今回はちょっと短いです。
では本編をどうぞ↓
12月25日、そうクリスマスである。
恋人同士がキャッキャウフフしたり、子供達がプレゼントに目を輝かせる日だ。
そんなクリスマスの夜にレゾナンスから徒歩5分の居酒屋“Go-Sho-Ha”では…
(眉゜Д゜)<リア充ども爆発しろやぁ!!
(モヒ・ω・)<ま、眉毛さん落ち着いて!
(モヒ・Д・)<そうっすよ。
(眉゜Д゜)<何でクリスマスに野郎だけで集まって酒を飲まなきゃなんねぇんだよぉぉおおお!!?
(モヒ・∀・)<仕方ないっすよ、ノーサちゃんは2月の一件(第7話参照)以来マジで警戒心剥き出しですからね。
(モヒ゜Д゜)<俺らが側にいると本心からデートが楽しめないんじゃないかと思いまして…。
(モヒ・ω・)<これもノーサちゃんの幸せの為だと思って我慢してください。
(眉゜Д゜)<ああああ、彼女欲しい~!
(*´ω`*)<来年こそは!
(こ・ω・)<必ずや彼女を!
独り身の修羅達が管を巻いていた。
その頃、駅前では…。
「あ、ノーサさーん、こっちです、ここです!」
ほんわ君の呼び掛けで彼を見つけた南美がほんわ君に駆け寄る。
その格好はいつもの残念美人な彼女や、ボーイッシュな姿でもなく、しっかりと女の子らしさを全面に押し出していた。
「ほんわ君さん、ごめんなさい待たせましたよね?」
「いえ、大丈夫ですよ。僕も今来たばかりですから。」
「そ、そうですか…? それなら良いんですけど…。」
心配そうな表情を浮かべる南美。ほんわ君はその心情を察してか、彼女の手を握り引っ張る。
「早速行きましょう、ほら。」
そんなほんわ君の優しい気遣いに気付いてか気付かずか、南美の顔には笑みが戻っていた。
「はい、楽しみましょう。」
─前日 南美side
「つ、つつつ、遂に明日、ほんわ君さんとデートなんです。カセン師匠、アドバイスをください!」
TRF‐Rの事務室にて、椅子に腰掛けるカセンの前で地べたに土下座するノーサの姿があった。
「アタシは別にあんたの師匠じゃないんだけどねぇ…。」
土下座するノーサを見て呆れたような声を出すカセンはデスクに置かれた灰皿でタバコの火を揉み消した。
「そんなこと言わないでください! 力になってくれるって言ってたじゃないですかぁ!」
カセンの言葉を聞いてすがり付くようにノーサはカセンの膝にしがみつく。
彼女の顔はまさに必死と言うべきもので、目もとにはうっすらと涙が張っていた。
「あぁもう、引っ付かないでおくれよ。アタシは師匠って言葉を否定しただけじゃないか、協力しないとは言ってないよ。ちゃんと約束は果たすし、協力するよ。」
「うぅ、ありがとうございます。」
「全くもう。ほら、顔を上げな。こんなに泣いて…、可愛い顔が台無しじゃあないか。」
カセンは椅子から降り、ノーサと目線の高さを合わせる。そして懐からハンカチを取りだし、えぐえぐと泣きじゃくるノーサの目もとを軽く拭ってやる。
「落ち着いたかい?」
「はい、お見苦しいところをお見せしてすいません…。」
落ち着きを取り戻したノーサはカセンと向かい合う形で椅子に座らされた。
もちろんその正面には禁煙パイポをくわえたカセンが脚を組んで座っている。
「はっきり言って、アタシが出来るアドバイスなんざもうほとんど無いよ。」
「うえぇ!? ど、どういうことですか?!」
カセンの言葉にガタッと立ち上がりノーサが詰め寄る。カセンはそれを宥めるように手を前に出した。
「落ち着きな、何もしないって訳じゃないのさ。ただねぇこっから先はアドバイスもクソもないんだよ。」
「どういう…?」
「あんたのことだからねぇ、今年のクリスマスで決めるつもりなんだろう? IS学園に入学しちまったら滅多に会えなくなるからねぇ。」
ノーサ、いや北星南美は中学卒業後、ISについて学ぶため、ISの実力を高めるためにIS専門の学校、IS学園に入学するつもりでいた。
このIS学園は全寮制であり、入学した場合、南美は今よりもTRF‐Rに来れなくなるのだ。
それはつまり、ほんわ君と会える機会が減るということ。
「だからあんたが今年のうちにあのバカと良い仲になりたいのは分かるよ。だったら尚のこと、あんたらしく行かないとねぇ…。」
そう言ってカセンは笑った。
─前日 ほんわ君side
「カセンさん、僕にアドバイスをください!」
TRF‐Rの営業時間終了後、ほんわ君は恥も外聞もなく土下座していた。
「構わないけどさぁ…、あんた男としてのプライドは無いのかい? 」
土下座するほんわ君を横目に見ながらカセンはTRF‐R店員の証であり、制服でもあるエプロンをハンガーに吊るし、ハンガーラックに掛ける。
「ノーサさんと恋仲になれるのなら、この程度…。」
「何でこんな時に格ゲーやってる時と同じモードになってんのさ。まぁアドバイスはしてやるけどさぁ。」
「ありがとうございます!!」
土下座し続けるほんわ君に半ば呆れたようなカセンは、ハンガーをラックに掛け終えるとタバコをくわえ、椅子に座った。
(全く…。ノーサとほんわは相思相愛だってのに、何だってアタシがこんなことに…。お互い好きあってるのに気づかないとはねぇ…。)
ワシャワシャと髪を掻き、溜め息を漏らす。
カセンの内心は鈍感な二人への呆れでいっぱいだった。
「ほんわも分かってんだろ? 明日を逃せばチャンスは激減するってさぁ…。」
「はい、ノーサさんがIS学園を受験することも、合格出来るくらい彼女の成績が良いのも、全て分かっています。」
土下座した格好のまま、ほんわ君は話す。
「だったらもう、決めるしかないだろう、腹を決めなよ。」
「はい…。」
─駅前広場
((今日でなんとかしなきゃ!!))
南美とほんわ君の心の内は一緒だった。
こうして二人のデートが始まった。
次回に続きます。