そろそろFateのサーヴァントにシモ・ヘイヘとか舩坂弘とかが出てもいいと思うの、作者です。
だって舩坂弘はリアル生きた英霊ですよ?ヘイヘもですが。というか、WWⅡの時代はリアル人外がどの国にもいたような気がする。特に空軍…。
今回の話で一応IS学園編2nd seasonは終わって、次回から新章に突入します。
そういうわけでアンケートの締め切りは近いですよ~。
では本編をどうぞ↓
「ほんわ君さーん!!」
「南美!うわっとと…。」
飛び込んでくる南美をほんわ君は体で受け止める。
南美は“えへへ~”と締まりのない笑顔でほんわ君の胸に頬擦りする。
学年別個人トーナメントが終わった週の日曜日、南美は優勝の手土産を引っ提げてほんわ君に会いに来ていた。
「ほんわ君さん!私頑張りましたよ、褒めてください!」
大会の時とは全く違う年相応の笑顔、それを向けられたほんわ君は南美をぎゅっと抱き締めて頭を撫でる。
「うん!凄い凄い!!」
「えへへ、もっと撫でてください!」
ほんわ君に撫でられた南美の顔はより緩み、声もますます甘えるようになっていく。
そしてほんわ君も、そんな南美のことを強く優しく抱き締める。南美も抱き締められる力を感じてほんわ君を抱き締め返す。
「ふふ、デートですよデート! どこに行きますか?」
抱き締められていた南美は視線を合わせて訪ねる。
そんな南美の手をほんわ君は優しく握り、軽く笑い掛けるとその手を引いて歩き出す。
南美もほんわ君の行動に照れながらも、満更でも無さそうに着いていく。
「ほんわ君さんとこうしてデートするのも久々ですね。」
「うん、いつもはTRF‐Rに来てもらっちゃって、外で会うことなんて少なかったもんね。」
「いいんですよ、私はほんわ君さんと会えるだけでも嬉しいんですから。」
繋いだ手を嬉しそうに南美はブンブンと前後に振る。
手を繋いで仲良さそうに歩く二人に、周囲の人々は微笑ましそうに笑う。
そんな微笑ましい二人のすぐ横を一人の小柄な少女が走り抜けていき、その直後に厳つい男たちが走り去って行く。
「待てコラ! そこの銀行強盗犯ワレェ!」
「シェンの兄貴の仇じゃ!」
「夢弦警察署の職員舐めんなや!」
疾風のように走り抜けていった少女と男たちの姿に、南美とほんわ君は数秒ほど立ち止まってしまっていた。
「あぁ、いつものアレかなぁ?」
「そうかもしれませんね。でも銀行強盗って聞こえましたし、あの女の子がこの前の犯人なのかも…。」
「まさかぁ、だって僕よりも小さい女の子だったよ?」
「普通の女の子なら、ですよ。普通の人は夢弦署の刑事さんと追いかけっこしませんよ。」
南美の言葉にほんわ君は“そう言えばそうだね”と笑う。
そうして気を取り直した二人はいつものようにレゾナンスへと足を踏み入れた。
「今日は何を買うの?」
「水着です。」
「え?」
「水着です。」
3階のショッピングエリアに到着するとほんわ君が南美に訪ねる。その南美の返答に即答すると、ほんわ君が思わず聞き返し、もう一度南美が即答した。
「そろそろ夏なので、新しい水着が欲しいんです。それで、その、ほんわ君さんに選んで欲しいんですけど…。」
もじもじとして、頬をほんのりと紅潮させる南美にほんわ君も恥ずかしくなり、顔を真っ赤にする。
がしかし、そこはほんわ君も一人の男である。
「う、うん、分かった。じゃあ行こっか?」
「はい!」
繋いだ手を引っ張って、ほんわ君と南美は水着売り場に向かった。
南美がほんわ君とデートをし、他の専用機持ち達や生徒らも街に繰り出している時、箒は千冬に呼ばれて応接室に来ていた。
広い応接室は、かなり金が掛かっているであろうソファや調度品が置かれており、それでいて上品な雰囲気を保っている。
箒は千冬の隣でソファに腰を下ろし、正面に座る男を見る。
「どうもどうも初めまして。如月重工開発局所属で、IS開発部の主任をしている藤原啓(フジワラヒロシ)って者だよ。よろしくね、篠ノ之箒さん。」
藤原はニッと微笑むと、その大きな手を箒に差し出した。箒も手を差し出してその手を握る。
「こ、こちらこそよろしくお願いします。その、IS学園の篠ノ之箒です。」
緊張した面持ちの箒を見て、千冬はハァと息を吐いた。
「あまり緊張しなくてもいいぞ、篠ノ之。そいつは高校時代の私の同期だ。」
それだけ言って千冬はコーヒーを啜る。
その様子に藤原は苦笑いを浮かべて頭を掻く。
「クールだよねぇ、本当に…。ま、いっか。早速本題に入ろうじゃないか。」
藤原は手を離すとじっと箒を見つめる。
「単刀直入に言おう。篠ノ之箒くん、君を如月重工のテストパイロットにしたい。そしてこれが今ウチで製作したIS、“紅椿”だ。」
そう言って藤原は厚い紙束と1枚の赤いISが写った写真を渡す。箒は写真を一瞥すると、渡された紙束に目を通す。
「これは…!」
「時代の流れを汲みつつも逆行するをコンセプトに作った機体だ。基本装備は2本のブレードのみ、その2本に複数の機能を持たせることで多様性を持たせたんだ。」
藤原の説明に、横から資料を読んでいた千冬が大きく息を吐く。
「相変わらずだな如月重工。こんなピーキーでバカげたものを造るのはお前達くらいだろうな。」
「ブレオンで世界を獲ったドミナントがよく言うよ。オレに言わせれば、アレほど人間の可能性を感じたものはない。」
藤原は目を閉じていた。昔のことを思い返しているのか、表情はとても穏やかだった。
そして千冬は箒の隣で教え子と同期に顔色を見られないようにしているのか、顔を箒からも藤原からも背けている。
「だからこそ──いや、…昔の話は今は置いておこうか。それで、篠ノ之箒…お前の答えを聞かせてもらおう。」
藤原の問を受けて、箒は背筋をすっと伸ばして居住まいを正すと、藤原の目をしっかりと見つめる。
「その話、お受けします。」
「そうでなくっちゃ。ん~、面白くなってきた。」
予想通りの返答に藤原は満足したのかくっくと笑う。
その後、箒は契約書にサインと血判を押し、晴れて如月重工のテストパイロットに就任した。
「これが紅椿…。」
「あぁ、そうさ。如月重工の全力で作った第3世代機、これを上回るなら次の世代を持ってこいってんだ。」
アリーナの中央で、箒は最適化処理と初期化を行うために紅椿を纏いながらその美しさに息を呑む。
「ブレード2本という装備、近接戦の強さを活かすために機動力を重視した性能だ。そして速度を維持する為にジェネレータもそれに合わせて作った逸品、それによって可能なのは強襲からの離脱。究極のヒット&アウェイだ。」
その説明に箒は心を踊らせる。それに藤原は“あ~”と申し訳なさそうな声を出した。
「その代わり、脆いんだ…。とてつもなくね。火力と速さに重きを置いた分、防御を捨てている。だからこいつで戦う時は今までの打鉄みたいなことはできない。」
「いや、充分だ、それで。充分過ぎる。」
丁度すべての作業が終わった箒は2振りの刀を取り出して振るう。
「空裂と雨月、それが紅椿の装備であり、唯一の武器だ。空裂は斬りつけると同時にエネルギーの刃を飛ばし、雨月は刺突と同時にレーザーを放てるように作ってある。まぁ、浪漫の体現ってヤツさ。」
「そうか。」
藤原の説明が終わると同時に箒は2本のブレードを収納する。
「それで、どうだい使い心地は?」
「最高だ!実に手に馴染む。」
「そいつはよかった。」
爛々と目を輝かせて楽しそうに語る箒を見て藤原は目を細める。
そして次は運動試験とも言わんばかりに箒はアリーナの空に飛び立つ。
そんな彼女の様子を藤原はただ黙って見守っているのだった。
(箒ちゃんはやっぱりお前の妹だよ、篠ノ之…。)
ポリポリと後頭部を掻きながら、藤原は手元のタブレットを操作して、空を飛び回る箒の姿をデータに納めた。
「こういうデザインはどうですか?」
そう言って南美が取り出したのは黒の水着、それなりに露出はしているものの、フリルのあしらわれたそれはセクシーさと同時に可愛らしさもアピールしている。
「え、あ、その…。」
頭の中でその水着を着た南美の姿を想像したほんわ君は耳まで真っ赤にする。
その反応を見た南美は“ん~”と軽く唸って水着を元あった場所に戻す。
「ほんわ君さんには刺激が強いみたいですね。まぁ、私もあんまり派手なのは着るつもりないですけど…。」
「う、うぁ…。」
顔を真っ赤にして何も言えない状態のほんわ君を見た南美はイタズラし過ぎた子どもみたいな顔になる。
「ごめんなさいほんわ君さん、からかい過ぎちゃいました。」
素直に謝った南美はほんわ君の手を握って左右に揺する。ほんわ君はコクコクと無言で頷く。
「ご、ごめん南美…。なんの参考にもならなかったよね。」
「良いんですよ。ほんわ君さんの反応だけで充分でしたよ。」
南美は握ったほんわ君の手を引き寄せてその体を抱き寄せる。
そしてぎゅっと抱き締めた。“ほんわ君さん成分の補給です”と南美は笑顔で抱き締め続ける。
「私はほんわ君さんと一緒にいれるだけで、こうしてるだけでも嬉しくて、楽しくて、心がポカポカするんです。ほんわ君さんは私といて、どうですか?」
「うん、僕も楽しいよ。南美の笑顔が見れて。楽しそうにしてる南美を見るのが一番の楽しみだもん。」
ほんわ君も南美の背中に手を回して抱き締め返す。
そんな二人のすぐ側で“んっん”と咳払いする声がした。
そこには引き攣った笑顔の店員。二人は周りを見渡すと、恥ずかしくなりその店を直ぐ様後にした。
「あはは、やっちゃいましたね…。」
「そうだね…。」
売場から離れた場所まで駆け抜けた二人は、人気のない陰で息を切らせながら向き合う。
「ほんわ君さん…。」
「どうしたの、南美?」
「そろそろお昼にしませんか?」
“てへへ”と笑いながら南美はお腹を擦る。
その言葉にほんわ君は頷いて南美の手を引いて、空いている店を探して歩き出した。
「はい、ほんわ君さん、あーんしてください。」
「あ、あーん…。」
南美はくるくるとパスタを巻いたフォークを差し出す。
ほんわ君はやや恥ずかしそうにしながらも、その差し出されたパスタにパクついた。
「美味しいですか?」
「う、うん。」
顔のやや赤いほんわ君はモグモグとパスタを食べて飲み下す。目の前にはもう小さな口を開けて待っている南美がいる。
それにほんわ君は尻込みしながらもパスタを巻き、南美に差し出す。
そのフォークのパスタに南美は躊躇いもなくパクつく。
その彼女の顔はとてもいい笑顔である。
余談ではあるが、この日この時間のこの店では、コーヒーの売り上げ記録を更新したという。
「どっせい!」
「まだまだですねぇ。」
簡単に一夏を転ばせた犬走はそのままバックを取って首に腕を回す。
その腕を一夏が軽く2回触ることで、犬走はロックを外した。
「体術面がなってませんよ。そんなんじゃ私にも勝てませんね。」
「ぐ…。」
一戦後の反省会で一夏はぐうの音も出ないほどに犬走に指摘を受ける。
そのほとんどがいつも同じことであり、それを改善できない事実に一夏はついつい目線が落ちる。
だが犬走は下を向いた一夏の顔を掴んで無理矢理自分の方を向かせる。
「剣の方は先輩に教わってください。そ、れ、で! 体術の方を私が教えましょう!」
「はい!よろしくお願いします!!」
反省会の正座のまま一夏は頭を下げた。
一人の少女は新たな翼を得た。
一人の少年は新たな師を得た。
夏、それは青春の季節。
ある者は力を求め、ある者は恋に生き、ある者は愛を求め、力を求める。
次章、IS学園編3rd season「夏、青春、大騒ぎ」
第80話「どうして買い物に来ただけで修羅場になるんですかねぇ」
に続く!
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紅椿の性能は原作よりも低いです。
軽量逆関節ドヤ顔ダブルMURAKUMOと言えば分かりやすいでしょうか?
これは束さんが原作よりも飛び抜けていないことと、キサラギが1枚噛んでいることが要因です。それでも高性能なのは変わらないんですがね。
そして藤原さん、実はかなりの重要人物だったりします。