IS世界に世紀末を持ち込む少女   作:地雷一等兵

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どうもご無沙汰しています、地雷一等兵です。

期末の試験とレポートが一段落ついたのでようやく投稿できました。

では本編をどうぞ↓


第63話 個人トーナメントに向けて

シャルルが一夏に女であることを明かし、ラウラが南美の妹分になった翌日、周りは特に変わった様子を見せなかった。

ただひとつ変わったとすれば、ラウラの周囲への態度が軟化したことだろう。

 

「お、おはよう…!」

 

ガラリと教室の戸を開けたラウラは控えめな声で挨拶をした。

初日、あれほど冷たかったラウラが挨拶をした、その事実に1年1組のメンバーは入り口に佇むラウラを見て黙り込んでしまった。

 

教室に沈黙が訪れる。

 

ラウラはやってしまったとばかりに下を向いて黙ってしまう。

そんな状況を打ち破る存在がいた。

 

「おはよう~、ラウリィー」

 

布仏本音、通称のほほんさんである。

本音はいつもの余った袖をぱたぱたと振りながら、仔犬のようにラウラに近寄る。

 

そんな本音の行動にうつむいていたラウラは瞳をキラキラさせて本音に抱きついた。

 

「にひひ、ラウリィーもやっと心を開いたねぇ。」

 

ラウラに抱きつかれた本音はいつものように笑顔を浮かべてラウラの頭をワシャワシャする。

そんな和やかな光景に、最初こそ戸惑っていた1年1組のメンバーもやっと理解した。

 

ラウラの顔から険が取れている、と。

 

 

その時、入り口から一夏が入ってくる。先程までほぐれていた場の空気がまた固まる。

初対面でビンタをかまし、かまされた同士の対面にクラスのみんなは息を呑む。

 

ラウラも一夏の登場に気づいたのか、本音から離れ、ゆっくりと一夏の方に振り向いた。

 

「あ、あ、…。」

 

一夏の顔を見上げるラウラは何かを声にしようとしながらも、どこか迷っているような態度を見せる。

そのラウラの様子を察してか、一夏も席につこうとはせずに、黙ってラウラの言葉を待った。

 

そして沈黙から数秒、心を決めた顔でラウラは一夏に向けて頭を下げた。

 

「すまなかった…。謝って済む話ではないのは分かっている…。私に出来ることなら──」

 

「あぁ、いいよ。」

 

「は…?」

 

あまりにもあっさりし過ぎた一夏の返答にラウラは変な声を上げて一夏の顔を見た。

 

「お前がオレを恨むのだって、オレに原因の一端があったんだし、その…、よ、なんだ…。だから、あんま気にすんな。」

 

それだけ言うと一夏はラウラの肩をぽんと叩いて自分の席に着いた。

あまりにもあっさりし過ぎた一夏の態度のほんの数秒後、ラウラを手懐けた南美が教室に現れる。

 

「おはよー。」

 

「あ…!南美、お姉ちゃん…。」

 

ラウラから放たれたモハメド・アリのフィニッシュブローよりも強烈な発言にクラス中の注目が南美に注がれる。

 

「うん、おはようラウラ。」

 

南美はラウラの頭を優しく撫でる。

そんな光景に誰もが開いた口がふさがらなかった。

 

「お、おいおいおいおい!一体全体昨日の今日で何があったんだ南美?!」

 

ラウラの豹変ぶりに驚きを隠せない箒が南美に詰め寄る。

 

「それに“お姉ちゃん”とはなんだ?まさかお前にそんな趣味が?」

 

「ちょっと待ってよ。確かに私は妹大好きシスコンだけど、百合の趣味はないからね!」

 

ギリギリと襟を絞める箒をなだめるように南美が言う。その言葉を聞いた箒は襟を絞める力を弱めた。

 

「それに、話せば分かるけどあの子は良い子だよ。ちょっと不器用なだけでさ。だから、まぁ、話しかけてあげてよ。」

 

「お前がそう言うからには、まぁそうなんだろう…。」

 

渋るような口調で箒はゴニョゴニョとどもる。

 

「まぁ、手合わせすればわかるんじゃない?ラウラちゃんの人となりはさ。私らってばそういう人間じゃん?」

 

「…そう、だな。なら、今日の放課後にでもそうしてみよう。」

 

南美の言い分に若干呆れながらも、箒はそれを肯定した。

 

 

 

午前中の授業が終わり、昼休みになったときのこと。

IS学園の1学年達の間であることが起きようとしていた。

 

「ね、ねぇねぇこれ!」

 

「ん~?どしたのー?」

 

ある生徒が掲示板に貼られた学年別個人トーナメントについての資料を指差して一緒にいた生徒に声をかける。

 

そしてもう一人の生徒が指差されている箇所に目を通すと雷に打たれたような衝撃を受けて固まった。

ギギギギと油をさしていないロボットのようなぎこちない動きでお互いの顔を見合わすとこくりと頷き合って駆け出した。

 

そして彼女らの見た情報は瞬く間に女子生徒達の間を駆け巡り、数分もする頃には1学年の女子ほぼ全員が知るところとなった。

 

 

 

「さーてと、今日は何にするかな?」

 

昼に食堂に来ていた一夏はシャルロットらと一緒にメニューを吟味している。

そんな時、ドドドドドと地鳴りのような音と微かな床の振動を二人は感じ取った。

 

「「織斑くーん!!」」

 

「「シャルルくーん!!」」

 

その音の発生源は食堂に続く廊下を走る女子生徒の大群であった。

彼女たちに共通しているのは、皆手に1枚のプリントを持っていることである。

 

そして皆一夏とシャルロットに近寄ると、一斉にプリントを持っている手を差し出した。

視界いっぱいに手が伸びてくる様は一種のホラーである。

 

「「「私とコンビを組んでよ!!」」」

 

彼女らは一斉にそう言った。

が、彼女らから誘いを受けている一夏とシャルロットはいまいち状況が掴め切れずに、呆然と突っ立っている。

 

「え、えっと、さ…。どういうこと、かな…?」

 

あははと苦笑いを浮かべながらシャルロットが目の前の女子集団に問う。

するとやや興奮した面持ちの生徒が差し出されているプリントとは別のプリントを二人の前に差し出した。

 

一夏はそのプリントを手にとって内容を一読すると、“はあっ?!”と驚きの声をあげた。

 

「学年別“タッグ”トーナメント、だとぉ?!ど、どういうことだ?!」

 

「そのまんまの意味じゃないかな? 理由もまぁ、納得できるし。」

 

「一夏、ボクにも読ませてよ。」

 

シャルロットは驚愕の顔で固まる一夏の手からプリントを取ると、ふむふむと目を通す。

そしてすべてに目を通し終えると、あははと一夏に向かって笑いかける。

 

「まぁ、仕方ないね。諦めてタッグ戦の練習しようか一夏。実践的なIS戦闘の連携を実戦の中で学ぶために~なんて、学園が言ってるんだもん。それに、責任者が織斑先生じゃ、ボクらが何言っても小揺るぎもしないと思うよ?」

 

「ぐ…、くそぉっ?!」

 

シャルロットの指摘に一夏は目論見が崩れたとばかりに膝をついた。

 

「ちくせう…。」

 

シャルロットの説得で納得した一夏はよろよろと立ち上がる。

そんな一夏とシャルロットを周りの女子は爛々とした目で見つめる。

 

「あ~、皆オレらのところに来たのはそういうことか…。っても、専用機の奴と組むならオレじゃなくて南美とか、セシリアとか鈴がいるだろ?それにシャルも…。」

 

「あ、いや、その~、織斑くんとがいいかなぁ…なんて。」

 

「そ、そうそう!」

 

歯切れの悪い答えを返すクラスメイト達にん~?とハテナマークを浮かべる一夏であったが、隣にいるシャルロットを見るとガシガシと頭を掻いた。

 

「あー、っとさ、オレはシャルと組むからさ。なんつーか、ごめん…。」

 

目の前の同級生達にそう告げた一夏はハハハと小さく笑う。

そして女子生徒たちは、

 

「そっかぁ、じゃあ仕方ないね。」

 

「そうだね、下手に女子と組まれるよりも…。」

 

「むしろ、男同士の方が…デュフフ…。」

 

などと口々に発しながらその場を食堂を去っていった。

 

 

「とっさだったけど、あれでよかったんだよな?」

 

「もちろんだよ、一夏。助かった…。もし、一夏以外とペアになったら正体がバレちゃうかも、だったし…。」

 

「そうだよなぁ…。それも含めてどうにかしねぇとなぁ。」

 

「ふふ、大丈夫だよ一夏。卒業までまだ長いんだし、二人でゆっくり考えようよ!」

 

シャルロットはニッコリと笑って一夏に言った。

一夏もそんなシャルロットの言葉に励まされたのか、力強く笑って返す。

 

 

学年別タッグトーナメントまであと1週間

 

 





さて、まぁここから原作に沿いつつ原作を無視していく感じになります。


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