今回は少し短いです。
それでは本編をどうぞ↓
決闘の翌日、南美はいつものように目覚める。
南美はスッと布団から這い出ると、隣のベッドですやすやと寝息をたてながら時おり“世紀末病人”や“人間バスケ”などと意味不明な寝言を発する同居人の本音を起こしにかかる。
「ほら、本音、朝だよ。ご飯食べに行くよー、起きて。」
「にへへ、蓄積溜めてぇ起き攻めぇ、うへへ…。」
本音は体を揺すっても締まりのない表情を浮かべるだけだった。
「とっとと起きなさい!」
痺れを切らした南美は本音から布団を剥ぎ取ると同時に本音を空中に放り投げた。そして剥ぎ取った布団も上に投げると、布団越しに本音の腹に人差し指を突き立てる。
「ぐふぅ!?」
「目、覚めた?」
「は、激しいモーニングコールでバッチリだよ~、激しすぎて永遠の眠りにつきそうだけど…。」
「ちゃんと起きれば私も実力行使しなくて楽なんだけどね。」
「う…、善処します…。」
早朝の洗礼を食らってぐったりしている本音を着替えさせた南美は二人で一緒に食堂に向かった。
──食堂
「おぉ、南美。おはよう!」
「おはよう一夏くん、それと箒さんも。」
「あ、あぁ、おはよう…。」
食堂につくと偶然同じタイミングで食堂に来ていた一夏と箒に出くわした。
「それと、クラス代表就任おめでとう、南美。」
「は?」
突然言われた一夏からの言葉に南美は思わず素っ頓狂な声を上げた。
一夏も一夏で、“なんだそのリアクションは…?”と言いたげな顔をしている。
「どうしたんだ、南美。 クラス代表になれて嬉しくないのか? 決闘前はあんなに張り切ってたのにさ。」
「え、いや…何でもない。まぁ、その、アレだよ。お祝いの言葉は朝のホームルームで正式な発表が有ったら受けとるよ。」
一夏の態度を見て何かを確信した南美は笑いを悟られないようにしながら朝食を摂るのだった。
「はい、1年1組のクラス代表は織斑一夏くんに決定しました、1繋がりで縁起が良いですね~。」
「「おめでとう、一夏くん!」」
「…は? え、はぁぁあああああっ!? え、ええ?!」
朝のホームルームで山田先生から発せられた言葉の内容にワンテンポ遅れて一夏が絶叫と共に立ち上がる。
「え、どういうことですか? オレって全敗ですよね⁉」
「騙して悪いが…ってやつだよ一夏くん。」
ドッキリに掛けられたリアクション芸人さながらの反応を見せる一夏の横で南美がケタケタと笑う。
その言葉に一夏は南美の方を向いた。
「ど、どどどど、どういうことだよ南美!」
「それはねぇ──」
「私たちが辞退したからですわ。」
南美の発言を遮ってセシリアが話し出す。
彼女の言葉に一夏は怪訝な顔でセシリアに目線を移した。
「私と南美さんで昨日の夜に話し合ったんですの。クラス代表を一夏さんに譲りましょうって。」
「は、はぁ?! だってオレ、一番弱いんだぞ? それこそ南美の言ってた“力こそ正義”っていうのに反するだろ?」
「それはまぁ、そうなんだけどねぇ…。」
「それなら昨日の夜の事をお話し致しますわ。アレは決闘を終えた夜のこと──」
──昨晩 南美と本音の部屋にて
ジョインジョイントキィデデデテザタイムオブレトビューションバトーワンデッサイダデステニーナギッペシペシナギッペシペシハァーンテンショウヒャクレツナギッカクゴォナギッナギッナギッフゥハァナギッゲキリュウニゲキリュウニミヲマカセドウカナギッカクゴーハァーテンショウヒャクレツケンナギッハアアアアキィーンホクトウジョウダンジンケンK.O.イノチハナゲステルモノ
バトートゥーデッサイダデステニー セッカッコー ハアアアアキィーン テーレッテーホクトウジョウハガンケンハァーン
FATAL K.O. セメテイタミヲシラズヤスラカニシヌガヨイ ウィーントキィ パーフェクト
「おお、コレが噂のトキ…。」
「って言っても私の持ちキャラじゃないからこれくらいしか出来ないんだよね。」
「え…? これより上がいるの…?」
「もちろんだよ、全一トキ使いなんてこれよりエグいよ?」
「ふぇぇ…。」
─トントントン
食事も済ませ、自室にて南美が世紀末バスケットボール講座を本音相手に開講していると、彼女らの部屋のドアが何者かにノックされた。
「ん~? 誰だろ、入って、どうぞ。」
南美が入室を進めると、ドアの外にいる人物はワンテンポ置いて入室した。
「お邪魔しますわ…。」
「およよ、セシリアちゃんじゃん、どしたの?」
部屋に入ってきたのはセシリア・オルコットであった。
その顔は真剣その物であった。そんな彼女の空気を察してか、本音は部屋の奥に引っ込んで行った。
「まぁ取り敢えず座りなよ、今本音がお茶を淹れてくれるからさ。」
「ふふふ~、ちょっと待ってね~。」
本音の淹れた紅茶が届く頃には、セシリアもやっと落ち着いたといった雰囲気になった。
「さて、用件は何かな?」
「…単刀直入に言わせていただきます。北星南美さん、クラス代表を辞退していただけませんか?」
「その理由は?」
「織斑一夏さんをクラス代表にしたいから…ですわ。」
「…それはどうしてだい?」
セシリアの発言に南美の目付きがスッと鋭くなる。
「南美さんは彼と戦って何か思いませんでしたか?」
「そりゃ思うところはあったよ。…あんな気概溢れる男は父さんの職場以外ではお目にかかれないからね。」
「それに彼は一次移行前の機体で私と張り合い、そして南美さんに食らい付きましたわ。まだISについては素人ですのに…。」
「…伸び代は充分あるってことか…。」
「えぇ、見てみたくありませんか? この先、経験を積んで化けた彼の強さを…。」
セシリアの提案に、南美はカップに注がれた紅茶を飲み干して笑った。
「…面白そうじゃんか。乗ったよ、その話…。オーケー、私はクラス代表を辞退するよ。」
───
──
─
「という感じですわ。その後は先生に報告して一夏さんをクラス代表にしてもらうようにお願いしたんですの。」
「いや~、てっきりセシリアちゃんからキミに話が通ってると思っててさ。ごめんよ~。」
あっけらかんと喋る南美に一夏は恨めしそうな視線を向ける。
「知ってたなら言えよ…。」
「だから言ったじゃん、セシリアちゃんから話が行ってるもんだと思ったってさ。」
「ぐぬぬ…。」
言いくるめられた悔しさに一夏は歯噛みする。だがそんなことは関係ないとばかりに南美はニヤニヤと笑っている。
「まぁ、私たちがクラス代表を譲ったんだから、それなりの結果は残してもらうよ?」
「そうですわね、少なくとも私たちより強くなってもらわなくては…。」
「上等だよ、やってやろうじゃねぇか!!」
ニヤニヤしながら煽る二人に一夏が吼える。すると一夏の頭にポスッと軽く出席簿が当てられた。
担任の織斑千冬である。
「ほら、そこまでにしろ。クラス代表は織斑一夏で決定、良いな?」
「「「異議なーし!」」」
こうして1年1組のクラス代表は織斑一夏に決定した。
徐々に世紀末に染まっていく本音さん…。
そして起こし方に容赦のない南美さん。
まぁ、世紀末故に致し方なし。