今回は平均的な長さです。
では本編をどうぞ↓
「へぇ、南美って総合格闘技全中チャンプなんだ。」
「一夏くんこそ剣道競技で優勝でしょ?」
「お~、オリムーもミナミナも凄い~。」
ホームルーム終わりの休み時間、雑談を交わす南美、一夏、本音の3人にある人物が近寄る。
「ちょっとよろしくて?」
「なんだ?」
「うん?」
「ほえ?」
3人に投げ掛けられる声。それはどことなく育ちの良さを窺わせると同時に、彼女が心の内に含む高慢さを見せていた。
3人が声の主の方へ顔を向けると、そこには金髪縦ロールヘアの少女が多少機嫌が悪そうにしていた。
side 南美
「なんですの、その返事は? 私《ワタクシ》に話しかけられているのですからそれ相応の態度があるのではなくって?」
この言葉を聞いて私は確信した。この子は今の社会にありがちな女尊男卑の思想に染まった人だ。
ISが社会に出て女性が社会的に強くなった。けどそれは法整備でだ。決して女性自体が男性よりも強くなった訳じゃない。
でも、社会は歪んだ。行きすぎた女性優遇政策はそのまま女性の意識を塗り替え、今では女であることイコール偉いなんて言い出す人もいるらしい。
そんな人を私は同じ女として恥ずかしく思う。
確かに今の世界ではISを使えるという意味では偉い。けれどそれは一部のISパイロットが、だ。それも国防に携わる極々一部の…。
それなのにその他大勢の人達はISパイロットでもない、誰かから尊敬されるほどの何かを成し遂げた訳でも、そう至るまでの努力をしたわけでもないのに“女”であるという、たったそれだけの理由で偉ぶり、自分よりも努力している男を貶め、扱き下ろす。
そんなのは間違っている。
そんなこともあって私はこの手合いが苦手だ。一夏くんも同じらしい。
「ごめんな、オレってISパイロットとかには詳しくないんだ。だからキミのことを知らない。」
「まぁ!? 私の事を知らないですって?!」
縦ロールお嬢様は凄い驚いた顔をしている。あれぇ、この子何処かで…。う~んと、あれぇ、どこだっけ…。
なんて事を悩んでいると、縦ロールお嬢様が私の方に目を向けてきた。え? なんで?
「ねぇ貴女、私の名前を言ってくださらない?」
なんだその貴族風ジャギ様はっ!?
え~と、何だ? この質問をしてくるってことはジャギ様? いやない、それはない。ジード?ジャッカル?バイクのエンジン音?
よし取り敢えず北斗から離れよう、うん、そうしよう。
う~んと、あ、そうだ。見覚えあると思ったら実技試験の時にすれ違った子だ!
あの時とは服が違うから分からなかった。
で、肝心の名前が分からない…と。
「え~と、ツァギ?」
「セシリア・オルコットですわ!」
ほうほう、セシリア・オルコットさんね。覚えたよ。
なんとも貴族っぽい名前と顔立ちだなぁ…。
「で、そのセシリア・オルコットさんがオレに何の用事?」
「えぇそうでした。世界唯一の男性操縦者を見極めようと思いまして…。恐らくですがISについては素人でしょうし、それならば私が教えて差し上げようかと思いまして。出来ぬ者に教えるのもエリートの務め、ですから。」
「へぇ、エリートなんだ。」
「勿論でございますわ。このセシリア・オルコットはイギリスの国家代表候補生、選ばれたエリートなのですわ!」
大袈裟な身振り手振りを加えながら優雅に話す姿はとても絵になるなぁ。
ミュージカルでも見てるみたいだ。
「なぁオルコットさん、質問良いかな?」
「ええ、よろしくてよ。平民の質問に答えるのもまた貴族の務め、何でもどうぞ。」
貴族っぽいと思ってたらホントに貴族だった。なるほど、それであの髪型なのか。
て言うか。周りの女子みんな聞き耳立ててるよ。
「そのさ、代表候補生って何だ?」
─ズゴォ
聞き耳を立ててた子達の大半がずっこけた。いやぁ良いリアクションだねぇ。
「あ、貴方!それは本気で言ってますの!?」
セシリアちゃんが物凄い剣幕で一夏くんに詰め寄る。
おぉ、怖い怖い。
「あぁ、すまないけど知らないんだ。オルコットさんの言い方から凄いってのは分かるんだけどさ…。」
見栄を張らない。素直で良いね!
でもまぁ、ここら辺で助け船を出そう。
「一夏くんや、一夏くんや、漢字で考えてみて。」
「漢字で…?」
「そうそう。国家代表候補生を単語でバラすと?」
「えぇと、国家の代表の候補…。だよな? あぁ、そういうこと…。」
うん、分かってくれて助かるよ。
思ったけど、一夏くんって…いや、何も言うまい。
「お分かり頂けたかしら? 私は選ばれたエリートなのです。そんな私とクラスを共に出来るということだけでも幸運なのです。その事を自覚しておりますの?」
「あぁ、ラッキーだな。それで話を戻すけどさ、オルコットさんにはオレがどう見えてるんだ? 見極めるとか言ってたよな?」
一夏くんの言葉にセシリアちゃんの目がスッと鋭くなる。品物を鑑定する鑑定士のような目、一通り彼の事を観察し終えたセシリアちゃんは“ふぅ~ん…。”と小さく納得したように呟いた。
「野心…、それもそこらの小者が抱くような下らないものではありませんわね…。私が今まで見てきた軟弱な殿方とは違う、意志の強さを感じます。」
おぉ、そこまで気付くのか…。英国貴族、侮れんな…。
私も思ったことだ。一夏くんの目は頂点を目指す男の目をしていた。
たぶんだけど彼はかつて彼の姉、織斑千冬が到達したISの頂点を目指している。
「ふふふ、面白い殿方ですのね…。」
そう言ってセシリアちゃんは自分の席に戻って行った。
それと同じタイミングで千冬先生が入ってきた。もう次の授業なのか…。
「さて、授業を始める…が、その前に再来週に行われるクラス代表戦に出場するクラス代表を決めてもらう。」
千冬の言った“クラス代表”にみんなが首を傾げる。
いろいろと説明足らずな千冬先生の言葉に、山田先生が口を開いた。
「え~とですね、クラス代表はその名の通りクラスの代表さんなんですが、色々な雑務、そしてクラス対抗戦に出て、他のクラスの代表と試合をしてもらいます。」
「自薦、他薦問わない。誰かいないか?」
むむ、対抗戦かぁ…。試合経験が積めるのは良いけど、雑務は嫌だなぁ…。
「はい、織斑くんが良いと思います。」
「私も‼」
「右に同じです。」
おぉふ、ドンマイ一夏くん。
女の団結力は恐ろしいのぉ。まぁ、分かりやすいもんね。けどなぁ、対抗戦…、う~ん悩むな…。
「織斑しか候補に出ていないようだな、これ以上出ないなら織斑に決定す──」
「納得行きませんわっ!」
ダンッと物凄い音を立てて抗議する人が1名。この声はセシリアちゃんだね、うん、合ってた。
「オルコットか…、不満か?」
「ええ、クラス代表とはクラスの代表! 即ちクラスでもっとも実力のある者がなるべきです!!」
うん…? 実力、だって?
「ならばIS素人の織斑さんではなく、イギリス国家代表候補生の私が──」
「代表になるなら力を示せ…。セシリアちゃん、キミが言いたいのはそういうことでしょ?」
「えぇ、その通りですわ。」
急な私の発言にセシリアちゃんもビックリして、自分がちゃん呼びされてることも気付いてないね。
千冬先生は動じてないみたいだけど。さすがは世界最強。
「力こそ正義、良い言葉だよね! 私は好きだよ。それにさぁ、そんな事を言われたら私も立候補せざるを得ないじゃない…。」
私の言葉にセシリアちゃんの眉が少しだけ動いた。
まぁそうなるよね。この言い方だと暗に私の方が優れてるって言ってる風に聞こえるもんね。
「ふむ、それもそうだな。ならば推薦のあった織斑と立候補の北星、オルコットの3人で来週に決闘を行え。それで決める。織斑も異論は無いな?」
「勿論です、千冬ね、いや、織斑先生。決闘、上等じゃねぇか。」
一夏くんが立ち上がって私とセシリアちゃんの両方を見る。
闘志に満ちた目をしてるよ。面白い…。
「ふふふ、よろしいですわ。貴殿方に格の違いを教えて差し上げますわ。」
「良いぜ、かかってこいよ。」
二人ともヤル気充分って感じだね、やっぱりこうじゃないと。
「よし、代表決定の話はここまでだ。では授業を開始する。」
ふふ、来週が楽しみだね。
side out...
一夏くんのキャラが大分違いますね~。
それにセシリアちゃんも。
まぁ世紀末故に致し方なし。