IS世界に世紀末を持ち込む少女   作:地雷一等兵

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タイトルでおおよその予想がついた方もいらっしゃると思いますが、今回の話に出てくるとある人物に物凄いキャラ崩壊が発生しています。
ご注意ください。

それでは本編をどうぞ↓


第51話 AMBインストールGirl

「アナタもなの…。」

 

「え?」

 

青髪の少女は恨みの籠ったような声で呟いた。

そしてその大人しそうな顔を次第に憎らしい物を見るような顔へと歪めていく。

 

「どいつもこいつも楯無楯無って、私の周りは皆お姉ちゃんのことばかり!! どうしてよ、どうして誰も私の事を認めてくれないのよ!!」

 

「いや、その…。」

 

なんとか言い繕うとした南美であったが、言葉を紡ぐ前に青髪の少女が次の言葉を放つ。

 

「アナタもどうせ姉さんの回し者なんでしょ!? 姉さんに言われて私の専用機に工作でもしに来たんでしょ?!」

 

少女は言い掛かりをつけながら南美にずいと近寄り胸ぐらを掴む。

 

「でも無駄よ。もうこの子は9割方完成してるんだから‼」

 

そう言って少女は胸を張り、ドヤァとした顔を浮かべる。

その彼女の後ろには存在を誇示する重厚な装甲に包まれた一機のISが鎮座している。

普通のISよりも太く、力強い四肢と胴体を覆うように張られた装甲は要塞を思わせるほどだ。

 

「これが私の作ったオリジナルのIS、その名も“玉鋼”よ。私を見放した倉持技研の打鉄弐式なんか目じゃないわ!」

 

「玉鋼…。」

 

テストパイロットとしてそれなりにISを乗り回してきた南美は本能的に分かった。

青髪の少女が誇るそのISの大まかなコンセプトが。

 

「ふふん、玉鋼の迫力に何も言えないみたいね。」

 

少女は得意気になり、自信満々に腕を組む。

その時、内側にはねた髪が軽く揺れた。

 

「その機体、玉鋼…だっけ? 凄いね…。」

 

「ほう…、なかなか見る目があるようね。」

 

南美の一言に猜疑心の強かった少女の目が変わる。

それを好機と見た南美が自分の事を洗いざらい話し、楯無の回し者でないことを伝えた。

 

 

「ふぅむ…。そうか、ふむ、なるほどね。どうやら姉さんの回し者じゃないことはホントみたいね。」

 

南美の言い分を聞いた少女は南美の瞳をじっと見つめて納得したように頷く。

彼女の目は先程までの濁ったようなものではなく、年相応のものに見える。

 

「信じてくれる…の?」

 

「まぁね、これでも一応は武芸の道を歩いた身だもの。アナタほどの人が下らない嘘を吐くはずもないって事ぐらいは分かるわ。」

 

少女は近くにあったベンチに腰掛け、南美を見上げる。

 

「私は更識簪よ。アナタは?」

 

「北星南美、よろしくね。」

 

「えぇ、よろしく。」

 

2人はお互いに手を差し出してその手をしっかりと握り合う。

どこか通じ合う何かがあったのか、もうお互い打ち解けあっていた。

 

 

「なるほど、決め手の兵装に迷ってたってことね。」

 

「そう、システム系は全て完成しているから動かすことも、もちろん戦闘だって万全に出来るわ。けど、決め手がないの。だから9割しか完成してない…。」

 

打ち解けた2人はベンチに座ってあることを話し合っていた。

内容は簪の自作IS“玉鋼”の武装に関してのお悩み相談である。

 

「私からみたら充分だと思うけど? グレネード砲に多連装ハイアクトミサイルにバズーカ、重ガトリングと大型ショットガン、もはや武器庫だよ?」

 

「それだけじゃ足りないの。さっきも言ったし南美だから分かってたと思うけど、この子のコンセプトは“重装甲による高耐久力で耐えつつ高火力でやり返す”なの。」

 

簪はタブレットを取り出して今の玉鋼の基礎スペックと量産機の打鉄の能力を南美に見せる。

 

「…高火力高耐久を実現させる為にこの子は機動力を犠牲にしているの。でもそうしてもまだ火力が足らないのよ。フルバーストで一斉に当てるくらいはしないとまだ甘い…。」

 

簪は悔しそうに奥歯を噛み締めると、タブレットの電源を消してカバンにしまう。

そして同じカバンの中から薄型のパソコンを取り出した。

 

「簪ちゃん、どうしてそこまでガチガチに拘るの?」

 

「…堅くて高火力が強いのは昨今のスーパーロボットが証明してるじゃない。」

 

「へ?」

 

予想だにしていなかった返答に南美は変な声を出してしまう。だが簪はそんなことを気にした風を見せずに言葉を続ける。

 

「スーパーロボット達はみんな、敵の攻撃を受け止め、それ以上のパワーでやり返す。そして必ず勝つのよ。」

 

そう語る簪の声には力が籠っていた。

それどころか瞳には熱意が籠り、自然に握られた拳はワナワナと震えている。

 

「そして何より、ガチタンには浪漫があるのよ!」

 

ガタッとベンチから立ち上がった簪は隣で座っている南美を指差して言い切った。

 

「…ハッ⁉ 浪漫は正義!!」

 

一瞬だけ呆然としていた南美であったが、我に返るとすぐさま立ち上がり簪を指差して叫ぶ。

 

その返答に満足したのか簪はうんうんと大きく頷いて右手を差し出す。

その意図を察した南美も同じく右手を差し出して簪の手を握った。

 

「フフフフフ、流石ね。この話についてこれるなんて。」

 

「私もよ。簪と出会えて良かった。」

 

 

彼女達がお互い理解しあった頃、授業5分前を告げるチャイムが鳴った。

 

その音を聞いた簪は残念そうな表情になり、手を離す。

 

「もう時間か、仕方ない…。またね南美。」

 

「うん、また語り合おうね、簪ちゃん!」

 

2人は手を振ってその場は別れていった。

南美は格納庫の更衣室で作業用の服に着替えて午前中に使用したISの前に行き、授業の開始を待つのであった。

 

 

 

 





ガチタンに浪漫を見出だした簪ちゃん。
…どうしてこうなった…。

浪漫は正義、カッコいいは正義です。

そして、簪ちゃんは原作よりも才能溢れる天才となりました。
それと彼女がインストールしたアミバ様はどちらかと言うと北斗無双でジャギの幻闘編に出てくる方をイメージしています。



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