IS世界に世紀末を持ち込む少女   作:地雷一等兵

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久々にこんな早く投稿できた気がする。

※お知らせがあります!
活動報告でアンケートを実施しています。
内容は「IS世界に世紀末を持ち込む少女」の今後の展開に関わるものです。
是非是非!アンケートに回答をお願いします!


では本編をどうぞ↓


第68話 束の間の出来事

「ズェアッ!!」

 

「っ…。」

 

朝早くの中庭では木刀を打ち合う音と声が響いている。

そして一瞬の一合いの後、一夏と狗飼の動きが止まる。

 

「…太刀筋が、変わりましたね…。」

 

「え?」

 

何気なく放たれた狗飼の言葉に一夏は首を傾げる。

言われた本人としては何も変えたつもりはなかった。

 

「よくなりましたね、気持ちの籠った良い太刀筋です。」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

師狗飼から誉められた一夏は上がりそうになる口角を必死に押さえて頭を下げる。

 

「これからも慢心せずに励んでくださいね。それでは今日の稽古は終わりましょう。」

 

「はい!ありがとうございました!!」

 

感謝の気持ちを込めて一夏は頭をもう一度下げる。

そして狗飼がその場から立ち去った事を確認してから頭を上げ、部屋に引き上げていった。

 

 

 

「ふぅ…。」

 

手持ちのタオルで額の汗を拭いながら狗飼は敷地の中を見回る。

そんな狗飼にある人物が駆け寄った。

 

「狗飼さ~ん!」

 

「山田先生…。おはようございます。」

 

「はい、おはようございます。」

 

その人物は1年1組の副担任、山田真耶である。

その手には風呂敷に包まれた大きな荷物が抱えられている。

 

「すぐに見つけられてよかったです。はいこれ、皆さんで食べてくださいね。」

 

「いつもありがとうございます。入れ物はまた、夕方にでも洗って返しますね。」

 

真耶の抱えている荷物を受け取った狗飼は小さく頭を下げる。

その仕草に真耶は“良いんですよ、お礼なんて。”と照れ臭そうに返した。

 

「簡単なものしか作れてませんし、それに、いつも働いてくださっている皆さんへのお礼はこれくらいじゃ返せませんよ。」

 

エヘヘと外見相応に笑う真耶は、何かを思い出したように顔の前で手を合わせた。

 

「そうだ狗飼さん、朝ご飯はもう済ませましたか?」

 

「いえ、まだですが。」

 

「でしたらそこのベンチで一緒に食べませんか?差し入れの分も一緒に作ったら、その、作りすぎてしまって…。」

 

真耶からの誘いに狗飼は小さく唸り、顎に手を当てた。

そして数秒後、もう一度真耶の方に向き直る。

 

「では、ご一緒させていただきます。山田先生のご飯はいつも美味しいですし。」

 

「はい、では行きましょう。」

 

真耶は笑顔を浮かべ、近くにあるベンチに座る。

その隣に狗飼は遠慮がちに座った。

 

「差し入れのご飯と同じ内容になってしまうんですが、どうぞ…。」

 

真耶は取り出した大きめのお弁当容器の蓋を開ける。

おにぎりや玉子焼き、サラダと言ったいかにもなお弁当が詰められていた。

見た目にも色味鮮やかなそれは、素人目からでも栄養バランスに気を遣って作られたと分かるものだった。

 

「おお…。いつもながら山田先生のお弁当の出来は凄いですね。」

 

関心したように呟く狗飼はおしぼりで手を拭くと、目をキラキラさせながらおにぎりに手を伸ばした。

 

「それではいただきます。」

 

「はい、召し上がってください。」

 

ずいと真耶はお弁当を狗飼に渡し、自身はもう1つの小さなお弁当容器を取り出した。

二人は早朝の新鮮な空気の中でベンチに並んで座り、一緒に朝食を摂ったのであった。

 

 

 

時は進んで昼休み、北星南美は格納庫の中に来ていた。

 

「簪ちゃん、いる~?」

 

「ここだ。」

 

格納庫の隅で作業服姿の簪が南美に手を振る。

簪は南美の姿を確認するとすっくと立ち上がり、首から下げているタオルで顔の汗を拭う。

 

「どうした?」

 

「いやいや~、こいつを見てほしくてね。」

 

そう言って南美は1枚のプリントを差し出した。

それを見た簪はニヤリと口角を上げる。

 

「やっぱりそれか…。個人トーナメントのタッグ、私と組むか。ふふふ…。」

 

“面白い!”と口にした簪は南美からプリントを受けとると、胸ポケットからボールペンを取り出してサインした。

 

「目指すは優勝、そうだな?」

 

「もっちろん!やるからには徹底的に、全力で…だよ!」

 

二人はニヤリとした笑みを浮かべながら拳を付き合わせる。

 

「「ククク…、フハハ…、ハッーハッハッハッ!!」」

 

人気のない格納庫の中で南美と簪の笑い声だけがこだまするのであった。

 

 

 

「ふむ…、だいたい出揃ったか。」

 

千冬は教員室の中央に置かれたテーブルに、コンビ登録のプリントを並べて唸っていた。

 

「おおむね予想通りって感じですね~。」

 

千冬の横からプリントを眺める真耶が呟くと、千冬はそれらの中から4枚のプリントを手に取った。

 

「問題はコイツら、だな。」

 

「専用機組の子達ですね。確かに、これは偏り過ぎですよね…。」

 

千冬が手に取ったのは専用機持ち達のペア。

織斑一夏・シャルル=デュノアペア、セシリア=オルコット・凰鈴音ペア、ラウラ=ボーデヴィッヒ・篠ノ之箒ペア、そして北星南美・更識簪ペアの4組である。

 

「大会前に6名を練習禁止に出来たのは運が良かった。アイツらが出来ない内に一般生徒組が連携の練習が出来るからな。」

 

「そうですね、それくらいの準備はあった方がいいです。あとは組み合わせですね。」

 

「ランセレが仕事をしてくれれば良いんだがな…。」

 

ふぅと溜め息を吐いた千冬は真向かいのテーブルに置かれているパソコンに目を遣る。

そしてパソコンを視界に映すと、また大きく溜め息を吐くのであった。

 

 





アンケートですが、本編が臨海学校編を終える頃まで実施しているので、どうかよろしくお願いします。


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