IS世界に世紀末を持ち込む少女   作:地雷一等兵

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話が全く進んでいない…。

では本編をどうぞ↓


第55話 南斗聖拳の真髄とは?

「さぁ、早く早く。」

 

「上等だよ、この野郎…。」

 

アリーナの壁に叩きつけられた一夏は何事もなかったように立ち上がり、雪片弐型の鋒を南美に向ける。

腕を組み余裕を見せる南美に対して一夏は目に闘志をたぎらせ、ギラギラしている。

 

「フゥウウウウ、ショオ!」

 

雪片弐型を構える一夏が高度を上げる前に南美は右足を伸ばしたまま宙を1回転する。

するとその足先から水色の何かが斜め下に放たれた。

それが向かう先は一夏ではなく一夏の手前側。一夏は高度を上げて南美と同じ高さまでに行こうとしたが、その時地面に接触した水色の何かは接触した瞬間に反射するように跳ね上がり一夏の足先を捉えた。

 

「は!?」

 

予想していなかった衝撃に一夏は慌てて足先を見やる。

そこには一部の装甲にダメージを受けた白式の足がある。

 

「よそ見してて良いのかな?」

 

「うおっ!?」

 

ほんの一瞬とはいえ、相手から目を切った一夏を諌めるように南美は告げる。

既に彼女は一夏の懐にいた。

 

それは得物を持った一夏の内側、南美の間合いである。

 

「シャオッ!!」

 

南美が右手の鈎爪を振り上げる。

風の刃を纏ったそれは的確に白式の装甲を捉え、確かな傷をつける。

しかしそれは致命傷ではなかった。

なぜか? 一夏がかわしたからである。

 

師狗飼との日々の研鑽は一夏を本能で回避できる領域まで引き上げていたのである。

 

「うらぁ!」

 

「っ…。」

 

鈎爪を振り上げた南美の体に一夏の体重を乗せた体当たりが直撃する。

攻撃を回避されることはまだしも、そこから反撃されるとは思っていなかった南美の体はそれだけで容易に揺らいでしまう。

 

「行っけぇええ!!」

 

南美の揺らいだ体を見て好機と捉えた一夏は雪片弐型を振りかぶり、横凪ぎに振り払う。

 

「ウリャッ!」

 

足を踏ん張らせ揺らいだ体を立て直した南美はこれから振られるであろう雪片弐型の一撃など眼中に無いかのように一夏との距離を詰めると強烈なアッパーをがら空きの顎にお見舞いする。

 

「ソコダッ!」

 

そして浮き上がった一夏の体に、正確には鳩尾に上空から落ちるような正拳を叩き込む。

のだが、不思議と彼女の拳には手応えが感じられなかった。

 

彼女の拳が当たったのは一夏の体ではなく雪片弐型の刀身だったのだ。

ギリギリのところで一夏は南美の追撃を凌いだものの、衝撃までは殺せずに勢いよくアリーナの地面に向かって吹き飛ばされる。

 

「ぐ、くそ…。あそこからカウンターかよ…。」

 

「それは私のセリフ。まさか初撃で仕留めに行けないとはね…。腕を上げたね。」

 

吹き飛ばされた衝撃から一息ついた一夏は正眼に構えた雪片弐型越しに南美を見据える。

 

 

「…もはや一夏さんは私と初めて相対した時とは別人ですのね。あの頃が懐かしくなりますわ。」

 

「あんたが戦った時がどんなもんだったか知らないけど、一夏の伸び方は早い。それこそあいつは高校に上がるまで1度もISに触れてないんだから。」

 

ISを展開したままセシリアと鈴、箒にシャルル達は南美と一夏の手合わせを眺めながら息を呑んでいた。

 

「一夏って天才…なのかな? この前はあんな風には動けてなかったのに…。」

 

そんな事を漏らしながら興味深い物を見る目でシャルルはじっくりと一夏を見つめていた。

 

「アイツは、一夏は天才なんかじゃない…。ただ人よりも努力するのが得意なだけだ…。」

 

そうこぼした箒は南美と激戦を繰り広げる一夏の姿をただじっと見つめていた。

 

 

「シネェーイ!」

 

「ちっ!?」

 

両腕を広げて突撃する南美を一夏はなんとかいなして体勢を立て直す。

そうして息をつくのも束の間、南美の鋭い蹴りが一夏を襲う。

 

「シャオッ! ショオ! ウリャッ!」

 

「ぐっ、うおっ?! ぐふぅ!?」

 

しゃがみ足払いで一夏の意識を下に向け、疎かになった上半身目掛けて鈎爪を振り上げ宙に浮かせると、逃がさないとばかりに強烈なアッパーを顎にお見舞いする。

 

「シネェーイ!」

 

そして絶好のチャンスを逃す南美ではない。

完全に宙を舞う一夏を見た彼女は両腕を交差させてから広げて一夏に突撃する。

そして壁に叩きつけられた一夏の体が落ちる前に同じ技を何度も何度も絶え間無く叩き込んでいく。

 

 

「シネェシネェシネェシネェシネェシネェ!」

 

「あ、あれはまさか武運流羽夫(ブウンルウプ)!?」

 

「知っているのか、鈴電!」

 

その光景にとてつもなく見覚えのある鈴が叫ぶと、険しい顔をしたシャルルが勢いよく鈴の方に顔を向ける。

 

「うむ。」

 

そして鈴もいつのまにか髭をつけた険しい顔でシャルルの問いに頷く。

だかそんなノリはいつまでも続かなかった。

 

「なんでもいいから知っているなら教えてくださいな!」

 

神妙な顔で語りだそうとした鈴の頭をセシリアがはたいたのである。

そのセシリアの行動に冗談は通じないと感じたシャルルと鈴は険しかった表情をいつもの柔和な顔に戻し、鈴に至っては付け髭を外してどこかへとしまった。

 

「あれは南斗鶴翼迅斬、いわゆるブーンよ。」

 

「説明になっていませんわ…。もう少し分かりやすく説明できませんの?」

 

「…噛み砕いて言うと、格ゲーのAC北斗の拳で使える南斗水鳥拳伝承者レイの必殺技の一つよ。AAのブーンに似てるから通称ブーン。北斗が知りたきゃあとで原作貸すわ。」

 

 

 

「これで終わりだ!」

 

何発目か分からないほど南斗鶴翼迅斬を打ち込んだ南美はそう強く言い切るとさっきと同じように南斗鶴翼迅斬を一夏に向けて打ち付ける。

だがそれだけで終わらなかった。一夏の体に左右の手刀を打ち込んだ南美はそのまま滑らかに動きのベクトルを変え、一夏の上空に位置取る。

 

「ふん…! 切り裂け!」

オーバーヘッドの動きから一閃の衝撃波を下方の一夏に放った。

南美のフルコン完走を食らった一夏は重力に従いアリーナの地面に落ちる。

 

そして南美はそれを見届けるとゆっくりと降り立ち一夏に背中を向けた。

 

「これぞ南斗聖拳の真髄!(ドヤァ」

 

「……。」

 

そんな殺りきった感を出してどや顔する南美の背中を見つめていた鈴はフゥと息を吐き出し足を前に進める。

 

「じゃあ次はあたし達ね。拒否権はないわよ。」

 

「貴様にも南斗聖拳の真髄を教えてやろう。…あたし、達…?」

 

ノリノリだった南美は鈴の言葉に違和感を覚えて思わず聞き返す。すると鈴は口の端に笑みを浮かべて小さく頷いた。

 

「そう、あたしとセシリアのコンビと試合してもらうわ。」

 

鈴がそう言い切り、セシリアと肩を並べる。そのセシリアも今は好戦的な目で南美を見つめている。

 

「私も、もうあの時の私ではありませんわ。それを今、お見せしましょう。私とブルー・ティアーズ、そして鈴さんと奏でるワルツで。」

 

セシリアの言葉と同時に二人は宙に飛んだ。

 

 

 

 







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