タイトルに誤字?いいえ、ありません。
では本編をどうぞ↓
その日、新入生達は知ることとなった。
IS学園に通う専用機組の中で最も敵に回してはいけないのは誰なのかと言うことを───
その日、新入生達は思い知った。
IS学園に通う専用機組の中で最も怒らせてはいけないのは誰なのかを───
その日、アリーナで行われたのは訓練でも、戦闘でもない、ただの一方的な蹂躙だった───
5月となり1年生のクラス代表マッチも終わり、次第に新入生達も学園の雰囲気に慣れてきた頃の事である。
天気の良い放課後のバルコニーで優雅にティータイムを楽しんでいるセシリアという、とても絵になる構図。しかしそれをぶち壊す怒声がバルコニーに響き渡った。
「イギリス代表候補生主席セシリア・オルコットォオッ! もう一度オレと勝負しろ!!」
その怒声の主はいつものウィレミアだった。
一度勝負の相手をしてからと言うもの、ここ数日間ことあるごとに勝負を挑まれているセシリアはそんなウィレミアに対して呆れたように小さく溜め息を吐くとティーカップを置く。
そしてそんなセシリアとウィレミアの席を“またか”という様子で眺めるシャルとラウラがいた。
「また始まったよ……。」
「ゴールディングも懲りない奴だな。セシリアはあれでいて中々頑固者なのに……。」
「ホントにね。」
もはや日常の1コマと化してしまっているセシリアとウィレミアの絡みを見ている二人はアハハと笑いあった。
さてそんな一方で当人達はと言うと──
「お断りしますわ。既に一度勝負しておりますもの、そんな
困ったように眉間に皺を寄せるセシリアだったがウィレミアはそんなことはお構いなしに詰め寄る。
「もう一度だ、頼む! もう一度だけ勝負してくれ!!」
懇願にも近い言い方でセシリアに頼み込むウィレミアだったが彼女の解答は変わらなかった。
そんな時のことである。
「「「シャルロット先輩!!」」」
「げぇ!? またか!!」
これもまた日常の1コマとなりつつあるシャルの追っ掛け達の登場だ。
彼女達の登場にシャルはげんなりしつつも慣れたような感じでバルコニーからの脱出を試みる。
直ぐ様椅子から立ち上がるとバルコニーの柵を乗り越えて飛び降りたのだ。
「や~ん、また逃げられた!」
「まだよ!まだ追い付けるわ!」
追っ掛けの半分がそんなシャルの逃亡に諦めるものの、そうでない半分はシャルの後を追うように走って柵を飛び越えていく。
その時、彼女達が走り抜ける拍子にウィレミアとぶつかり、ウィレミアは体ごとセシリアのティーセットが置かれたテーブルにダイブしたのだった。
「あ……。」
「あ……。」
「あ───」
その瞬間、ラウラとウィレミア、セシリアの時は止まった。
ウィレミアはやらかしてしまったという声を、ラウラは何かを察したような声を、そしてセシリアは全ての感情が消失したかのような声を出した。
「あ、あの……。」
ウィレミアがダイブしたテーブルにはティータイムに必用な最低限の物しか置かれていなかったが、しかしその一つ一つが一級品であることは誰の目にも明らかである。
そんな高級品を壊してしまったという事実にさすがのウィレミアも顔面蒼白になる。
しかし壊されたセシリアはと言うと、ティーセットの置かれていた場所をじっと見つめていた。
「ティータイムを邪魔した者には──を……。」
ポツリ、その場にいる者にも聞こえないほど小さな声で何事かを呟いたセシリアはガタッと勢いよく立ち上がる。
そして満面の笑みをウィレミアに向けた。
「気が変わりましたわ。お相手して差し上げます。」
表情筋は笑顔を示している。しかし、肝心の目が、瞳が笑っていなかった。
言うなれば“殺意”、必ずや目の前の狼藉者を始末せんとする確固たる意志がそこにはあった。
───IS学園 第2アリーナ
またもや1年生と2年生の専用機組が野試合するという話が学園の中を駆け回り、アリーナの中には興味本位で見に来た生徒達でいっぱいとなった。
そんな彼女達の視線はアリーナ中央の二人に注がれている。
ブルー・ティアーズ=アーカード、
そんなセシリアの相手であるウィレミアはやや怯えた顔つきをしている。が、しかしそこはアメリカ国家代表候補生の誇る狂犬、まだまだ強気な風を崩さない。
「へ、へへ・・・・・・。テ、テメェなんざ怖くねぇ!!」
強がるように声を張り上げてウィレミアは両手にバズーカを構える。そんな彼女をセシリアは冷静に睨み着けていた。そして自身の周りにビットを展開し、銃口を向ける。
「さぁ、始めましょう?」
「行くぜ!!」
ウィレミアは肩の
ミサイルは高速でセシリアに向けて進み、それを盾にしながら彼女は仕掛けた。
「うぉおおおっ!!」
ミサイルでセシリアの注意を引きながらバズーカで展開されているビットを次々と撃ち落としていく。
しかし───
「そこ──!!」
「がっ!?」
連続した発砲音と共にセシリアの周りで爆発が起こったかと思うと強烈な衝撃がウィレミアの体を捉えた。
そして爆煙が晴れると笑顔を浮かべたセシリアが銃をくるくると回して弄っている。
「中々に良い腕をしている……。動き回るビットを的確に撃ち抜くその腕前、素晴らしい。」
セシリアの言葉遣いは今までのお嬢様然としたものではなく、彼女の知り合いを思わせる喋り方になっていた。
しかしそれを気にかける余裕はウィレミアにはない。
「ちッ……、ミサイルを撃ち落としやがったか、相変わらずの化け物かよ!!」
「近頃よく言われる……。では、その化け物と対峙する貴女は何者か?」
セシリアは銃をリロードしながらウィレミアに問い掛ける。ニヤリとつり上がった口角から彼女の感情が漏れているような気がした。
「オレは、オレはいずれ世界最強になる女! ウィレミア=R=J=ゴールディングだ!!」
「……そうですか。なら貴女をランクA以上のIS乗りと認定しましょう。」
そう口にしたセシリアは左手の銃を
するとブルー・ティアーズ=アーカードの背部に浮かぶ浮遊装備から赤黒い流動体が流れ出るように空間に現れ、猟犬のような形を取り、ウィレミアの方向を向く。
「な、何だよソイツ……!?」
「イタリアのアナスタージア様に協力を頂いて完成させた次世代のBT兵器ですわ。」
怯えたように腰が引けているウィレミアは怒鳴るように言葉を吐く。そんな彼女に対してセシリアは至極簡単に言葉を返した。
そして左手にまた銃を持ち直す。
「さぁ行きなさい、“ティンダロス”……!」
彼女の言葉に反応を示すように赤黒い猟犬はウィレミアに襲いかかる。
ウィレミアもそれには我に返り、戦闘行動に戻った。
高機動ミサイルを使い、迫り来る猟犬の動きを牽制しながらその奥にいる本体たるセシリアにバズーカの砲弾を飛ばす。
しかし、いくらミサイルが当たろうとも赤黒い猟犬は動きを止めることはなかった。
ミサイルの爆発にその体を構成する赤黒い液が飛び散ろうとも、また数秒すればその身体を再構築してウィレミアへの攻撃を再開するのだ。
「クソッ!! なんなんだよ、ソイツはぁあ!?」
「
猟犬から逃げるウィレミアにセシリアは淡々と銃弾を撃ち込んでいく。
拳銃と言うにはあまりに大きなそれの銃弾はたった一発であっても致命的な破壊力を持っていた。
ウィレミアはそれを掻い潜りながら猟犬からも逃げるという行為を強いられ、徐々に消耗していく。
そして遂に逃げていたウィレミアの体を一発の銃弾が捉えた。
「クッソ!!」
「まだ……終わりません。」
銃弾を撃ち込まれ、一瞬だけ足が止まったウィレミアに猟犬が食らい付く。
脚部装甲に襲いかかった猟犬はフィードバックの装甲を容易く破壊する。そしてその流れに乗るようにセシリアはジャッカルの銃弾を躊躇いなく撃つ。
「ガァッ!?!」
「……ティンダロス、戻りなさい。」
銃弾の雨によってアリーナの地面に投げ出されたウィレミアを見てセシリアは猟犬を自身の側に呼び戻した。
そして地面に横たわる彼女を見下ろす。
ウィレミアは上体を起こすと怯えたような瞳でセシリアを見上げていた。
「どうしました? まだ脚部装甲が9割失われただけでしょう? 再構築なさい! 武装を展開なさい! スラスターを使って飛びなさい! 展開した武装で反撃しなさい! 戦いはこれからですわ!! お楽しみはこれからです! さぁハリー!ハリーハリー!ハリーハリーハリー!!」
大きな笑い声を響かせながらアリーナに君臨するセシリアにウィレミアは恐怖を抱いた。
それは生命が生まれながらにして持つ、“死”への恐怖そのものであった。それほどまでの恐怖を心に刻み込まれた彼女はフィードバックを待機状態に戻し、こう心に誓ったのである。
“セシリア・オルコットのティータイムに2度と近付くものか”と。
英国面にイタリアをぶちこんで完成させたIS、それがアーカードだったりします。
セサル・ヴェニデ
…スペイン国家代表候補生の一人であり、ソフィア・ドラゴネッティのスパーリング相手を務めていた。
祖先はかつて傭兵稼業で登り詰めた豪傑であり、代々武門の名家として栄えてきた。兄がおり、現在兄は中東で傭兵として働いている。
武の名門ヴェニデ家の娘であることを誇りに思っており、強い女性を目指している。
専用BGM:COUP DE GRBCE
…セサル専用機であり、近接~中距離での戦闘に比重を置いて設計されている。
左肩にはヴェニデ家の証である赤い鳥のエンブレムが刻まれている。