キャノンボールファストが終わり、ここから季節は冬に近付いていきます。
では本編をどうぞ↓
「ホントにいいのか?」
「うん、ちょっとね。」
IS学園のアリーナで南美は一夏、鈴音、箒と対峙していた。全員完全武装状態で、地味に殺気を隠せないでいる。完全に臨戦態勢の四人、しかし2対2ではなく、南美対三人の構図だ。
「無茶するじゃない、あたしら三人を同時に相手するなんて。」
「まあ、試したいのよ。」
「…ふぅん…。」
その後、二言三言言葉を交わした四人は少しだけ距離をとって睨み合う。四人の間に立つ審判役のセシリアが右手を掲げ、“始め”の声とともに手を振り下ろすと四人は同時に動きだした。
「フゥゥゥ…シャオ!!」
「ちッ…。」
真っ先に仕掛けたのは南美だった。誰よりも速く距離を詰め自身の得意レンジに持って行く。そして横になぎ払うように鋭い蹴りを一夏の胴体に当てて一夏の体勢を崩すと、その隣に居る鈴音に挑む。
「ショオッ!!」
「なんの!」
南美の一撃を鈴音は青竜刀で受け止めると、箒の方に弾き飛ばす。箒もそれが分かっていたようで、完全に待っていたタイミングで待ち構えており、きっちりタイミングを合わせて空裂を振り抜いた。
がしかし南美はそれを読んでおり、吹き飛ばされた瞬間にくるりと身体を反転させて箒の空裂を握る腕を掴んで、始動を止める。
「小癪な…。」
「何とでも言えばいいさっ!」
南美はもう1本の刀による追撃が来る前に箒を蹴り飛ばし、次に来るであろう二人の襲撃に備える。
南美の予想通りにそのすぐ後には鈴音と一夏が同時に南美へと襲いかかった。
「ズェァアッ!!」
「ゥアタァッ!!」
左右から挟み込むようにして一夏と鈴音は南美に仕掛ける。絶妙なタイミングでの挟み撃ちを南美は両方を受け止めてから一夏、鈴音の順に蹴り飛ばす。
しかし鈴音はその場に踏みとどまり、南美との殴り合いを開始する。
「アタァ!! ウアチャァ!!」
「ショオ! シャオッ!!」
ガードなど意識していない攻勢一辺倒の殴り合いにセシリアは息を吞む。そしてその戦闘に一夏と箒が乱入する。
「チェストォオ!!」
「ズェアァア!!」
「フゥアチャァア!!」
3方向から迫る近接戦の鬼の猛攻を南美は負傷覚悟で捌きながら反撃する。
しかしそれでも今の南美は神がかっている。致命的な一撃だけは絶対に食らわず、そう仕向けるためのフェイクまでも完全に看破していた。
「この…ッ!!」
「シャオッ!!」
袈裟斬りに刀を振り下ろす一夏の腕を勝ち上げて懐に潜り込んだ南美は踏み込みと同時に肘を一夏の腹にたたき込み、一夏が揺らいだタイミングで鈴音の腕を掴んで投げると、その勢いで箒に組み付いた。
「シャオ!」
「甘い!」
組み付いた体勢から投げようとした南美だったが、箒は刀を手放し南美を掴んで逆に南美を投げて脳天から叩き付ける。しかし南美はすぐさま起き上がり、箒を蹴り飛ばす。
そうして箒との一合いを制した南美に鈴音が迫る。
「フゥゥァアタァア!!」
「ショォオオ!!」
高速で飛び込んで来た鈴音を南美はその場で迎え撃つ。
持ち前の機敏さで南美の懐にもぐりこんだ鈴音は低い体勢から鋭くコンパクトに南美へと拳を突き出す。それを見た南美は一瞬の反応でその正拳突きに合わせる形でローキックを放った。
両者の放った一撃はそれぞれの一撃で相殺し互いに致命傷を与えることは出来なかったが、そのすぐ後に次の動きをとる。
「フゥゥゥゥ…シャオッ!!」
「ウゥゥァアチャァアッ!!」
南美が大きく踏み込みながら繰り出した突きに対して鈴音はその場で待ちながら上段蹴りで迎え撃つ。
お互いがそれぞれの一撃を食らい、大きくのけぞる。そんな時に箒と一夏が背後から南美に仕掛けた。
「首ィい!!」
「ズゥエエァア!!」
大きく振りかぶって仕掛けた二人であったが、南美はすぐさま体勢を立て直し、鈴音を巴投げのようにして背後に二人に投げつけることで足止めする。
「南斗雷震掌!」
南美は手を地面に叩きつけ、衝撃波を発生させる。その衝撃は一夏、箒、鈴音を三人まとめて吹き飛ばした。
そして吹き飛んだ三人にブーストを使って距離を詰め追撃する。
しかし三人もすぐに体勢を立て直しており、それを見た南美は無理と判断したのか、急停止し距離をとった。
「ちぃ…。ホントに今日の南美はいつもより手強いな…。」
「キレというか、気迫か…?」
「……そうね。いいわ南美、最高ね。」
3人は笑っていた。今目の前にいる南美というライバルがこうまで強くなっているという事実に嬉しくなっているのだ。
戦闘狂と言われても仕方のない3人の顔つきに審判役として間近で見ていたセシリアはハァと溜め息を吐いた。
「さて、まだ行けるよねラスト…。貴女はまだ、もっと高く飛べるはずだよ。」
南美もまた笑っている。自身の力の高まり、そしてそれに応えるようにして力を変えているラスト、その二つによって南美のボルテージは上がっていた。
[So as I pray,────]
南美の頭のなかにまたあの声が流れる。すると南美は広角をさらにあげ、満面の笑みを浮かべた。
「そうか、それが君の答えなんだねラスト…。オーケー、なら飛ぼう、一緒に。どこまでも高く、誰よりも強く!」
笑顔でそう叫ぶと、南美が纏うラストが強く光を放つ。
もうこれで三度目となる一夏にはそれが何かすぐに分かった。
「第二次移行《セカンドシフト》…!」
一夏が驚いていると、その光の中心から南美の声で何かが聞こえてきた。
___I am the bone of my systems.
─── 体はバグで出来ている
Steel is my body, and fire is my blood.
血潮は永久で、心は一撃
I have tried over a thousand challenges.
幾たびの調整を越えて不変
Unknown to Death.
ただの一度も修正はなく
Nor known to Life.
ただの一度もアプデされない
Have withstood pain to create many systems.
彼の者は常に独り電子の丘で勝利に酔う
Yet, those systems will never hold anything.
故に、そのシステムに意味はなく
So as I pray, UNLIMITED ARC SYSTEM WORKS.
その体は、きっとバグで出来ていた____
光が収まるとそこにはそれまでのラストとは違う機体を纏った南美が佇んでいた。
その機体は薄青色とも言うべき色の装甲で覆われており、十字の紋章の描かれたマントを着けている。そして機体のサイズは今までのラスト同様に通常のISよりも二周りも三周りも小さい小柄な物だった。
「…良いね、サザンクロス…。最高に馴染むわ…。」
「…第二次移行…か。どこまで強くなったのやら。」
恍惚の表情を浮かべる南美を見て鈴音と箒、一夏の3人は再度気を引き締め直す。
一夏の白式弐型しかり、銀の福音しかり、目の前で2度も第二次移行の実力を味わってきた彼女たちからすれば当然の反応である。
「北星南美…、サザンクロス…推して参る!!」
「来るぞ!」
「速い!」
一瞬だけ両手を合わせた南美はそのすぐあとに3人に向かって突撃する。
その速度は今までよりも速く、3人は散会する間もなく距離を詰められてしまった。
「ウゥゥアタァッ!!」
「フゥゥゥゥ──シャオッ!!」
最初に対応したのは鈴音だった。
鈴音は踏み込んできた南美に合わせて大きく踏み込み、その顔面に掌底を打ち込む。
しかし南美はそれでも止まらずに振りかぶった拳を鈴音の胸元に叩きつけた。
「くふっ!?」
「ショオッ!!」
胸元に拳を叩きつけられた鈴音は体勢を崩した。そして南美はその隙を見逃さずに踵落としで鈴音を地面に叩きつける。勢いよく叩き付けられた鈴音の身体はボールが床に落ちたときのように、不自然に高く跳ねた。
「…えっ!?」
「ジョイヤァアッ!!」
そして跳ねて来た鈴音に対して南美は再度踵落としを打ち込んでまた下に叩き落とす。そして同じように叩き付けられた鈴音はまた大きく跳ねる。
「フゥゥゥゥ───」
「ズェァアッ!!」
「チェストォオッ!」
しかし追撃は出来なかった。鈴音に追い討ちを掛けようとした南美を一夏と箒が止めにかかったのだ。
南美は鈴音から目を離して二人への対応に切り替える。
「シャオッ! ショオッ!!」
「ちっ!」
「この…!!」
南美はまず一夏の右手を突くように蹴り、雪片弐型の軌道を止め、続いて箒の腕を払って空裂の一撃を防ぐ。
そして2対1での攻防を繰り返していると、復帰した鈴音もそこに加わる。
「フゥァアチャァアッ!!」
「ズェァアッ!」
「チェエスゥトォオッ!!」
「フゥゥゥゥ!!」
3対1の状況で南美は笑顔を浮かべたまま、殴り合う。
もちろん対峙している箒も、一夏も、鈴音もみな笑っていた。
その後、数分間続いた殴り合いは、全員のエネルギーが底をついたことによって決着した。
引き分けという結果であったが、四人の顔はとても充実している。
こうして南美の新しい相棒、“サザンクロス”のデビュー戦は終わったのである。
遂に書けました…、南美の第二次移行です。
ワンオフアビリティも勿論考えてはいます。…いつ全貌を書けるかは分かりませんが…。
では次回でお会いしましょうノシ