IS世界に世紀末を持ち込む少女   作:地雷一等兵

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膝の怪我、骨だけじゃなくて靭帯にもいってるとか…orz
なんか逆に笑えてきた。

では本編をどうぞ↓


第61話 ラウラという少女

南美の部屋で楽しそうに話すラウラは顔をほころばせ、後ろに倒れこんだ。

 

「あぁ、こんなに楽しいのはいつぶりだろうか。」

 

「ふふ、わたしも楽しかった。」

 

部屋の中で二人は心から笑いあっていた。

この二人に限って言えば蟠りはもう無いだろう。

 

 

「ねぇ、ラウラちゃん…。そういえばなんだけどさ、なんで眼帯なんかしてるの…?」

 

「っ!? いや、これは、その…。」

 

南美の質問にラウラは眼帯を押さえて言い淀む。

 

「へ、変なこと聞いちゃったかな? 言いたくないなら無理に言わなくてもいいよ?」

 

気を遣った南美の言葉にラウラは数秒目を泳がせると、また南美の方に向き直る。

 

「……、いや、話す。聞いてくれ…。」

 

迷いを見せながら、ラウラはゆっくりと語り始めた。

 

 

side 南美

 

 

ラウラちゃんはゆっくりと口を開いた。

その表情を見れば、ラウラちゃんにとって辛い事を話すって、なんとなく分かった。

 

「……私には、両親がいないんだ。優秀な兵隊を作る計画の一環で…、優秀な遺伝子を掛け合わせた、デザインベイビー、試験管ベイビー…。それが私だ。」

 

突然の告白、ラウラちゃんの抱える事情は私が想像していたよりも遥かに重い。

親無しなんてことはよく聞く話。けれども本当の意味での親無しなんてのは想像できなかった。

 

「私はもともと道具として生まれてきたんだ。私に求められたのは成績、誰よりも優れていることを証明しなくてはならなかった…。私が私であることを証明するには力しかなかったんだ。」

 

話しているラウラちゃんの身体が震えてる。

…辛いことを思い出しているんだろう。

 

「全ては上手く行っていたんだ、あの時までは…。」

 

ラウラちゃんはうつむき、前髪をぐしゃぐしゃと掻く。

髪を引っ張り、下を向くラウラちゃんの身体は小さく震えている。

それほど思い出したくない記憶なんだ。

けれど、私はラウラちゃんの話を聞くと決めたんだ。

 

ラウラちゃんが話し出すのを待つこと数分、深く呼吸を整えたラウラちゃんはやっと話を再開する。

 

「……ISの登場後、私はより使える駒を作るためにある処置を施された。その結果がこれだ…。」

 

ラウラちゃんは顔を上げると、左目を隠している眼帯を外しその下にある瞳を私に見せた。

そこにあったのは真っ赤な右目とは違う、金色の瞳。

 

「越界の瞳《ヴォーダン・オージェ》、簡単に言えばIS適性を高めるための措置だ…。けれど私は適合に失敗した…。それが原因で左の瞳は金色に変色、自分の能力を制御しきれなくなって、私は“出来損ない”の烙印を押されたんだ…。」

 

ハハハと乾いた笑い声を響かせるラウラちゃん、その姿がとても哀しく見えた。

 

「当時の私は失意のどん底にいたよ。力も制御できず、周りからは出来損ないと罵倒され、そのまま処分されることすら覚悟していた。そんな私を救ってくれたのが教官だったんだ。だから、私を救いだしてくれた教官には感謝してもしきれない…。」

 

「それがどうして、一夏くんを憎む理由になるの?」

 

おおよその理由は恐らく、織斑先生がモンド・グロッソ2連覇を逃した辺りにあるんだろう。

けれど、そこにどうして一夏くんが絡んでくるのか、分からない。

 

私が尋ねるとラウラちゃんは口を閉じた。

…どうやらこの話題は禁句のようなものらしい。

 

数秒、迷いを見せていたラウラちゃんは、ようやく決心したのか口を開いてくれた。

 

「教官が2連覇を逃したのは、織斑一夏が誘拐されたからだ…。ドイツの会場に教官を応援に来ていた織斑一夏は、犯人からしたら格好の獲物だったんだろう。」

 

ラウラちゃんの口から語られたのは衝撃の事実。

この世の大半の人が疑問に思っていた織斑先生の決勝戦放棄の秘密だった。

そして、彼女が一夏くんを恨む理由に合点がいった。

 

「教官は織斑一夏を助ける為に、欠場した。」

 

「…それで、織斑先生が連覇を逃す遠因の一夏くんを恨んでいる、と…。」

 

尊敬する人の道に泥をかけた人を恨む感情が行きすぎたんだろう。

 

「私も、……最初はそう、思っていた、思っていたんだ…。けれど…。」

 

ん…、違うのか…?

 

「けれど、アイツは…、織斑一夏は、軟弱な男ではなかった…。私の怒りを正面から受け止めようとしていた…。自分の弱さを克服しようと足掻いていた…。」

 

「ラウラちゃん…。」

 

ラウラちゃんはポロポロと右目から小さな涙の粒を流し始めた。

 

「私の身勝手な我が儘なんだってことも理解しているつもりだ…。さっき、織斑一夏を殴り付けた時に言われたよ、教官は私にこんなことをさせるために、力を与えたわけじゃないって…。 その通りだ、何も言い返せなかったよ…。眩しかった、アイツが、真っ直ぐなアイツの瞳が…。なぁ、南美…私はどうすればいいんだ?」

 

“どうしたらいい?”

ラウラちゃんの質問に私は暫く考える。

そして、実に私らしい答えが浮かぶと拳をラウラちゃんに向けて突き出す。

 

「拳で語って、本音をぶつければいいんだよ!」

 

「拳と、本音…。」

 

ラウラちゃんが困惑したように呟く。当然だよね。いきなりこんなバトルジャンキーで脳筋的な考え方言われたらそうなるよ。

 

「一夏くんだって、そのうちラウラちゃんと話し合って理解し合わなきゃなんないってのは分かってるだろうし。」

 

「そ、そうだろうか…。」

 

自信なさげに聞いてくるラウラちゃん。

私はそんな不安に押し潰されそうなラウラちゃんをそっと抱き寄せる。

 

「うん、きっとそう。だから、ツラいことがあったら一人で抱え込まないで。もっと誰かに頼っていいんだよ。」

 

抱き寄せたラウラちゃんの頭をそっと優しく撫でる。

キレイな銀髪はサラサラで、とても触り心地がいい。

 

ラウラちゃんも安心したのか私の胸に頭を預けてくれている。

 

「うん…、ありがとう、お姉ちゃん。」

 

………は?!

 

「ラ、ラウラちゃん…? 今なんて…?」

 

「え、お姉ちゃんって…。その、クラリッサが頼りになる女の人はこう呼べって…。」

 

クラリッサさんとやら、まだ会ったことはないけど話が合いそう…じゃなくて。これは1度O☆HA☆NA☆SIが必要ですね。

 

「それにな? 私には家族がいないんだ…。だから、その、南美には私の姉になってほしいんだ…。…ダメか…?」

 

私に抱き寄せられたまま上目遣いで見つめてくるラウラちゃん。

私は無意識の内に抱き締めていた。

 

 

前略お袋さま、お父さん、そして我が愛しのあーちゃんへ。

どうやら私に新しい妹が出来ました。

 

 

だって、ちょっと弱気になった顔で見上げられてお願いされたら断れないじゃん!!

 

「いいよ、ラウラちゃんは今日から家の子、姉妹だよ。」

 

「…ありがとう、南美、お姉ちゃん。」

 

今度はラウラちゃんから私に抱きついてくる。

うん、今はこれでもいい。

今のラウラちゃんに必要なのは温かさだ。

 

 

さて、ラウラちゃんと一夏くんの間をどうやって取り次ごうかな…?

 

 

side out...

 

 

 





あぁ、そろそろ番外編を投稿しよう。
久々に北斗を書きたい。


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