IS世界に世紀末を持ち込む少女   作:地雷一等兵

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前回から引き続き、キャノンボールファストです。

では本編をどうぞ↓


第120話 続 キャノンボールファスト!!

 

 

前回のあらすじ

 

・キャノンボールファストやるよ。

メタルフルフ簪による砲撃で鈴、ラウラ、シャルがリタイアだよ。

・残りのメンバーで簪をどうにかしよう。←いまここ

 

 

 

「フハハハハハハッ!!」

 

「来たぞ!」

 

高笑いしながら砲身を向けてくる簪に四人は気を引き締める。

あの簪が操る玉鋼は高い装甲と砲撃力によって正面からの戦闘にはめっぽう強い。そのため複数での乱戦に持ち込むのが大まかなセオリーである。

 

「How do you like me nooooooow!!!」

 

簪は大声を上げて四人に突っ込む。パッケージ装備の玉鋼の重量はそれだけでも十分な凶器となる。

その正面からのタックルを四人は海を割るようにして避けた。

しかしそれだけで終わらない。簪は180度急速旋回し、ライフルを撃ち続ける。

 

「ちぃ…。」

 

「これだよ…!!」

 

えげつないほどの弾幕に南美と一夏は思わず舌打ちをした。その中でセシリアと箒は死角に回り込んでいる。

 

「チェストォオオオオ!!」

 

「落ちなさい!」

 

死角からの箒の強襲とセシリアの射撃に対して簪は箒の刀をライフルで受け止め、銃弾は装甲で受け止める。

そして箒を突き飛ばすと、自慢のライフルでセシリアごと狙い撃った。

 

「ぬぅ…。」

 

「その装甲、本当にうっとうしいですわね。この銃でも致命傷に至らないなんて…。」

 

「フハハハハハハ!!」

 

簪は高笑いしてセシリアと箒に詰め寄る。そのとき。一夏と南美が簪の背後から奇襲を掛けた。

 

「フゥゥゥ…シャオ!」

 

「ズェア!!」

 

零落白夜の一撃と、南美の強烈な手刀が簪を襲う。

が、簪はその機体の見た目からは想像できないほど機敏に動き、二人から距離を取った。

 

「この…。」

 

「逃げ足も速いよねぇ…。」

 

「あの装甲をどうにかするしかないか…?」

 

「そうですわね。」

 

四人は簪を囲みながらコースを飛ぶ。飛びながら繰り広げられる五人の戦闘に観客達は一斉に沸いた。

 

 

「「ノーサちゃぁああん!!」」

 

「「ファリィ、ドンマイ!!」」

 

「優男! 根性見せろぉ!」

 

「セシリア嬢、ファイトォ!!」

 

「メガネの嬢ちゃんもすげぇぞ!!」

 

レースの様子を見ていた観客達は声を振り絞って声援を送り続ける。その声が聞こえているかどうかはさておいて、彼らは声を出し続けた。

 

 

「零落白夜で一撃と行きたいけど…。」

 

「それは難しいだろうな。」

 

「硬い相手には一撃って、それ一番言われてるけど…。」

 

「それだけは絶対受けないようにしているでしょうね。」

 

コースを走りながら四人は背後で照準を定めている簪を観察する。簪はスコープ越しに四人を観察しており、とりわけ火力を担当しているだろう一夏と南を注視する。

 

「さて…やるか…。」

 

箒は空裂と雨月を構える。その目には殺気がこもっており、完全に殺る気のようだ。南美も箒と同様に槍を構え、いつでも投げられるようにしている。

 

「簪には悪いけど…これ、現実なのよね。」

 

「一撃で沈めてやろう…。その首もらい受ける。」

 

南美と箒は足を止めて反転すると、簪に向かって加速する。

 

「チェストォオオッ!!」

 

「フゥゥゥ…シャオッ!!」

 

二人は相対速度的にこれでもかという速さで突っ込んだ。そして装甲の薄い場所にそれぞれ一撃ずつ切り込み、肩の弾倉を保護している装甲を引っ剥がす。

装甲を剥がされた簪は忌々しげに二人を見つめるも、その顔は笑っていた。

 

「次ィ!!」

 

「その首…、置いてけェ!!」

 

悪鬼羅刹のような顔を浮かべながら二人は簪に挑む。どちらが悪鬼でどちらが羅刹かは分からないが。

そんな二人を相手に簪は笑いながらその挑戦を正面から叩きつぶしに行く。

 

「長い砲身にはこんな使い方もあるんだ!!」

 

簪はその大型ライフルの銃口を向かってくる紅椿に押しつけ、そのまま引き金を引いた。銃口から放たれた一撃は紅椿の肩口を捉え、衝撃で軽々と紅椿を吹き飛ばす。

しかしその死角をついて南美が頭上から強襲する。

 

「シャオォッ!!」

 

「ぬぉっ!?」

 

南美が振り下ろした手刀は玉鋼の装甲に深々と食い込み、その一部を抉りとった。簪は南美にえぐれ取られた部分をパージし、急いで南美から距離をとる。

 

「この玉鋼の装甲が…。」

 

「案外いけるもんだね。さすがラスト…。」

 

距離を取って簪と南美は睨み合う。そんな時、箒は背後から簪に斬りかかる。

 

「首、置いてけェえ!!」

 

「うぉおッ!?」

 

横薙ぎに振られる刀の軌道はもろに簪の首筋を狙っており、その刀を簪は頭を下げて回避した。

しかしその状態は南美と箒にとって格好の的であり、タンデムラッシュを仕掛ける。

 

「オラオラオラオラオラオラッ!!」

 

「さっさとその首寄越せェ!!」

 

前後から挟むように繰り出されるリンチに近い何かによって玉鋼のシールドエネルギーは見る見るうちに減っていく。そしてあともうじきでゼロのなるという時になって南美と箒は一瞬だけ簪は距離を取る。

 

「南斗千手龍撃ッ!!」

 

紫電をまとった幾重もの突きが簪の玉鋼を捉え、シールドエネルギーをゼロにして撃墜した。

 

「オ・ノーレェェエエエ!!!」

 

エネルギーをゼロにされた簪は断末魔の絶叫を上げながら落ちていき、回収班によって救助された。これで邪魔者、というよりも最大の障害物が居なくなったことで残った四人はそのままレースを再開する。

 

「最後の最後まで自由な奴だったな…。」

 

「まぁ、簪ちゃんだし。」

 

「さてここからは普通のレースだな。」

 

「お先に失礼しますわ。」

 

残りのコースの距離はあと半分ほど、その距離で先行する為にセシリアが速度を上げた。

その後ろを応用に他の三人も速度を上げてついて行く。

残り半分となったコースはカーブが多く、速度よりもコーナリングの精度が重要になってくる。

 

「次に見えてくるのは…、三連ヘアピン!!」

 

「ちぃ…。」

 

先行するセシリアとそれにぴったりと追従する南美、そしてその二人の後ろを数メートル間隔を開けて一夏と箒が飛ぶ。

高速で飛びながら、三連続のヘアピンカーブを曲がりきり、次のコーナーに差し掛かる。

セシリアと南美は苦も無く曲がりきるが、一夏と箒はその機体の癖の強さもあり、速度を落として通過した。

速度を落とした分、一夏・箒とセシリア・南美の距離は地味に開く。

 

「このままじゃじり貧…か。」

 

(セシリアちゃんと最終ストレートまではこの状態でマークする。そうすれば…ブーストを使って刺せるはず…。)

 

「なんとかして距離を詰めないと…。」

 

(一夏さんと箒さんとはコーナリングで差を付けられます…。やはり、一番の障害は南美さん…。どうにかして南美さんとの距離を離さなければ…。)

 

それぞれの思惑を秘めながらレースはもう終盤戦へと突入する。

連続のカーブや180度のターンなど、今までよりも更にテクニックを要求するコースに四人はほぼ団子状態で入る。

 

(零落白夜で…、いや、落とせて一人だな。その後のエネルギーで追いつける保証がない。このままついて行って隙をみるか? でもそれじゃ…。)

 

(…とか考えているはず…。こちらから仕掛けるか…? そうすれば最悪セシリアが落ちる可能性はある。)

 

(燃費の悪い紅椿と白式でレース中に斬りかかっては来ないと思う…、ないよね? 流石に混戦狙いでそんなハイリスクなことはしないと思うけど、一夏くんだしなぁ…。)

 

(無いとは思いますが…誰かが仕掛ければこの状態から一気に大混戦になるはず…。そうなると近接武装の薄い私は分が悪い。それだけは阻止しなくては…。)

 

もう残りわずかであるこの状況でほぼほぼ硬直状態になるかと思われた。観客達も最終コーナーまで大きく動くことはないだろうと思っていたが、あの男は違った。

 

「ズェアァア!!」

 

この状況で動いたのは一夏である。一夏は零落白夜を起動し隣で走っていた箒に斬りかかった。まさか仕掛けて来るとは思わず不意を打たれた箒は直撃を受けシールドエネルギーを大きく減らした。

その予想外の行動に観客はおろか、その他のIS学園の生徒達も驚きを隠せないようである。

 

(どこまでも、最後まで足掻いてやる!!)

 

「まさかっ!?」

 

「そこっ!!」

 

一夏に気を取られたセシリアの一瞬の隙を突いて南美がセシリアに強烈な一撃を浴びせた。その一撃でセシリアは体勢を崩し、南美は1歩先を行く。

箒に一太刀浴びせ、蹴り飛ばすことで完全に箒をリタイアさせた一夏は全速力でセシリアと南美を追う。

 

 

(ここで箒ちゃんが落ちた…。セシリアちゃんにもキツい一撃を入れたから一夏くんは追い付いてくる…。逃げ切るよ、ここは。)

 

(やられましたわ。スラスターが二基損傷、出力低下…。これでは───やはり、そうなりますよね。)

 

「ズェァアッ!!」

 

南美の一撃でシールドエネルギーがもともと減っていたところにだめ押しのように零落白夜をもらい、セシリアが落ちる。

残りあと僅かという状況でレースは南美対一夏の一騎討ちとなった。

 

 

[Have withstood pain to create many systems.]

 

「来た来たぁ!!」

 

レースの最中にもまたあの声が聞こえ始め、テンションの上がっていた南美はさらにギアを上げていく。もう既にハイパーセンサーを使わずともゴールアーチが見えはじめて来た頃、まだ一夏と南美の差は開いていた。

2連続90度カーブを速度も落とさずに曲がりきると一夏もまた南美のすぐ後ろに並ぶ。

 

[Yet, those systems will never hold anything.]

 

「ッラスト! 最終ストレートの700メートル、力を振り絞れぇ!!」

 

「まだだっ! 白式、まだ行けるだろっ!!」

 

いつもの言葉を一節聞きながら、南美は最後のカーブに入る。そして最後のカーブをほぼ同時に曲がり、ゴールアーチまで最後の直線に突入した。

次のことを考える必要もなくなった二人はガンガン加速し、ゴールアーチまで突き進む。

 

「まだだぁ!!」

 

「負けるかよ!!」

 

加速しきり、最高速度を維持したまま二人は突き進み、ほぼ同時にゴールアーチを通り抜けた。

 

「「どっち!!?」」

 

ゴールアーチを通過した二人は同時に旋回し、掲示板を見る。しかしそこに結果は出ておらず、“審議”のランプが灯っていた。

そして掲示板のディスプレイ画面にゴール場面のスローリプレイが流される。

様々なアングルから映し出されるリプレイだが、どれを見ても二人とも同時にゴールアーチを潜っていた。

そのリプレイが流され始めてから数分後、審議のランプが消え、スピーカーから千冬声が聞こえ始める。

 

『あーあー、審判団代表の織斑千冬だ。審判による審議の結果、織斑、北星両名は同時にゴールしており、よって同時優勝ということにする。以上だ。』

 

「同時…──」

 

「優勝…。」

 

スピーカーから流れた「同時優勝」という言葉に観客席は一気に沸いた。

観客席だけでなく、生徒達も大いに盛り上がり、南美と一夏に称賛の声を送っている。

 

 

1年生レース終了後、その盛り上がりに恥じぬ高レベルなレースが上級生達によって繰り広げられ、今年のキャノンボールファストも大いに盛り上がった。

 

 

キャノンボールファスト 結果

 

1年生専用機組

1位 北星南美、織斑一夏

3位 セシリア・オルコット

 

閉会式と表彰式で同時に壇上に立った南美と一夏は一緒に優勝杯を掲げ、笑顔でガッツポーズを取った。

その後、各学年の専用機持ちと上位入賞の一般生徒達は新聞部の取材を受け、妙な高陽感を持ったまま学生寮に帰っていったらしい。

 

 

 





見事優勝を果たした一夏くんと南美ちゃん。
これでまたIS業界での知名度が上がったらしい。

では次回でお会いしましょうノシ

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