IS世界に世紀末を持ち込む少女   作:地雷一等兵

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これで「IS世界に世紀末を持ち込む少女」第1部は完結となります!
この話の後に、まとめのエピローグを挟んで第2部となります!


第159話 彼女達の晴れ舞台

 

 

 

 

第5回モンド・グロッソから3年の月日は流れ、このときが来た。第6回モンド・グロッソ、IS乗りたち全員の目指す高みの世界だ。

開催地は日本、IS学園のある国であり、IS開発者の出身地ということもあり。例年よりもさらなる盛り上がりを見せている。だがしかしそれだけではない。

もう一つの理由があったのだ。

 

 

『さぁさぁさぁさぁ!! ついにこの時が来たぜ野郎どもよぉおおお!!!』

 

ここは東京、日本で一番広く大きなISアリーナ。実況席でマイクを握っているのはあの織斑世代と言われる世代のIS学園卒業生、元報道部の姫海堂だ。

熱のこもった彼女の言葉に会場に押しかけた人々は大きな声を張り上げる。

 

『この時を待ってたか!てめぇらぁ!!』

 

「「「うぉおおおおおお!!!」」」

 

『そうだよなぁ!私もそうだ!!IS学園にいたときから、この時をよぉ!待ってたぜ!!』

 

「「「うぉおおおおお!!俺らもだぁあああ!!!」」」

 

姫海堂の言葉に観客たちは更に大きな声を張り上げてアリーナを揺らす。もう待ちきれないとばかりに会場の至る所で叫ぶ声が響く。その声に共感した観衆が続くように声を張り上げる。

その意を汲んだ姫海堂が頷いて次の言葉を紡ぐ。

 

『それならよぉ!!もう待ちきれねぇ、奴らを呼ぶぞ!!!』

 

「「「いぇえええええええっ!!!」」」

 

姫海堂の言葉に反応してか、アリーナの低空でスモークが噴出し、視界を覆う。

 

『先陣を切るのはまずはコイツだぁ! 小柄な少女と侮るなかれ!鍛え抜かれたその肉体、その技術!百戦錬磨の格闘家!! 中国代表、甲龍……凰鈴音!!!』

 

「ぃいっよっしゃぁああ!!」

 

スモークで作られた白い地面を雄叫びとともに切り裂いて、赤黒い装甲を身に纏った鈴音が姿を現した。

その彼女の雄々しい姿に観客席の一部からエールを送る叫びが響く。

その声に応えるように鈴音は数回ほど宙を旋回してみせる。

 

『相変わらず派手好きだなぁ!!次だぁ!! 見た目は変わんねぇ!!変わったのはその覚悟!国家代表から譲り受けた最強装備をドレス代わりに、今日の舞台はモンド・グロッソ!イギリス代表、ブルー・ティアーズ・アーカード! セシリアァアアっ!オォルゥコットォオオ!!』

 

姫海堂の言葉、それを合図に現れると思っていた観客は地面を覆う白いスモークに注目する。しかしそれとは逆に彼女は上空から現れた。

深紅の鮮やかな装甲は光を反射してその美しさを見せ付ける。

アリーナに向かって垂直に高速で降下するセシリア、このままでは地面に激突する、観客達がそう思った瞬間にふわりとセシリアは体の向きを反転させて地面スレスレで停止する。

その衝撃で周りのスモークを吹き飛ばす。余裕綽々な表情のまま優雅に振る舞うセシリア、自慢の金髪を撫で周囲に視線を向ける。

 

『くぅうう!!痺れるぅ! 続いてコイツだぁ!! 久々に会ったら背が伸びててドキっとしたぜ!!在学中はファンクラブ凄かったよなぁ!! フランス代表!ラファール・リヴァイブ・カスタム・トロワ!シャルル・デュノア!!!』

 

「「「キャァアアアアアっ!!」」」

 

一際大きな黄色い声援を受けてシャルが姿を現した。IS学園にいたときよりも背は伸び、中性的な見た目に拍車がかかっており一層“貴公子”の二つ名が似合うようになっている。

あのときと変わらない、専用機を身につけて落ち付いた様子でアリーナを飛ぶ彼女の姿は観客の瞳を惹きつける。

 

『かぁああ!キザだねぇ!いかしてるぜ、シャル!次はコイツだ! “私は天才だ!”その言葉は真実だったぜ!私はあのときの戦いを忘れてねぇ! 日本代表、玉鋼! 更識簪ぃい!!』

 

「はーはっはぁ!!」

 

姫海堂のアナウンスが終わるといつもの笑い声を響かせながら簪が登場する。要塞を思わせるあの重厚な装甲で全身を包み込んだ簪はブースターの大きな爆音を轟かす。

祝砲のように空砲を上空に向かって一発、二発と打ち上げた簪は小さくブースターをふかしてシャルの隣に移動する。

 

『変わんねぇ!!嬉しいぜ!! 次はドイツだ!こいつだ!! お前いつの間に結婚したんだよ!自分のことみたいにうれしかったよ! さぁ幸せ奥様、腕は鈍ってないだろなぁ!! ドイツ代表!黒い雨(シュバルツェア・レーゲン)! ラウラ・ボーデヴィッヒ!!』

 

「ふん……!!」

 

シュパァッとキレのいい音を響かせながらカタパルトを飛び出し、空中を旋回したラウラは不敵な笑みを浮かべていた。

自信に満ちているとはまた違う、充足した笑顔だ。

 

『さぁて!!お次はこいつ!! 入学そうそう生徒会長に喧嘩を売った超大物! あのときの言葉、“闘技場の覇者”を越えるって大言を実現させたロックな野郎の登場だぁ! アメリカ代表! フィードバック! ウィレミア=(ロドニー)=(ジャック)=ゴールディング!!』

 

「最強は、このウィレミアだぁ!!」

 

彼女は両腕が武装と直結しているとう独特な、武器腕とも言われる武装による特徴的なシルエットの機体を乗り回す。

IS学園でも1、2を争う跳ねっ返り娘が姿を現した。かつての無謀と周りから言われていた言葉、それを遂に実現させてこの舞台へと乗り込んできた。

 

『Cooooooool!つーぎは、こーいつだぁ!! 立てば芍薬、座れば牡丹! 戦う姿は彼岸花!! 真っ赤な体を奮わせて、今日も戦うお嬢様! あのドラゴンを退けて代表になったって聞いた時はビビったぜ!! スペイン代表! 赤い鳥(パハロ・ロッホ)! セサルぅ!!ヴェニィデェッ!!』

 

「よろしく頼むぞ!」

 

翼を、巨大な鳥を思わせる機体が空を駆け、セサルがアリーナに降り立った。

高潔さを湛えた瞳は真っ直ぐに目の前のライバルたちを見据えている。

 

『お嬢!頑張ってくれよぉ!お次は型破りなコイツだぁ! この大会に出るために、代表候補生の国籍移籍って偉業を成し遂げた愛すべきバカ!恋する乙女は止まらない!香港代表! 漆虎! 王春花!!』

 

「婚活戦士は止まらないのだぁ!!」

 

ビュンっと音を鳴らしながら空を飛んでいた春花がふわりと着地し、演舞を披露する。

ピンと体に一本の筋を通したような、キレのある演舞は見る者の目を惹き付けた。

 

「いいねいいねー!この場にヴィートがいないのが悔やまれるぜ!さすがにスミカさんの壁は高かったと見えるぜ!

んじゃあ!お次だぁ!サムライガール!油断してたら二振りの刀で三枚卸しだぜ! 開催地枠! 紅椿! 篠ノ之箒ぃ!!」

 

「ふっ……!」

 

姫海堂の紹介を受けて、いつもと変わらない深紅の機体を駆るポニテの彼女がカタパルトから飛び出した。

腰には唯一の武装とも言える一対の刀を帯びている。

 

『いいねいいねー!くぁっこいいぜ!!そいじゃあ、次の紹介だぁ!』

 

『お次はあの男!唯一の男性操縦士!織斑千冬の実の弟!最強を継ぐために剣を握った剣士、国際IS委員会選抜代表!!織斑ぁ!一夏ぁ!!』

 

「うぉぉぉっ!!」

 

どひゃあっ!といつ独特なブースト音を鳴らしながら宙を舞い、墜落するかのような速度でアリーナへと降り立った甲冑、白い鎧武者がそこにはいた。

カチャカチャと鎧の音を鳴らしながら、アリーナにて待つ友の元へと歩み寄るその姿は、まだ幼さの残っていた学園時代とは違う、本物の男として、一人前の戦士としての誇りが滲んでいる。

 

「よぉ、久しぶりだなみんな。」

 

雰囲気が変わろうとも、中身はあのときの一夏で、気さくにライバル達へと声を掛ける。その姿にかつての級友たちは思わず頬を緩ませた。

次々と紹介される選手たち。楯無はもちろん、スミカ・ユーティライネンといった往年の代表も現れる。

そして、彼ら、彼女らは一様に最後の一人が出てくるであろうカタパルトへと目を向けた。

 

「最後はコイツだぁ!!私ら世代のヤベーイ奴! 国際企業連盟選抜代表! 最強の格闘家の血を引く女!我こそ最強! 北星ぃ南美ぃ!!」

 

「「「ヴォー!!!ノーサァァァア!!」」」

 

南美の名がアナウンスされれば、会場の一角から割れんばかりの大歓声が鳴り響き、彼らの女王を出迎える。

IS学園に入学し、その意識で周りに多大な影響を残した女、自らが最強であることを目指した女、同じ専用機持ちたちと共に研磨しあい、業を磨き続けてきた、自称最強の格闘家、北星南美の登場である。

 

「イィィッヤァッフゥゥゥゥゥ!!」

 

こうして、織斑世代と呼ばれたIS学園最強の面子がモンド・グロッソの会場へと出揃うのであった。

 

 

 

―時は流れ、数年後…ある一人の女性がペラリ、ペラリとアルバムをめくり、そこに納められた写真の1つ1つを眺めていた。

そして、あるページに差し掛かったところで、その指が止まる。マジックで「第6回モンド・グロッソ」と右上に書かれたページだった。そこに写るのは色とりどりの専用機とそれを身につけたパイロットたち。

ページの中央にはトロフィーを大きく掲げる少女と、それを祝福するように寄り添う親友たちを写した写真が貼られていた。

 

 

 

 

 


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