膝を大怪我しました。
全治3ヶ月とか…orz
皆さんも怪我には気を付けてください。
では本編をどうぞ↓
「…っ!?」
食堂で昼食を摂っているとき、不意にシャルルの背筋に何か寒いものが走り、思わず周囲を見渡す。
「どうしたシャルル?」
「え? あ、いや、なんでもないよ。うん、大丈夫…。」
アハハと笑い、何気ない風を装うシャルルであるがその内心はどこか不安を感じていた。
先の楯無の意味ありげな表情を頭の中に思い浮かべる度に心臓は早鐘を打ち、不安は増すばかりである。
しかしそんなシャルルとは裏腹に周りのクラスメート達はいつもと変わらずに生活している。
シャルルにとっては今は普段通りというその風景が何よりもありがたかった。
「さて、と…。そろそろ学年別個人トーナメントが近い訳だが、掲示板を見てきた者はいるか?」
朝のショートホームルームで千冬は尋ねる。しかしその質問に首を縦に振るものはいなかった。
クラス全体の反応に千冬は“そうか”と呟き、話を続ける。
「詳しいことは掲示板に貼られている資料で確認するように。その上で分からないことは教員に聞きに行け。これで今日のホームルームは終わる。次の授業に備えておけ。」
それだけ言い残して千冬は教室の外に出る。その後ろを真耶がてくてくとついていった。
「“個人”トーナメント、か…。」
「腕が鳴るねぇ、楽しみだよ。」
ホームルームの話題から1学年バトルジャンキー筆頭の北星南美と、鍛練バカ筆頭の一夏が雑談を交わし始める。
そしてその話題が更に人を呼び、二人の周囲には早朝トレーニングに参加している生徒の輪ができた。
「トーナメント…、う~ん、勝てるかなぁ…。」
「朝からあんだけやってるんだし、なんとかなるって!」
「ふふふ、このトーナメントこそ生まれ変わった私の実力を証明する時ですわ!」
「セシリアはヤル気満々だね…。私は南美と当たらないか心配だわ。」
ワイワイガヤガヤと南美達を中心にした人だかりは時間と共に盛り上がる。
各々が今度のトーナメントに向けた目標や意気込みを述べたり、結果を予想しあったりしている。
午前の授業が終わり昼休みとなった今、一夏は一人で廊下を歩いていた。
理由は簡単である。男性用トイレが教室からかなり離れた場所にしかないからである。
そして曲がり角に差し掛かったとき、怒声にも近い声が一夏の耳に届いた。
「なぜですか教官!!」
「ここでは織斑先生と呼べと言ったはずだが?」
そのやり取りを聞いた一夏は角を曲がった先に誰がいるのか分かった。
side 一夏
「ならば織斑先生、なぜこのような場所にいるのですか? 貴方はこのような場所にいるべき人ではありません!! ぜひ今一度ドイツに!」
この声は、ラウラか…。
…ドイツ出身、千冬姉を教官呼び、あの動き…。十中八九、ドイツの軍人だよなぁ…。
千冬姉を呼び戻しに来たって感じかな?
それだけ千冬姉を尊敬してるんだろう。初対面でオレを殴ったのもたぶんそれが理由…。
キレて当然、オレはラウラに殴られても仕方ないんだ。それだけのことを、オレはしでかした…。
でも、それじゃダメ、だよな…。
「この学園の生徒は皆、ISをファッションか何かと勘違いしています。自分たちがISの操縦者という自覚もなく、危機感もない!そんな連中の為に教官が時間を──」
「そこまでにしておけよ小娘。」
低い声で静かに放たれた千冬姉の言葉。
別段声を荒らげている訳でもないのに、その言葉を向けられていないオレも恐怖を覚えた。
その威圧感にラウラは1度言葉を止める。けど、慣れているのかまた言葉を続ける。
「教官はドイツにいたころおっしゃっていました。“私より強いものなどいくらでもいる”と。ですが、教官より強いものなどいないではありませんか!」
「…いるさ、私なんかより強い奴はな。例えば、織斑一夏、とかな…。」
「な、何を言うのですか!?」
千冬姉が言い放った言葉にラウラは面食らったような声をあげる。
かく言うオレも驚いた。
まさか千冬姉の口からオレが強いなんてことを聞けるなんて思ってなかった。
「あのような者が教官より強いなどと、信じられません。私は認めない、あのような者が…!」
「好きにしろ…。あぁ、それと、そろそろ授業の時間だ。遅れるなよ。」
千冬姉はいつものトーンで告げる。
それにラウラは何か言いたそうにしていたのを飲み込み、去っていった。
「…盗み聞きとは感心しないぞ。私はそんな男に育てた覚えはない。」
やっぱり気づかれてたか。流石は千冬姉だ。
オレはすっと角から出ると、頭の上に千冬姉の手が置かれた。
「自惚れるなよ。努力こそお前の取り柄なんだからな。」
オレの頭を一撫で二撫ですると、千冬姉はその場を去っていく。その時、何かを思い出したのか、オレの方を振り向いた。
「それと、廊下を走るときはバレないようにな。それだけだ。」
簡潔に言った千冬姉はまた歩きだす。
オレは腕時計の文字盤を確認して、誰かに見つからないように走って教室に向かう。
side out...
そして午後の授業はなんやかんやあって無事に進み、今は放課後。
一夏をはじめとした専用機組はいつものようにアリーナに来ていた。
「そんじゃま、いつも通りやっていきますか。」
「今日こそは勝たせてもらうぜ南美!」
「オーケー、早速やっていこうか。」
ジョインジョインジョインジョインミナミィ イチカァ デデデデザタイムオブレトビューション バトーワンデッサイダデステニー
~中略~
「南斗孤鷲拳奥義! 南斗翔鷲屠脚!!」
コレガナントセイケンノシンズイダ(ドヤァ ウィーンミナミィ
「また派手にやられたね。」
アリーナの端で鈴・セシリアペアと南美の模擬戦を眺めている一夏にシャルルが話しかける。
「まぁ、な…。ISじゃまだ南美に勝てないか…。」
目の前で繰り広げられる戦闘を眺めながら一夏は大きく息を吐く。
しかし、その目にはまだまだ闘志が宿っていた。
「でも、届かないわけじゃない。いつか、いや、今すぐにでも追い付いてやる。」
「じゃあもっと頑張らないとね。大丈夫、一夏ならきっと出来るよ。」
ヤル気に溢れる一夏に微笑みかけながらシャルルは両手にアサルトライフルを取り出した。
「…くぁ…、疲れた…。」
今日の訓練を終えた一行はそれぞれ更衣室で着替え、帰路についていた。
その時、女性陣はそのままの流れで大浴場へと着替えを持って向かっていった。
そして今、一夏とシャルルは二人で寮への道を歩いている。
「…シャルル、先に帰っててくれ。ちょっと用事を思い出した。」
ふと一夏が足を止めると、隣を歩いていたシャルルに言う。
それに対してシャルルは“用事があるなら仕方ないね。”と素直に頷き、部屋に戻っていった。
そしてシャルルの姿が見えなくなると一夏は後ろを向く。
「出てこいよ、オレに用があるんだろ?」
後ろにある茂みに向かって言う。
「なるほど、ただのグズではないようだ。」
茂みの中からガサガサと音をさせながらラウラ・ボーデヴィッヒが姿を現した。
後輩に膝どうしたんすか?って聞かれたとき、“膝に矢を受けてしまってな”とでも返そうかと思った。
さすがに踏みとどまった。