IS世界に世紀末を持ち込む少女   作:地雷一等兵

146 / 182

前回から引き続き、第5回モンド・グロッソの1回戦です。

では本編をどうぞ↓


第125話 モンド・グロッソ1回戦

 

 

「……なんで一回戦でアンタなのかね。」

 

「くじ運だろ、不平を言うものじゃないぞ。」

 

フィンランドのスミカ・ユーティライネンは正面にいるイギリス代表のインテグラをだるそうに見つめる。しかしインテグラは爽やかな笑みを浮かべてスミカに話し掛けた。

 

「嫌みなくらい爽やかですね。」

 

「うん? テレビで見る君に比べればまだまださ。」

 

煽るつもりもなく放たれたインテグラの一言にスミカはぴくりと反応してマシンガンを構える。それを見たインテグラは両手で握った長剣を構える。

 

「さて始めよう。」

 

「そうね…。」

 

二人はお互いの得物を構え示し合わせたようにほぼ同時のタイミングで動き出した。

青く騎士の甲冑を思わせるデザインをしたインテグラの専用機“キング=アーサー”の機動力は高い。その素早い動きでスミカの操るピンク色の機体、“コーラルスター”を易々と捉える。

 

「ふんっ!!」

 

「たっく…。」

 

振り下ろされた剣をハンドガンの銃身で受け止め、スミカはブースターを吹かせて距離を取る。

しかしインテグラもすかさずスミカとの距離を詰めた。

 

「一度捉えた間合いだ。逃がさない。」

 

(ホントに間合い管理が上手い! どうにかして距離を取りたいけど…。)

 

絶妙な間合い管理のテクニックにより距離をどうにかして離したいスミカはインテグラを突き放す事が出来ず、常に不利な間合いを取らされていた。

 

 

 

「やっぱり凄いなインテグラさんは…。」

 

「えぇ、勿論ですわ。あの剣術、そしてそれを十全に活かす間合い管理…。近接戦闘であればアンジェさんや真改さんにも決して劣りはしません!」

 

有利な立ち回りを見せるインテグラを見てセシリアが力強く拳を握った。

 

 

 

「ちぃ…、鬱陶しいなっ!」

 

「せいっ!」

 

ハンドガンやマシンガンの銃身を巧みに使ってインテグラの振る剣をいなしているスミカであるが、顔には苛つきが現れていた。

インテグラの剣捌きは今回の出場者の中では五指に入るもので、しかも間合いを外せないと来ては苛つくのも仕方ないだろう。

 

「この…!!」

 

「せやっ!」

 

銃身と物理シールドを使って耐える仕合に持ち込んだスミカであるが、顔からはかなりのストレスが見て取れる。

 

「舐めんなぁ!」

 

「おっと!」

 

シールドの陰からハンドガンを連射するも、インテグラは急速旋回をして直撃を避ける。そして回避した距離から一気に間合いを詰めて剣を振り下ろした。

 

(ちぃ…、やっぱりこの機体じゃパワー不足か…。誰だよ、装甲に全振りしたアホ設計者はよ!)

 

スミカは内心で自身の専用機設計者を毒づきながらインテグラの猛攻に対処する。

その顔は恐らくアイドル的な立場の女性がおよそしていいものではない。

 

「固いな、やはり。」

 

「それだけが取り柄の機体でね!」

 

「そうか…。出来れば決勝まで取っておきたかったが、固い相手には使わざるを得ないか…。」

 

インテグラは残念そうに、しかしながら顔にはやや喜びを浮かべてそう呟き、スミカから距離を取った。

突然のその行動にスミカは怪訝な顔を浮かべながらも、好機とみて距離を離しながら銃弾を撃ち込んでいく。

 

しかしインテグラはそれを気にする様子もなく、長剣を両手で握り、眼前に構える。

 

「……今、常勝の王は高らかに、手に執る奇跡の真名を謳う───」

 

インテグラは精神を集中させ、朗々と吟うように言葉を紡いでいく。その姿は気高く、美しく、見る者を魅了する。そして手にもった剣が仄かに光を放ち始めた。

 

「───束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流。受けるが良い!」

 

インテグラは眼前に構えていた長剣を振りかぶる。

その高々と掲げられた剣は強い光を放っていた。そして光を纏った剣を勢いよくスミカのいる方へと振り下ろした。

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)ァアアアアッ!!」

 

「嘘…だろっ!?」

 

振り下ろされた剣からは強い光が金色の奔流となって放たれ、射線上のスミカを飲み込んだ。

光の激流に飲み込まれたスミカのコーラルスターはゴリゴリとシールドエネルギーを削られていき、ゼロになると同時に仕合終了を告げるブザーが鳴った。

 

 

「オーバーキルってレベルじゃねぇぞ!」

 

「ハッハッハ、すまないな。これを使わねばならないと判断したのでね。」

 

仕合終了後、向かい合った二人はお互い笑い合う。スミカが不平を言うように睨みつけると、インテグラは快活に笑って見せる。

そしてそれから数秒の沈黙のあと、お互いの健闘を称えあって握手を交わした。

 

 

 

「……なんだ、アレ…。」

 

「…インテグラ様の最終兵器、ですわ。」

 

「やっぱ紅茶キメてる国は違うわ…。」

 

テレビ越しにインテグラの専用機“キング=アーサー”の最終兵器を目の当たりにした8人は動揺したように口数が少なくなっていた。

 

 

 

「大喝采!!」

 

「ここで負けたら、カッコ悪いでしょう? うふふ…。」

 

「誰であろうと、私を越えることは不可能だ。」

 

「終始…。」

 

「せめて痛みを知らず、安らかに眠るといいわ。」

 

次々と前回大会参加者達が1回戦を突破していき、今日最後の仕合、鋭い目付きが特徴的な国際企業連盟代表の巻紙=オータム・礼子対赤いバンダナの映えるカナダ代表のアレクシア・ディオンの仕合となった。

 

 

 

 

「思い知らせてやる!」

 

「ほぁあああっ!」

 

礼子は右手のショットガンを構え、アレクシアは数回の屈伸運動のあと、気合いを入れるように大声をあげた。

 

そして仕合開始の合図と共に二人は一斉に動き出す。

 

「コイツはどうだぁ!」

 

「フゥッ!!」

 

礼子は拡張領域(パス・スロット)の中から取り出した石柱でもって突撃してきたアレクシアを打ち上げようとする。

しかしアレクシアはそれを片腕で受け止め往なすとそのまま礼子に向かって突進した。

 

「バカめっ!」

 

突進してきたアレクシアに対して礼子は顔面の高さにカウンター気味に蹴りを突き込み、怯ませる。

衝撃で仰け反ったアレクシアに礼子は上空から多段突きを繰り出してシールドエネルギーを削りにかかった。

 

「千手殺!」

 

「yeah! wow! yeah!」

 

礼子の繰り出した突きをアレクシアは両腕を巧みに使って往なし続ける。

そして全てを往なし終えると足を突き出して礼子を蹴り飛ばした。

戦況は五分五分というものであり、一進一退の攻防が続く。

 

「食らえぇ!!」

 

「You cannot escape!!」

 

お互いが引く気のない正面からの殴り合いに観客達は大いに沸いた。礼子が一撃をお見舞いすれば負けじとアレクシアも一撃をお見舞いする。エンターテインメントとして考えればこれほど盛り上がるものはないだろう。

 

「思い知らせてやる!」

 

「wow?!」

 

礼子はアレクシアをショットガンで殴り付けて体勢を崩させると、フライングキックで蹴り倒した。

そして急いで立ち上がるとショットガンを何発も撃ち込み、マウントを取る。

 

「あ~、please give up?」

 

「…No!」

 

「OK!!」

 

アレクシアはマウントを取られショットガンの銃口を突きつけられても尚、笑って徹底抗戦の態度を取った。

そんなアレクシアを礼子は満面の笑みを浮かべて殴り付ける。

そしてアレクシアもマウントを取られた状態から礼子にやり返す。

 

「ヒャッハー!!」

 

「yeah!!」

 

お互い奇声を発しながら殴り合い、それはシールドエネルギーが底を尽くまで続いた。

そしてブザーが鳴り、観客の視線がディスプレイに集まる。

 

「……どうだ! 見たかぁ!!」

 

「Oh…。」

 

ディスプレイに表示された結果は僅差で礼子に軍配が上がり、立ち上がった礼子はぐっとガッツポーズをとった。

そして二人は握手を交わし、観客達もそんな二人に拍手を送る。こうして第五回モンド・グロッソの初日は終わりを迎えた。

 

 

 

 

 





アレクシアの元ネタ分かる人っているのかな?
…いるよね。

では次回でお会いしましょうノシ


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。