死を見る大空   作:霧ケ峰リョク

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今回は弱点回です。
割と直死の魔眼で勘違いされがちですが七夜は直死とは全く無関係ですので。
だから七夜の奥義は使えません。


怒涛の嵐

「リボーン、これは一体どういうこと?」

「見ての通りだぞ」

 

現在置かれている状況をリボーンに尋ねる綱吉であったが素っ気無く返される。

どうやら問い質しても真面目に答えてはくれなさそうだ。そう思いながら見ていると隼人もリボーンに対し、問い掛ける。

 

「あんたがあの最強の殺し屋と名高いアルコバレーノの1人、リボーンか」

「そうだぞ。そして今はそこのダメツナの家庭教師だ」

「…………シャマルが言っていた通りの人だな。それで、こいつを殺せば俺がボンゴレ10代目と言うのは本当なんだろうな?」

「ああ、その通りだぞ」

「おい」

 

こっちの了承も得ずに勝手に決めるな、そう言おうとする綱吉だが隼人はそれよりも早くダイナマイトを構える。その姿を見て綱吉は何を言っても無駄だと悟り、リボーンに視線を向ける。

 

「リボーン、俺武器この前壊したんだけど何か無い?」

「そうか。それならこれを使え」

 

そう言うとリボーンは懐から取り出したある物を綱吉に向かって投げつける。

綱吉は投げられた物を受け取り、それが何なのかを理解する。リボーンから渡された物ははたきであった。

まさかこれで戦えとは言わないだろうな、内心不安になりつつもリボーンの方に視線を向ける。

 

「それじゃあ戦え」

「巫山戯んな!!!」

 

渡されたはたきをリボーンに向かって思いっきり投げつける。

しかしリボーンはそれを読み切っていたのか少し身体を横に逸らしただけで回避する。

 

「刀とまではいかないからせめてナイフを寄越せよ!! こんなんで戦う事が出来るのなんて何処ぞのヒトヅマニアくらいしか出来ないよ!!」

「その前例を知っているなら出来る。大丈夫だダメツナ。自分を信じろ」

「信じられるか!!」

 

無理矢理見せられていた夢の中で知ったとある英雄、その動きなら武器なんか無くたって倒すのは可能だろう。しかしあれは完全に長い年月をかけて染み付いた動きだ。完全に再現するにはかなりの時間がかかるだろう。

少なくとも一朝一夕で使える動きじゃない。

そんな人物の動きを模倣するのは出来ないわけじゃないがこの少年を相手にするにはあまりにも不足過ぎる。

 

「分かった。そんなに言うなら受け取れ」

「用意してるのなら最初から渡せよ」

 

投げ渡されたナイフを受け取って鞘から抜き取る。

刀身を見ればかなり手入れされているということが分かり、使い易いということが理解できた。

 

「良いナイフをありがとう」

 

受け取ったナイフを確かめながら綱吉は隼人の方に向き直る。

 

「待っててくれてありがとう。意外と真面目で律儀なんだね」

「はっ、別にただ待っててやったわけじゃねぇ」

「そっか。なら、やりたくはないんだけど、闘おうか!」

 

どうせ闘うしかないのなら先手必勝、そう言わんばかりに一気に距離を詰め寄る。

すると隼人は後方に下がりながらその手に持っていたダイナマイトに火を付けて放り投げた。自身に向かってくるダイナマイトの数は8本。その全てが同じ導火線の長さで、とても短かかった。

 

「っ! 猪口才な!!」

 

ナイフを一閃しダイナマイトを斬り捨てていく。だが同時に斬り捨てられたのは2本までで、残りは6本もあった。このまま黙って喰らうわけにもいかない為一瞬だけ速度を速めて爆発を回避するも、ダイナマイトは背後で爆発を引き起こし、綱吉の背中に爆風を浴びせる。

背後で起こった爆風に綱吉は「くっ」と苦痛に呻くも、爆風を利用して更に加速する。

そしてそれを見ていた隼人は目を鋭くし、懐に手を突っ込んだ。

 

「2倍ボム!!」

 

今度は計16本のダイナマイトが投げ付けられる。

降り注ぐ爆弾の数はさっきの2倍、技の名前通りだと思ってしまうも数が増えた分厄介になった。

 

「流石にこれは回避できそうに無い、か……………」

 

このまま踵を返して来た道を戻った方が回避が楽なのだろうが、何故か後ろに戻ってはいけないと直感が告げて来る。

それに従い、勢いよく駆け抜ける。幸いなことに爆発する前に何とか爆破圏内から逃れることができた。しかしそれは同時に爆風を背中にもろに浴びることに繋がり――――、

 

「っと、危ない危ない…………」

 

後方で起爆し引き起こされた爆風は綱吉の予想よりも威力が高く、危うく転びそうになってしまうもののなんとか堪える。本当に戦い辛い、隼人の戦闘スタイルに対して綱吉はそう評価する。

早く倒さないとこっちが負ける。そう結論付けた綱吉はナイフを構えて駆け抜けようとする。

しかしその直前、視界にある物が映ったことによりその足を止めることとなる。

 

「…………っち!」

 

綱吉は舌打ちをしつつナイフを壁に突き立てる。いかに手入れの行き届いたナイフであったとしても荒れに荒れていてもコンクリートの壁には突き刺さらない。そう、その筈だった。

しかしナイフは音を立てることも無く、その刀身は勢いよく壁に突き刺さった。

最初はこの行いに疑問を抱いていた隼人も時間が数秒経ち、綱吉が何をしたのかを理解する。

 

「成程、そういうことか。ようやく理解できたぜ、てめぇの能力」

「理解したって、何を?」

「とぼけても無駄だぜ。今、てめぇがそのまま前に進んでいたらその場所ごと爆発していた。そこにはトラップを仕掛けていたからな」

 

隼人は冷静に、それでいて淡々と話し続けながら少しずつ後ろに下がっていく。綱吉もそれに応じてゆっくりと、じりじりと隼人に近づいていく。

互いに警戒を続けながらも隼人はダイナマイトを手に持ち、説明を続ける。

 

「大方、その眼の力で罠があるのを看破し解除したんだろうが…………今のではっきり分かったぜ。てめぇの弱点」

 

自信満々と言わんばかりにしたり顔を浮かべる隼人に対し、綱吉は額から冷たい汗を流す。

まだか、まだ時間が掛かるのか。このポンコツが。内心焦りながらも綱吉はそれを悟らせないように注意しつつ隼人の方に眼を向ける。

 

「へぇ。それで? 何か分かったの?」

「とぼけても無駄だぜ。さっきのダイナマイトもそうだが、てめぇには手数が足りねぇ。例えどれだけその眼が物の死を捉えることが出来ようとも、その死を突くのはてめぇの身体だ。だから同時に迫り来る攻撃やてめぇ自身の限界を超えた動きは出来ない。それがお前の弱点だ」

「…………正解だよ。それに追加するのなら君のように絶え間なく範囲攻撃してくるような相手は更に苦手だ」

 

そう、それこそが直死の魔眼の弱点だ。

この眼は確かに物事の死を情報として捉えることが出来る。しかし、逆に言えばそれだけなのだ。動きながら物の死をなぞることは非常に難しく、それが戦闘となると更に困難になる。

どれだけ凄い瞳を持っていようが結局はスペックの問題なのだ。故に隼人の戦闘スタイルは現時点での綱吉に対してとても有利に働いていた。

そして―――――、

 

「そうかよ。ならこれで終いだ」

 

隼人はその手に持っていたダイナマイトを大きく振り被る。

 

「2倍ボム!!」

 

投げられたダイナマイトは宙を舞いながらツナに襲い掛かる。

動きが止まっていた身体に無茶をさせて、このまま一気に詰め寄って勝つのが一番良い方法だ。しかしそれで勝てるかも少し自信がない。そもそもとして爆破する前に逃げ切れるかどうか分からない。

ならばどうするべきか―――――その答えは簡単だ。爆発する前に全てのダイナマイトの紐部分を斬ってしまえば良い。多少の身体に負担が掛かるができないわけでは無い。

そう考えた綱吉はナイフを強く握りしめ、振るおうとした瞬間だった。

 

――――顔のすぐ横でダイナマイトが爆発したのは。

 

「あぐっ!? え、な…………」

 

爆発の規模としては先程見たダイナマイト一本にも遥かに劣る程度だったが、顔のすぐ横で爆発したという事実に綱吉は混乱する。

一体何が起きたというのだろうか、ダイナマイトがこんな近くにまで来ていたらすぐにわかるというのに。

 

「解せないようだな。特別に教えてやる」

 

混乱する綱吉に隼人はベルトからある物を取り出す。

取り出した物は非常に小さいダイナマイトだった。

 

「こいつはチビボム。今2倍ボムを放つ少し前に放り投げといた奴だ。その後に通常のダイナマイトを投げた事によっててめぇの脳は錯覚を引き起こした。所詮遠近法ってやつだな――――そして遅れて投げたダイナマイトが動きを止めたてめぇに襲い掛かる」

 

遅れて投げられたダイナマイトの導火線が燃え尽き、爆発を引き起こす。

計十六本のダイナマイトは連鎖的に爆発し、動きを止めた綱吉の身体に容赦なく襲い掛かる。

 

「不味いな……………これは、回避できない」

 

自らに襲い掛かろうとしている爆破寸前のダイナマイトの群れを見て、そう呟く。

どう足掻いても回避できない、攻撃範囲があまりにも広すぎる。殺すことも不可能だ、一つの爆発程度だったら殺すこともできただろうが複数の爆発は不可能だ。

正しく絶対絶命―――――、誰もがそう思う中で綱吉は笑みを浮かべた。

 

「果てな」

 

その言葉を最後に、綱吉の身体は爆発に飲み込まれる。

凄まじい轟音が誰も居ない廃工場に鳴り響いた。


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