死を見る大空   作:霧ケ峰リョク

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すまんな、スランプっつーか仕事の職場変わって疲労で書こうとしても内容が思い浮かばんかった。
取り敢えず今回で山本編終了、次回ランボ&ユニ編。


新たな問題

「―――――ま、その後俺は山本を庇って地面に激突。全治二ヶ月の大怪我を負ったんだよ。本当、あの時は死ぬかと思ったよ」

「よく生きてたよな。そういやツナ。あの時の怪我、半月もしないで治ったよな」

「こう見えても鍛えてますから」

 

そう言って二人は「HAHAHA」とアメリカ人のように陽気に笑う。

全くと言っても良い程笑えない所詮ブラックジョークのような内容だったが全くと言っても良い程笑える内容では無かった。

綱吉の方は本当に笑っているようにも見えたが山本の方は全く笑っていなかった。どちらかと言えば苦虫を百匹くらい嚙み潰した顔をしている。

 

「でも本当にやめてくれよ? あの後も何回か怪我してるんだからさ。オカルトハンターの仕事をしているからって見ているこっちの肝が冷えるぜ本当に」

「いや、本当にごめんって。俺も怪我したいと思っていないんだよ。でもなぜか厄介事が向こうから関わって来るんだよ。いや、本当に」

 

武との一件以降からも何度か通常では考えられない事件に遭遇した。

そしてその全てにあの白蘭の影があることも理解していた。と、いうかあからさまにわざとばれるように痕跡を残している辺りは流石だと言うべきだろう。

その無駄な努力をもうちょっと別の方向に傾けたら良いのに。

 

「じ、十代目。今の話って本当なんですか?」

「うん。色々と端折っているけど大体本当。あれ、俺の人生って基本怪我ばっかり?」

 

隼人の言葉に綱吉は同意しつつ己の人生を振り返ってしまう。

とは言え、話した内容の中に白蘭のことは含まれていないが。流石にあの男の件を話すとリボーンがうるさい。

そう判断しながらも自分の人生が主に戦いばっかりだった事実にげんなりする綱吉。

 

「でもまぁ、山本も結構巻き込まれてるよね俺のせいで。雲雀さんも結構な頻度で巻き込まれにやってくるけど」

「良いんだって。気にするなよ。俺達親友じゃないか」

「おい野球バカ! てめぇ十代目の足引っ張ってんじゃねぇよな!?」

「いや、むしろ俺の方が助けてもらってるからね獄寺君。山本って剣の才能凄いあるし」

「あははは。そんな事無いぜ。俺の方もツナには色々と世話になってからな」

 

笑い合いながら三人は夕暮れの中、帰路につく。

このまま何事もなく毎日を過ごせれば良いのに、そう思わずにはいられない綱吉であった。

だが彼はまだ知らなかった。

 

この後渡日してくる牛柄の服を着た幼子が及ぼす一波乱のせいで休日が台無しにされることを。

 

   ×××

 

沢田綱吉―――――ボンゴレ門外顧問CEDEFのリーダー『沢田家光』の実子。

性格は危うい所があるものの極めて温厚、人の上に立つ素養こそ持っているがマフィアとしては不適格である。変わったところもあるが平凡な生活を送っていた人間である。

しかし平凡な所は同時に異常な部分でもある。

 

「…………いや、奴の場合は普通で平凡な人間よりも異常な人間に好まれるタイプか」

 

一通り報告書に記していたリボーンは飲みかけのエスプレッソを口に運ぶ。

口の中に広がる苦味は赤ん坊の姿になったとしても決して嫌いになれない好みの味だ。

そういう意味では風が少しだけ不憫だと思ったがその事を頭の隅に追いやり再び書類仕事に戻る。

 

「戦闘能力も高く数年前までイタリアで同盟ファミリーのエヴォカトーレで過ごし、異能の修行にあけくれている。なお、そこでファミリー次期ボス補佐候補を落としている、と」

 

何気になんてことをやらかしてるんだろうか、下手したら外交問題だぞ。

思わず口に出してしまいそうになるが何とか抑え込む。実際悪くない話だったのだろう。

マフィアの政略結婚としては決して悪くはない相手だ。特にエヴォカトーレファミリーは特異な異能を有しているマフィアだ。流石に構成員全員がその異能を使えるわけではないが、エヴォカトーレファミリーの次期ボスと次期ボス補佐は二人とも使うことができる。それはすなわち次期ボス補佐は間違いなく血縁関係があるものと考えても良さそうだ。

恐らくは愛人、妾、第二夫人の子。次期ボスの腹違いの兄妹といったところだろう。

そう考えながらマフィア専用のネット回線、またの名をマフィアネットで調べ、リボーンは自分の推測が当たっていたことを知る。

 

「ある意味では獄寺と似ているな」

 

違うことといえば獄寺隼人が婚姻関係を結んでいない愛人との子であるのに対し、エヴォカトーレファミリーの次期ボス補佐は第二夫人の子であることだろう。

マフィア界では正妻との子以外はマフィア界では許されていない。最も獄寺隼人の場合は母親の方にも問題があり、結婚することができなかったのだが。

 

「本当に政略結婚としては理想的な相手だな。ダメツナがボスにならなければの話しだが」

 

そう、正に理想的な話しなのだ。

ボンゴレファミリーのボスの血縁関係者が他のファミリーの重鎮と婚約関係を結ぶことはとても重要な意味を持つのだ。

最も、本来ならば綱吉がマフィア関係者と婚約関係を結ぶことは無かったのだが。

 

リボーンの友人で綱吉の実父である沢田家光も本来ならば息子がマフィア界に関わることを好ましく思ってなかった。

そもそもとして他のボス候補が死ななければ綱吉はマフィア界に関わることなく一生を終わらせたのだろう。

だがそうはいかなかった。全ては綱吉が直死の魔眼等という異能を手に入れてしまった事から始まったのだ。

誰も聞いたことも見たこともない前代未聞の能力。ケルト神話の魔神バロールを連想させる力。アルコバレーノに掛けられた呪いすら一部とはいえ解除することができる個人が有するには重すぎる力だ。

そしてその異能の存在を知っていた今代大空のアルコバレーノのアリアが、息子が死にかけていると聞いて急遽帰国した家光よりも先に接触したことが問題だった。

 

「俺からしたら、あいつは大恩人なんだけどな」

 

藁にも縋る気持ちだったのだろう。

子を持たないリボーンでは気持ちは分からないがそれでも同じアルコバレーノである以上気持ちは理解できる。しかしそれは限りなく悪手に近かったのだ。

結果的にはアリアの望み通り、ユニの呪いは殆ど解けた。解けてしまったのだ。

変質しているとはいえアルコバレーノの呪いを解けるということはその気になれば自分達も同じように解除することが可能だという事。

それが原因で一部のアルコバレーノが暴走を引き起こし、綱吉の身柄を狙っているのだ。

問題児は当然として呪いを解くことに執着している者も、そして犬猿の仲に居るあの元軍人も綱吉の身柄を狙っている。ボンゴレファミリーが情報を規制しなければもっと広まっていただろう。

 

「家光からしたら複雑な心境だろうな」

 

息子を守るために己が守って来たのに、運命は嘲笑うかの如く残酷な運命を背負わせたものだ。

そう思わずにはいられなかった。友人が頭を抱えて悲痛そうな顔をしている姿等。

 

「何も出来なかった、その気持ちはなんとなく分かるけどな」

 

自分の生徒となった少年が手に入れた力は明らかに異質だ。

本来彼の血に宿ったものとは異なる、偶然手に入れただけの力だ。

だから父親である彼は制御する方法を教えることができたなかった。

その結果、家光は同盟ファミリーかつ異端な力を使うエヴォカトーレファミリーに託したのである。

それでもマフィア等の裏社会のことを知らずにいたのは幸福なことだろう。

とは言え、ボスの娘を口説き落とすとは思っていなかったが。

最も、綱吉がボンゴレファミリーの次期十代目になってしまった時点で婚姻関係を結ぶことは出来なくなったのだが。

いくら同盟ファミリーであっても組織のナンバー2となる人間と別組織の人間を婚姻させるわけにはいかないのだ。これで綱吉以外の候補者たちがまだ生きていてその中の誰かが十代目になるのだったら話は別なのだが。

もしくはエヴォカトーレファミリーが何らかの理由でボンゴレファミリーに敵意を向けるような行動をした場合だろう。

 

「ま、そんなことは起こらないだろうな。それよりも今はユニの方が問題か」

 

頭の中をリセットして別の事を考え始める。

リボーンとしては孫のように可愛がっているユニをあんな軟弱な男に渡すわけにはいかない。

確かに恩人ではあるのだろうし性格も悪いわけじゃない。ユニも先のエヴォカトーレファミリーの次期ボス補佐とは違いまだマフィアじゃない。

婚姻関係を結ぶこと自体は悪くないのだ。問題が無いわけでは無いが。

だが今のままではダメなのだ。

何故かは分からないがリボーンの勘が告げている。

 

――――このままだと沢田綱吉は想像を絶することをやらかすと。

 

明確な根拠は存在しない。だけどそう思わずにはいられなかった。

あの死ぬ気モードを見た瞬間から、沢田綱吉が途轍もなく恐ろしいものだと思ってしまったのだ。

だからこそ、家庭教師である自分が原因を見つけてなおさなくてはいけないのだ。

そう考えて書類に記載していくリボーン、だが彼は気付かなかった。

 

いや、知ろうとしなかったのだろう。

 

何故なら、リボーンが沢田綱吉から感じた悪寒と同じものをユニから感じたのだ。

しかし気のせいだとリボーンは思い込むことにした。

 

「原初は、語り…………天と地は分かれ、我は再び―――――」

 

それが後に最悪の結果を呼び込むと知らずに。

 

 




海は既に目覚め、虹は覚醒し、貝は目覚めず。

■■の剣は全てを壊し、■■の剣は理を語り、■■の剣は幻想を守る。

例え最果ての塔無き世界だったとしても。

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