連日投稿はやっぱり難しいですね。
今回は平均的な長さです。
では本編をどうぞ↓
「織斑くん、代表就任おめでとう!!」
「「「おめでとう~!!」」」
パンパカパーンとクラッカーが乱射される。クラッカーの紙テープや、紙吹雪がその中心にいる一夏の頭に乗っかる。
夕食後の自由時間に1年1組の面々は食堂の一角を占拠して、軽いパーティーを開いていた。
少女達は飲み物を注いだコップを片手に思い思いに談笑している。
「いやぁ、まさか食堂でここまで大々的にやるとはね。予想外だよ。」
込み上げる笑いを噛み殺しながら南美が一夏に話し掛ける。
その横には本音もいた。
「どしたのオリムー、元気なさそうじゃん。」
「や、その、ちょっとびっくりして…。」
「まぁ、びっくりするよね~。うちの女子の行動力には私も驚いたよ。」
戸惑いを見せる一夏に南美はアッハッハと笑う。
だが言葉とは裏腹に、その様子はむしろこういったことにはもう慣れたと言わんばかりである。
すると食堂の入り口から新聞部の腕章をつけた生徒が二人入ってきた。
「どーもー、新聞部でーす。今噂の織斑一夏くんの取材に来ました~。」
「おー! 来た来た!」
新聞部の二人が登場したことで、会場はまた盛り上がる。
すると二人組の片方、メガネを掛けている方が一夏を見つけ、すぐさま駆け寄った。
「いたいた、一夏くん。それにお隣には今話題の新入生、北星南美ちゃんもいるじゃない。あ、私は新聞部2年の黛薫子(マユズミカオルコ)って言うの。よろしくね~。」
嬉々として薫子は二人に名刺を渡すと、そのまま一夏にボイスレコーダーを向ける。
「じゃあ早速、織斑一夏くん、代表決定戦の感想をどうぞ!」
「感想…ですか。…悔しかったです。2連敗して、周りは気にするなとか、よくやったとか言ってくれて、嬉しかったけど、何も出来ないまま終わったってのはやっぱり悔しいですね。セシリアにはなんとかなったとは言っても作戦に嵌められたし、自滅して負けた。南美には自分の作戦の上を行かれたし…。」
最初は苦い表情を浮かべていた一夏であったが、語るにつれてその時の反省を思い出したのかつらつらと話すようになった。
「セシリアのビットは正確で何度も当てられたし、南美に至っては1発1発が凄くて、何度も意識がいきそうになりましたし…。」
「ほうほう…、1発1発が凄くて何度もイキそうになった…と。」
「でも、次からはそう簡単にはいかないようにしたいです。」
「下剋上ですか。なるほど。次は簡単にイカない…と。」
面白い素材を見つけた薫子はやや興奮した様子でメモを取る。
「それと、さっきから南美ちゃんとセシリアちゃんを呼び捨ててるけど、そこんとこは?」
「? 特に深い意味はないですよ。南美からは初日に呼び捨てで良いって言われたし、セシリアからは今日の昼に会ったときに呼び捨てで構いませんわって言われたからで…。」
「なーんだ、なんもないのか。」
“つまんないの”と露骨にテンションを下げる薫子の矛先は次に南美へと向いた。
「じゃあ南美ちゃん、なんで一夏くんに代表の座を譲ったの?」
「簡単な話ですよ。彼の可能性に期待してってことです。」
「ほう、可能性…。具体的には?」
キランとメガネを輝かせた薫子はずずいと南美にボイスレコーダーを近づける。
「少し考えてもらえば分かりますけど、一夏くんは素人同然の状態で代表候補生のセシリアちゃんやテストパイロットやってる私と負けたとはいえ、渡り合いました。そのポテンシャルは見過ごせないものがあります。世界が世界なら“騙して悪いが…”で新人潰しをされるレベルでね。」
「むむむ、確かに。ではセシリアちゃんもそのような理由で?」
南美の言葉を聞いた薫子はそのすぐ近くにいたセシリアにボイスレコーダーを向ける。
「え、や、そのそれは…、そ、そうですわ。勿論ですとも。」
急にボイスレコーダーを向けられたセシリアは顔をほんのりと赤くし、しどろもどろになりながら答えた。そんな状態を見逃す薫子ではない。
「な~んか怪しいなぁ…。よし、ここは一夏くんに惚れたからってことにしよう!」
「ど、どどどどど、どうして私が一夏さんに惚れてるって証拠ですの!」
「いやぁ、その方が面白いし。」
しれっと悪びれもせずに薫子はそう言った。
そしてカメラを携えたもう一人の新聞部員を呼ぶと南美、一夏、セシリアの順に並ばせる。
「んじゃ最後に3人の写真撮って終わるよ。」
「黛先輩、この並びに意味は?」
「ん~? 両手に花的な。」
「いや、さすがにそれは…。」
「別にいいんじゃない?」
「そ、そうですわ。私は気にしませんもの。」
困惑の色を浮かべる一夏とは逆に南美とセシリアは乗り気で一夏の隣に立つ。
南美は面白そうな笑いを浮かべ、セシリアは何かの期待をもった面持ちである。
「さて、それじゃあ撮るよ~。1、2の、3!」
薫子の“3”の声とほぼ同時に風が巻き起こる。
その発生源は1年1組の面々であり、シャッターが切られる直前に滑り込み、見事全員が写真に収まったのである。
なんと言う神業であろうか。
──などと、食堂で彼らが和気あいあいと談笑している頃、IS学園に生活品や食材等を運びいれる為の貨物船専用の港では…。
「ここがあの女のハウ…ゲフンゲフン、ここがIS学園ね。はぁ~、やっと着いたー!」
貨物船の甲板から港へと飛び降りたツインテールの少女は唯一の荷物であるボストンバッグを下ろすと背筋を伸ばして“ん~”と伸びをした。
「おぅ、嬢ちゃん。船酔いは大丈夫みてぇだな。」
「勿論よ。にしても乗せてもらって助かったわ。ありがとね、おじさん。」
「良いってことよ。定期便逃した女の子を見捨てるなんざ出来ねぇからな。こっちもIS学園に荷物届けるところだったし丁度いいってもんよ。」
恰幅の良い男はそう言って豪快に笑った。その様子にツインテールの少女も小さく笑う。
「じゃあ、私はもう行くから。お仕事頑張ってね、おじさん達。」
「おうよ、嬢ちゃんも頑張れよ!」
ツインテールの少女は快活な笑みを浮かべて、作業着姿の男達に手を振った。
男達もその少女の明るさに感化されたように笑い、手を振り返した。
「ぐぬぬ…。どこなのよ! せめて地図くらい寄越しなさいよね!!」
勢いよく港へとから敷地内に入った少女であったが、懐から取り出した紙を見て思わず大声をあげた。
取り出した紙には“IS学園本校舎一階総合事務受付”とだけ書かれていた。コレが彼女の目的地なのだが、基本的にだだっ広い敷地面積を誇るこのIS学園ではそんな文字だけの案内など、大抵は意味をなさない。
そうしてあてもなく敷地内をさ迷う内に彼女は迷子になっていた。
今の時間は外は日が落ちきっており、辺りには生徒はおろか教員の姿もない。
そんな彼女に一筋の光明が差した。
「そこの少女、こんな時間に何をしているんだ?」
少女に話し掛けたのは黒スーツ姿の青年だった。背の高い青年は少女を威圧しないように声のトーンをいくぶん柔らかくしている。
「えっと、お兄さんは誰?」
「…狗飼瑛護(イヌカイエイゴ)、警備員だ。」
瑛護は渋るような態度を見せると、それだけ言って少女と目線の高さを合わせる。
「それで、君は何を?」
「IS学園の警備員は勤務中はスーツ姿なのね。知らなかったわ。まぁいいわ。実は道に迷っちゃってね。ここに案内してくれない?」
そう言って少女は手に持っている紙を見せた。それに書かれてある文字を読んだ瑛護は小さく頷き背筋を伸ばす。
「そこならそんなに遠くない。こっちだ。」
瑛護は背後の建物を指差し、ゆっくりと歩き出す。少女はそれを見て黙って黙って彼についていった。
「ここだ。それと、私に案内されたことは内密に頼む。それじゃあ…。」
「分かったわ。ありがとうね、狗飼さん。」
事務受付のある建物まで来ると瑛護はそれだけ言葉を交わして、元いた場所まで戻って行った。
「手続きはこれで終了、IS学園はアナタの転入を歓迎します。これから頑張ってくださいね、凰鈴音(ファンリンイン)さん。」
愛想の良い受付の事務員はそう言って鈴音に微笑みかける。
「あの、織斑一夏って何組ですか?」
「ああ、あの話題の男の子ね。彼なら1組よ、そこのクラス代表ですって。凄いわよね。あ、鈴音さんは2組だから隣のクラスになるわね。」
愛想の良い事務員は噂が好きなのか、聞かれてもないことをすらすらと話す。
そんな彼女のテンションに引きずられず、鈴音は質問を続ける。
「2組のクラス代表ってもう決まってますか?」
「ええ、もう決まってるわ。」
「その人の名前は?」
「え、ええと、そんなこと聞いてどうするの?」
鈴音の質問に戸惑いを覚えた事務員が聞き返す。すると鈴音はニパッと笑みを浮かべた。
「クラス代表、変わってもらおうかなって思っただけです。じゃあ、ありがとうございました。」
良い笑顔を浮かべたまま鈴音は受付を後にした。
(フフフ、待ってなさいよ一夏。こてんぱんにしてあげるから!)
鈴音は自信満々の笑みを浮かべながら拳を高々と掲げた。
IS学園の夜は今日もまた更けていく。
次への波乱を感じさせながら…。
次はいつくらいに投稿出きるのか分かりませんが、お待ち下さい。
まぁオリキャラ出てきたけど、もう今更ですよね?
TRF‐Rの連中であれだけはしゃいでますし…。
そして密航者まがいの事をしてIS学園に侵入した凰鈴音ちゃん。