IS世界に世紀末を持ち込む少女   作:地雷一等兵

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今回は平均的な長さです。

では本編をどうぞ↓


第16話 1年1組のホームルーム

IS学園とはその名の通り、ISについて学ぶ場所である。

ISは女性にしか操縦できないため、必然的にそこは女子校となる。

 

だがそこに異質な存在が一人…。

 

 

side 織斑一夏

 

 

はぁ…、何でこんなことに…。

いや、試験会場を間違えたオレの責任もあるけどさぁ。

もういいや、それよりもこの教室の空気をどうにかしたい。

 

なんなんだこの空気は…。周りの女子全員がこっちを見ている。

 

何でこんなに注目されてるんだよ…。

 

誰か助けてくれ、こんな重い空気はオレには耐えられない。

 

「ねぇねぇ、そこのキミ~。」

 

救世主現る!

隣の席の人が話し掛けて来てくれた。

 

隣の人は背が高くて、綺麗な人だった。でも、何処かで会ったような…。

 

「織斑一夏くんだよね? ひさしぶり、で良いかな?」

 

え、ひさしぶり…? こんな人とどこで会ったっけか…。全然覚えてないぞ?

向こうもそんなオレの様子を見てか、何かを思い付いたように手を叩いた。

 

「さすがに覚えてないか、あの一瞬だもんね。北星南美だよ、夏のレゾナンテで引ったくりを捕まえた時の。」

 

夏、レゾナンテ、引ったくり…。あぁ!!

 

「南美さん…!?」

 

「おお、覚えてた。」

 

あの時の女の子か…。それで見覚えがあったのか。

いや、でもビックリだ。

 

「いや~、ニュース見たときはビックリしたよ。まさかあの時に会った男の子がISを動かすとは思ってなかったからさぁ! キミ試験会場で何したのよ?」

 

「実はさ、会場間違えちゃって…。」

 

オレの言葉に南美さんはケタケタと笑う。うん、笑われても仕方ないね。

まさか高校試験の受験会場を間違えるなんて事をやらかしたからな。

 

「いやぁ~、笑わせてもらったよぉ。一夏くんって抜けてる所あるんだねぇ…。」

 

南美さんの目には笑いすぎでうっすらと涙が浮かんでる。そこまで笑われるとさすがに恥ずかしくなってくるぞ?

 

「南美さんはどうしてIS学園に?」

 

「南美で良いよぉ、同い年なんだしさ。えっとね、私がIS学園に来たのは妹との約束があるからなんだよ。」

 

「妹?」

 

「そう、妹。うちの妹ったら可愛いんだよ~。」

 

そう言って南美はスマホを取りだし、妹らしい女の子の画像を見せて来た。

 

確かに可愛い。画像を見せながら南美はこの子の可愛さについて語り始めた。

 

 

side out...

 

 

 

 

side 南美

 

 

いやー、一夏くんとこんなところで再会するとはねぇ、ビックリだよ。

ニュースで見たときも驚いたけど、まさか同じクラスになるとは、思ってなかったな。

 

それに私の妹愛を語ってもしっかり聞いてくれるし、ほんわ君さん以外で初めてかな?

 

けど、一番驚いたのは彼の変わり様だ。

初めて会った時とは比べ物にならないくらい雰囲気が違う、体格が違う。

それだけで彼があの時から今までどれ程の鍛練を積んだのか、予想がつく。

男子三日会わざれば刮目せよとはよく言ったものだ。

 

彼が全中剣道競技を優勝した時は“あぁ、頑張ったんだなぁ”くらいしか思わなかったけどこうして見ればそんな感想では失礼に思える。

 

恐らく生半可なものじゃなかっただろう。それこそ自分を限界までに追い込んで…。

 

その覇気、その瞳は間違いなく最強を目指す男のものだ。

 

なんて感慨に耽っていると、一夏くんが可愛い女の子に連行されて行った。

 

初日から逆ナンとは、さすがの色男ですな。

とか考えている最中に誰かが私の背中を指でつついた。

 

「ねぇねぇ、ミナミナ~。」

 

おぅ? なんだ、話しかけられているのかな…。

スッと後ろを振り向くとそこには袖をダルダルに余らせた小動物っぽい女の子。

 

「ミナミナって私のことかな?」

 

「そうだよ~、南美だからミナミナ。」

 

妙に間延びした口調で話すこの子。

今までの私の人生では初めて出会うタイプの子だ。

 

それもそうなんだよね、私の交遊関係って狭いからなぁ。クラスだと友達はあの3人、学校外だとTRF‐Rとジムだけだったからなぁ。

 

そりゃあこんなタイプは初めてですわ。

 

「わたしはねぇ布仏本音《ノホトケホンネ》だよ。」

 

「北星南美だよ、よろしくね。」

 

私が手を差し出すと、本音ちゃんも“よろしく~。”と良いながら手を伸ばした。

 

本音ちゃんとは良い友達になれそうな気がするよ。

 

暫くすると一夏くんと、一夏くんを連れ出した女の子が教室に戻ってきた。

 

あの女の子、見覚えがあると思ったら全中剣道競技女子の部の優勝者だ。

えぇと、名前は確か…、篠ノ之…箒さんだっけか?

 

決勝戦の映像は見たけど、彼女も凄まじかったなぁ。なんというか、こう、立ち塞がる者には容赦しないっていう気迫があった。

 

 

「みなさーん、席についてくださいね。ホームルームを始めますよ。」

 

入ってきた先生への第一印象は“幼い”だ。けれど先生をしているのだから年齢は私達よりも上なのは間違いない、まぁほんわ君さんと同じでかなり幼く見えるのだろう。本人はそれなりに気にしてるだろう。それで弄らないようにしないと…。

 

「え~と、皆さん全員いますね。私はこのクラスの副担任の山田真耶です。それじゃあ自己紹介をしてもらいます、出席番号順でお願いしますね。」

 

自己紹介かぁ、何を言おうかな?

なんかクラスの子達みんな育ちがよさそうで、格ゲーとか絶対馴染みがなさそう…。

 

う~ん…。

悩んでいると隣の一夏くんが立ち上がった。もう彼の番なのね、そう言えば苗字が織斑だったね。

 

「え~と、織斑一夏です。中学校で剣道をしてました。男子が一人しかいなくてアレですけど、迷惑を掛けないようにします。それでは1年間よろしくお願いします。」

 

そう言って一夏くんは頭を下げて席に座った。

 

さて、私の番かぁ…、何を喋ろう。最前列の席だから後ろを向いて…と。

 

「どうも、七ヶ星中学校出身の北星南美です。総合格闘技をやっています。この学校には武道系の部活が柔道と空手しかないのが残念ですが、もしよかったら誰か一緒に新しい部活を作りませんか? よろしくお願いします!」

 

うん、やりきった。

 

さーて、座りましょう…か、うん?

 

「なるほど、北星南美…。近くで見るとやはり違うな。良い体つきをしている、よくその年でここまで鍛えられたものだ、感心する。」

 

前を向いた私の正面には腕を組んで仁王立ちするスーツ姿の人。

 

私は、いや、世界中の人はこの人を知っている。

織斑千冬…、ISの初代世界王者…!!

 

山田先生は副担任、じゃあまさか私の担任って…。

 

「ん…? あぁ、もう座って良いぞ。」

 

じっと見つめる私の視線に気づいた千冬さん、いや千冬先生は私に着席を促した。

私はその言葉に従い座る。

 

「すまなかったな、山田先生。クラスへの挨拶を任せてしまって。」

 

「大丈夫ですよ、このくらい。」

 

千冬先生の謝罪に山田先生は笑顔で返事をした。仲が良い教師同士では説明できない何かがありそうな気がする…。

山田先生からの一方通行な気もするけど…。

 

「さて、私が1年間君たちの担任を務める織斑千冬だ。私の使命は若干15歳の君たちを16歳まで育てることだ。私の指導には全てイエスだ。文句があるなら実力で示せ、良いな?」

 

お、おう…、なんという独裁宣言。世紀末に染まってなきゃドン引きしちゃうね。

その証拠に他の子達は──

 

「「「キャアアアアアアッ!!!」」」

 

「千冬様よ!まさか生の千冬様にこうも早く会えるなんて!」

 

「私、千冬お姉様に会う為に南北海道から来ました!」

 

「私は北九州です!!」

 

それはそれは遠い所から…。

 

「ヒャッハー、千冬お姉様だぁ!」

 

っ!? 今モヒカンがいたような?!

 

て言うか、え? なんなのこの子達…。Mなの? キマシなの? 何でさっきの独裁宣言でそんなに盛り上がれるの?

悩んでいると千冬先生がバンバンと出席簿で教卓を叩いた。その瞬間クラスが静まる。

 

かなり訓練されたキマシ集団だなぁ…。

 

「まったく…。私のクラスにはバカしかいないのか?! それとも何か? 私のクラスにバカを集まるようにしているのか?」

 

あぁ、コレ、毎年恒例なんですね。御愁傷様です。

私は心の中で千冬先生に手を合わせた。

 

「もっと罵ってくださーい!」

 

「でも時には温もりを~。」

 

「そしてつけあがらないように躾てください!」

 

もう手遅れだ…。

千冬先生の胃が修羅勢を押さえるTAKUMAさん並みにストレスでマッハだ…。

 

「ホームルームはコレで終わりだ。次の授業に備えろ…。」

 

そう言って千冬先生は教室を出ていきました。

 

 

 

 

 

 





何となくですが、千冬さんなら普通に北斗南斗が使えそうな気がしてならないんですよね。

天将奔烈とか、剛掌波とか。


そして一夏くんがまともな自己紹介。
南美のお陰で緊張が解けたからでしょう。

新しい部活?
そんなの世紀末バスケ部に決まってるじゃないですか。



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