IS世界に世紀末を持ち込む少女   作:地雷一等兵

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予告した通り番外編を投稿させていただきました。

では本編をどうぞ↓


番外編 夢弦市よいとこ一度はおいで part1

夢弦市、そこはIS学園行きの船が出る港も有する一大都市。

大きな企業の本社などもあり、人で賑わう場所である。

そんな夢弦市には個性的な人々が多く集まり(類は友を呼ぶ的なsomethingである。)、また色々な名所が数多く存在する。

 

 

 

昼下がりの夢弦市、その一角にある飲食店通りはその名の通り多くの飲食店が立ち並ぶ食の通りである。

店の中にはドカ盛り、安い、旨いという店もあり、学生の味方でもある。

 

 

「く、食い逃げだぁああっ!?」

 

そんな飲食店通りでも下らない犯罪やいさかいは起こるもの。ある飲食店から男が一人、慌てた様子で店外へと走る。

そう無銭飲食である。

店主も必死に食い逃げ犯を追うが、男の方が足が速く、どんどん差を広げていく。

 

「へへっ、捕まるわけねぇだろ!」

 

食い逃げ犯はにたにたと笑いながら先を急ぐ。そんな男の前にある人物が現れた。

食い逃げ犯はその男を突き飛ばして逃げようと、突進する。

 

「歯を食いしばれェ!」

 

男は叫びながら、食い逃げ犯に向けてキレの鋭い拳でラッシュする。そしてラッシュの締めに鉄山靠で弾き飛ばした。

食い逃げ犯は弾き飛ばされ固い地面に叩きつけられると、苦しそうに息を吐き出す。

 

「食い逃げとは卑劣な真似を…。」

 

男は食い逃げ犯の首根っこを掴むとずるずると引き摺って店の店主に引き渡す。

店主は男に何度も礼を言い、食い逃げ犯を引き摺って連れていった。

 

「アカツキさん!」

 

「おお、白蓮殿!」

 

食い逃げ犯を伸した男、アカツキは待ち合わせ相手の白蓮が来ると、そちらに振り向いた。

白蓮はアカツキの顔を見ると顔を綻ばせ、駆け足で近寄る。

 

「お待たせしたみたいで、すいません。」

 

「いえ、自分が早く来すぎただけですから。」

 

頭を下げる白蓮にアカツキは気にしなくていいと手を振る。そんなアカツキに白蓮は“ありがとうございます”とだけ言って、二人はゆっくりと目的の場所まで歩き始めた。

 

 

 

「おいィ?!ここで衛宮を選ばないとかバカすぐるでしょう?」

 

「何を言っている!ここは五反田食堂だろうが!!」

 

道の脇で背中にライオットシールドを背負い、全身をガチガチに固めた機動隊服の男と、青い頭巾を被った筋骨隆々の男が言い争っていた。

その横に呆れ顔をした男と青年がいる。

 

「わからんのか、この戯けが!」

 

「分かってにいのはお前の方だろ?」

 

頭巾の男、不破の言葉に機動隊服の男ブロントも、熱くなって返す。

ただ、通行の邪魔にならないように脇に避けているだけまだ冷静な方なのだろう。

 

「こうなったらコレで決着をつけてやる。」

 

「望むところだ。バラバラに引き裂いてやる。」

 

ブロントはライオットシールドと警棒を手に取り、不破は上着をビリビリに引き破り臨戦体勢になる。

そんな二人を見て、端から見ていたクリザリッドが頭に手を当てる。だが吹っ切れたのか、フラストレーションが頂点に達したのかは分からないが次の瞬間にはフィンガーグローブを嵌めていた。

 

「おいミスト、あのバカどもを止めるぞ。」

 

「任せてください。暴徒鎮圧は研修期間の訓練で慣れてます。」

 

「暴徒っておま…。もういい、行くぞ!」

 

クリザリッドと、もう一人の機動隊服の青年ミストは言い争いからリアルファイトに発展した二人に突撃する。

 

 

ウオオオオオオッ!! テュホンレイジ バックステッポゥ ナカマトシテモットハツゲンニキヲツカッテクレ

コノタワケガッ オチツケアンナヤスッポイチョウハツニ…ウオオオオオオッ!!

オウゴンノテツノカタマリデデキタナイトガカワソウビノジョブニオクレヲトルハズガナイ ウオオオオオオッ!! ブッツブレロォオッ ボウトノチンアツハナレッコデス ホウケイケンガイキタナ ハッハッテヤァシネッ

ミセテヤルワガチカラヲッ

ナンダッテイイコイツラニトドメヲサスチャンスダッ

 

─中略─

 

ウオオオオオオッ!?

 

 

「やっと大人しくなりやがった。」

 

2対2で不破とブロントを鎮圧したクリザリッドは痛む頭を押さえながら簀巻きにした二人を見下ろす。

 

「マジで騒ぎを起こすなよ…。始末書書くのは俺なんだぞ。」

 

「hai! すいまえんでした;;」

 

「ぬぅぅ…。」

 

キッとクリザリッドが睨み付けると二人は蛇に睨まれた蛙のように縮こまりながら目を逸らした。

その横でミストはライオットシールドを背負い、特殊警棒を腰のケースにしまう。

 

「昼飯は凰でいいな?異論は認めん。」

 

「「「hai!」」」

 

イライラしているのか、鬼の形相で言ったクリザリッドに3人は即座に返事をしたのであった。

 

 

 

また別の場所では──

 

 

「お前に足りないものはぁ!!情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ!!そして何よりもぉ!! 速さが足りない!!」

 

「単位が欲しいならば、実力でもぎ取ってみせろ。AMEN!!」

 

「さぁ神に祈りなさい。」

 

「何が出るかな?何が出るかな?」

 

「はわわ!?」

 

「いつも言っているだろう?空想を科学するんじゃない。空想を科学にパラダイムシフトさせるんだ。」

 

「貴様には私の頭突きをプレゼントしよう。」

 

阿鼻叫喚の様相を見せるのは夢弦市の誇る地域密着型大学、夢弦大学だ。

現在は期末試験が終わり、単位が危うい学生達による教授陣への直談判の時期である。

そのほとんどが肉体言語(教授によっては口プレイという名の口頭試問)で行われるこの直談判シーズンは、果敢と言うべきか無謀と言うべきか生徒達が教授陣に挑み、そして玉砕するまでがデフォルトである。

 

「衝撃のファーストブリットォオ!!」

 

「dust to dust…。AAAAAMMEEEENN!!」

 

「ここですか?──お別れです!!」

 

「教訓、何事も控え目に。」

 

「斬首!!」

 

「その程度の理論は誰でも組めるぞ。問題はそれを何に使うかだ。もっと私を満足させてみろ。」

 

「私の授業で眠るからそうなるんだ。」

 

死屍累々、屍山血河とも言うべき惨状を作り上げた教授陣はそのまま自身の研究室に戻り、仕事に取りかかる。

生徒達は精も魂も尽き果て、落第の事実を胸に友人達と傷の舐め合いをするのであった。

 

 

 

そして、そんな学生達の手の込んだ自殺シーズンに入った頃、夢弦市のとある診療所ではというと…

 

「先生、急患です!」

 

「また夢弦大の学生かしら?」

 

「はい、そうです。」

 

今日で何度目か分からない急患の到来に赤と青の独特な衣装に身を包んだ医者、八意永琳は小さく溜め息を吐いた。

そして急患を担いで連れてきた助手、何故か精巧に作られた狼の被り物をしたガロンを恨めしそうに見つめる。

連れてきたガロン自身になんの罪も無いことは分かっているのだが、これくらいせねばモチベーションが保てなくなっていた。それくらい、この時期の診療所は忙しいのである。

 

「はぁ、こんなことならウドンゲをお使いに行かせなきゃ良かったわ。」

 

「だから言ったじゃないですか、買い物なら自分が行くって。」

 

軽く言葉を交わしながら、二人は運ばれてきた患者の治療にあたる。

ここ、八意診療所は地元の人間ならば誰でも知っている場所であり、怪我をしたならとりあえずここに行けと言われているくらいである。

 

 

 

「女将さーん、八つ目鰻の蒲焼きもう1つ~!」

 

「こっちにも~。」

 

「あんた達、ほどほどにしなさいよ?たかだか単位落としただけじゃないのさ。」

 

客の注文の声に、割烹着を着た少女にも見える外見の女将が言う。

が、女将の何気ない一言にかさぶたを思いっきり剥がされた若い客達は呻き声を上げてテーブルに突っ伏した。

 

「う、うぅ…。」

 

「あと1問…あと1点だったのに…。」

 

「ちくせう…。」

 

「飛び道具…ガード…掴み投げ…、うっ、頭が…。」

 

この居酒屋夜雀の座席の殆どを埋め尽くすのは、返り討ちに合い、落第が確定した夢弦大学の学生達である。

彼らは青い顔で何かうわ言を呟きながら中空を眺める。

そんな彼らを見た女将はやっちまったねぇと呟いて頭を押さえた。

 

「仕方ないねぇ、みんなに八つ目鰻を1品、サービスしようじゃないか。」

 

女将の言葉を聞いて、それまで突っ伏していた連中がガタッと立ち上がる。

 

「おばちゃんありがとー!」

 

「女将さん愛してる!!」

 

「結婚しよ!」

 

やんややんやと巻き起こる学生達の声に女将の顔はみるみる内に真っ赤になっていく。

 

「バカ騒ぎはそこまでにしなぁ!!」

 

生徒達による感謝の嵐に女将は照れたように声を上げる。

 

 

 

夢弦市の夜は長い。

 

 

 





オチなんかない。

夢弦大学で落第寸前だって?教授に実力で勝てばいいんですよ。
え?無理だって?
じゃあ、単位は諦メロン。

んもぅ…


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