IS世界に世紀末を持ち込む少女   作:地雷一等兵

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またまた間が開いてしまいました。
お許しください。

今回の話は好きな人・嫌いな人がはっきりと別れると思います。
ご注意下さい。

では本編をどうぞ↓


第133話 クリスマスの日を誰と

 

 

第5回モンド・グロッソも終わり、12月24日を迎えた夢弦市。

うっすらと雪がちらつく今年もカップル達が街でイチャイチャしている。

そしてそれに嫉妬した連中がカップルに突っ掛かっては制圧されるのは様式美という奴だろう。

 

 

年の瀬も近くなったこの日はもちろんIS学園も冬休み期間である。

年末年始も休まず営業するのが方針のレゾナンスでは南美とほんわ君がいつものようにデートしていた。

しかし今回の主役はその二人ではない。

 

 

 

「おや? 一夏じゃないか。」

 

「か、カセンさん…。」

 

その日のシフトが終わり、いつもの店員用の服から私服に着替えた勇儀を一夏が出待ちしていた。

一夏の様子はどこか緊張した面持ちであり、その様子からこの後どうするのかが、ある程度は予想できる。

 

「あ、あ、あの、カセンさん! こ、この後お時間はありますか?!」

 

「そりゃあ、あるよ。この後は家で独り寂しく晩酌する予定だったさ。」

 

勇儀の返答を聞いた一夏は静かに呼吸を整えて話を切り出した。

 

「それじゃ、この後自分に付き合ってもらってもいいですか?」

 

一夏はそれだけ言って勇儀の返答を待つ。たった数秒間の沈黙が今の彼にはその何倍にも感じられたことだろう。

そして勇儀は一夏の手を取ると優しく笑い掛ける。

 

「なら、エスコートして貰おうかねぇ…、よろしく頼むよ。」

 

「は、はい!」

 

一夏は勇儀の手を握り返すと彼女を導くように歩きだした。

そんな二人を物陰からラウラは静かに見守っていた。

 

 

 

「あ、あのカセンさん…。」

 

「どうしたんだい?」

 

夢弦市の一角にあるレストラン“Dolls”で食事を摂っていた二人だが、一夏が何か思い詰めたような表情で話を切り出した。

 

「えっと、ですね…。その…。」

 

一夏はどこか酷く緊張したような顔であったが、一度大きく深呼吸をして口を開く。

 

「オ、オレは、カセンさんのことが、あぁ、でもこっちを先に言うのか、いやでも……。」

 

意を決した風の一夏であったが、ここ一番でまた思考の段階に戻ってしまった。そうして言うべきか、何を優先すべきかと迷い悩んでいるとカセンが口を挟む。

 

「悩んでいるのは、あの子関連のことかい?」

 

そう言って勇儀か視線を向けた先には顔を隠すようにメニュー表を広げたラウラの姿がある。しかし、彼女の顔にはいつもの笑顔はなく、とても血色が悪く見えた。

そんなラウラの姿を認めた一夏はガタッと席を立ち、彼女のもとに近寄る。

 

「ラ、ラウラ…!? 今日は布仏さんのところにいるって…。」

 

「すまない、その…。」

 

ラウラは俯いたまま一夏と目を合わそうとしない。しかし、テーブルの上に置かれた手は固く握りしめられていた。

小さな体躯(からだ)は小刻みに震えている。しかし、それは寒さからではない。俯いた彼女の頬を一筋の涙が伝う。

 

「怖かったんだ…、一夏が、私の隣からいなくなることが…。」

 

「ラウラ…。」

 

「最初は、最初は一夏があの人と結ばれたなら身を引いてもいいって、そう思ってたんだ…。けど、けど…、一夏と一緒にいれるようになって、すごく、毎日が楽しくて、幸せで…。でもだんだん、恐くなってたんだ、一夏に捨てられることが、日を追う度に…、いつか、一夏が本当に好きな人と付き合うことになった、その先が…。」

 

ぽそりぽそりと呟く彼女を見て一夏は膝を着き、ラウラと目線を合わせた。そしてそっと手を伸ばして彼女の頬を伝う涙を拭ってやる。

 

「一、夏…?」

 

「大丈夫だよ、ラウラ…。」

 

涙を優しく拭うと一夏は彼女の小さな頬を撫でる。

そんな二人の側にゆらりと勇儀が現れた。

 

「ふふ、罪な男だねぇ一夏。」

 

「カ、カセンさん…。」

 

うっすらと微笑むカセンを二人は見上げ、それぞれの反応を見せる。

一夏は今度こそ覚悟を決めたような顔を浮かべ、ラウラは小さく息を吐き出して、しっかりとした眼差しで一夏と勇儀を見詰めた。

 

「あの…オレはこれから身勝手なことを言います。それでも聞いてくれますか?」

 

「あぁ、聞こうじゃないか。」

 

腹を決めた武士のような顔になった一夏を見て勇儀は確かに頷くと、先程まで座っていた席に戻り、一夏もラウラを伴って座る。

そして一夏が咳払いをして顔を上げ、真っ直ぐに勇儀の目を見つめて切り出した。

 

「オレはカセンさんのことが好きです、女性として。」

 

そうきっぱりと言い放った一夏に、隣に座っていたラウラは“やっぱり”という風に俯いた。

しかし一夏はそれだけで言葉を終わらせずに、“でも”と続ける。

 

「カセンさんと同じくらい、ラウラのことも好きなんです。オレは不器用だから、割りきってどっちかなんて出来ません。二人とも幸せにしますとしか言えません。……オレ今すごい最低な発言をしてますよね、でも自分の嘘偽りのない言葉です。カセンさん、オレと付き合ってください!」

 

そう言って一夏は勇儀に向けて頭を下げた。

それを見たラウラはハッと我に返り、同じように頭を下げる。

 

「あ、あの、一夏は本当にいい男なんです! 優しくて、度胸もあって、根性もあって…。もし、もしカセンさんが二股が嫌というなら私が身を引きます、だから…。」

 

二人の言葉に、それを黙って聞いていたカセンが口を開く。

そして、それは小さな笑い声だった。

 

「ハッハ、アタシに告白してきた連中は今までそれなりにいたけど、二股宣言した奴は初めてだよ!」

 

愉快そうに笑う勇儀、それを見た二人はポカンとした顔を浮かべる。

 

「だから気に入った! 男ならそれくらいの度胸と甲斐性がなきゃね。」

 

勇儀はそう言ってニィと口角をつり上げると二人に向けて手を差し出した。

二人は数秒間、差し出された手の意味が分からずに呆然と眺めていたが、ホレホレと催促するように揺れる勇儀の手を見てやっと意味が分かり、その手を握った。

 

「ふふ、よろしく頼むよ一夏。あんだけ大見得切ったんだ、アタシら纏めて幸せにしないと、酷いからね?」

 

「は、はい! 勿論です!!」

 

「ラウラも、よろしくね。」

 

「はい! こ、こちらこそお願いします。」

 

勇儀は二人に微笑みかけると二人を抱き寄せて頭を撫でる。

二人は勇儀に抱き寄せられるままに彼女の胸に頭を預け、頭を撫でられる。

 

 

 

会計を済ませ、Dollsを後にした3人。

一夏はラウラと勇儀の二人と手を繋ぎ、チラチラと白い雪の降る街を歩いていた。

ラウラは喜色満面と言った顔で一夏の手を握り締め、勇儀は優しく一夏と手を繋いでいる。

正に両手に華な状態の一夏を見てすれ違う男性達は羨望や嫉妬の眼差しを向け、中には喧嘩を売ろうとする者すらいたが、一緒にいる女性が勇儀であることが分かると、逃げるように姿を消した。

 

「一夏とラウラ…、あんたらにもアタシの名前を教えなきゃねぇ。耳貸しな。」

 

勇儀に言われるままに二人は片耳を彼女に向ける。耳を差し出された勇儀は二人に囁くように本名を二人に明かした。

 

「ふふ、これからよろしくね一夏。」

 

「はい、勇儀さん!」

 

一夏は勇儀とラウラを一緒に抱き寄せて二人を抱き締める。

幸せ全開な一夏の顔を見ていた勇儀はやれやれと弟でも見るような目で彼を見ていた。一方のラウラは幸せに緩んだ顔つきで一夏の胸板に顔を埋めた。

 

夢弦だからこそ許される両手に華の状態に、一夏は心の底から嬉しそうに二人を力一杯抱き締めるのだった。

 

 

 

 





こんなんありかな?


お、お命だけはお許しください…orz


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