補だったエンリコ・フェルーミは抗争中に射殺され、No.2のマッシーモ・ラニエリは水中に沈められ、秘蔵っ子のフェデリコ・フェリーノはいつの間にか骨になっていた」

「秘蔵っ子が骨になるとかどういうことだよ」

「ちなみにこれがその時の写真な」

「わー、綺麗に撮れてる。特にマッシーモさんなんか水中でもがき苦しんでいる姿まで。写真撮った奴なんで助けないんだよ」

 

死ぬ直前の控えめに言って見たくも無い写真を見せられたツナは冷静にツッこみを入れる。

 

「驚かないんだな」

「今更でしょこんなの。俺なんか眼鏡してなきゃ常に人間がバラバラになる姿を幻視するっていうのに、死ぬ直前の写真なんか見せられたところで何も思わないよ」

「そうか。それならこっちの方も見せても大丈夫そうだな」

 

そう言ってリボーンが見せてきたものは数枚の写真だった。

どうせ似たような写真だろ、そう思ったツナは受け取って写真を見て、込み上げる吐き気を抑えきれずにぶちまけてしまった。幸いなことにリボーンが咄嗟に用意していた袋に吐き出したおかげで汚れることは無かったのだが。

 

「良かったな。お前の感性は一般人そのものだ。死を見る目を持っているとは聞いていたが予想よりもまともそうでなによりだ」

「い、いきなり何見せて来るんだよ……………!! この腐れ外道!!」

「特殊性癖持ちのゲイカップルの行為最中の写真を見せただけだもん!!」

「何が『だもん』だよ! ってかこれのどこがまともの基準になるんだよ! こんなのでまとも扱いされても嬉しいどころかむしろ悲しくて涙が出てくるよ!!」

「だろうな。俺だって怒り狂う」

 

怒りに身を任せたままツナはリボーンから受け取った写真を引き裂き、破き、粉々になるまで千切った後、窓を開けて外に放り投げた。誰が好き好んで筋肉モリモリマッチョマンのス●ト●写真を残骸であったとしても置いときたいものが居るのだろうか。

心の中で吐き捨てた後、口の中に残る酸っぱく苦い胃液の味に再び吐き気を催したツナはふらふらとした足取りで立ち上がる。

 

「何処に行くんだ?」

「トイレだよ。暫く思い出したくも無い…………」

「そうか。なら先に言っておくがな、この家にはもう一人来ているんだよ」

「リボーンの連れ? 出来れば今すぐにでもさっきの話を無かったことにしてお前を宅急便で送り返したいところなんだけど―――――」

 

そう言いながら振り返るツナであったが、振り向いた先に居たのは此方に拳銃を突き付けるリボーンの姿だった。リボーンは容赦なく銃の引き金を引いて発砲する。

幸いなことに弾丸はツナの頬を掠めるだけで済んだもののもし動いていたら間違いなく死んでいたということに恐怖を覚える。

 

「もしアイツを泣かしたら笑顔しかできない身体にさせてやるからな」

「え、何それ怖い」

「一応言っておくがこれでも生温い方だからな。奴等はお前の命を狙っている」

「…………それってマフィアのボス候補的な意味でだよね? そうだと言ってよ」

 

舌打ちをするリボーンの姿を見てどんどんと青褪めていく顔を隠そうともせず、ツナは必死になって下に降りていく。

何で、どうしてあんな殺気を向けられなくてはいけないんだ。

心の中で恐怖を覚えながら下に降りていく。吐き気はもう感じなかった。

恐怖を忘れる為にツナは台所に入り胃液の味を拭い取る為、口の中を洗い流す。

途中で僅かに赤い液体が混じってたのは気のせいだろう。気のせいだと思いたい。

 

「…………もう、今日は何もしたくない」

 

これ以上何かあると間違いなく体調を崩す、そう確信したツナは早めにご飯を食べて寝てしまおうと考え居間に向かう。

 

「母さん。さっきのことは悪かったから何かご飯食べたい、ん…………だ、けど」

 

眼鏡を掛けながら居間に入った矢先のことだった、見覚えのあるおかっぱ尻尾の少女が楽しそうに自分の母親と話をしていたのは。そこに居るのは本来、この家はおろか日本に居ることもなく、故郷である筈のイタリアで母親と過ごしているはずの少女であった。

いや、まさかそんなことがあるわけない。あの子があの暴君自称家庭教師の同行者なわけがない。あんな可愛らしい子がマフィアとか腹黒い世界に関係があるわけが――――、

そう思っているとおかっぱ尻尾の少女、ユニが此方に気が付いたのか振り向いた。

 

「あ、綱吉さん! お久しぶりです!! リボーンおじ様が何か変なことをしませんでしたか!?」

 

その発言を持って、この良く知っている少女がリボーンが言っていたもう一人であるということを思い知らされる。

どうしてだろうか、さっきから胃痛が酷い。しかも少し視線を逸らすとリボーンが何故かライフルをこちらに向けている。その事実に泣き出しそうになってしまう。

しかし泣いてなんかいられない、ツナは眼鏡を外してユニの傍に近づいて座り込む。

 

「ううん。大丈夫だよ。それにしても前あった時よりも背が大きくなったんじゃないかな?」

「そ、そうですか? 私成長が遅いと思うんですけど…………」

「そんなこと無いよ。それを言ったら俺なんて小柄だし…………」

 

出来ればもうちょっと身長が欲しいんだけどなぁ…………心の中でそう呟くツナだった。

もう少し身長が伸びればきっと運動だってもう少しマシになるんだろうけど。

 

「ユニはまだ子どもだし、身長が低くても気にしない気にしない」

「でも私……………」

「それにさ。ユニには焦らないでゆっくり大人になってほしいんだよ。大人になったユニはきっと凄く美人さんだと思うけど、今のユニも凄く可憐だからさ」

「は、はい…………!!」

「まぁそんなユニのお婿さんになる人は羨ましく思うよ。だってこんなに可愛くて素敵なお嫁さんを貰うんだからさ」

「そんな…………沢田さん、私はそこまで…………」

 

ツナの言葉にユニは顔を真っ赤に染めてもじもじとする。

その様子を見てツナはユニの頭を軽く撫でる。リボーンと来たと聞いた時はショックが強かったが、だからといって妹のようにかわいがっているユニの事を嫌いになるわけがない。

そう思った瞬間だった。何故か物凄い殺気を向けられたのは。

リボーンではない、この殺気は外からだ、それも複数も。しかもただの殺気じゃない。強い怒りと憎悪、嫉妬に満ちた殺意だった。

再び恐怖で身体を震わせるツナであったが、そんなツナに母親である奈々は「あらあら」と笑みを浮かべている。

 

「でもどうしてこっちに来たのさ。アリアさんはどうしたの?」

「えっと、それなんですが…………」

「ツッ君。少し大事なお話があるの」

 

何故この日本に母親と一緒に来なかったのか、その事を聞こうとするツナであったが奈々がインターセプトを決めて話に割り込んでくる。

 

「どうしたのさ母さん。大事な話って、後で俺一人で聞くけど」

「ううん。ユニちゃんにも関わって来るから二人でちゃんと聞いてね」

 

どうしてだろうか、物凄く嫌な予感がする。

今すぐにでもこの場から逃げ出してしまいたくなる気持ちになってしまう。だがそうすればリボーンと外で殺気を向けて来る彼らにリンチにされる。この瞳の力があればある程度は抵抗できるだろうがきっと無意味だろう。

そしてツナは母親から告げられる死刑宣告にも等しい言葉をただ待つだけだった。

 

「実はツッ君に婚約者が出来たの」

 

出てきた言葉でツナは言葉が失った。

 

「…………母さん、婚約者って誰が決めたの?」

 

十中八九リボーン、いや、件のボンゴレファミリーとやらだろう。

大方政略結婚だ。心の中で結論付ける。一体だれがこんなダメ人間と結婚するというのだろうか、それに対して興味が無いわけじゃないが少なくとも受け入れられるものじゃなかった。

こんな死を見るような男と結婚するなんてあまりにも哀れだ。

 

「ツッ君が良く知っている人よ」

「…………父さんか、帰ってきたら覚えてろよ」

 

外国で石油を掘っているという父親に対して殺意を募らせる。

 

「ったく、俺なんかに婚約を申し込むなんて、物好きな人も居るんだね」

「沢田さんは『なんか』じゃありませんよ!!」

「まぁまぁ、落ち着いてよユニ」

 

そう言ってツナはユニを己の膝の上に乗せて母親の顔に視線を向ける。

 

「で、相手方は納得してるの?」

「ええ。ツッ君のお嫁さんのお母さんも『ツナ君になら安心して任せられるわ』って言っていたもの!」

「ん、んん?」

 

おかしい、今の話を聞く限り相手の母親は自分を知っているというのだろうか。

疑問を隠しきれなくなったツナは奈々に尋ねる。

 

「ねぇ、母さん。俺の婚約者って、誰なの?」

「あらやだもう。ツッ君が今抱きかかえているじゃないの~」

「……………え?」

 

奈々の発言にツナは目を丸くして膝の上に居るユニを見やる。

するとユニは顔を凄く真っ赤にしてツナの方を向いた。

 

「えっと、末永くお世話になります。つ、綱吉さん…………い、いえ、こういった方が良いんでしたね。あ、あなた―――――」

 

ユニがそう呟いた瞬間にツナの胃が激しく痛み、外からの殺意が濃くなったのは言うまでもない話である。




第一ヒロインはユニちゃんです。

ちなみにこの時の年齢は大体7~8歳だと思います。
原作だと年齢が不詳なのが多すぎるよ(ユニ、ブルーベル)

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