IS世界に世紀末を持ち込む少女   作:地雷一等兵

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どうも、みなさんメリークリスマス。

という訳で今回は特別編を投稿しました。
一応同じものを外伝集にも上げています。

ではどうぞ↓


季節ネタ特別編
クリスマス特別編


この話は、南美達がIS学園に入学する前、ほんわ君がまだ夢弦高校の生徒であったときのお話。

 

 

 

「おはよー。」

 

「あ、おはよう姉さん。」

 

今日は12月24日、即ちクリスマスイブである。

夢弦も今日はクリスマス模様で、街はイルミネーションで飾られている。

 

そんな日の朝、ほんわ君はいつものように起きてリビングに降りると、既に彼の姉が朝食を用意していた。

 

 

「はい、コーヒー。で、今日もバイトなの?」

 

「いや、今日はないよ。だから久々に家でゆっくりしようかなって。」

 

そう言ってトーストをかじってテレビのニュース番組に目を向ける。

 

『続いてのニュースです。毎年恒例のことですが、昨日、夢弦市、由江(ユエ)市、板鹿棚(イタシカタナ)市の3市で今月の24日、25日の市内における闘争行為の全面解禁を発表しました。警察はこの2日間の闘争行為を止めるよりもむしろ推奨しており、職員の方々は「リア充死すべし、慈悲はない」や、「やれやれ、最近のカップルはやんちゃで困る」などと述べています。今日と明日の3市の治安維持に関してはいつものようにKGDOの警備員が動員されるとのことです。 では続いて次のニュースです。3日前に脱走した由江動物園で飼育されている2HM2(デュアルヘッドモケーレムベンベ)のレミちゃんですが、昨夜無事に保護されたとのことです。担当の飼育───』

 

「…やっぱり今年もかぁ…。」

 

流れてきたニュースを見て、一言しみじみと言ったほんわ君のスマートフォンに一件の着信が入る。

 

手にとって画面に目を向けると、ディスプレイには見慣れた人物の名前があった。

それを見たほんわ君はトーストを一気に頬張るとコーヒーでそれを流し込み、席を立った。

 

「用事が入ったから出掛けてきます。」

 

「はーい、遅くなるなら連絡しなさいね。」

 

「分かってるって。」

 

ほんわ君は部屋に戻ると外出用の服に着替え、コートを羽織って指示された場所に急いだ。

 

 

 

 

 

 

「すいません、遅れました。」

 

指定の場所まで行くと、既に複数人がそこにいて、会話を交わしていた。

そのうちの一際背の高い二人がほんわ君を見つけると歩み寄った。

 

「いや、急な連絡でここまで早く来れたなら大したもんだよ。」

 

「そういうことだ、気にするな。」

 

「…ジョンス先輩は呼び出した張本人なのであれですが、金剛丸先輩はどうして…?」

 

威圧感のある巨漢二人に目を向けるほんわ君。そのうちの一人である金剛丸三蔵がここにいることに首を傾げた。

 

「ん? ジョンスの奴に、“このまま街の風紀が乱れれば妹の彩にまで魔の手が伸びないとも限らない”と言われてな。」

 

「は、はぁ…。もしかして今日集まったのって…。」

 

ある考えに思い至ってほんわ君はジョンスの方に顔を向ける。

するとジョンスは右手の親指を立てて爽やかな笑顔を浮かべながら言葉を繋ぐ。

 

「もちろんリア充どもの粛せ─げふんげふん、街の治安維持だ(キリッ」

 

「嘘だッ!!」

 

白々しいにも限度があると言わんばかりにほんわ君はやや食い気味に声を荒らげた。

その様子に近くで見守っていた面々は次々と笑い始める。

 

「相変わらずこの手のことだと信用ないですね。」

 

「うるせー。」

 

クスクスと笑うカセンにジョンスは口を尖らせて不平を溢す。

そうこうしていると、ジョンスが声を掛けたであろう面々が全員集合した。そのほとんどが男である。

 

「よーし、全員揃ったな。今から人前で恥もなくイチャイチャするバカップルどもを鎮圧していくぞ。のりこめー^^」

 

「「わぁい^^」」

 

「「おー^^」」

 

ジョンスの掛け声と共に集まったれんちゅうはそのまま雪崩れ込むように街中へと駆けていった。

 

その横ではというと──

 

 

「ザーザースザーザースナーサタナーダザーザース」

 

「ウボァー」

 

 

「みんなー!」

「アーサーギ!アーサーギ!」

 

「ひでぶっ!」

 

 

「ジャーマン!ダブルジャーマン!!」

 

「ヒラメッ!?」

 

 

女と見るやすかさずナンパしにかかるチャラ男とそれを実力で撃退する女性陣によって死屍累々といった状態である。

そう、闘争行為の解禁はなにもリア充への妬みだけではなく、ナンパ男を撃退するためにも行使されるのである。

 

そしてそこは夢弦の女性、こと戦闘、それも街からの許可で全面的に許されるとなれば容赦はしない。

 

 

「うわぁ…右代宮会長すげぇ…。」

 

「ま、あれくらい出来なきゃ夢弦で生徒会長やれないでしょ。」

 

それを端から見ていたほんわ君とカセンは見知った顔の容赦のなさに開いた口が塞がらなかった。

 

「て言うかカセンさん、なんでコレに来たんです?」

 

「ん~、面白いもんが見れそうだから、かねぇ。ほら、そろそろ見れるんじゃないか?」

 

そう言ってカセンは先ほど仲間たちがカチコミしていった先を指差す。

そこにはハンマーを持った少女に蹴散らされる仲間の姿があった。

 

「塵は塵に、灰は、灰にー!!」

 

「「あべしっ!?」」

 

巨大なハンマーで殴られた男はそのまま吹き飛び、道端に積まれた雪に頭から突っ込んだ。

 

「人のデートを邪魔するとか、信じらんない!」

 

ハンマーの少女はそれだけ叫ぶと傍らにいる少年と手を繋いでその場を去っていった。

 

 

「ワワワワワワワワワワワワワワワワルイネ☆」

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアーイ‼」

 

そんなリア充カチコミ、返り討ちと言った図が至るところで繰り広げられている中で、とある二人が出会ってしまっていた。

これを見た周囲は口々にこう言ったという。“あーあ、出会っちまったか”と。

 

その二人は人間には恐らく不可能であろう動きを繰り出しながら拳を交える。

そんな姿はまごうことなき変態のそれである。

 

 

「なにあれ…。」

 

「ドゥエリスト同士は惹かれ合うからねぇ。あれもまた必然ってやつさ。」

 

人間離れした所業に若干引いていたほんわ君に、カセンはアッハッハと笑う。

そんなカセンの態度でほんわ君も「夢弦だし、仕方ないね」と納得して笑う。

 

 

もはや夢弦の住民ならば見慣れた喧嘩の祭りと、それを日常として受け入れてしまっている自分に、“染まってるなぁ”とほんわ君は呟いたのであった。

 

 

 

 





ジョンスと金剛丸が知り合いなほんわ君。何気にすげえ。


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