エクスカリバーってビームをブッパする剣ですよね?
では本編をどうぞ↓
モンド・グロッソは1回戦ごとにくじを引き、組み合わせを毎回決めるのだ。
そして2回戦のくじの結果、2回戦第一仕合の組み合わせはインテグラ対イザベルとなった。
「ふむ、私もとんとくじ運がないらしい。」
「ふん、貴様となら少しは楽しめそうだ。」
イザベルは変わらず腕を組んで立っており、インテグラはそんなイザベルを長剣を構えながら見つめていた。既に臨戦態勢の二人はお互いの一挙手一投足を見逃さないように鋭い目でお互いを観察している。
イザベルの背後には無数の波紋が浮かんでおり、いつでも射出できる状態にある。
(…あの変則的な射撃武器…。少々面倒だ。)
「さぁ、こちらから行くぞ。」
イザベルは波紋の中から次々と武器を射出する。
それを見たインテグラはそれらの射線を的確に読み、避け続けた。それを腕を組みながら見ていたイザベルは楽しそうに小さく笑みを浮かべる。
「それ逃げろ逃げろ!!」
「ふ…、狐狩りをする貴族のつもりかね?」
「そうかもしれんな。」
逃げながらそう問うインテグラにイザベルは笑ってはぐらかすように答えた。そして撃ち続け避け続けること数分間、イザベルは
「さぁ、行くぞ!」
「来い!」
剣を抜いたイザベルは拡張領域を利用した射撃を使いながらインテグラとの距離を詰める。
インテグラもそれに応じ、飛んでくる凶器の類いを無視して真っ直ぐにイザベルと真っ向から切り結ぶ。
「ハァ!」
「せい!!」
二人の剣が正面からぶつかり合い、甲高い金属音が響く。
お互いに高い技量を持った者同士の剣戟は観客達を大いに盛り上げる。そして視線の中心に居る二人は楽しそうな笑い声を上げながら剣を交えている。
「やはり、やるな…。面白いぞ! インテグラ・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシングゥ!!」
「それはこちらも同じだ! イザベル・ローエングラムよ!!」
金属音を盛大に響かせて剣を交える二人、その戦いぶりは誇り高い剣士による決闘のそれだ。
インテグラが剣を振り下ろせば、イザベルはそれを払って返す刀で切りつけ、それをインテグラも防いで切り返す。
そんな高度な次元の斬り合いに見ている者達は息を吞んでそれを見守っている。
「せやぁ!!」
「ふん!」
数分間もずっとその場で足を止めて斬り合っている二人は幾合もの剣戟を交わし、同時に距離を離した。
そしてイザベルは今まで背後に出現させていた波紋を納め、ニヤリと笑う。
「光栄に思え。貴様に
「それはそれは…恐悦至極にございます。」
射撃兵器による援護射撃が止み、インテグラは全神経をイザベルに向ける。
イザベルは取り出した独特な形状の剣を観衆に見せつけるように掲げていた。
「……さぁ、今こそ開くぞ。我が最強の力の扉を─!天を仰いで見るが良い!! この
イザベルの掲げた剣を構成する3つの円筒が高速で回転して風を巻き込み、生み出された暴風が圧縮され鬩ぎ合い、一種の暴力的な破壊力を生み出している。
(…!? 形振り構ってられないのはこちらもか…!!)
それを見たインテグラも急いで長剣を構え直して最終兵器を起動させる。
「
イザベルの天地乖離す開闢の星によって発生した圧倒的暴風、その破壊力とインテグラの約束された勝利の剣が同時に正面からぶつかり合う。
その衝撃に観客席を保護している遮断エネルギーの膜がミシミシと音を立てて軋む。その迫力に直接観客席で見ている者はもちろん、テレビ越しに見ている者でさえ圧倒された。
そして他を圧倒するエネルギーのぶつかり合いによって砂塵が舞い上がり、目映い光が周囲を包み込む。
「……どう、なった…?」
テレビ画面越しに見ていた一夏たちはじっと煙と光が収まるのを待っていた。そして煙が落ち着くとアリーナの中心に健在のイザベルとインテグラの姿が見える。
「…、どっちだ…。」
「二人ともまだ行けそうに見えるけど…。」
画面に映る両者の様子はまだ余裕があり、どちらにも致命的な損傷は見られない。
「ほう…、耐えるか! 我の奥の手を!」
「そちらこそ、最終兵器だったのに、まさか相殺でやっととはな…。」
二人とも正面から睨み合い、得物を構えている。
そしてまたゆっくりと歩み寄り、もうすでに両者の間合いに入ると同時に動いた。
「ハァ!!」
「せや!!」
正面から二人は再度剣を切り結ぶ。
二人のシールドエネルギーはもう三分の一を下回っており、その攻防は最後の一合になるだろうと観客達は予想していた。
もちろんその予想は当たる。
「ハァアッ!!」
「せぃやぁあっ!!」
二人は同時に大きく踏み込んでお互い相手の心臓に向けて剣を突きだした。そしてそれは同時にお互いの胸に当たり、ブザーが鳴る。
インテグラもイザベルも、二人とも笑っており観客達はバッとディスプレイ画面に目を向ける。
「フフ、ハハ…、ハッハッハッ!!」
「ハハハハハハハハッ!!」
二人は一緒に専用機を待機状態に戻すと、向かい合って笑い合う。
両者の差はほんの僅かな物ではあるものの、勝ったのはイザベルだった。
第一仕合、2回戦の最初から高レベルな戦いを見せた二人に観客達から惜しみ無い拍手が送られる。二人はそんな観客達の歓声と拍手に応えながらアリーナから出ていった。
「……イザベル達の後の仕合か…殺りにくいな。」
「……。」
2回戦、第2仕合はフランス代表のアンジェ・オルレアンと日本代表の井上真改の組み合わせだった。
雑誌などでも前々から因縁めいたものを噂されていた二人の仕合だけに、観客達の期待は上々である。
「…斬る。」
「やって見せろ。」
アリーナの中央で睨み合う二人はどこか殺伐とした雰囲気で言葉を交わす。
そしてお互いの得物であるブレードを手に取ると構えを取った。
アンジェの構えは正眼に構えるオーソドックスなもので、一方の真改は居合いのような構えだ。
「行くぞ!」
「……。」
アンジェの突撃に合わせて真改はコインを2枚、同時にアンジェの顔の高さに向けて指で弾き飛ばす。
アンジェは真改の放った2枚のコインを剣で弾くと、既に目の前に真改の抜いた刀が迫っていた。
「っ!?」
「……。」
アンジェは即座に足を止めて後ろに飛び退き、事なきを得た。一方の仕留めきれなかった真改は露骨に舌打ちをして悔しがっていた。
しかしまたすぐに居合いの構えに戻り、いつでも斬りかかれるようにしている。
アンジェは真改から目を離さずに、自分が先ほど弾いたコインに目を向けた。地面に落ちている二枚のコインは四角い穴の空いたものであり、それらによって真改が何を言おうとしているのかアンジェにはすぐに分かった。
「確か…六文銭、だったか?」
「……。」
「私への手向けって、ことかい?」
アンジェの言葉にも真改は黙ったままで構えをとり続けている。そんな彼女を見てアンジェはハァと小さく溜め息を吐いて構える。
ぴりぴりとした緊張感に客席の観客達もしんと静まり返った。
「ふ…ッ!!」
「ッ!?」
ピンと真改が指でコインを弾いてアンジェに牽制してから高速で突っ込むと、アンジェは2本目の剣を取り出してそれを迎撃する。
二人は肉薄し、ガキンという鈍い音が響き渡った。
「甘い!」
「ッ……?!」
真改の一刀を受け止めたアンジェはそこから更に体を近寄せて膝蹴りを真改の腹にお見舞いして体勢を崩させ、突き飛ばした。
そして突き飛ばした真改に向かってアンジェは猛スピードで突進して斬りかかる。
「無駄…。」
「どうかな?」
二振りの剣をそれぞれ別々の軌道で斬りかかるアンジェに真改はブースターを吹かして突撃する。
そしてブレードがかすることも厭わずに体当たりでアンジェの体を崩しにコインを2枚、アンジェの顔に向けて弾き飛ばす。
顔に物が当たった衝撃で無意識の内に目を瞑ったアンジェを真改は乱雑に掴んで上空に放り投げた。
「良い的だ…ッ!!」
上空に放り投げられ、無防備な状態のアンジェに真改は高速の居合いで斬りつける。
どうにか一度斬りつけられるだけで間合いから逃げられたアンジェは体勢を立て直して真改を見る。そこには既に間合いを詰めて来ていた。
「まだ、負けてはやれないな。」
「…。」
アンジェと真改の振ったブレードは互いにぶつかり合い、音を立てる。
シールドエネルギーだけで考えれば、優位に立っているのは大きな一撃を入れた真改である。お互いメインレンジが被っていることもあり、二人の仕合は苛烈さを増す。
それは1発いれたかどうかの差など、最初からなかったと思わせるほどだ。
「過程は関係ない! 最後に立ってさえいれば!!」
「ヒーローの条件は最後に立っていることだ!」
竜巻のように吹き荒れる二人の剣戟に、観客達は固唾を吞んで見守った。
そして足を止めて斬り合うこと数分、仕合終了を告げるブザーが鳴る。
「……、無念…。」
「どちらが勝っても、おかしくなかった。でも、運で戦いは決まらない…!」
専用機を待機状態に戻した二人は向かい合ったままで、それぞれのリアクションを見せていた。
ディスプレイに表示された結果はごくごく僅かな差でアンジェの勝利だった。両者とも、自身の専用機の強みである機動力を使わず、正面からの斬り合いを挑み、それで得た結果に観客達は賞賛の拍手を贈る。
インテグラ VS.イザベルの勝負は最後までどちらに勝たせるか悩んだ挙げ句にコインを投げて決めました。
では次回でお会いしましょうノシ