では本編をどうぞ↓
南美は今、とある人物を探して学園の敷地内を歩き回っその人物とは南美が父以外で目指したただ一人の女性、リングの上でまるで舞うように戦っていた彼女。
その人物を見かけたのは入学式の時だった。在校生代表として祝辞を述べている姿を見たとき、南美は目を疑った。
まさか自分の目指していた人物とこのような所で出会えるとは思っていなかったのである。
「はぁ、はぁ…。見つけましたよ、更識楯無さん…。」
中庭で南美が見つけたのは彼女が追い求めていた青髪の少女。
彼女はベンチに腰掛け、儚げに空を見上げていたが、南美に呼び掛けられるとゆっくりと南美の方に顔を向ける。
「アナタは…、北星南美ちゃんね。」
「はい、私のこと知ってるんですね。」
「勿論よ…、LOCエンタープライズ社のテストパイロットで、イギリスの代表候補生に勝った子だって、もう有名よ。」
その少女は南美に優しく微笑む。
その顔は慈愛に満ちていた。
「私は、アナタと戦いたかった。大会でアナタを見たその時から…。アナタの流れるようなあの動き、あの技を目指していました…。」
「フフ、アナタにそんな事を言ってもらえるなんて光栄ね。嬉しいわ。」
「ですから、是非ともアナタと手合わせしたいんです!」
南美は手を合わせてから構えを取る。
その姿を見た少女は小さく息を漏らして立ち上がる。
「そうね、仕方ない。かかってくると良いわ。この更識楯無が相手になりましょう。」
少女、楯無も体から余計な力を抜いて構える。
「行くぞ!」
「っ!?」
さっきまで南美から離れた場所にいた楯無は一瞬で距離を詰める。
とっさの判断で右腕の手刀を突き出した南美だったが、楯無はその右腕を掴んで投げ飛ばす。
「ぐぅ…。」
「反応できるなんてさすがね。でも、私の方が1枚上手だったかしら?」
投げに対してしっかり受け身をとった南美はすぐに楯無の方を見る。
楯無は余裕そうな顔で南美を見つめていた。
(い、今のは…? まったく見えなかった、どうやってあの一瞬で距離を詰めたの? 消えたと思ったら私の目の前にいた…。)
不可思議な現象に困惑しながらも、南美は楽しさに胸を踊らせていた。
「やっぱりアナタは強い…。なので、全力で行かせていただきます!」
そう言って南美は楯無に向かって突進する。
「フゥゥ、シャオッ!」
鋭い手刀突きを繰り出すが、楯無は左腕を使って横にいなし、右の掌底を南美の腹に打ち込む。
だがそれで崩れる南美ではない。
「シャオッ! ショオッ!!」
「へぁっ!」
右手の手刀払いから左のハイキックを繰り出す。
しかし楯無はそれを全て正確に捌くと、左のハイキックに来た足を掴み、逆に南美に蹴りを見舞う。
「そのカウンター、やっぱり変わりませんか。」
「フフ、そうね。身を守るならコレが一番の方策よ?」
忌々しげに呟く南美に楯無は笑ってそう言った。
「フゥゥゥッ!」
南美は息を吐き、集中を高めていく。それはまるで刀匠が一振りの刀を研ぐかのように。
「ショオォオオッ!」
全身の筋肉を使い、南美は駆ける。
「シャオッ! ショオッ、 ウリャッ!!」
「く…。」
肉薄してからの右のショートアッパーから、鳩尾に向けた左の肘鉄、そして最後の締めにこめかみへのハイキック。
最初の2つを捌いた楯無だったが、その速さに徐々についていけなくなり、最後のハイキックをもろに喰らってしまった。
頭部へのダメージから楯無の体が微かに揺らぐ。
「ふぅ、ふぅ…。カウンターが主体ならカウンター出来ないくらい攻めれば良い!」
「フフ、凄いわね。まるで激流…。」
フラフラとなりながらも楯無は構えを取り続ける。
彼女の顔には笑みが浮かんでいた。それが虚飾の笑みなのか、それともまだ何か隠し玉があることの余裕から来る笑みなのか南美には分からない。
「激流を制するは静水…。この言葉を証明しましょう…。」
呼吸を整えた楯無はまっすぐに南美を見据える。
「どうしたの? かかってきなさい。」
「っ…、ショオォオオッ!!」
楯無の言葉に痺れを切らした南美は楯無に飛び掛かる。
「シャオッ!」
「でやぁ!」
高い跳躍から放たれる南美の蹴りを楯無は難なく受けとめ、逆に南美の体を突き飛ばす。
そして空中で体の自由が効かない南美の頭に、さっきのお返しとでも言うように蹴りを放ち、直撃させる。
「…、そう簡単には崩せないですよね。」
「アナタもね。…、もう少しアナタと楽しみたかったけど、もう時間みたいね。お昼休みが終わっちゃうわ。」
楯無の言葉に南美は中庭の時計に目を向ける。そこにはあと少しで昼休みが終わる事を告げる文字盤があった。
「ぐぬぬ…。」
「また会いましょう、その時は決着がつくまで…。」
その言葉を残して楯無は中庭を去っていった。
彼女の後ろ姿を眺めていたが為に南美が遅刻しかけたことは内緒である。
楯無さんが原作とは違ったテイストになってしまいました。
原作の楯無ファンの皆さん、ごめんなさい。
…こんな彼女もアリですよね?