応募用の作品を作ったり、仕事で忙しかったりしててかなり遅れました。
ちなみに初めて多機能使ったんですが、こんな感じで良いのかな?
「突然だけど敵襲!」
ユニを抱き抱えて扉を蹴り破り、部屋の中に入った綱吉は間髪入れずに言い放つ。
突然蹴り破って入って来た綱吉を訝しむ者も居たが、その宣言を聞いて何が起こったのか、そしてこれから何をすれば良いのか直ぐに判断し、各自戦闘体勢に入る。
数人は何が起こってるのか分かっていない様子みたいだったが。
「…………っち!」
視界の端に、何も無いにも関わらず死の線と点が動いているのが映った事に舌打ちし、それに向けてナイフを投擲する。
投げられたナイフはそのまま姿を隠している何者かに突き刺さる。
「ぐわっ!?」
ナイフが刺さった事でバチバチという音が鳴ると同時に光学迷彩が一瞬解除され、何者かは姿を現す。
さっき出会った男と同じように全身タイツの珍妙なスーツを着ている。
誰がどう見てもさっきの男の仲間で、自分達の敵なのは明白だった。
尤も、その敵を知っているのは自分達だけだが。
「そこかっ!!」
それでも流石は一組織を背負うボスといったところか。
ディーノは一瞬だけ姿を現した男に鞭を振るう。
鞭は男の身体に巻き付いて拘束し、そのまま男ごと天井に叩きつけた。
「…………なんつー力」
あんな鞭で人間一人を拘束し、尚且つ持ち上げて天井にぶつける。
とてもではないが真似出来ない、人間技では無いだろう。
衝撃によって意識を手放し、ベチャッという音と共に地面に落ちた男から視線をリボーンに向ける。
「リボーン、お前…………気付いてただろ」
「ああ」
綱吉の指摘にリボーンは臆面無く呟く。
「気付いてたつーか、最初から見えていたな。コイツらのボスは恐らくアルコバレーノの一人であるヴェルデだ。光学迷彩なんて暗殺に向いているのをヴェルデの奴が対策しないわけないからな。一定の年齢の奴には光学迷彩が発動しないんだろ。まぁ、ツナに効かなかったのは予想外だっただろうがな」
「この眼は万物の死を視る。どんな異能で姿を隠しても、どんな技術で気配を隠しても、死を偽る事は出来ない――――それで、何で黙ってたんだよ」
「そっちの方が面白そうだったんだもん」
「面白くもねぇよ」
リボーンの問題発言に綱吉は青筋を浮かべる。
本当にこの赤ん坊の姿をした悪魔は何を考えているのだろうか。
「ハハハハハハハハハ! いやー、変わらねぇなリボーン」
内心怒りを募らせていると何が面白かったのかディーノは大笑いする。
笑いごとじゃない、と綱吉は怒りの視線をディーノに向ける。
「おっと、悪いな。けど昔を思い出しちまってな」
「昔、ですか?」
「ああ。オレも昔はなよっちかったし、リボーンの無茶ぶりによく振り回されたもんだ。大勢の敵に囲まれた状況を一人で何とかしろって言われた事もあったしな」
「怒っても良いんですよ?」
と、いうか怒らない方が不思議だ。
そう思う綱吉にディーノは笑みを浮かべながら頭の上に手を乗せる。
「まぁ当時は怒ったし理不尽だと思ったさ。でもな、リボーンは出来ない事はやらせないんだ。やらなくちゃいけない時とかは兎も角、本当に無理なら絶対にやらせない。その証拠にツナはリボーンの無理難題をこなしてきたんだろ?」
「それは…………まぁ…………」
思い返せばリボーンが来て以来、毎日のように無茶苦茶な事をやらされてきた。
でも、よくよく思い返してみれば本当に無理な事は一度だって無かった。テストに関しては中々成果が出てないが、それでも頑張れば努力すれば良い点を取る事だって不可能な事ではない。
「リボーンが言わなかったって事はオレ達なら乗り越えられる、って思ってたんだと思うぜ?」
「…………それはリボーンを好意的に解釈しすぎだと思いますけど」
綱吉は視線をリボーンに向ける。
件の人物であるリボーンはとても良い笑みを浮かべていた。
何も知らない人間が見れば天使のような、全てを知っている人間からしたら悪魔のような顔をしていた。
「多分、そういう事なんでしょうね」
だとするならばリボーンは自分ならばこれぐらい乗り越えられると判断したという事。
乗り越えられるといっても文字通り死ぬ気にならなければ乗り越えられないような難易度だろうが。
意識を手放した男の下に歩み寄り、突き刺さっていたナイフを引き抜く。
「でもまぁ…………やるしかないよな」
男の血がべっとりと付いたナイフを片手に構え、入って来た扉の方に視線を向ける。
その瞬間、扉が破壊されて中に人間が大勢、そして非常に大柄な人間とは思えない存在が室内に入って来た。
襲撃者達は数人だけ緑色のスーツを身に纏っていたが、光学迷彩の機能を使っていないらしく、姿がはっきりと見えていた。だがそれ以上に目を引くのは大柄な何かだ。
直死の魔眼はアレが人間ではないと教えてくれている。人間が持つ生命や魂が存在しない。
代わりに見えるのは物の死だけだった。
尤も、あれが何でアレ関係無い。人間じゃないのなら気にする事なく殺す事が出来る。
「炎真下がっていて」
「アーデルハイト…………」
「貴方の力はここで晒す訳にはいかない。私達の目的の為に」
「…………分かった。それじゃあ、任せても良い?」
「無論よ」
シモンファミリーの二人、古里炎真は鈴木アーデルハイトに任せて後方に下がる。
それを見て、綱吉は炎真が戦わない事に疑問を覚える。
恐らくだが炎真はかなり強い。なのに何故部下に任せて戦わないのだろうか?
「ツナ、私達も戦う」
「昔を思い出す…………懐かしいな」
疑問に思う綱吉だったが、アルビートとリゾーナが声を掛けたことによりその事を脳の片隅に追いやる。
「ユニは後ろに下がっていて」
「は、はい! 分かりました!」
ユニを後ろに下がらせ、改めて襲撃者達と向かいあう。
そして戦闘が始まろうとした瞬間、一発の銃声が鳴り響いた。
銃声が鳴り響いたのは敵側ではなく味方側からで、銃を撃ったのはトマゾファミリーのマングスタとかいう中年の男性で、撃たれたのは同学年でトマゾファミリーのボスである内藤ロンシャンだった。
「って、何してんのーっ!!?」
味方である筈の人物、それも上司と部下である筈の関係性の二人の内乱に綱吉は素に戻ってしまった。
敵はおろか味方の誰も彼もが困惑する中、マングスタは声を上げる。
「ご安心を。これは我がトマゾファミリーに代々伝わる特殊弾です! ロンシャン君はこれから真価を発揮するのです!」
自信満々にそう宣言するマングスタの言葉に呼応するかのように、倒れたロンシャンの身体にジッパーが出現する。
これから何が起きるか理解した綱吉はユニの背後に周り、彼女の瞳を隠す。
「沢田さん?」
「ユニは見ちゃダメ」
ジッパーが下に下がると中から額にネガティブとしか形容出来ない人形の上半身を生やした下着姿のロンシャンが現れた。
「もう、お先真っ暗コゲ…………過去も真っ暗コゲ…………」
ついさっきまで元気を通り越してウザ過ぎる性格が一変し、思わず心配してしまう程にネガティブになってしまった。
「あの、マングスタさん。何これ?」
「これは我がトマゾファミリーに代々伝わる特殊弾、嘆き弾です! 撃たれた者は一度死んだ後嘆きながら復活するのです!」
「何で着拒したんだ春子ー!!」
「こ、こんなファミリーがあのボンゴレII世を倒したというのか?」
涙を流しながら嘆くロンシャンを見て、アーデルハイトが何とも言えない表情を浮かべる。
「おもしれーな」
「全然面白くないからな!」
リボーンが愉快そうな表情をしてロンシャンを見る姿に綱吉は戦慄する。
あれは間違いなく自分で試すつもりだ。絶対に嫌だ。
「けど効果はあったみたいだぜ?」
ディーノの視線の先には何とも言えない表情をした敵がおり、誰も彼もがロンシャンに同情していた。
「可哀想に…………」
「一方的に振られたのか…………」
「やはり女等信用出来ん! 男が良い!」
恐るべき嘆き弾、とでも言うべきか。ふざけているがその効果は確かなものだ。絶対に自分は喰らいたくないが。
敵側の戦意が薄れ、戦うのもバカバカしくなっている中、大柄なソレは唐突に動き出した。
機械的な駆動音と共にソレは腕を上げ、指から銃弾を放つ。
「ユニ! 舌を噛まないようにね!」
「は、はい!!」
「のわー!?」
ユニを抱えて降り注ぐ銃弾の雨を回避する。
嘆き弾を撃たれてネガティブになっていたロンシャンも何とか避けていた。
「ば、バカな! 何故嘆き弾が効かないんだ!?」
「そりゃ人間じゃないからね!!」
嘆き弾はあくまで相手の心に訴え掛けるものだ。
その相手に心が無い、慈悲が無い存在であれば効果なんか無いも同然だろう。
「お、オレ達は一体何を…………」
「やられた…………! 敵の策に嵌るなんて…………!」
そして人間ではない何かの攻撃によって敵は正気を取り戻し、此方に戦意を向ける。
何だったんだ今の間は。何とも言えない気持ちになりながらも綱吉はユニを下ろし、改めてナイフを構える。
「くっ、嘆きが足りなかったのか! ならばもう一度…………」
「だから止めろって! 戦意が薄れる――――」
再び嘆き弾を使おうとしたマングスタを止めようと、彼の方を向いた瞬間だった。
マングスタが持っている拳銃の銃口が自分に向けられていることに気付いたのは。
「へっ、いや、ちょっ!!?」
これから何をされるのか理解した綱吉は何とか回避しようとする。
しかし時既に遅く、マングスタが撃った嘆き弾は綱吉の眉間を貫いた。
薄れ行く意識の最中、胸の内から込み上げてくる感情に全身を支配される。
「は、はは――――はははははははははははっ!!」
止まることの無い激情に支配される感覚を味わいながら、綱吉の意識は再覚醒する。
――――それは獣の雄叫びだった。