IS世界に世紀末を持ち込む少女   作:地雷一等兵

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前回の投稿が一月前……、本当に申し訳ありませんでしたぁ!!


では本編をどうぞ↓


第147話 トラウマ再び

 

 

 

「大丈夫大丈夫大丈夫ダイジョウブダイジョウブ……、あのときとは違うんだ、もう負けないんだ……。」

 

レンと春花の試合から40分が過ぎた後、アリーナの抉れた地面も元通りとなり、Bブロック1回戦の第1試合を迎える。

アリーナの中ではガタガタと小刻みに体を震わせながら恐怖に打ち勝とうと必死に自分に言い聞かせているウィレミアがいた。

 

「そうだよ。このフィードバックの性能を発揮すれば負けることはないんだ!」

 

「……、吹っ切れたようですね。」

 

自己暗示を終えたウィレミアの目の前にアーカードを身に纏ったセシリアが降り立った。

それでもウィレミアは恐怖に負けず、平常心を保っている。

 

「相変わらずド派手な色だな。目が痛いぜ。」

 

「ふふ、鮮やかでしょう? まるで血の色のように……。」

 

笑顔を浮かべながら二丁の拳銃を構えるセシリアにウィレミアはふんと鼻を鳴らした。

武器内蔵型の両腕に視線を写した彼女はふぅと小さく息を吐き、セシリアから距離を取る。

 

「もう負けねぇぞ! 覚悟しやがれ!!」

 

「やってみろ……。」

 

威勢よく言葉を放つウィレミアを見てセシリアはニィと笑う。

その笑顔は普段の淑女然としたものではなく、獰猛な肉食獣を思わせる。

しかしその程度で怯むことはなくなったウィレミアはバズーカを構えて迎撃の姿勢を整える。そして開幕のブザーと共に高機動(ハイアクト)ミサイルを撃つ。

 

「今までのオレとは違うぜぇ!!」

 

「行け、ティンダロス。」

 

高機動ミサイルの弾幕に対してセシリアはあの猟犬を呼び出して応戦する。

呼び出された猟犬はところ狭しと走り回り、そのミサイルを壊していく。そうしてセシリアを囲むように放たれたミサイルは、一度もセシリアの体に触れることなく爆発し爆炎を上げる。

 

「ジャッカル、頼みましたよ。」

 

セシリアは両手に持つ拳銃を構えて引き金を引く。銃口から放たれるのは1発1発が強力無比な威力を誇る特別製の弾丸であり、その威力を身をもって体験しているウィレミアはその瞬間に回避体勢に移る。

 

「逃げてばかりですの?」

 

「まさかよ。」

 

その場で旋回しながら逃げるウィレミアを視界に捉えているセシリアに対して彼女は笑う。

その視線はセシリアの足元に向いており、その視線に釣られて警戒は保ったままセシリアは足元に目を向ける。

 

「っ! ボムッ!?」

 

「ヒャッハー! 食らいやがれ!」

 

セシリアが足元の爆弾を認識した瞬間にカチリと言う音と同時に爆弾し土煙が舞い上がる。

そしてそれと同時にウィレミアが煙の中心に向けて両腕のバズーカを何発も撃ち込んでいく。

 

「燃え尽きるがいい! そしてオレに道を譲って貰うぜ!!」

 

土煙の向こうにいるであろうセシリアに向けて放たれる砲弾で視界は更に狭くなる。

そしてその煙の中からやり返すように銃弾の雨が飛び出してきた。

 

「ちっ! やっぱりまだ生きてるか。」

 

「ふふふ……。」

 

ほぼ無傷の姿で土煙の中から姿を現したセシリアは不敵に笑いながら拳銃の引き金を引く。

すっと真っ直ぐに立ちながら淡々と引き金を引いて銃弾を放ち続ける彼女の姿には恐怖心を駆り立てる何かがあった。

 

「……ターミネーターかなんかかよ。」

 

苦虫を噛み潰したような顔になりながらウィレミアは無傷のセシリアに向けて砲弾を放つ。

しかしそれすらもセシリアは銃弾で撃ち落とし、寄せ付けない。ただ彼女はそこに立ち優雅に引き金を引くのみである。

 

「さぁ、もっと……、もっと撃って来なさい。」

 

「上等だコラ!」

 

涼しげな顔をしたまま煽ると、その挑発に乗ったウィレミアが背部のミサイルを全弾撃ち出した。

それぞれが複雑な軌道を描いてセシリアへと迫る。全方位、360度、視角なく迫るその砲弾に対してセシリアは眉一つ動かさずに見据えていた。

そして砲弾が直撃する直前に彼女の背中から赤黒い流動体が流れ出す。

 

「よっしゃあっ!! これなら流石に死んだろぉ!!」

 

結果は直撃。セシリアは避けることもせずにその大量に降り注ぐ砲弾を受け入れる。搭載された火薬による爆発によってアリーナの土が舞い上がり、彼女の姿を覆い隠す。

 

 

 

「……なんで避けなかったんだ?」

 

「…………アーカードのシールドエネルギーは減っていないぞ。」

 

「避ける必要もないってこと?」

 

端末とモニターを交互に眺めていた専用機組の面々は驚愕の表情を浮かべる。ミサイルの攻撃すら今のセシリアにとっては取るに足らないものなのかと、一同は息を吐いた。

 

「装甲には傷もついていない、つまり装甲以外の何かによってウィレミアの攻撃が防がれたと見るべきか。」

 

「あの時のセシリアは拳銃を構えもしなかったよな。ってことは打ち落としてもいない、か。」

 

「バリア的な何かを展開したとか?」

 

「あり得るわね、十二分に……。」

 

ウィレミアを実験台にアーカードの能力を彼らは冷静に考察する。

恐らくの推論は立つものの、それに確信が持てない彼女らはそこで思考を一時止めて試合へと意識を戻す。

画面には未だ無傷で拳銃の引き金を引き続けるセシリアとミサイルを撃ちながら高速で飛び回るウィレミアが映る。

 

 

「さぁ、どうした? それで終わりか?」

 

「畜生……、どうなってやがる!」

 

どれだけ砲弾を撃ち込もうとそれが通用しないどこか、その倍の量の銃弾を撃ち返される恐怖にウィレミアは怯えながらも攻撃の手を止めない。

しかしそれすらも受け流していくセシリアは口角を上げ、満面の笑みを浮かべた。

 

「さぁ、フィナーレだ。」

 

「っ!?」

 

「豚のような悲鳴を上げろ……!」

 

口角を吊り上げたまま歯を見せて笑うセシリアに言い知れぬ恐怖を感じ取ったウィレミアはその場から大きく退き、バズーカを構える。

その瞬間の事だった。

 

「いってぇえええっ!?」

 

ウィレミアの左腕に一匹の猟犬が食らい付いていたのだ。

武装した左腕の装甲も咬み千切らんばかりに牙を食い込ませて猟犬は彼女を振り回す。

 

「この、離せ!」

 

「そこですね。」

 

猟犬の対処に追われて無防備になっているウィレミアに対してセシリアは大量の弾丸を撃ち込み、シールドエネルギーをガリガリと削る。

銃弾の雨と猟犬の体当たりでどんどんと壁際まで追い詰められていく。火薬の音が響く度に強い衝撃で体が固まり、ウィレミアは抵抗出来ない。

 

「が──このぉ、バケモノがぁ!!」

 

「褒め言葉だ。」

 

悪態を突くように叫ぶウィレミアを見てセシリアはニヤリと口角を吊り上げる。

そこには普段の淑女のような面影などどこにもなく、一人の悪魔が笑っているようにしか見えなかった。

アリーナの中に一頭の猟犬を引き連れて佇む赤い魔女、その姿はウィレミアにトラウマを刻み込んだあのときよりも更に恐ろしく、見た者の記憶に残ることとなる。

 

 

「フハハハハハ! ハーハッハッハッハ!!」

 

ウィレミアを撃墜したセシリアは上機嫌な笑い声を響かせてアリーナから去っていった。

その後ろ姿を見て皆はある事を思い浮かべる。そして誰が言い始めたのか、一年生の間ではセシリアは“魔王”、“ラスボス”等と呼ばれることになるのだった。

 

 

 

 

 





名実共にラスボス級のナニカを手に入れたセシリアさんでしたとさ。

ではまた次回でお会いしましょうノシ

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