IS世界に世紀末を持ち込む少女   作:地雷一等兵

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調子がよく、早めに書き上がったので投稿しました。

大学の講義で配られたレジュメに書いてあった“オナリ神”という単語が“ナオリ神”に見えて2度見しました。

では本編をどうぞ↓


第56話 乙女の決戦

「お行きなさい! ブルー・ティアーズ!!」

 

セシリアのブルー・ティアーズから4基のビットが射出される。

射出されたビットはそれぞれ南美の周りを飛び回り、彼女をその場に釘付けにしようとそれぞれ射撃を開始する。

しかしビットから放たれる攻撃は南美の動きを多少制限するものの、当たることはない。

するすると射線の間を潜り抜けながら南美は宙を舞う。

 

「ゥゥアタァッ!!」

 

大きな声と共に鈴の強烈な青竜刀の横薙ぎが南美に迫る。

だが南美は視界の端で鈴の行動を見るや否や、即座に周囲のビットの位置を確認し、ビットから撃たれず尚且つ鈴からも距離を取れる場所へとブースターを吹かして飛んだ。

 

 

 

side 南美

 

…鬱陶しい弾幕張るね、セシリアちゃん…。少なくとも初めて戦った時とは段違いだ。

でもビットの射撃は来るタイミングが分かってれば崩されるほど強くない。怖いのはセシリア自身の狙撃…。

直撃を受ければ大きく崩されるのは目に見えてる。

 

そして崩れた瞬間襲ってくるのは鈴の強烈な一撃…。

このコンビ、実際隙がないよね。

中・遠距離のセシリアちゃんと近・中距離の鈴、面倒なコンビだね。お互いの得意なレンジが被ってないから纏めてどうにかするのも難しい…。

 

…やるしかないのか…。

大きく息を吐いて二人の方を見ると、セシリアの周りにはビットが飛び交い、鈴は二本の青竜刀を連結させてバトンみたいにグルグル回してる。

 

「どうしたのよ南美、防戦一方じゃない!!」

 

「貴女らしくありませんわね!!」

 

おうおう、煽るねぇ…。

ならご期待にお応えしましょうか。

 

「南斗聖拳の名にかけて…。ユクゾ!」

 

お生憎様、ブーストゲージはもう満タン、オーラもすでに貯まってんのよ。

 

 

side out...

 

 

「ゥゥアタァッ!!」

 

「ショオオオオっ!!」

 

鈴の青竜刀と南美のエネルギーを纏った手刀が正面からぶつかり合う。

鈍く大きな音が響き、二人はその場で力比べを始める。

 

「何で素手で私のこれに対抗できんのよ!」

 

「南斗聖拳に不可能はない(キリッ)」

 

鍔迫り合いを繰り広げる二人、それは豪快な隙に他ならない。そして英国代表候補生首席の彼女はそんな大きな隙を逃さない。

 

素早くビットを南美の背後に展開すると細かな照準などお構いなしにただ早撃ちだけを意識して直ぐ様撃つ。

 

が、南美もビットに気付いていたのか流れるような動きで鍔迫り合いから抜け出し、ビットによる狙撃からも逃れる。

 

「飛燕流舞!」

 

逃げる時にもタダでは逃げない。小さな衝撃波を展開し、鈴の追撃に牽制を入れながら距離を取る。

 

 

 

「なんであんなに避けれるんだよ…。」

 

南美達の攻防を眺めていた一夏はポツリと漏らす。その言葉を聞いたシャルルは小さく微笑んで一夏の隣に立つ。

 

「一夏と南美の差はね、射撃武器への理解度の差じゃないかな?」

 

「理解…?」

 

「うん、理解。一夏は射撃系の武器とかは使ったことあるかい?」

 

シャルルの問いに一夏は首を横に振る。するとシャルルは“そっか”と呟いて自身の武器であるサブマシンガンを一夏に見せる。

 

「これはボクがよく使ってる武器なんだけど、はい一夏。使用者ロックは解除してあるから、ちょっと下に向かって撃ってみてよ。」

 

「…?」

 

小首を傾げながらもシャルルからサブマシンガンを受け取った一夏は銃口を下に向けて引き鉄を引く。

 

銃を撃っている感覚を全身で感じた一夏は引き鉄から指を離すと、隣のシャルルに顔を向ける。

 

「どうだった?」

 

「えっと、思ったより、衝撃が…。」

 

「そう、実弾系の銃は撃つときに結構大きな衝撃が来るんだ。撃つときに照準がぶれないように使う側は脇を締めて、ちゃんと体を固めたりするんだ。中にはそんなことしないでも正確に撃ってくる人もいるけどね。」

 

一夏に渡していたサブマシンガンを受け取ったシャルルはペロッと舌を出して笑う。

そして真面目な顔に戻ると銃を拡張領域にしまう。

 

「それにね、射撃武器は撃つ側の事を知ればそれだけで避けやすくなるんだ。もちろん、知ってるだけで避けられるものじゃないけど、助けにはなる。だからさ、一夏。もしキミがもっと上を目指したいならボクが協力するよ。ボクが一夏に射撃武器について教えてあげる。」

 

真面目な顔でそう言ったシャルルはもう一度一夏と目を合わせ、笑った。

 

 

 

「ホォアタァッ!!」

 

「シャオッ!!」

 

鈴が振りかぶった青竜刀を振り下ろすと南美は鈎爪を勢いをつけて振り上げて迎え撃つ。

激突音を響かせ、火花を散らせるその一合に箒は思わず息を呑んでいた。

だが、彼女らのやり取りはそれだけでは終わらない。

そのまま鍔迫り合いに持ち込もうとする鈴の思惑から逃れるように南美はブースターを吹かして上空に逃げる。

 

「そこです‼」

 

「くっ…。」

 

その南美の動きを先読みしていたかのように正確に放たれた一条の光閃を南美はギリギリのところで身を翻してかわす。

その一瞬のタイムラグは鈴が追い付くのには十分な時間であった。

 

「アチャアッ!!」

 

「ショオッ!」

 

豪快に振るわれる青竜刀の一撃。南美はそれを敢えて正面から迎え撃つ。

水鳥の装甲が淡く光り、それと同時に南美は鈴に向かって多段の手刀突きを繰り出した。

 

「南斗虎破龍!!」

 

横っ腹に青竜刀の一撃を受けても南美は小揺るぎもせずに鈴の体に突きを打ち込む。

そして数発目の突きを受けた鈴が吹き飛ぶと、それに追撃するために南美はブーストを使って追いかける。

 

がそれを邪魔するように南美の眼前を一筋の光が横切った。

 

「私の事を忘れてもらっては困りますわ。」

 

その光の発生源に目をやると、そこには身の丈ほどの大きさを誇る長大なライフルを構えるセシリアがいる。

その周囲には4基のビットがまるでそれぞれ意思を持っているかのように不規則的に飛んでいる。

 

「セシリアちゃん…。ホントに強くなったね。」

 

「ふふ、南美さんにそう言っていただけて光栄ですわ。」

 

南美の言葉にセシリアはそっと笑みをこぼすも、次には南美へと照準を合わせ引き鉄に指をかける。

 

「よろしいのですか? 意識を私にだけ割いていて…。」

 

ちらっと横に目を向けたセシリアにつられて南美もその方向に目線だけを向ける。

 

そこには繋げていた青竜刀をばらし、二刀流にした鈴が突進してくる光景が広がっている。

 

「フゥアチャア!! アタァタァアチャ!!」

 

青竜刀を振り、時には空いている脚で南美を狙う鈴。そして避ける南美の動きを抑えるようにビットによる複雑な弾幕を張るセシリアのコンビネーションは厄介以外の何物でもない。

 

「まだ逃げてるだけ?!」

 

後ろに下がりながらビットの射撃を避ける南美に鈴が言う。その言葉に南美ら勝ち誇ったような笑みを顔に張り付ける。

 

「鈴…、この機体が水鳥の皮を被っただけのISだってこと、忘れたの?」

 

「え? っ──!!」

 

「遅いよ! 南斗雷震掌!!」

 

掲げた右手を下につけるとその右手からエネルギーが迸り、鈴を襲う。

その上へ上へと昇っていくエネルギーの流れによって鈴の体は宙に浮く。

 

「覚悟っ!…キリサケッ!」

 

「ぅあ…。」

 

そして宙に浮いた鈴の体に向けて南美は幾重にも重なる真空の刃を放つ。

その衝撃に鈴は耐えきれず、口から空気を逃がす。

だが、南美の猛攻は1度、そこで止まる。

南美のいる場所に向けて全方位からビットによる飽和射撃が始まったからだ。

 

「凄まじいエネルギーですのね。けれども、そんなにエネルギーを消費して大丈夫ですの?」

 

ビットを操りつつ自身も高速で起動しながらライフルの引き鉄を引くセシリアは南美に問う。

 

「ふふん、世紀末を甘く見てもらっちゃあ困るよ。」

 

南美はセシリアの目を見つめて不敵に笑う。だが、そんな態度とは裏腹に水鳥の装甲はそれなりに傷ついていた。

 

 

side 鈴

 

完全に忘れてた…、いや、油断してたわ…。そうよ、もともとあの機体はシンがベースなんだからそこにレイの力が使えるようになっただけ。

本質はなんら変わってない…。

 

くっそ…、甲龍の装甲がズタボロ…。しかも狙ったみたいに肩の衝撃砲がイカれてるわ。

ショルダーアーマーはパージね。ついてても邪魔だし。

さーてと、衝撃砲がなくなったなら本格的に殴り合いね。上等だわ。

 

ああ、修理が面倒だわ。仕方ないからせめて南美に勝って終わってやる。そうじゃなきゃ女が廃るってもんよ。

 

 

side out...

 

 

 

「フゥウウウウ!!」

 

「なんですの、そのバリアは!?」

 

南美は引き撃ちするセシリアを追いかけるために、最短距離を行こうと直撃弾は南斗狂鶴翔舞のバリアである程度無視し、ビットによる射撃を甘んじて受けながらもセシリアに突撃する。

 

一方のセシリアは苦々しげな表情で悪態をつく。

しかしそうこうしている間にも南美はセシリアとの距離を詰め、射程に捉える。

 

「南斗──」

 

「アチャア!!」

 

何かを繰り出そうとした南美とライフルを構えるセシリアの間に鈴が割って入る。視界の端に青竜刀の鋒を見つけた南美はセシリアへの攻撃を止めて鈴の迎撃にスイッチする。

 

「ふんっ!!」

 

右腕にエネルギーを貯め、それで以て鈴の青竜刀を受け止める。

 

「ゥゥアタァッ!!」

 

だが鈴は南美に青竜刀を止められた瞬間にそれを手放して拳を南美の胸部に叩きつける。

 

「むぅ…。」

 

「有情…、猛翔破!!」

 

反応が遅れ、もろに拳を受けた南美に鈴は更なる追撃を仕掛ける。

胸部に押し当てた拳をそのまま振り上げて南美の体を宙に浮かせる。

 

「アチャゥアタッ! ファチャアッ!!」

 

「フゥウウウウ!! シャオッ!」

 

南美の浮いた体に追い打つように鈴は蹴りを続ける。

が、南美も南美で直ぐ様体勢を立て直して直撃を受けないようにガードし、折を見て切り返す。

 

今のアリーナには二人のISの装甲が打ち合う音だけが響く。

その高度な空中戦に同じアリーナを使っていた生徒はおろか、セシリアでさえも見いっていた。

 

 

 

「北斗飛衛拳!」

 

「南斗獄屠拳!」

 

そして1度間合いを取った二人の飛び蹴りが交差する。

 

お互い背中を見せて着地する。

一瞬の静寂がアリーナを包み、その沈黙を破るように鈴が膝から崩れ落ちた。

 

「そ、そんな…。鈴さん!?」

 

コンビを組んでいたセシリアが驚きの声を上げて倒れた鈴に駆け寄る。

南美の勝利、そんな空気が漂った刹那、立ち尽くしていた南美が片膝をついた。

 

「さすが鈴…ね。ラスト相手に殴り合いで互角…か…。」

 

大きく息をついた南美は専用機を解除し、鈴の方を振り向いた。

そこには同じく専用機を解除し、セシリアに支えられながらもしっかりと南美の方を見つめる鈴がいる。

 

 

 





MUGENにて、東方のとある兎耳少女の皮を被った世紀末の住人がやったワンコン☆6というインパクトが忘れられない。


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