IS世界に世紀末を持ち込む少女   作:地雷一等兵

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大学の講義を聞いている最中に、いずれ書こうと思っていたブロントさんの話のプロットをティンと閃いて、気がついたらプロットが完成していた。
何を言って(ry

ちなみにこの「IS世界に世紀末を持ち込む少女」の中ではブロントさんは嫁がいます(結婚しているとはまだ言っていない。)

では本編をどうぞ↓


第78話 動き始める何か

「prrrrr prrrrrガチャ はいこちらIS学園…なんだお前か…。何の用だ?」

 

「相変わらず冷たいねぇ、泣いちゃうよぉ?」

 

土曜日の昼下がり、授業を終えて一段落着いていた千冬のいる職員室に電話のコール音が鳴る。

職員室でコーヒーを飲んでいた千冬は電話に出ると露骨にテンションを下げた。

電話の相手は慣れているのか、それでも話を続ける。

 

「如月重工の人間として話がある。篠ノ之の妹…、篠ノ之箒をうちのテストパイロットにしたいんだ。」

 

「…それで?」

 

「一応本人にも確認したい、だからこの前の学年別個人トーナメントの時みたく許可を出してほしい。こういうのは直接話した方がいいからね。」

 

男の言葉に千冬は暫くの間、口を閉じる。

そして次に口を開くと、自然と言葉を紡いでいた。

 

「お前は、篠ノ之に何を期待しているんだ?」

 

「…オレは見たんだ、可能性ってヤツを…。その可能性の先を見てみたい。それに、篠ノ之との約束があるからな。」

 

「随分と懐かしい話を覚えているものだな。」

 

男の言葉に千冬は目を細める。

 

「まぁねぇ…。」

 

電話口から聞こえてきた男の声もまた、昔を懐かしむようなものだった。

 

「まぁ良いだろう。上と篠ノ之には話を通しておいてやる。」

 

「ありがとう、織斑。」

 

男は簡潔に礼を述べると、電話を切った。

 

 

 

「さて、今日はゲストを呼んでいます。」

 

土曜日の昼、木陰の中で狗飼は一夏に告げる。その言葉通りに、狗飼の隣には機動隊装備に身を包んだ犬走がいた。

 

「どうも初めましてですね。狗飼先輩の部下兼後輩の犬走椛と言います。」

 

全身をガチガチに固めた犬走はペコリと頭を下げた。それを見た一夏もつられて頭を下げる。

 

「そろそろ応用編に入ろうと思いまして。今日からは私か椛のどちらかが相手になります。取り合えず今日は埖が相手をしましょう。」

 

「っというわけでお相手しますね!」

 

笑顔でそう言う犬走の手には円形のライオットシールドと長めの警棒が握られていた。

そのやる気に溢れた姿に一夏は木刀を握る。

 

 

「準備はいいですね?では、始め!」

 

「ズェァアッ!」

 

狗飼の掛け声とほぼ同時に前ダッシュで犬走に突っ込む。そして間合いに入ると同時に打突を繰り出す。

犬走はその突きを盾で簡単にいなし、一夏に密着する。

 

「盾持ち相手に迂闊ですね!」

 

密着した体勢から犬走は背中を一夏の胸にぶつけ、そのまま背負い投げる。

そして地べたに叩きつけられた一夏の腕を捻り、木刀を蹴り飛ばすと、一夏に上から覆い被さった。

 

「はい、制圧です。」

 

「……。」

 

あまりにも呆気ない幕切れに一夏は目を点にして犬走を見つめる。

 

「ふっふっふ~。コレでもへヴィーファイトのインカレチャンプですよ?KGDOの社員ですよ?高校生にはまだまだ負けませんって。」

 

ドヤァとうざかわいい顔を浮かべる犬走を一夏はただ見つめるしかなかった。

師匠である狗飼とはまた違う剣技。また盗む相手が増えたと、一夏は心の底から嬉しくなる。

 

「犬走さん…。」

 

「椛でいいですよ。」

 

「椛さん、オレは貴女にも勝ちます!いずれ、絶対に!!」

 

一夏の宣言を聞いた犬走はムフフと面白そうな物を見つけたように笑い、ピョンと一夏の上から飛び退いた。

 

「そう簡単には負けませんよ~だ。」

 

生意気な笑顔を一夏に向ける椛は楽しそうに警棒をクルクル回して突きつけた。

 

 

 

食堂の一角で向かい合って座るセシリアと鈴。ラーメンを啜っていた鈴のリボンが揺れる。

 

「むむむ…、また新しいライバルの予感…。」

 

「何を下らないことを言ってるんですの?」

 

「いや、何となくそんな予感が…。気のせいかな…?」

 

向かいの席でバカデカい拳銃の手入れをしているセシリアに言われ、鈴は首をかしげてまたラーメンに箸を伸ばす。

 

 

 

「次のニュースです、夢弦市の銀行に強盗が押し入りました。強盗犯は銀行員にボストンバッグを渡すと、『札束を入れろ。それも1つや2つではない、全部だ!』と言って現金を強奪し逃走。現在警察による捜査が進められています。捜査関係者は『ほう、この犯罪者はどうやら死にたいらしいな』、『やれやれ、最近の犯罪者はやんちゃで困る』『強盗犯殺すべし!慈悲はない』等と述べており、市民からは事件の早期解決が確信されています。続いてのニュースは───」

 

テレビのニュース番組でアナウンサーが原稿を読み上げる。その報道を聞いたグスタフと弥子が溜め息を吐いた。

 

「…最近、事件が多いですよね。それも夢弦近辺で。」

 

「あぁ、それこそ何者かが噛んでるとさえ思えてくるくらいにな。」

 

「何者でしょうか…?」

 

「さぁな、そもそも誰かが暗躍してると言う証拠もない。」

 

コーヒーの入ったマグカップをテーブルに置いたグスタフはふぅと小さく息をつき、頬杖をついた。

 

「それでも、我々相手に闘争を挑もうとするならば、全力で相手になろう。」

 

渋い声でそう呟いたグスタフの顔は笑っていた。どうしようもなく、狂っているように、好きなことに胸を踊らせる子どものような笑顔。

それを見た弥子は“これだからウォーモンガーは“と言うように鼻から息を漏らした。

 

 

 

「さて…現場だが…。事件当日の担当は誰だったか?」

 

クリザリッドはブロントを連れて、強盗に遭った銀行に来ていた。

ここの銀行は警備をKGDOに依頼しており、今回の事件によって浮き彫りになった部分を修正するための調査をするために派遣されてきたのだ。

 

クリザリッドの質問にブロントは持っていた分厚いファイルをペラペラとめくっていく。

 

「ん~、その日は中西とシェン・ウーが担当だったみたいだな。シェンが負けたことには正直驚いたが、あれに勝った強盗犯に関心が鬼なった。」

 

「言ってる場合か!これはうちの信用問題だ。今から問題点を洗い出して報告書を上に上げて、兎に角やることは膨大だ!暫く自宅でゆっくりできんぞ。」

 

「おいィ!?ちょとsYレならんしょそれ…。オレは深い悲しみに包まれた。」

 

「言ってろバカ…。」

 

クリザリッドに見えていた現実を突きつけられ、ブロントは膝から崩れ落ちた。

そんなブロントを見て見ぬふりしてクリザリッドはふんと鼻を鳴らして銀行の中に入っていく。

 

 

 

「それで、どんな人物でした?中西さん。」

 

KGDO社内の一角で、ミストは鉢巻きを巻いた少女の中西剣道に訊ねた。

中西剣道は銀行強盗の時に現場に詰めていた警備員の一人である。

 

「なんと言うか、小柄な女の子だったよ。どことなーく猫っぽい感じの。」

 

中西剣道の答えにミストはふむふむと頷きながらメモを取り、事前の調書と照らし合わせる。

 

「小柄って言ってましたが、どれくらいの背丈でした?」

 

「ん~、中学とか小学生くらいの背丈じゃないかなぁ。最近の子は発育が良いっていうから正確じゃないけど。」

 

「そんな小さな身体の子がシェンさんを殴り飛ばしただって?そんなの普通じゃ考えられない!!」

 

ガタッとパイプ椅子から立ち上がってミストは中西剣道に詰め寄る。

その剣幕に剣道はどうどうと馬を宥めるようにミストを落ち着かせる。

 

「私だって最初に見たときは自分の目玉を疑いましたって!あのシェンさんが幼女にしばかれたんですよ?」

 

「それで面食らってるうちに中西さんも殴り飛ばされた、と。」

 

「う…。め、面目ないっす…。」

 

バツが悪そうに中西剣道は頬を掻く。

その様子にミストもそれ以上は何も言えなかった。

 

「シェンさんに勝つなんて、一体何者なんだ…。」

 

ぽつりと囁かれたミストの言葉は誰の耳に届くこともなく消えていった。

 

 

 





中西剣道で通じる人がいるんですかねぇ…。

それよりも気がついたことがある。
この世界のブロントさんってかなり勝ち組な気が…。

イギリスで大会9連覇していて、スポーツ得意。
日本有数の企業の社員で、恋人もいる。
そこまで絵に描いたみたいなエリートにするつもりがなかったのに、気がついたらブロントさんの設定がこうなっていた。
さすがナイトは格が違った。

そして描写もなくやられるシェン・ウーさん…。



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