IS世界に世紀末を持ち込む少女   作:地雷一等兵

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まだまだこのペースが保てそうで嬉しいです。

では本編をどうぞ↓


第116話 夢弦の夏祭り

 

 

 

 

8月も下旬にさしかかり、IS学園の帰国組達も続々と帰国しており、いよいよ夏休みも終わるという頃のこと……

 

 

「ほんわ君さん、どうですか?」

 

「うん、よく似合ってるよ。」

 

今日は夢弦市の篠ノ之神社による夏祭りの日だ。この日、南美とほんわ君は縁日に来ていた。

南美の格好は明るい色合いの浴衣姿であり、縁日の雰囲気とマッチしている。

 

「ねね、ほんわ君さん! あっちに行きましょ!!」

 

「うん、いいよ。」

 

南美に手を引かれるままほんわ君はついて行く。

人混みの中を通っていくがその中に色々とほんわ君は見覚えのある人物達を見る。しかし、その人物達に声を掛けるよりも先に、南美に手を引かれて行き、声を掛けるには至らなかった。

 

 

 

「ハラショー!!」

 

「祭りだー!!」

 

祭りの行われている一角では祭りとは別の高揚感に包まれた人集りが出来ていた。

その人だかりの中心には四人の人物がおり、周囲の人間はみな、その四人にあこがれの視線を向けている。

そしてたまたまその近くを通りかかったほんわ君は“うえぇ!?”と驚きの声を上げて、足を止め、南美もそれにつられて足を止める。

 

 

「すまねぇな、勇儀…。こればかりは譲れねぇんだ。」

 

「気にしなさんな、ジョンスさん。お互い戦って白黒決めましょうよ。」

 

「ふぅ…、こんな形で戦闘か…。」

 

「概ね計算通りです。」

 

中心に居る四人はそんな会話を交わし、それぞれ戦闘態勢に入る。

人集りから遠巻きに見ていたほんわ君は呆れたような声を出す。

 

「ジョンスさんにカセンさんに無頼先輩にシオンまで…、何してんのさ…。」

 

「すいません、ほんわ君さん…あの方たち、ほんわ君さんのアルバムで見覚えがあるんですが…。」

 

「うん、ボクの先輩と同期だね…。ジョンスさんがいるってことは…、だよね、清ちゃんもいるよね…。」

 

すすすと視線を左右に動かしたほんわ君は人混みの中の最前列に青い着物姿の少女を見つけてさらにうなだれる。

 

 

「さぁ行くぞ。夢弦高校特別課外活動部第38代目部長! ジョンス・リー!!」

 

「いいねぇ…、それじゃあ…。特別課外活動部、第39期構成員、星熊勇儀、推して参らせてもらうよ!!」

 

「これは…乗るしかないか…。同じく第38期構成員、山本無頼!」

 

「それでは、特別課外活動部第39代目部長シオン・エルトナム・アトラシア、行きます。」

 

四人はそれぞれ構えを取り、口上を述べるとそのまま前に全力で突っ込んだ。

カセンこと星熊勇儀とジョンスは正面から拳をぶつけ合い、シオンと無頼はその二人を援護するように立ち回りつつ、お互いがお互いの妨害をする。

力対力の真っ向からのぶつかり合いは見ている者の気持ちを盛り上げ、さらにはその二人の周りで激しい攻防を繰り広げるシオン対無頼もまた華を添える。

 

「ふん!!」

 

「なんのぉ!!」

 

ぶつかり合う勇儀とジョンスの足場は周りよりも僅かに窪み始め、さらにそれは加速する。

お互いの拳と拳がぶつかり合い、音を立て、周囲の空気を振るわせる。

その空気を肌で感じ、周囲の熱は更にヒートアップしていく。

 

「セーフティ、解除。」

 

「うおっとぉ!?」

 

その脇で繰り広げられるシオンと無頼の戦いもますます白熱する。

無頼は自身から距離を取るシオンにステップを踏んで近寄り、放たれた銃弾さえ回避し肉薄し、そして渾身の右ストレートをシオンの顔面に打ち込んだ。

 

「フリーダムッ…パンチ!!」

 

「…ッ!?」

 

ボクシンググローブを着けた拳で顔を殴りつけられたシオンの体は宙を舞う。

しかし無頼は油断などせず着かず離れずの距離を保って構えを取り続ける。

 

「まだです!」

 

「そうだと思っていたよ。」

 

ファイティングポーズを取りながら無頼は立ち上がったシオンを見てにやりと笑う。

 

 

 

「破ぁ!!」

 

「ふん!!」

 

勇儀の突き出した手とジョンスの正拳突きがぶつかり合い、派手に音を立てる。

そしてお互いもう一方の腕で相手を殴りつけた。お互いの一撃が互いの顔面にヒットし、二人は大きくのけぞる。しかし二人ともすぐさま体勢を立て直し、もう一度別の腕で殴りつけた。

 

「「まさかまさかのノーガードォオオオ!!」」

 

「そこに痺れる!憧れるぅ!!」

 

「お前王位戦は良いのかよぉ!」

 

「勇儀、負けんな!!」

 

「おっぱいぷるんぷるん!!」

 

お互い防御など毛頭にもないと思わせる殴り合いに周りは熱狂する。その声に応えるように二人の勝負は白熱していく。

 

「決める!」

 

「トドメ!!」

 

ジョンスと勇儀はお互い一歩後退し、全力の一撃を撃つ為の予備動作に入る。

ジョンスは大きく一歩踏み込み、全力の鉄山靠を繰り出し、勇儀も全力で踏み込んで右拳で振り上げるように殴り付ける。

 

ジョンスの鉄山靠に対して勇儀は振り上げた右拳で迎撃し、続いて左腕でジョンスの突進を受け止め、そして最後に全力の右ストレートをジョンスの背中に繰り出した。

がジョンスの鉄山靠で受けた衝撃は殺し切れず、左腕で受け止めたせいもあって勇儀は後ろに倒れる。

 

「ホントに鈍ってないね…。プロ棋士一本に絞ったってのは嘘だったんです?」

 

「嘘じゃねぇさ。」

 

「信じられませんねぇ…。私の知ってる将棋指しは少なくとも鉄山靠1発で人の腕をどうこうできるはずじゃないんですが…。こりゃ、暫く北斗はやれないねぇ…。」

 

「すまんな、つい全力を出した。」

 

尻餅をつきながら右腕を気にする勇儀にジョンスは手を差し出し、左手を引っ張って引き起こす。

 

「カッコよかったぜ、ジョンスー!」

 

「カセンさん、かっけーッス!!」

 

「良い試合だった!!」

 

「サイコー!!」

 

「無頼ぃ! 渋いぜ!!」

 

「シオンチャンカワイイヤッター‼」

 

「みんなお前らの大ファンだぞ!!」

 

仕合が終わるとギャラリーは口々に四人への称賛の言葉を叫ぶ。

ジョンスと勇儀は周りに視線を巡らせながら歓声に答えるように腕を掲げる。

無頼とシオンは小さく胸を張り周りに小さく頭を下げていく。そんな四人に周囲のギャラリーはさらに大きな歓声を投げかける。

 

そんな四人に人混みの中をかき分けてほんわ君が駆け寄った。

 

「何してのさ!!」

 

「おぉ? ほんわ!久しぶりだな。」

 

「あら、貴方も来ていたのですか?」

 

無頼とシオンがほんわ君に気がつくと気さくに話し掛けた。

それにつられ、ジョンスと勇儀もほんわ君に気がつく。

 

「久しぶりに見る顔だな。」

 

「お、ほんわじゃないか。ノーサも一緒かい。」

 

勇儀は南美を見ると懐から取り出し掛けていたタバコの箱をまた懐にしまい直し、代わりに禁煙パイポをくわえる。それから七人は人目を避けるようにして移動し、東屋の中で腰掛けた。

 

 

「なんでこんな所でケンカしてるんですか!?」

 

「そんなに怒るなよほんわ、夢高時代は日常茶飯事だっただろ?」

 

「だからって、こんな時まですることないじゃないですか。」

 

「仕方ないのさ、話し合いじゃ決着着かない問題だったんだからさ。」

 

ジョンスに怒るほんわ君に対して勇儀が口を挟む。

その言い分になにやら嫌な予感を抱いたほんわ君であるが、ここまで関わってしまったならと、理由を追及する。

 

「かき氷で一番旨い味で揉めた。だから仕合った。」

 

「あほらし。」

 

理由を聞かされたほんわ君はばっさりと切り捨てた。

それを聞いたシオンと無頼は“だよなー”という顔になる。しかし、ジョンスと勇儀はそんな顔にはならず、むしろ

なぜそんな事を言うのかという顔になった。

 

「オレはイチゴ派なんだが、勇儀のやつがレモンって聞かなくてよ。」

 

「当たり前だろう? それは譲れないねぇ。」

 

「で、俺らは仕方ないからサッサと終わらせる為に手伝った。」

 

「つまり私と無頼さんは悪くありません。」

 

シオンは悪びれもせずに言い放った。

その横ではまた勇儀とジョンスが口ケンカをし出した。そんな二人を見てほんわ君はハァと大きな溜め息を吐き、そんなほんわ君を見た南美は小さく笑う。

この人達とほんわ君との高校時代はどれほど奇天烈で、愉快で、退屈しないものだったのだろうかと想像を膨らませたのだった。

 

そしてそこにいる七人は祭りの喧噪の中で、他愛もない世間話やほんわ君と南美の話、そんな様々なことを話しながら、祭りの最後を飾る花火を眺めたのであった。

 

 

 

 

 




夢弦高校メンバー一同が揃うと取り敢えずなノリで喧嘩が起こったりします。

特別課外活動部
第38期…ジョンス、無頼、小野塚小町

第39期…シオン、勇儀、ほんわ君、カンフー4兄弟

第40期…清姫、矢吹真吾

決めてるメンバーはだいたいこんな感じ。



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