はい、お待たせいたしました。
今回はいつもより長めになっています。
では本編をどうぞ↓
クリスマスの夜、南美とほんわ君はデートを開始した。
「それじゃあノーサさ─」
“ノーサさん”そう言おうとしたほんわ君の唇に南美が人差し指を当てる。
「今日は大会とかじゃないので、南美って呼んでください。それに、私は年下ですから、敬語じゃなくても良いんですよ?」
「じゃ、じゃあ…南美…さん?」
「むぅ~、さん付けは止めてください。その…呼び捨てで構いませんから…。」
「あ、ごめんなさ…じゃなくて、ごめん。」
南美との馴れない言葉使いでの会話に戸惑いを見せるほんわ君を見て南美は優しく笑う。
「ふふ、良いですよ。行きましょう?」
「うん、どこに行く?」
「そうですね~。」
二人は手を繋ぎ、今後の予定を話しながら歩き出した。
その様子はとても仲睦まじく見え、傍からは中の良い姉弟にも見える。
買い物や食事を楽しみ、街のイルミネーションを一通り見終える頃にはもう充分に夜が更けていた。
二人は今、イルミネーションの見える広場の端でベンチに座りながら身を寄せあっていた。
「今日は楽しかったです。」
「僕も楽しかったよ。その、…誘ってくれて、あ、ありがとう…。」
ほんわ君の言葉に、南美は繋いでいる手に自然と力が入った。
その折に冷たい風が辺りに吹き、南美は寒さに身を震わせる。
「えっと、これ着て…。」
ほんわ君は自分の上着を南美に掛ける。
急に温かさに包まれ、南美ははっとしてほんわ君の方を向く。
「ほんわ君さん…?」
「僕なら大丈夫だよ、体は丈夫だからね。」
「春先に体調を崩した人が言っても説得力がありません。せめてこれだけでも…。」
そう言って南美はカバンの中からリボンの巻かれた包を取り出す。
そして手早くほどいて中身を出すと、それをほんわ君の首に巻いた。
「これって、手編みのマフラー…?」
「は、はい…。私からのクリスマスプレゼントです…。ちょっと不恰好で、恥ずかしいんですけど、これくらいしか思い付かなくて…。」
南美がほんわ君に渡したのは白い毛糸で編まれたマフラー。丁寧に編まれ、ところどころに不恰好なところがある、手作りの優しさが感じられる物だった。
「あの…、迷惑、でしたか…?」
「ううん、凄く嬉しいよ。ありがとう。」
困惑の色を浮かべる南美、けれどほんわ君は南美の心配事など無いように笑って見せた。
「それに、夢だったんだ。好きな人からこうして手作りの物をプレゼントされるのが…。」
「え…? ほんわ君さん、それってどういう…?」
何気なく呟かれた言葉に反応する。
南美の問いに、意を決したようにほんわ君は南美の肩を掴み、目を合わせた。そして多少の気恥ずかしさを見せながらほんわ君は口を開く。
「好きなんです。僕は北星南美のことが世界で一番大好きです。だから、僕と付き合ってください!」
この言葉を聞いた瞬間、南美の目から大粒の涙がポロポロと零れ、頬を伝った。
そして感極まった南美は周囲の目など気にせず、ほんわ君の胸に飛び込んだ。
「私も、私も好きです…。ほんわ君さんのことが大好きなんです…。いつもにこにこしてて、優しくて、気遣いができて、それでいてゲームをすると格好いいほんわ君さんが大好きなんです。誰にも取られたくないくらいに…!」
「じゃあ…。」
「はい…。こんな私で良ければお願いします…。」
涙を目に湛えながら南美は上目遣いでそう言った。
side ほんわ君
「はい…。こんな私で良ければお願いします…。」
この言葉を聞いた時、僕はとても嬉しくなった。
もう死んでも良いやと思えてしまう一方で、もっと生きて一緒にいたいとも思う。
そして、上目遣いでこっちを見てくる彼女が、とても愛しく見えて、僕は思わずその唇を奪った。
「ん…、ちゅ、ん、ほん…わ、くん…しゃん…?」
口から漏れる彼女の声がより一層僕の感情を煽る。
理屈じゃ無かった。
本能から彼女のことが好きだ。
“女の子らしくない”
それは彼女がいつも気にしていることだ。でも目の前にいるこの子はどうだろう、こんな子が女の子らしくないだって?
そんなわけない、想いを伝えあって、嬉しくて泣くような子が女の子らしくないはずが。
僕の想いを伝えるように、僕は周りの目なんか気にせず力強く彼女を抱き締めた。
side out...
side 南美
好きだって言ってくれた、こんな女の子らしくない私のことを。ずっと好きだった人が。
それだけで私の体は火が着いたみたいに熱くなった。
もう周りの目なんかどうでも良い。今はこの人をもっと近くで感じたい。それだけだった。
そう思って私は彼の胸元に飛び込む。
そんな私の行動に驚きもせず、ほんわ君さんは受け止めてくれた。それはまるでどんな私でも受け入れると言ってくれたみたいで、また嬉しくなった。
顔を上げて彼を見つめていると不意に唇を奪われた。
けれどイヤじゃなかった。
むしろとても心地が良い。ほんわ君さんに求められていると思うと胸がキュンとなって、また体が熱くなる。
ほんわ君さんの舌が私の舌と絡む。
情熱的なキス、力強くて、それでいて優しいそれはとてもほんわ君さんらしかった。
キスが終わると力強く抱き締められた。
こうしているとほんわ君さんがいることを実感できて、とても気分が安らいだ。
side out...
駅前広場の隅でお互いの気持ちを確認しあった二人は冷静さを取り戻すと、人前で大胆になってしまった恥ずかしさから逃げるようにその場を去った。
そして行き着いた先はほんわ君の部屋だった。
「ご、ごごご、ごめん、勢いで僕の部屋まで…。」
混乱した様子で謝るほんわ君。その隣には南美が座っていた。
南美はほんわ君の手に自身の手を添えると、彼の耳元で優しく囁く。
「良いんですよ、私は凄い嬉しかったんです。今でも夢なんじゃないかって、そう思えてしまうくらいに…。」
「夢なんかじゃないよ。」
南美の言葉にほんわ君ははっきりと返す。
その返答に南美は薄く笑みを溢す。
「はい…、だから夢じゃないって、証明してください。もっと、私がほんわ君さんの恋人なんだって…。」
そう言って南美は自身の唇をほんわ君の唇に重ねる。
互いの舌が絡み合い、微かに水音を立てる。
キスは暫く続き、南美がやっと離れると、二人の口からは銀の橋が伸びていた。
「でも、そろそろ帰らないとダメなんじゃ…。」
「ふふ、大丈夫です。親には今日、友達の家に泊まるって言ってあるんですから…。」
年齢とは不釣り合いなほど艶っぽい笑みを浮かべる南美、その顔にほんわ君の理性は崩壊を迎えそうになっていた。
「だから、今夜はほんわ君さんを感じさせてください。その温かさを、もっと間近で…。」
そう言って南美は纏っている衣服を脱ぎ始めた。
1枚、また1枚と脱ぐ度に彼女の芸術品のような艶やかな肢体が露になる。
白く、キメの細かい肌はほんのりと紅潮し、妖艶さを醸し出していた。
そして全ての服を脱ぎ捨てた彼女はほんわ君に顔を寄せる。
「それとも、私には…、魅力ないですか…?」
「っ、そんなことない!!」
ぽつりと呟かれた彼女の言葉を否定するようにほんわ君は南美を押し倒した。
「…良いんですよ、ほんわ君さん。来てください。」
「南美…ちゃん…。」
肌を重ね、二人はまたキスをする。
「ちゅっ…、ん、はむ、ん…ちゅ、しゅきです。らいしゅきです…。」
「ん、ちゅっ…、南美、ぼくも、んんっ。」
とてもとても熱いキス、二人は時間も忘れて互いの唇を啄んでいく。
長く、ゆったりとしたキスを終えると、南美の顔はすっかり蕩けていた。
「ほんわ君さん…、私、その、初めて…、だから…。」
「うん、出来るだけ優しくするね…。」
──────
───
──
─
「っ……⁉」
「ごめん、痛いよね…?」
経験した事のない痛みに南美の顔が歪む、そんな彼女を安心させるようにほんわ君は彼女の頭を撫でる。
「だい、じょう…ぶ、だから、続けて…。」
気丈に振る舞ってはいるが、南美は腕に力を込め、ほんわ君の背に爪を立てている。
ほんわ君もその背の痛みを通して彼女が今味わっている痛みの一部を思い知っていた。
「南美、好き…。大好きだよ。」
「私も…、好き…。ねぇ、キス…して…?」
「うん…。ちゅ…。」
繋がったまま二人は熱いキスをした。
─
──
───
────
「ごめん、痛かったよね…。」
「…でも、それ以上に嬉しかったです。」
二人にとっての初めてを終えた後、彼らは布団の中で手を握りあっていた。
「僕も嬉しかったよ。…ねぇ、南美…ちゃん?」
「もぅ…、さっきは“南美”って呼んでくれたじゃないですか…。」
「じゃ、じゃあ…、南美…。」
「はい、何ですか?」
「好きだよ…。」
「私もです。」
お互いの気持ちを再度伝えあった二人はもう一度キスを交わす。
そして心地良い疲労感と共に微睡みに身を任せ、体を寄せ合いながら眠るのだった。
───翌日
side ほんわ君
朝の日差しの眩しさで目を覚ます。
隣にはまだ規則的な寝息を立てて眠っているノーサさん、いや恋人の南美がいる。
昨日の事が夢じゃ無かった事を実感して思わず口角が上がり、頬が緩む。ヤバい、この顔は確実にカセンさんに弄られるヤツだ…。
でも、カセンさんには後でお礼に行かないと…。こうして南美と結ばれたのはカセンさんの助けがあってこそだった。
side out...
side 南美
ん…、もう、朝なの…?
窓から差し込む光で目を覚ました。けど目の前の天井はいつもと違う、見慣れないもの。
ここはどこだったかを思い出そうとした時にほんわ君さんの顔が見えて、昨日の事を思い出した。
そうだった、私はやっとほんわ君さんと結ばれたんだ…。
思い返すと凄く嬉しくて今でもにやけちゃう…。
この顔はカセンさんに見られたら一発で何かあったか見抜かれる顔だ…。
あ、でもカセンさんには報告しないと…。
色々なアドバイスも貰ったし、一番先に報告しなきゃいけないと思う。
side out...
─TRF‐R事務室
晴れて結ばれた二人はその旨をカセンに伝えるべく、TRF‐Rを訪れた。
「取り敢えず、二人ともおめでとうと言わせておくれよ。よかったねぇノーサ、ほんわ。」
「あ、ありがとうございます。カセンさんのお陰で私はほんわ君さんと結ばれました。」
「ぼ、僕からも言わせてください、ありがとうございます!!」
二人は揃って頭を下げた。
その様子にカセンは微笑ましい物を見るような顔を浮かべる。
「まぁ、鈍感なアンタらが恋仲になったんなら、仲人のアタシもやっと一息つけるってもんだよ。全く相思相愛に気づかないとはねぇ…。」
カセンは大きく溜め息をつき、禁煙パイポをくわえ直す。
その苦言に二人は“あはは”と苦笑いするしかなかった。
「過ぎたことは仕方ないし、良いとして…。頑張んなよほんわ、自分の女に女としての悦びを教えんのも男の勤め…だからねぇ。」
「うえぇ!?」
「ふぇ?!」
「何だい、もう致しちまったのかい? ほんわぁ、アンタ見かけによらず手が早いねぇ…。」
初心な二人の反応にカセンはクスクスと小さく笑う。
3人がそんな風なやり取りをしていると、事務室の入り口からぼそぼそと小さな音がした。
「…まぁ、ほんわ、気張りなよ。ノーサを泣かせたら只じゃおかないからねぇ。」
そう言ってカセンは二人の間を通り抜け、事務室の入り口のドアノブに手を掛ける。
「そうだろう、アンタたち…。」
そう言うとカセンは一気にドアを開けた。
すると急に開いた空間にモヒカン達がなだれ込んだ。
「出歯亀とは感心しないねぇ…。ノーサが心配なのも分かるけども盗み聞きは良い趣味じゃないよ。よく言うだろう? “人の恋路を邪魔する輩は秘孔を突かれて爆発四散”ってさぁ…。」
(モヒ・ω・)<そ、それはどういう…。
(モヒ´Д`)<ことでしょうか…?
混乱を見せるモヒカン達に分からせるようにカセンは顎をしゃくって自身の背後を示す。
そこには世紀末覇者の如きオーラを纏う南美がいた。
「貴様ら生きては返さんぞ…。」
(モヒ゜Д゜)<ひ、ひぃぃいい?!!
(モヒ・∀・)<い、命だけはお助けを!!
「…許さん。」
(モヒカン)<嫌だぁあああああ!!!
(眉゜Д゜)<だからやめとけって言ったのによ。
(こ・ω・)<葬儀屋が儲かるね~。
(Ki・д・)<ノーサ=サンを怒らせてはいけまセン。
(*´ω`*)<まったくだ…。
(眉゜Д゜)<つーかほんわ、ホントにノーサでよかったのか?
(こ・ω・)<引き返すなら今のうちだぜ?
(TA・Д・)<リアルファイト全一と付き合う、後悔はねぇな?
「勿論ですよ。僕はノーサさんのああいうところも含めて大好きですから。」
(眉゜Д゜)<お、おう…。
(*´ω`*)<オレのブラックコーヒーが甘いんだけど…。
(Ki・д・)<ご馳走様デス。
クリスマスの翌日、TRF‐Rではモヒカン達はトマトケチャップにまみれ、修羅達には砂糖が振る舞われたという。
こうなってしまいました。
“こういうのはイヤ”派の皆さん、すいません。
こうならないようにしていたんですが、しっくり来なくて、何回も書き直すうちに自然とこんな展開になってしまいました。
それと補足ですが、ほんわ君の名前(店員ネーム)は“ほんわ君”です。だからくん付けだとほんわ君くんになります。
後、カセンとほんわ君は同い年ですが、正規店員としてはほんわ君が2年先輩です。
どういうことかと言いますと、
ほんわ君→高校一年生からTRF‐Rのアルバイト、高校卒業後にそのまま正規店員として雇用される。
カセン→高校一年生から(ほんわ君とほぼ同じタイミングで)TRF‐Rにてアルバイトを始める、卒業後は短大に進学。在学中もアルバイトは継続、卒業後はTRF‐Rに正規店員として雇用される。
つまりアルバイト時代から言えば同期なんですが、進学による時差が発生しただけです。
それと、余談ですが、次か、次の次辺りで原作編に突入しちゃいます。
大体こんな感じというプロットとかキャラに言わせる決め台詞みたいなのも考えてあります。
次章予告みたいな感じで先取りしたい方はいますか?
もしいたら次章予告を出しますが…。