次の話の投稿は遅くなります。
一夏とラウラが教室で一悶着起こしている頃、IS学園の物資搬入用の港では──
「ふぅ、到着ですね。」
「あぁ、ここが新しい職場だな。」
ある2人が港に降りる。
港に降り立ったのは2人組の男女、男の方は黒のスーツに黒い革靴、黒い革手袋と全身黒づくめで無精髭を生やしたオールバックという風体。女の方は褐色の肌に艶のあるロングの黒髪、黒いスーツを着て、首もとから黒いハイネックのアンダーウェアが見えており、真っ白なワイシャツとのコントラストが映える。
そんな2人の男女を出迎えるデコボココンビがいる。
「グスタフさん、弥子さん、船旅お疲れさまです。」
「お~弥子~、久しぶりアルね~。」
狗飼と虎龍の2人である。
虎龍はだらしなく頬を緩ませ、弥子の豊満な胸部に向かってダイブするが、弥子の胸部に備わったダブルマウンテンに虎龍の頭が到達する前に彼女に頭を捕まれぷらーんと宙吊りになる。
その様子を傍から見ていたグスタフと狗飼はもう見慣れた光景なのか互いに歩み寄り握手を交わす。
「久しいな瑛護、お前がここ勤務になって3年目か。時間が経つのは早いな。」
「自分もそう思います。グスタフさんや弥子さんと同じ場所で働けるなんて、光栄です。」
「持ち上げてくれるな。ここでの勤務はお前の方が先輩だ。学ばせてもらうぞ。」
グスタフがからかうような顔でそう言うと、狗飼はぎょっとした表情になり、握手を交わす手にも力が入る。
「じ、自分のような若輩者にそのような大役など…。」
「ハハハハハ、そう言う生真面目なところは変わらんな。まぁ、それでこそ瑛護だがな。」
「そうですね。そういったところは狗飼くんの美徳だと私は思いますよ。」
虎龍の顔にアイアンクローをかまし、いまだに鷲掴みにしたまま宙吊りにしている弥子は笑顔でそう言う。
その笑顔は人の頭を鷲掴みにしているという絵面でさえなければ大抵の男はときめいてしまいそうなほど素敵な笑顔である。
「AHAHAHAHA、相変わらず弥子は照れ屋さんで愛情表現が激しいネ。」
「ふふふふ、虎龍も変わりませんね、その減らず口。これでも支えているのは利き手ではないのですよ?」
「い、いぎゃぁあああああっ!? 痛い、痛いアル! じょ、冗談!冗談ネ!!だから許してプリーズアルよ!!」
虎龍の言葉に気を悪くしたのか、弥子は虎龍の頭を更にギチギチと締め付ける。そのあまりにも酷い激痛に虎龍は体をジタバタさせてどうにか逃れようとするが弥子の手が緩む様子は一向になく、彼は情けなく悲鳴を上げるだけだ。
そして、虎龍の頭を握り締めている弥子の表情は変わらず笑顔のままである。
「ハァ…。そこまでにしておけ、オレ達は仕事に来てるんだ。」
その惨劇を見かねたグスタフが止めに入る。
グスタフの制止に弥子は渋々ながらも従い、虎龍の頭を掴む手を広げた。
空中で固定されていた虎龍の体は支えを失い、重力に従って垂直に落ちる。
「うぅ~、痛かったネー。」
「自業自得ですよ、フーさん…。」
オーバーリアクション気味に頭を押さえる虎龍に狗飼はやれやれといった様子で首を横に振る。
「さて、長くなったな。狗飼、呂、出迎えご苦労だった。早速で悪いが詰所に案内してくれ。これからの話を詰めたい。」
「分かりました、こちらです。」
グスタフの指示に従い、狗飼はくるりと踵を返して奥にある警備員の詰所にグスタフと弥子を案内する。
その後、詰所に現れたグスタフと弥子を見て、狗飼の後輩たちがKKRS(KGDO・警備員・リアリティ・ショック)を受けたことは言うまでもない。
KKRS(KGDO・警備員・リアリティ・ショック)
→KGDOの新入社員や新人警備員がよく発症する症状。
憧れや畏敬の対象であるKGDOの熟練や凄腕のメンバー達と遭遇することにより、嬉しさや困惑といった様々な感情が一度に発生することで発症する。
多くの者はあわあわと挙動不審になったり、その場から逃げ出したりするが、症状が酷い者になると気絶したりする。