IS世界に世紀末を持ち込む少女   作:地雷一等兵

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今回は少し短いです。

では本編をどうぞ↓


第20話 サムライと淑女

女の友情が芽生えた第1試合は南美が専用機の力を遺憾なく発揮し勝利を納めた。

 

そして迎えた第2試合、セシリア・オルコット対織斑一夏の勝負。

 

南美との試合から自身の未熟さを知ったセシリアは試合開始前からビットを展開し、一夏を待っていた。

 

「待たせたな。」

 

カタパルトから射出され、一夏は勢いよくアリーナに着地する。

 

「逃げずによく来ましたわね。」

 

「男として逃げる訳にはいかねぇだろ? それもあんな試合を見た後でよ。」

 

一夏の顔には早く戦いたくて仕方がないと行った風な表情が浮かんでいる。

 

 

 

─控え室

 

「…一夏くんの機体ってもしかして…。」

 

「気付いたのか? さすがと言ったところか…。」

 

モニターでアリーナの様子を見る南美が何かに気付いたように呟くと、その隣にいた千冬が感心したように南美を見る。

 

「えぇ、たぶんですけど、あの機体ってブレードしか装備がないんですか?」

 

「その通りだ。」

 

「人の機体にとやかく言える立場じゃないですけど、何でまたそんな癖の強い機体を…。初心者に使わせる機体には思えないんですが…?」

 

「さぁな、私もよく分からんよ、あのバカの考えることなどな…。」

 

南美の問に千冬はどこか遠い目をしていた。

 

 

 

side 南美

 

 

何だろう、千冬先生から変な感じがする…。う~ん、考えても仕方ないか、今は試合を見よう。

 

セシリアちゃんは既にビットを出してる本気モード。アレは慣れてないと近付けないかもしれないね。

 

お、始まった。

一夏くんはブースト吹かして接近、まぁそうだよね。ブレードオンリーならそうしなきゃ何も出来ないまま蜂の巣にされちゃう。

 

けど、私もやってみて分かったけど、セシリアちゃんのあのビットはかなり高い精度だ。

加えてあのライフルによる狙撃、私が接近できたのは奇襲に成功したからだ。

 

ただの特攻じゃあ突破出来ないよ。

 

近接兵装の無いセシリアちゃんの機体“ブルー・ティアーズ”は相手に近付かれたら為す術なく負ける。

だからたぶんだけどセシリアちゃんは相手を近付けないことに特化して訓練してきたんだろう。

 

だから、機体性能を押し付けて正面からの突破は難しい。それも今の一夏くんみたいに直線的な動きだと特に…。

 

うん、予想通り一夏くんは回避する一方だね。

けど、一夏くんの専用機、白式だっけ? 基本性能が高いなぁ…。

基本性能だけならかなりのもの、でもそれをまだまだ活かしきれてない。

 

ん…? ビットの動きが妙だな…。さっきまでどこにもつけ入る隙が無かったのに、今は1ヶ所だけ薄い場所がある。まるで意図的にそうしてるみたいに…。

やっぱり、セシリアちゃんは凄いパイロットね、私との時は冷静さを欠いていたのもあるのかしら…。

 

ふふ、一夏くんも、弾幕の薄い場所を見極められるのも凄いけど、今回はセシリアちゃんの方が1枚上手ね。

 

相手をおびき寄せて罠に嵌め、そして一気に押し込む。ライフルとビットの一斉射撃は今まで地味に削られてきた一夏くんじゃ耐えきれないはず、この勝負はセシリアちゃんの勝ちかな?

 

あれ? ブザーが鳴らない…?

まだ耐えたってこと? でも白式はもう満身創痍でブルー・ティアーズの一斉射撃を耐えきれるほどシールドエネルギーは残ってなかったはず…。

 

くそッ、土煙が邪魔だ、早く晴れろ…。

よし、徐々に晴れてきた…、って、嘘でしょ…。

 

 

私の目に映ったのは無傷の白式、それもさっきまでのくすんだ灰色の装甲に覆われた機体ではなく、受けた光を綺麗に反射する純白の装甲に身を包んだ新しい姿だった。

 

もしかして一夏くん、白式はまだ一次移行《ファーストシフト》すら終わらせていなかったの?

それであの機体性能とか、どんだけなのよ。

 

「この刀は千冬姉が使ってた雪片の後継、その名も雪片弐型だ。」

 

雪片…だと…!? 冗談キツいよ一夏くん。

雪片と言えばキミのお姉さんが世界を取る要因になった化け物武装じゃんか…。

シールドエネルギーを含む全エネルギーを無効化する…。もしその一撃を食らえばシールドエネルギーの大半は消し飛ぶ。

 

一撃で7割、8割とかサムスピかっての、いやサムスピよりひどいかもしれない…。私の“南斗翔鷲屠脚”でさえ機体のリミッターを全解除して、フルに活用してやっとあの威力を発揮出来るのに、雪片の能力“零落白夜”は常時その威力を出せるんだ、厄介この上ないね。

 

おまけにあの機体性能か…。一次移行前であの性能だ、移行が済んだ今だとどれくらいなのかは想像に難くない。

 

でも弱点が無い訳じゃない…。千冬先生の初代雪片は零落白夜発動中は常に自身のシールドエネルギーを消費していた。つまり燃費が悪い。

粘りに粘ってスリップダメージで自滅させるのが一番の対策な気がする。

 

セシリアちゃん、その事に気付けるか? いや、ISパイロットなら誰でも知ってる雪片の能力を前にすればそのプレッシャーでそこまで気が回らないか…?

 

これで試合の流れが変わったか?

さっきまでのセシリアちゃんに傾いていた流れが徐々に変わってきてる…。

 

機体性能に頼った強引な攻めでもセシリアちゃんに食らい付けるんだ、それに零落白夜はエネルギー兵器オンリーのブルー・ティアーズとは相性が良すぎる。

もう一夏くんはセシリアちゃんのライフルを避ける必要すらないんだ。

 

一夏くんがセシリアちゃんに雪片弐型を振り下ろす。

けれどセシリアちゃんだって負けてない。もう接近されてからは取り回しの効かないライフルを盾に一夏くんの猛攻を捌きながら反攻の機会を窺ってる。

 

けど、やっぱり近接戦の経験値に差があるみたいだ。

徐々に押し込まれ、追い詰められていくセシリアちゃん。

そして押し込まれ、完全に体勢を崩した彼女に一夏くんは雪片弐型を振りかぶり、思い切り振り下ろした。

 

「インターセプター!」

 

──ガギィン

 

セシリアちゃんの声と、一寸遅れて鈍い音が響く。

あまりの衝撃に二人の周囲には土煙が舞っていた。

そしてそれと同時に試合終了を告げるブザーが鳴った。

 

まさか、セシリアちゃんの負け…か?

 

「試合終了、勝者セシリア・オルコット。」

 

え? セシリアちゃんの勝ち、だって?

じゃあ一夏くんが振り下ろしたのは当たっていない、いやその前にセシリアちゃんは反撃できる体勢じゃなかったはずだ。

 

「あのバカめ…。」

 

モニターに食いついて見る私の後ろで千冬先生が呆れたような声を出した。

それで私は何が起こったのかを把握した。たぶん一夏くんは雪片弐型にエネルギーを食い尽くされたのだろう。初めての武器ということもあり、エネルギー管理を忘れてガン攻めした結果だ。

ここがTRF‐Rなら画面見ろとか言われて煽られても仕方ないくらいには間抜けた負け方と言えるだろう。

 

でもまぁ、一夏くんは学習するだろうし、私との試合の時はそんな簡単には自滅しないだろう。

一筋縄じゃあいかないか。セシリアちゃんのお陰である程度の能力を確認できたのが幸いか…。

 

…さてと、あと十数分したら私の出番だ。

 

 

side out...

 

クラス代表を決める決闘の第2試合は織斑一夏の自滅という形で終了し、残すは南美対一夏の試合のみとなった。

 

 

 





南美から見た二人の試合という感じで書いてみました。

“分かり難いわ!”という方、すいません。

今回の書き方をフィードバックしまして、今後に活かしたいと思います。


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